株式投資型クラウドファンディング(ECF)がこれまでの資金調達に風穴を開ける存在になるかもしれない

鳥居佑輝

スタートアップの資金調達方法には、さまざまあります。今までの日本と比較すると、経済産業省が打ち出した「J-Startup」などからもわかるように、スタートアップが生き延びるための地盤は、少しずつ築かれはじめているとも考えられるでしょう。

とくにスタートアップの資金調達方法としてスタンダードなのは、VC(ベンチャーキャピタル)からの出資です。大きな金額の出資を受けられるほか、事業を推進するうえでのアドバイザーとしての役割を担ったり、場合によっては出資しているVCの名前そのものが信用につながることも。起業後間もないスタートアップにとっては、心強い存在です。

ところが、いっぽうでVCからの出資は、起業家にとっては難しい選択でもあるかもしれません。それは、VC自体が利益を求めて出資を行なっているため。投資を行ううえでの条件面において、スタートアップ側が厳しい条件を飲まなければいけない現実もあるのです。

そんな資金調達の現状に風穴を開ける存在として近年注目されているのが、株式投資型クラウドファンディング(ECF)と呼ばれる資金調達方法です。VCと、クラウドファンディングによる資金調達の良いところ取りを行なっているため、スタートアップ界隈でも注目を集めつつあります。

そこで今回は、株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「Angelbank」のリリースを発表したばかりのユニバーサルバンク株式会社代表・鳥居佑輝さんを迎えて、「pedia salon」メンバーの定例勉強会を開催しました。

資金調達を考える未来の起業家を前に資金調達のリアルな話が飛び交った本イベント。さっそく、イベントの様子をレポートを通して見ていきましょう。

株式投資型クラウドファンディング(ECF)とは、起業家に与えた新たな資金調達の選択肢

鳥居佑輝

鳥居佑輝(とりい・ゆうき)
1988年生まれ。立命館アジア太平洋大学卒業後、イーストベンチャーズ株式会社に1号社員として新卒入社。アジア・日本国内の未上場ベンチャー企業への投資活動及びファンドレイズ業務にDirectorとして従事。BASE株式会社の創業参画及び投資実行、六本木・渋谷・本郷の拠点/シェアオフィス立ち上げ及び運営管理等を行う。
3年勤務後、2015年5月より、株式投資型クラウドファンディング等を行うユニバーサルバンク株式会社を創業。アカデミスト社やワンファイナンシャル社への創業支援や「pedia」を1年間運営後TIGALA社へ事業譲渡等を行う。

はじめに、株式投資型クラウドファンディングの概要について鳥居さんから概要の説明があります。VCとクラウドファンディングの良いところ取りを目指したシステムとのことですが、いったいどのような仕組みなのでしょうか。

鳥居:株式投資型クラウドファンディング(ECF)とは、非上場株式を発行して多くの個人投資家から少額の資金を集める方法です。購入(非投資)型クラウドファンディングとは異なって、モノやサービスではなく発行される株に対して、投資家からお金を集めています。

エクイティクラウドファンディング

鳥居さん率いるユニバーサルバンクが現在リリース準備を行なっている株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームが「Angelbank」です。2018年9月25日にリリースを発表し、イベントの開催された10月15日には日本証券業協会への加入が決定しました。

鳥居:クラウドファンディングのなかでも、投資型は日本証券業協会に登録されている企業でないとできない形態なんです。現在日本では、280社弱の企業が登録を完了していますが、当社調べでは僕が現在最年少社長として加入させていただきました。

株式投資型クラウドファンディングでは、ひとりの投資家につき50万円を上限として、1億円未満の資金調達ができます。スピード感のあるクラウドファンディングのメリットと、大きな金額の調達が難しいデメリットとを解消した仕組みです。

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株式投資型クラウドファンディング(ECF)が解決した資金調達の課題と新たに抱える問題点

鳥居佑輝

クラウドファンディングとVCとでは、それぞれにメリットやデメリットがあります。株式投資型クラウドファンディングでは、購入型がスタンダードだったクラウドファンディングに投資型の仕組みを取り入れることで、スタートアップ支援に対応できるようになりました。

鳥居:設立間もないスタートアップでは、シードでの調達の次、数千万円規模のラウンドで調達に苦労する傾向があるんです。僕自身、多くの起業家を見てきていますが、シード後に苦労する人たちが多かった印象でした。あと少しの金額を投資できれば事業が伸びるはずなのに、投資できるお金が手元にないから絶妙にできていない。すごく課題でした。

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国内でも、株式投資型クラウドファンディングは少しずつ活用の幅を広げています。現在、国内で「Angelbank」の競合に当たるサービスは「ファンディーノ」「エメラダ・エクイティ」「GoAngel」の3つが挙げられますが、そのうち一社は案件ごとに平均して3,500万円もの金額が出資金として日々取引されているのだそうです。しかも、これらの案件のほとんどが1日で目標の出資金額を達成してしまうのだそう。お金の流れからも、株式投資型クラウドファンディングの注目度合いが感じ取れます。

