ベンチャー起業家が意外と知らない節税対策の話を解説してもらいました【#pediasalon 勉強会】

pediasalon勉強会 山田真哉 正田圭

社会人として働くなかで、切っても切り離せないのが税金の問題。会社員であれば、企業が支払ってくれるため考えつかないようなことも、個人事業主や経営者ともなると、自分たちで考えなければなりません。

そこで今回、「pedia salon」の公開勉強会として開催されたのが本イベント。タイトルは「ベンチャー起業家が、知っておくべき節税対策」です。公認会計士・税理士として活躍する山田真哉さんをお招きして、起業家が知っておかなくてはならない&意外と知らない税金の話を語っていただきました。

イベントには、サロンメンバーを含む約50名が参加。あらゆる質問が飛び交う有意義なイベントとなりました。それでは、実際の様子の一部をレポートを通して見ていきましょう。

「節税対策」よりも前に絶対に知っておくべき税金の話

pediasalon勉強会 正田圭

正田圭(まさだ・けい)
15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGALA株式会社を設⽴し代表取締役に就任。2017年12月より、スタートアップメディア「pedia」を運営。

正田:今日はよろしくお願いします。今は税務調査のシーズンではないのですが、知り合いのベンチャー企業なんかが税務署とのトラブルを抱えた話を最近よく耳にしたので、改めて知っておくべき内容として勉強会のテーマに設定しました。

pediasalon勉強会 山田真哉 

山田真哉(やまだ・しんや)
公認会計士・税理士。一番売れた本『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は160万部突破。内閣府官房行政改革推進会議のWG委員。『日本タイトルだけ大賞』発起人。文化放送『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』が放送中。

山田:よろしくお願いします。今回は、まず基本的な税金の仕組みを振り返りながら節税対策について解説しようと思います。すごく根本的な質問から入りますが、みなさんは「利益が出たなら税金を支払う」ことをしっかりと理解していますでしょうか。

ときどき、そういった初歩の知識から取りこぼしている経営者の方にお会いすることがあります。税金の話になると、みんな節税対策ばかり気にしてしまいますが、根本的な話を理解することがまずは大切ですから。

ということで、まずは、そもそもの税金(所得税)の仕組みから確認していきましょう。

企業としてお金を稼ぐと「売上」が出ます。その売上から、経費を引いたものが利益。税務用語では「所得」と呼びます。この所得に対して、みなさんは税金を支払います。個人事業主であれば所得税と名前が付きますし、法人であれば法人所得税、すなわち「法人税」と呼ばれます。

ただし、ここで異なるのは、個人事業主の場合は「控除」が含まれること。所得から控除を引いた価格に対して、税金を支払うことになるのです。ちなみに、控除には医療費控除、扶養控除などの種類があります。

企業の場合は、利益がそのまま所得ですから、その所得に対して税金がかかります。テーマにある節税の話に触れるなら、企業の節税は「会社と個人の所得を分散すること」が必要です。

というのも、起業家が節税対策を行う場合は、企業としての所得と経営者に支払われる役員報酬のふたつのお金の出口があります。そこで、この出口を分散することで節税を行うケースが多いのです。

pediasalon勉強会 山田真哉 

山田:さらにいうと、個人事業主と企業との場合では、税率も異なります。個人事業主は俗に言う「累進課税制度」と呼ばれる制度で税率が決まっています。

つまり、所得に合わせて税率が上がるのです。いっぽう企業でも、所得に合わせて4つのランクに分けられます。「〜400万円」「400〜800万円」「800〜2,000万円」「2,000万円〜」と決まっており、それぞれの税率をざっくり言うと中小企業の場合、22%、25%、33%、35%くらいになります。

総じてみると、個人事業主に比べて企業のほうが税率は安い傾向にあるのです。そのため、所得を分散することで区切りの良い金額まで下げて税率を減らそうと考えます。これが、一般的な節税ですね。

また、事業を始めると法人税とは別に消費税も納めなければならないのですが、こちらには免税の仕組みもあります。創業後2年以内が大きなキーワードです。もしも創業初年度から売上が立ってしまったら多額の納税が心配という人もいるのですが、実は、資本金が1,000万円未満の企業は創業から2年は免税なんです。創業3年目も、2年前の売上が1,000万円に届かない場合は原則免税です。基本は2年前の売上を見て、課税か免税かどうか決まると覚えておけば良いでしょう。

pediasalon勉強会 山田真哉 

山田:ちなみに、税理士的な目線でいうと、すぐに起業だといって会社をつくることはあんまりおすすめしていないです。なぜなら、この創業後2年間は消費税免税って仕組みは、個人事業主でも変わらないから。

