LBO(レバレッジド・バイアウト)の仕組みを徹底解説!「小が大を飲む」企業買収のスキームとは

LBO仕組みを図解

LBOとは、借入金を活用した企業買収のことで、少ない投資で大きなリターンを期待できることから、レバレッジド(テコ入れ)・バイアウトと呼ばれています。

日本では、ソフトバンクがボーダフォンを買収した際に利用されたことで有名です。この時、ソフトバンクは自己資本2000億円の出資で、1兆7500億円の買収に成功しました。

このように、少ない自己資本で大きなリターンを期待することができるLBOですが、その仕組みは複雑で理解するのは困難です。

そこで今回は、LBOについて基本的なことから解説しつつ、その仕組みについても具体例やイラストを交えてわかりやすく解説していきます。

LBOとは何か

LBOレバレッジド・バイアウト

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、買収した会社の資本やキャッシュフローを生み出す事業を担保に借り入れを行い、M&Aを実行する方法のことをいいます。少ない自己資本で大きなリターンを得ることが可能になり、買収した会社を担保に差し出すことで、買収する側の会社に借金の負担がかかりにくいのが特徴です。

そもそも、「レバレッジ」とは直訳で「てこ入れ」のことであり、経済的には他人資本を用いて自己資本に対する利益率を高めることを意味します。この手法は、外資系ファンドが日本企業を買収する際によく使われるため、日本でも少しづつ認知されるようになりました。

日本において、LBOの手法が使われた例として最も有名なのは、ソフトバンクによるボーダフォン買収。この時、ソフトバンクはわずか2000億円の出資で1兆7500億円の企業買収に成功しました。

このように、「小が大を飲む」ことを可能にするLBO(レバレッジド・バイアウト)。まずは、その仕組みからみていきましょう。

LBOの仕組み

LBO レバレッジド・バイアウト

ソフトバンクはどのようにして少ない資本であれだけ大きな企業の買収を可能にしたのでしょうか?

ここではLBOの仕組みについて解説してきます。

レバレッジド・バイアウト

正田圭著 ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさいより引用

以下、買収が行われるまでの流れです。

  1. 買収会社が100%出資して買収目的会社(SPC)を作る。
  2. 買収会社は被買収会社を担保にSPC名義で金融機関から融資を受ける。
  3. SPCは設立時の資金と融資された資金で被買収会社を買収する。
  4. SPCと被買収会社が合体(合併)して新たな子会社になる。

このスキームには2つの特徴があります。

1つ目は「まだ買ってもいない会社を担保に融資を受けている」という点。

2つ目は「SPC名義で融資を受けたため、債務はSPCが背負っている」という点です。

この2点があることで、多額の買収資金が調達でき、買収のリスクを大幅に抑え、自己資本に対する利益率を非常に高くすることが出来るのです。

ただし、実際に行うには、金融機関から融資を受けられるだけの信用が必要になります。さらに、上記のLBOスキームはノンリコースローン(非遡及融資)の手法を用いており、返済原資が新会社や新会社の収益に限定されます。なのでしばらくは新会社の利益を自由に使うことは出来ませんし、借り入れの利率が非常に高くなるのもデメリットです。

しかし、そうしたデメリットを考慮しても、LBOはメリットがかなり大きいスキームなのです。

ノンリコースローンについては「ノンリコースローンとは?スキームやメリットをわかりやすく解説」を参考にしてください。

LBOの具体例

今回は、自己資金40億円で、240億円の買収をおこなうケースについて見ていきましょう。架空の設定なので、実在したケースではありません。

2-1.買収会社が100%出資して買収目的会社(SPC)を作る。

レバレッジド・バイアウト レバレッジド・バイアウト

まずは、買い手が自己資金40億円を出資してSPC(買収目的会社)を設立します。

SPC(買収目的会社)とは、資金調達をするためだけに作られる会社のことで、この会社を受け皿にして複数の金融機関からお金を借ります。

そして、SPCが「対象会社の66.7%議決権取得完了」+「ローン実行後SPCと対象会社の速やかな合併」などを条件に、銀行から最大200億円のノンリコースローン(NRL)のコミットメントを取得します。

2-2.買収会社は対象会社を担保にSPC名義で金融機関から融資を受ける。

レバレッジド・バイアウト レバレッジド・バイアウト

次に、買収会社は対象会社を担保にSPC名義で金融機関から融資を受けます。

SPCは対象会社の議決権を獲得するために、240億円で対象会社の株式100%を買収(公開買付・相対取引等)します。

公開会社(定款に株式譲渡制限がない株式会社)の場合は、66.7%以上取得した後、株主総会特別決議で株式を買い取り、少数株主を強制排除して完全子会社化します。

66.7%以上の取得が確実になった時点(公開買付で応礼が66.7%を上回った場合、相対取引で66.7%以上の株主と取得合意が成立した場合等)で合併が確実になるので、銀行がSPCに買収決算資金(NRL)買付を実行します。

対象会社が閉鎖会社で大多数の株主の同意が得られれば、株式取得に先立って対象会社からその株主へ特別配当を支払い、
同額だけ買収金額を減額することで、法人株主が買収対価の利益部分を益金不算入にできる可能性があります。

