「族長」とのコネが、アフリカビジネス攻略のキーワード【一岡亮大×正田圭対談イベント】

一岡亮大

「アフリカで起業」といわれたとき、どのような想像が働くでしょうか。なかなかイメージがつかない場合もあれば、むしろ、想像がつかないからこそ興味が湧く場合もあるかもしれませんね。

日本とは金融事情も生活環境もまるで異なるのが、アフリカです。それでは今、アフリカではどのようなビジネスを行っているのでしょうか。

今回は、「pedia salon」の月に一度の勉強会内で、アフリカのビジネス事情について学びました。登壇者は「pedia salon」代表の正田と、アンドディー株式会社代表の一岡亮大さん。

普段はなかなか耳にすることのない意外なアフリカ事情に驚きの声が多数あがった本イベント。さっそく、イベントの様子をレポートと合わせて見ていきましょう。

「Wi-Fi」の概念がない。アフリカ到着前からギャップに驚いた

正田圭

正田圭(まさだ・けい)
15歳で起業。インターネット事業を売却後、M&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や企業価値評価業務に従事。2011年にTIGLA株式会社を設⽴し代表取締役に就任。2017年12月より、「pedia」を運営。著書に『サクッと起業してサクッと売却する』『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい』『15歳で起業したぼくが社⻑になって学んだこと』(いずれもCCCメディアハウス刊)がある。

正田:今日はよろしくお願いします。そもそも、一岡さんはどうしてアフリカに行ってきたんですか?

一岡亮大

一岡亮大(いちおか・りょうた)
2010年三井住友銀行入行。2011年株式会社MUGENUPを創業代表取締役社長に就任。ゲームアセット制作のクラウドソーシングサービスを中心に4年間で150名程の企業まで成長させる「Job Creation 2014」にて1位を獲得。2015年フォウンダーズ株式会社を設立代表取締役社長就任。医療法人北翔会理事就任。社会福祉法人翔陽会理事就任。早稲田大学理工学部にて起業家養成講座を行うなど、講師としても活躍中の注目のシリアルアントレプレナー。

一岡:僕が行ったのはガーナなのですが、知り合いが今ガーナで農業の会社を経営しているんです。そこで、一度来てほしいからと言われて。アフリカに対しての興味は正直なかったのですが、行ってみたらすごく刺激的でした。

日本や中国やアメリカとは、金融事情からなにからなにまで根本的に違うので(笑)結局、今回の滞在の間で、ガーナ人がシンガポールで運営している投資法人のパートナーになることが決まりました。

正田:(笑)。そもそも、ガーナって栄えているんですか?

一岡:えーっと、アフリカでいうと、3番目くらいに栄えている国ですね。一番が南アフリカ、ケニアが続いて、ガーナって感じです。

正田:位置関係がわからないから全然ピンとこない……(笑)

一岡:南アフリカが、アフリカの一番南にある国です。

一岡亮大

正田:あんまりピンとはこないけれど……。ガーナもやっぱり黒人が多いんですか?

一岡:めっちゃ黒人です。黒人が日本に来て疎外感を受けるって聞いたことがあるのですが、その気持ちがすごくすごくわかりました。というか、ガーナに到着するより前のドバイからすでに黒人しか周囲にはいなかったです。

正田:ガーナってトランジットを挟んで行くんですね。

一岡:そうなんです。一旦日本からドバイまで飛んで、18時間のトランジットを挟んでガーナに向かいました。ちなみに、ドバイからガーナに向かう飛行機のなかってWi-Fiが飛んでないんですよ。

正田:そうなんですか?

一岡:不便だなあって思って、空港のスタッフの方に聞いてみたら、そもそも電波を飛ばすための基地局がないらしんです。

正田:セッティングとか不便とか価格とか以前に、そもそもの概念がないんですね(笑)

一岡:そうなんですよね。だから、とりあえずアフリカのことを知るため『ブラックパンサー』を見て過ごしました。そんな風にはじまったアフリカへの渡航なのに、帰ってくる頃には、投資法人のパートナーになっているんですよ。ある意味、奇跡的ですよね。

人件費よりも高いのは、電気代

一岡亮大

一岡:こうして話すと、すごく日本とギャップがあるように感じますが、じつはガーナってGDP比率が世界で一番伸びている国なんですよね。年間で約10%上昇しているんです。これってすごくないですか?