そうすると、純粋に考えて、2年目までは個人事業主で頑張っておいて、3年目から法人化しておけば、トータルで4年間免税の期間が得られます。要は、ゴールデンタイムが得られますよって話ですね。

ただ、税理士にお金の相談をするのって、多くの場合は法人化の後なんです。僕らとしては、「あ〜あ、起業しちゃいましたか……」って気分になることを知っていてほしいです(笑)。

長くなりましたが、ここまでが税金を知るうえで一番はじめに知っておくべき基礎編の話でした。

pediasalon勉強会 山田真哉 

正田:たっぷりとありがとうございます。僕は、今企業のM&Aをお手伝いする会社を経営しているので、その目線からいうと、どんなフェーズの企業にとっても、節税対策は行うに越したことがないと感じています。

山田さんの説明にもあった通り、利益が800万円を超えると33%の税率に昇ります。一般的に、金融商品で年利が33%超えるほどのものなんて、なかなかないじゃないですか。そう思うと、絶対に節税はできたほうが良い。むしろ、日本で商売をするなら、税金は切っても切れない関係性だと思います。

M&Aのサポートを行う際にも、節税対策は大いに行うべきです。もちろん、節税なのか脱税なのか、しっかりと線引きをしなければなりませんけれどね。経営者として事業のことを考えるならば、10のうちの2〜3は節税のことを考える。そのくらいの気概で良いと思っています。

おすすめの節税対策ではなく、企業ごとに選択を

pediasalon勉強会 山田真哉 

山田:おすすめの節税対策を聞かれることがあるのですが、そこに関してはみなさんそれぞれの顧問税理士に聞いてほしいと思っています。なぜなら、節税対策って本当にたくさんあるんです。

僕らの事務所でも節税対策をリスト化したシートを作っていますが、約100項目あるんです。このノウハウを駆使して、どの対策を行うのか。それを決めるのが税理士の仕事です。そして、その方法は企業によって異なるため、一概にはいえないです。

今回は、そのなかでも代表的なキーワードをお伝えしようと思います。それはズバリ、以下の3つ。

・家族

・家

・共済(または保険)

そして、おまけにもうひとつ。

・社会保険料

このなかから選択していくのが、オーソドックスで損のない節税対策だと思います。節税の話のくだりで一番要素として大きいのは、実はいかに社会保険料を下げるのか。社会保険料も、一応税金っちゃ税金ですからね。意外に節税対策のうえでは肝になってくる話です。

正田:家族というのは、親族に役員報酬を支払うことで節税につながりますよってことですかね?

山田:そうですね。配偶者や実家の両親などの、身近で収入が少ない人に仕事を手伝ってもらい役員報酬を支払うことで、家庭に入る報酬は変わらないものの、ひとり当たりに課される税金が減ります。収入を得ている家族だと意味がないですが、身近にいる家族を役員にするのはひとつの節税対策です。従業員ではなく、雇用契約の発生しない役員がおすすめです。

正田:儲かったからとひとりが年収1,800万円もらうなら、ふたりで900万円ずつもらったほうが節税ってことですね。

山田:理論上そうですね。今日のテーマは、全体的に「分散」と理解しておくと良いと思います。

pediasalon勉強会 山田真哉 正田圭

正田:僕自身、会社を何度か売却しているのですが、売却のタイミングで夫婦のどちらかが退職金をもらうってかたちを取っているんですよね。夫婦で役員になるメリットはそこにあると感じています。

山田:退職金は税率も安いですからね。給与と退職金とを比べると、税率は半分以下になりますから。

正田:M&Aの場合、譲渡所得×20%の税金かかりますが、それより退職金を取ったほうが税率は安いです。たとえば、1億円で売却するのであれば、5,000万円の退職金を取って、5,000万円を株式譲渡したほうが、手残りが多いです。あとは、家賃を経費計上すると節税につながる、とかもありますよね。

山田:役員社宅ってことですね。

正田:ベンチャー界隈の起業家の方だと、手続きを行なっていない方が多い気がします。

山田:そうですね。たぶん、めんどくさがっているか、まだ知らないのだと思います。役員社宅は、個人ではなく会社で家を契約すると、(東京の場合は)家賃の約9割を会社の負担にできるんです。