2-3.SPCと対象会社が合体(合併)して新たな子会社になる

レバレッジド・バイアウト レバレッジド・バイアウト

SPCと対象会社が合併することにより、NRLの債務者はSPCから対象会社となります。

あるいは少数株主が全部排除されれば合併せず対象会社がSPCのローンに対して保証を出すだけでも可能です。(少数株主が残存する場合、特定大株主に巨額の借入保証を行うことは取締役の善管注意義務・忠実義務等に照らしてリスクが残る。)

LBOのメリット・デメリットまとめ

LBO レバレッジド・バイアウト

メリット:資本効率を高めることができる

自己資本の割合を減らし、借入額を増やすことで資本効率を高めることができます。

しかし、できるだけ自己資金で買収資金を賄った方がいいのではないか、と思う方もおられるかもしれません。

以下で、借入金を増やすメリットをご理解いただくために、簡単な例を紹介します。例の中で「デッド」や「エクイティ」といったファイナンスの用語が出てきますが、デッドは負債のこと、エクイティは出資金と考えてください。

例えば、10億円の企業買収をおこなう場合を考えてみましょう。

この際、自分の資本を100%投入しない方法を考えます。どうするかというと、例えば3億円を自己資本金とし、7億円をデットによってまかなうのです。

買収後、この企業の価値を大きくし、20億円で売却できたとすると、3億円の自己資本金で13億円手に入れた計算になります。

つまり、資金を4倍以上に増やすことができたわけです。

もちろん、借りてきたお金に対する利払いなどの経費は発生しますし、税効率などの問題も発生しますが、ここでは省きます。

一方、自己資金3億円出して、残りの7億円をエクイティで調達して10億円の買収を行なったとします。

この場合、20億円で売却したとしても、エクイティで調達して増えたお金はエクイティを提供してくれた人に帰属してしまうため、結局3億円の資金が6億円になり、資金は2倍になったにすぎません。

この2つのケースを比較した場合、3億円を4倍にした(デットで調達した)方が資金効率は良いのです。

正田圭 著 ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさいより引用

このように、借入を行い、できるだけ自己資本の比率を下げることで、資金効率をあげることが可能なのです。これがLBOの最大のメリットである「レバレッジ効果」と呼ばれるものです。また、借入金の利息は全て経費として計上できるため、節税の効果も期待できます。

メリット経営に失敗した時のリスクが少ない

LBOの仕組みを使って銀行からの融資を受ける場合、基本的にノンリコースローンが利用されます。ノンリコースローンは無責任ローンとも呼ばれ、一定条件を満たした場合、借金の返済責任が無くなります。

LBOは買収先の資産やキャッシュフローを生み出す事業を担保に借入を行います。仮に、経営に失敗したとしても、買収者は企業を買収するために設立したSPCの設立資金を超えて責任を問われることはありません。(ノンリコースローン)

デメリット:金利が高い

ノンリコースローンで借り入れができる反面、LBOのデメリットの1つとして、借入金の金利が通常に比べて高いことが挙げられます。金融機関もそれなりにリスクを背負うことになるため、通常の金利より高く設定されることになります。

デメリット:金融機関が設定する制約・条件をクリアしなければならない

金融機関は、借入契約の際にEBITDA目標値など設定することで、できるだけリスクを回避しようとします。

また、ソフトバンクのボーダフォン買収のように小が大を飲むようなM&Aの際には、よりハードルの高い条件が設定されます。

例えば「2期連続で赤字を出したら、貸していたお金の半分をすぐに返さなければならない」とか、「有利子負債と利益のバランスが崩れたら、その分お金をすぐに返す」といった条項をつけられてしまうのです。

このような条件を「財務コベナンツ」と呼び、これらは契約を交わす際に細かく設定される特約条項となります。

正田圭 著 ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさいより引用

このように、LBOは買収側にとってはメリットの多いM&Aの手法ですが、その分融資を受けるためには様々な条件が課せられます。

LBOによる融資を受けるためには、基礎体力のある企業で借入金を返せる見込みがあることを前提とし、さらに金融機関との交渉力も重要な要素になってきます。

最後にLBOとMBOの違いについて

LBO レバレッジド・バイアウト

LBOの話題を広げていくとMBOという言葉よく出てきます。しかしMBOとはそもそも何なのでしょうか。

MBOとは「マネジメント・バイアウト(Management Buyout)」の略であり、経営陣が自社を買収することです。

そして、なぜLBOとMBOが同時に語られることが多いかといえば、MBOを検討する経営陣の多くが自社を買収できるほどの自己資本をもたないからです。LBOスキームはそうしたMBOしたい経営陣のニーズと合致し使われてきたため、結果的にLBOとMBOが同時に語られることが多くなったのです。

つまりLBOとは「買収の手法・スキーム」を指す言葉であり、MBOとは「買収のシチュエーション」を指す言葉であるため、LBOとMBOは領域こそ近いものの異なる内容の言葉なのです。

MBOとLBOの違いについてより詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。

企業戦略としてのバイアウト!MBOやLBOを解説

まとめ

LBO レバレッジド・バイアウト

LBOについて解説してきました。

企業買収のすべてで上記のようなLBOスキームを利用できるわけではないでしょう。

しかし、LBOは非常にメリットの多い買収方法ですので、利用できる際には積極的に利用してみてください。