正田:それは本当にすごいですよね。どうしてなんでしょう?

一岡:なにもないからですね。投資をすればするだけ伸びるってイメージです。ガーナの主要産業は農業なんですが、ほとんどがヨーロッパへの輸出なんです。マンゴーやパイナップルがよく採れるので、ヨーロッパに輸出して市場やカフェに並べています。

正田:南アメリカとは、産業も異なるんですか?

一岡:まったく異なりますね。南アフリカは金融の国ですから。中国で伸びているテンセントに投資しているのも南アフリカのファンドだったりします。

正田:根本的な立ち位置が違うんですね。

一岡:そうですね。とくに驚くのは、ガーナって10年間で年商300億円の企業ができるほど恵まれた環境なんですよ。アフリカだからと、ついつい甘く考えてしまいますが、日本に10年間で年商300億円にまで成長した企業ってないですからね。

正田:時価総額とかじゃなく年商なのがすごいですよね。

一岡:それも、最終利益は50%。30円でつくったマンゴーがヨーロッパでは1,200円で売れるんです。

正田:原価率が2.5%。すごいですね……。

一岡:社員は4,000人いるのに、人件費よりも電気代が高くつくらしいです。

正田:人件費よりも高い電気代ってどういうことなんですか(笑)

一岡:人件費は、だいたい月に4万円くらいなんです。それに対して、電気代は日本と同じくらいの価格。だからか、みんな節電のために夜は電気を消していて。びっくりするくらい、町中が真っ暗です。

正田:すごいですね。それだけの給与水準で、電気代が日本と同じってどういうことなんでしょう?

一岡:発電技術がないので、電気をつくっているのは国営企業の一社だけなんです。だから価格が高くて。今後、電力自由化が起きれば価格も変動していくと思います。

今はスタートアップというと、インドや東南アジアが人気じゃないですか。それと同じように、20年くらい経てばアフリカにも同じような時代がやってくると思うんですよね。だから、それまでは投資する期間だと考えています。

土地の権利は「族長」が持つ

一岡亮大 正田圭

一岡:アフリカでは、農業が主産業でAmazonやウォルマートがメインのお客さんだそうです。反対に、商売的な観点だと、伸びているのは農業や電力くらい。インフラ整備がまだまだ整っていない国なので、基本的な一次産業が栄えているんです。

正田:現地の起業家とかもいるんですか?

一岡:いますよ。ただ、だいたいの人がアメリカの大学を卒業していますね。向こうでMBAを取得して、こっちに戻ってビジネスを興すみたいな。MBAで学んだことをそのまま実践すれば成功できるのがガーナの市場なので、向こうでは「MBAってすごいらしい」と噂がたちます。

正田:ガーナでビジネスをはじめようとなると、どんなことが必要なんですか?

一岡:シンプルですよ。トラクターを買うだけ。隣の畑では、手を使って田植えをしているから、自分たちはトラクターで畑を耕してしまえば効率的で省力化できるよねって話です。

正田:それだけですか?

一岡:それだけです。どちらかというと、畑に必要な土地を手に入れるほうが大変かもしれないです。「族長」が、土地を売ってくれるかどうか。

正田:そもそもなんですが、「族」なんですね……。村とかじゃないんですか。

一岡:族、です(笑)「あそこの木からあそこの木までは〇〇族の領土だから」って決まっています。日本でスタートアップを起業すると大変だし、成長させるのも大変ですよね。

それに比べたら、ガーナでのビジネスはすごく簡単だと思います。そのかわり、土地を売ってくれる族長とのコネがなければはじまりません。

自由経済では回らない

正田:少し話題は変わりますが、アフリカの投資法人の主な投資先はどのような企業なんですか?