役員社宅になると、固定資産税評価額を調べて、税法上定められた算式で計算すると役員が1割程度負担するだけで、残りは経費計上できます。10万円の家賃なら、9万円が経費になって、1割が自己負担ですね。年間にすると108万円の経費が生まれます。もちろん、固定資産税評価額の書類を入手するのは少し面倒なので放っておいている会社もありますが、絶対に経費で落としたほうが良いと思います。

あとは、起業すると家を購入したいと考える起業家が多いですが、中古マンションなど以外は経費はわずかにしかなりません。持ち家への憧れが強い場合を除いては、無理に家を購入することもないでしょうね。むしろ、起業家にとって持ち家の購入は、百害あって一利なしだと思います。

お金を使えばなんでも経費になるわけではない

pediasalon勉強会 正田圭

正田:これまでに出会った、すごく困ったクライアントの話とかって聞いてもいいですか?

山田:困ったクライアントですか……困ったよりも驚いたのほうが正しいかもしれないですが、投資が経費だと思っている方とお会いしたときはすごくびっくりしました。

あとは、借金の返済が経費になるとかでしょうか。借金の返済って、利息分は経費になりますが、元本は当たり前ですが経費にはなりませんからね。とにかくお金を使えばなんでも経費になるって考えるのは間違いですし、30万円以上のものを買ったとしても経費ではなく資産なのであまり意味はありません。

正田:M&Aに関わっていると、期末に企業を買収したいとか不動産を購入して……って言いはじめる方がいます。なかなか理解されていない事実みたいですね。

山田:高いモノって、あくまで資産なのですぐに経費にはならないんです。4年落ちの中古車は1年で経費になりますが月割りになりますし。あと、そもそも土地は経費にならないです。間違った知識が広まってしまう背景には、間違った知識を正しいと思って周囲に広める人の存在があるような気がします。

ちなみに、去年からプラチナフェニックスなど、全額経費になる保険が流行りました。いまは保険商品として逸脱していることが金融庁から指摘されましたが。ベンチャー企業にとっては保険は結構危険ですね。ベンチャー企業だと、ビジネスで一発当てたから保険に入ろうとすることが多いですが、5年間は掛け金が変えられないのでキャッシュフロー的に厳しくもなります。

ストックビジネスで確実にキャッシュが入るなら良いのでしょうけど、プロダクトやサービスなどが当たったからという理由で加入すると、後で厳しくなる局面が多いように思います。

山田:ちなみに、なんでも経費にできるような職種の場合は、税理士の力量が試されます。正直なところ、日本では必要経費かどうかの判断が納税者自身にあります。観点としては、客観性・収益性・直接性・継続性などが挙げられますが、結局のところはそのポイントに寄せられるのかどうかが勝負ですから。

pediasalon勉強会 山田真哉 

だからこそ税理士の存在がありますし、どのように対峙していくのか、真剣に考えるべきですね。たとえば、未来への投資だったとしても、その必要性を税理士が示せるならば、経費計上もできます。

正田:日本は、納税に関して恵まれた国だと思いますね。以前、香港に会社を持っていたことがあるのですが、向こうは税率が低い代わりに、会計監査人のツッコミがするどいです。日本の自己申告制に比べて、向こうは勝手に判断されて経費からカットされたりします。

山田:香港は日本と異なり、賦課課税制度ですからね。納税にまつわる参考資料を提出すると、役所が納税額を決めます。日本は、申告納税制度ですね。昔、GHQが来た頃に民主化する動きがあったことで現在の制度になっています。

税務調査をどう乗り越える?

pediasalon勉強会 正田圭

正田:僕、税務調査を最後に受けたのって6年前のことなんです。だから、ここ最近の情勢がわからなくて。今も変わらず、突然「こんにちは」って来るんですか?

山田:突然来ることはほとんどないですね。税理士法33条の2に基づいて税理士が申告書を作成する際の「書面添付制度」があります。これを行うことで、原則、税務調査の前に、納税者ではなく税理士への意見聴収が行われます。起業家にとっては、ワンクッション置ける安心感が生まれます。税務調査が怖い経営者は、知っておくと良いと思います。

正田:そうなんですね。昔よく言われた盆明けに来やすいなんて話や、5月に来ると本当にマズいみたいな話もまだ健在ですか?

山田;今は時期に関わらずいつでも来ますよ。昔は、税務署の内示が6月末に出て7月頭に異動だからってことで、来にくい月があったそうですよね。今は、引き継ぎもきちんとされているので、時期による変な噂はありません。ただ、相変わらず盆明けはよく来るようです。

正田:税務調査の立会いで気をつけることはありますか?

