事業承継で親族内承継を阻む壁って?相続税・贈与税や個人保証という障壁と平成30年改正の事業承継税制

事業承継 親族内承継

事業承継において、親族内承継の割合は、全体の2/3程度にとどまります。

残りの1/3程度は、親族以外の役員や従業員、社外の人材による承継が行われています。

親族内承継による事業承継の割合の2/3程度が多いか少ないかは議論があところではありますが、それでも親族内承継を阻む壁が制度的に存在していることも事実です。

今回は、事業承継で親族内承継を阻む壁について、解説していきたいと思います。

後継者選定状況の現状は?

事業承継 後継者不足

2017年版の中小企業白書によると、後継者の選定状況は、

  • 後継者が決まっている:41.6%
  • 後継者候補あり:27.5%
  • 後継者候補なし、未定:30.9%

となっています。

つまり、全体の3割の会社が後継者の候補すら決まっておらず、約半数以上の会社が候補者がまだ決まっていないのです。

また、後継者が決まっている、もしくは後継候補者ありの方のうち、

  • 親族外承継:33.4%
  • 親族内承継:66.6%

と、約3割以上が、親族外に会社を承継すると答えています。

親族外というのは、親族以外の役員や従業員、もしくは全然関係ない外部の人材をいいます。

約3割が親族外に承継するというのが多いか少ないかは、評価が分かれるところかと思いますが、創業者が築いてきた事業で後継者が決まっていたり、後継者候補がいる会社の約3割は、親族以外に受け継がれていくのです。

親族内承継による事業承継を阻む壁って?

特に親族内承継による事業承継には、

  • 相続税・贈与税
  • 個人保証

というような障壁があります。

多くの中小起業が、創業者や創業家が株式の大半を持つオーナー企業です。

その株式は、利益が出ている会社の場合、かなりの価値が付いてしまい、相続税や贈与税などがその譲渡にかかってしまいます。

そうすると、相続や贈与された株式にかかる税金分を、別途現金で用意しなくてはなりません。

上場企業とかですと一部の株式を市場で売ることが簡単にできますが、中小企業の場合、そうはいきません。

創業家がそもそもの富裕層で、多額の現金を持っていればいいですが、大抵の場合は多額の現金を用意することは非常に困難です。

ちなみに、上場企業のオーナー企業ですら相続税が払えず、相続税の代わりに株式を物納することで、筆頭株主に財務大臣になることが多々あります。

それくらい、創業者から親族内の次の後継者に、会社の所有権たる株式を移転することに、税金というハードルが高くのしかかるというわけです。

また、日本の融資制度の悪しき伝統として、個人保証というのがあります。

なかには無限責任を取る形態の業種もありますが、通常は、会社と経営者は法的には別人格なので有限責任であり、会社が倒産しても経営者に借金は残りません。

ところが、日本では多くの金融機関が、有限責任で貸し倒れることを回避するため、金融機関から融資を受ける際に代表者に連帯保証を付けてきました。

つまり、たとえば、会社が1億円の設備投資をするのに銀行から融資を受けた際、通常は1億円分の連帯保証や担保を個人保証として社長が負っているのです。

これが、親族内の事業承継が進まないひとつの障壁になっています。

自分の息子に、1億円の借金の連帯保証まで負わせてまで、自分の事業を息子に継がせたいと思うか、ないしは息子が継ぎたいと思ってくれるかというと、なかなか心理的にも経済的にも厳しいものがありますよね。

さらに、個人保証を負ってでも継ぎたいと思う後継者がいたとしても、銀行の与信で認められるかどうかは不透明です。

会社の負債の連帯保証なので、銀行としてもだれでもいいというわけにもいかないですよね。

たとえば、それまでニートをしていて、こいつにまかせても絶対会社を潰すという後継者に会社を任せようとして、連帯保証をその後継者にしたところで、銀行としては貸し倒れる可能性がみすみす見えているのにOKを出すとは思えません。

平成30年改正の事業承継税制とは?

事業承継税制

親族内での事業承継が進まない上記の2つの大きな原因のうち、相続税や贈与税に関しては、平成30年改正の事業承継税制で、かなり大きく政策的な対応が取られることになりました。

一定の条件を満たす必要がありますが、事業承継税制が適用されると、最終的に生前贈与の相続税や贈与税が100%免除になります。

もともとは、事業承継税制は平成21年の税制改正で導入されました。

しかし、当時は、適用条件がかなり厳しく、ほとんど使えない制度でした。

そのことをうけ、平成27年の税制改正で大幅に要件を緩和し、利用者は少しずつ増えてきたところで、今回平成30年改正でさらに大幅な条件緩和となりました。

経営者や会社の資本金、従業員などに細かい要件はあるものの、事業承継がより進むことが期待されます。

→平成30年改正の事業承継税制の詳細はこちら

まとめ

今回は、事業承継で親族内承継を阻む壁について、解説してきました。

結論として、大きな相続税・贈与税や個人保証という障壁があります。

オーナー社長は、その株を後継者に渡すことにすら税金がかかります。

また、オーナー社長には、銀行融資に多額の連帯保証が付いていることが多々あります。

そうなると、なかなか事業承継が進まないというわけです。

前者については、平成30年で事業承継税制が改正され、大きく政策的な対応が取られています。