一岡:アグリカルチャー、いわゆる農業ですね。あとは、ファイナンスシステムもあります。日本でいうところの、決済システムがイメージとしては近いです。アフリカでは、銀行や自国の通貨を信じていない人が多いんです。

正田:ボラティリティが高いんですか?

一岡:そうです。ガーナはそこまでひどくないほうだといわれていますが、アフリカの名前を知られていないような小さな国ではビットコインが安定通貨だといわれるくらいの変動率です。

正田:そうなんですね。

一岡:ガーナも含めて、アフリカの国の多くは自由経済じゃないので難しい側面が多いんです。国王や大統領などの地位を持つ人がお金をコントロールできてしまうので。地位を奪われそうになってしまうと突然経済活動がパタリと止まったり。

正田:日本のパチンコ業界なんかと似てますね。法律はあるけれど、基本的に組合のなかでいろいろなことが決まるから、口利きの人がイエスと言えばそれが正しい、みたいな。

一岡:似ている側面もあるかもしれません。少し前のシンガポールはまさにそんな状況でしたよね。基本は国王が決めていて王子がその後を継ぐけどだんだん仕組み的にも厳しくなって自由経済に発展していく。一定の経済成長を遂げると、今のままではいられなくなるってことなのかもしれないですね。

「負けてたまるか」と強気な姿勢を持つ国民性

一岡亮大

一岡:起業するって観点でいうと、ガーナの環境のなかで10年間20年間暮らしたいかどうかが大切になってくるような気がしています。

正田:生活しにくいんですか?

一岡:僕は生活しづらかったですね。だって、屋根の上に野ヤギとかいるですもん(笑)それにエンターテインメントもないですし。

正田:何日間滞在していたんですか?

一岡:4日間です。

正田:建物やホテルなどの観光的な目線でいうと、栄えてきているんですか?

一岡:ホテルは普通に綺麗ですよ。僕が行ったタイミングで、リッツカールトンが建設中でした。ただ、サービスの質はそこまでよくないですね。

正田:ホスピタリティないんだ(笑)野蛮ってほどではないですよね?

一岡:もともと、舐められないようにって考えが根付いている国民性なのだと思います。だから、できる限り舐められないような態度や口調でいる人が多いのかなと。

丁寧なスタンスで接するよりは、こちらも少し強気でいるとちょうどいいと思いますね。あとは、体格がいいとアフリカ人とは打ち解けやすいかもしれません。

正田:見た目からして強そうだからってことですね。

アフリカでの起業には、生活への慣れとコネが必要

一岡亮大

一岡:ここまでの話をまとめると、アフリカで起業する場合は、生活そのものとアフリカ人の国民性に違和感を覚えない場合はアリだと思います。

そして、基本的にはコネが必要。アフリカの環境に詳しかったり、パイプ役を担ってくれる人がいないと、ビジネスを行うのは難しいと感じます。

正田:パートナーになった投資法人では、どのようなことを行なっているんですか?

一岡:族長とのコミュニケーションから資産運用までがメインの業務ですね。ガーナにも会社がありますが、基本はシンガポールに拠点を置いています。

正田:それはなんですか?

一岡:いや、そうではなくて。お金を引き出すのがものすごく大変なんですよね。出金に、平気で2ヶ月くらいかかるんです。そういったリスクの面が大きいです。

正田:入金は早いんですよね?

一岡:入金はすごく早いです。なのに、出金は渋るんです。

正田:なるほど。そういったリーガルリスクをコントロールするためのシンガポール、なんですね。

一岡:そうですね。

正田:農作物の生産のメインは、果物なんですか?

一岡:マンゴーとバナナがとくに高く売れるので人気です。そのほかにもオレンジとパイナップルはよく生産されてますね。

一岡亮大

正田:ちなみに、ガーナっていうとカカオのイメージがありますよね。チョコレートは生産してないんですか?