山田:税理士がきちんと税務調査のときに立ち会ってくれるかどうかを確認してほしいです。最近はインターネットで安く税理士に依頼できるようになりましたが、安いには安いなりの理由があるので。

pediasalon勉強会 山田真哉 正田圭

正田:なるほど。ちなみに、税務調査ってどのくらいの頻度で行われるんですか?

山田:ピンキリです。すごい大企業は毎年ありますし、そこそこ大きな企業だと2年に一度です。スタートアップの創業初期の頃は、ほとんど来ないですね。とくに、設立3年以内だとなおさら来ないです。よくあるのは、創業4年目に来て、1〜3年目の分も含めて調査していくパターン。あとは、売上が突然増えると調査の対象になりやすいです。

正田:3年くらいを遡って調査をするって言いますよね。

山田:そうですね。通常は3年間くらいを遡って調査しますが、そのなかで怪しい項目があると、最高7年間まで遡って調査を行います。

正田:領収書も7年分は取っておくほうが良いですね。税に関する示す資料がなにもないと、推定の概算で徴収されることもありますし。しかも、それらに重加算税と延滞税がかかるので、本来支払うべき税額の倍以上支払うことになりかねません。

山田:そういった観点も含めて、おすすめなのは、経費から除外したレシートもしっかりと取っておくこと。きちんと経費計上を考えている企業であることを示すためのアピールになりますから。レシートに、無駄なものなんて1枚たりともないですよ。

従業員ではなく個人事業主の集団を作るのも、節税につながる【質疑応答】

pediasalon勉強会 山田真哉 正田圭

イベントの最後には、さまざまな観点から質問が多く挙げられました。今回は、参加者の約半数が起業家。自身の経営と照らし合わせた質問が寄せられていた様子が印象的です。本記事では、参加者から挙げられた質問のうち、一部を抜粋してお届けします。

Q . 配偶者に対する役員報酬を支払う場合、労働を示すための資料が必要?

山田:労働の証明が必要なのは、雇用関係が発生する従業員のみです。役員の活動に関してはそこまで厳しくないですが、たとえば取締役会の議事録や日々の経営に関するアドバイス内容などがテキストで残っていると良いでしょう。ただ役員報酬があまりにも高額だったり、配偶者と別居していたりすると、否認されることはあります。

Q . 自宅をオフィスとする場合は、経費になるのか?

山田:自宅をオフィスにする場合は、基本面積比で按分することになります。自宅とは別にオフィスを借りる場合、オフィスはもちろん全額経費になります。役員社宅の話は、オフィスと家が別の場合の話で、オフィスも経費にできて、自宅もほぼほぼ経費にできるということです。

ちなみに、少し話はそれますが、中古車は経費として落ちる話を先ほどしました。ビジネスがすごく当たった起業家は、経費をつくるために中古のハイクラス車を購入したりします。たとえば、ランボルギーニとか。ハイクラスの中古車なら、お金が仮になくなってしまったときにも高値で売却できますからね

Q . 従業員ではなく、個人事業主として一緒に仕事をする仲間を増やすことは、企業にとっての節税につながる?

山田:結論からいうと、とても効果があります。従業員は雇用が発生しますが、個人事業主として業務委託で仕事をするなら社会保険もかからないですし、消費税は下がりますから。

ただ、そうはいっても、個人事業主が従業員のような動きをしていると、税務調査だけでなく社会保険の調査もシビアになりますね。専用のデスクがあればそれは微妙ですし、毎日出社しているだけでも難しい顔をされます。あとは、専業の個人事業主だった場合はほぼアウトですね。一社だけではなく、二社以上と仕事をしてもらうようにしてもらったほうがいいですね。

まとめ

pediasalon勉強会 山田真哉 正田圭

今回は、「pedia salon」の定例勉強会をレポートしました。基礎的な話題から詳しく突っ込んだ話までさまざまなトピックが語られた本イベント。参加者の方々も、積極的にメモをとる姿が見られ、熱量をたっぷりと感じました。

「pedia salon」では、月に一度ゲストを招いてあらゆる勉強会を開催しています。サロンメンバー限定のイベントもあれば、今回のように自由参加制のイベントを開催することも。起業家同士であらゆる情報が交換できる場なので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!

 

取材・文:鈴木しの

撮影:矢野拓実