一岡:カカオもありますよ。ただ、ガーナにはチョコレートを生産する技術がないので、チョコレートは流通していないんです。カカオを輸出して、ヨーロッパで販売する流れです。今回ガーナに行くって言ったらお土産にチョコレートを頼まれたんですが、どこにも売っていなかったです(笑)

正田:技術的に難しいのかもしれないですね。日本にはロッテの「ガーナチョコレート」が売っているのに。

一岡:一部のガーナ人は知っているかもしれないですが、ほとんど知られていないと思いますよ。少し地方にいくと、びっくりするくらいにサバンナですから。

正田:そうなんですか?

一岡:しかもすごい渋滞するんです。サバンナなのに渋滞するんだ……と思ったら、サバンナで生産した農作物を乗せたトラックが空港までの道を延々と往復していて。

正田:土地が広そうだから、道路も広いのかと思ってました。

一岡:道路って概念はないですからね。整備されているわけではなく「家が建っているから通れないところがある」くらいにしか思ってないです。

正田:道路があるのではなくて、家のあるところ以外を走っていると。

一岡:あとは、ものすごく事故が多いですね。アフリカ人はとにかく動体視力がいいので、ギリギリまでブレーキを踏まないんですよ。なかなか怖かったです。

「マンゴーの会社」だって、圧倒的に成長する

一岡亮大 正田圭

一岡:「Forbes 30 Under 30」に登場しているアフリカ人の会社もあるんです。仮想通貨の会社もあれば、パイナップルのパッケージをアウトソーシングで受けている会社とか。

正田:ローカルな事業もあるんですね。

一岡:ローカルだけど、4年間で年商50億に成長しています。そういった意味では、アフリカ全体としてみると、さまざまなビジネスがあるから経済成長を遂げている。

ただ、日本人が安易に飛び込むにはリスクがまだまだ大きいと感じますね。国王や大統領の権限も大きいので、うまくいっているとお金を取られてしまうこともありますから。だから、どちらかというと、ビジネスを興すよりは投資するほうがいいと思っています。

正田:それに、上場って選択肢はないですもんね。

一岡:そうなんですよね。ただ、ひとつ知っておきたいことは、日本で成長しているキッコーマンは醤油の会社だし、雪印は乳製品の会社、カルビーはじゃがいもの会社です。「マンゴーの会社を経営しています」って言われたら僕らはきっと戸惑いますが、決して珍しいビジネスではありませんよね。

正田:SWOT分析って概念はないけど、きちんと伸びるんですね。

一岡:10年で年商300億円の会社なんて、日本で興そうと思ってもなかなか難しいじゃないですか。それを、利益率50%で実現している企業がアフリカにあるって、すごいことだと思うんです。それに、すごくベンチャーマインドを持っているアフリカ人もいましたよ。

正田:どういうことですか?

一岡:政府の方なのですが、夜11時頃に突然「会いましょう」って連絡をくれた補佐官がいて。これから金融関係の法律をつくるために頑張りたいんだと、すごく熱く語ってくれたんですよね。普通、どこの人かも知らない日本人にそんなことって語らないじゃないですか。彼の姿勢を見て、ガッツのある人もいるのだと知りました。

正田:なるほど。アフリカ人特有の気の強さは、ビジネスを行うときにも滲み出るものなのかもしれないですね。ありがとうございました!

一岡:ありがとうございました!

おわりに

一岡亮大 正田圭

月に一度のサロン内勉強会。今回は「アフリカ勉強会」と称して、アフリカのビジネス状況を見ていきました。私たちが暮らす日本とは、まったく違った環境ばかり。世界の裏側では、私たちの想像にも及ばない環境があることを知り、参加メンバーからも驚きの声や笑い声などの反応が得られました。

アフリカだけでなく、日本から世界へと飛び立つスタートアップはどんどんと増えています。これからスタートアップを起業する・投資を考えているなどの場合は、日本以外の市場にも目を向けて、日々情報収拾を行うことが大切ですね。

今回のように、「pedia salon」では定期的に、ゲストを招いた勉強会を開催しています。今だからこそ知れるリアルな話も飛び交うので、興味のある方はぜひサロンへの参加をご検討ください。

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!

取材・文:鈴木しの
撮影:安東佳介