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鳥居:株式投資型クラウドファンディングを上手に取り入れた事例としては、日本初の無料配車&運行サービスを提供する「nommoc(ノモック)」があります。募集のスタートから、なんと4分30秒で目標金額の5,000万円の調達に成功しました。すごい世界観ですよね。

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ただし、良いところ取りをした仕組みといっても、すべてが解決したわけではありません。株式投資型クラウドファンディングの仕組みに伴う課題として、数百に上る株主が新たに生まれてしまうことが挙げられます。

鳥居:VCだと、起業家に対して出資する企業は一社ですよね。僕らのように株式投資型クラウドファンディングを行う場合は、出資する投資家が多数存在します。そこから次の資金調達時や上場審査時の問題などが生じるんです。

鳥居佑輝

鳥居:また、ネクストファイナンスに関する問題は大きいですね。もしも株主が200人ほどいたとして、風評被害のある投資家がひとりでも紛れ込んでいたとしたら……とリスクを懸念して、VCは出資を見送ることがあるかもしれません。株主が少数のスタートアップと、株主が200人のスタートアップ、VCの立場として迷ってしまう気持ちもわからなくはないです。

上場を目指す場合に関しても、株主が多いことで引き起こされるデメリットは生じます。代表的なのは、反社会的勢力の混入防止に常に留意しなければならないこと。キックアウトをできるような仕組みづくりを行なってはいるものの、制度としての確立にはまだ時間がかかりそうです。

鳥居:ただ、出資先が一社の場合は、条件面で強気に出てくる可能性が高く、起業家が損をしてしまう可能性だってあります。バリュエーションを低くしてほしいとか、VCはいろいろと希望を言いますからね。その点、株式投資型クラウドファンディングであれば、起業家の条件をもとにプロジェクトを打ち出すわけですから、条件に同意したうえで出資することになります。投資家との条件の擦り合わせで悩む問題点は解消できています。

VCはこれからどうなっていけばいいのか? 起業家が、資金調達方法を選べる時代を作りたい

スタートアップの資金調達市場は、だんだんと快適性が高まり、資金調達そのものも容易になってきました。ただ、そうはいっても、スタートアップの躍進が続くアメリカ、急激な成長を見せる中国のリスクマネーの5兆円と比較すると、日本のリスクマネーは2,000億円。まだまだ、なのです。スタートアップが数多くの挑戦をできるよう、資金調達の環境はさらなる進化を遂げる必要があるでしょう。

鳥居:僕は、世の中に「VCって役に立っていますか?」と問いたいんです。VCは、たしかにお金を出してくれる。次のラウンドに進むためのお墨付きもあるし、コンサルタント機能もあるし、人と人をつなげる人脈機能もあるところもあります。しかし、VCによってスキルセットはバラバラで、これらが整っていないVCも少なくありません。それならば、いっそ株式投資型クラウドファンディングでお金を出資してもらい、お墨付きを得るための顧問も、コンサルタントも人材紹介も、お金で雇えばいいのではないかと、僕は世に問いたいんです。

鳥居さんは、決して「VCは必要ない」と考えているのではありません。ただ、選択肢のひとつとして、VC以外の資金調達の選択肢のある世の中が作れないのか、ということ。

鳥居:もちろん、VCとの出会いによって生まれた縁がつながって出資につながるなど、さまざまなケースがあるのでVCそのものはリスペクトしているんです。ただし、もしもVC機能を必要としない起業家がいるとしたら、その選択肢を取れる世の中を作りたい。だから僕は「Andelbank」をリリースします。数千億円の単位のお金が流れるプラットフォームを作ることで、リスクマネーが今よりも流れる社会を作りたいです。

おわりに

鳥居佑輝

月に一度開催している「pedia salon」の勉強会、今回は鳥居さんをお招きして株式投資型クラウドファンディングについて学んでいきました。じつは、今回は株式投資型クラウドファンディングの内容以外にも、イベント前半ではサロンメンバーひとりひとりの質問や悩みに答えてくれていた鳥居さん。

「投資してくれる投資家との相性は本当に大切だから、たくさんの投資家と会ってほしいです」と繰り返し語る鳥居さんの姿がとくに印象的でした。株式投資型クラウドファンディングは、資金調達方法のあくまでひとつの方法です。これから起業し、資金調達を考える際には、自分に合った方法を考えて取捨選択することが必要ですね。

イベントの最後には、鳥居さんが率いるユニバーサルバンク株式会社の金融商品取引業者登録完了および日本証券業協会加入を祝って「pedia salon」メンバーからケーキのプレゼントが。イベントは終始和やかな雰囲気で行われ、その後は二次会まで行うほどの盛況ぶりでした。

今回のように「pedia salon」では、月に一度ゲストを招いて勉強会を開催しています。これから起業したいと考えている方、起業後さらに情報が欲しい・学びが得たいと考えている方は、ぜひサロンに参加してイベントに遊びに来てくださいね。

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!

取材・文:鈴木しの
撮影:神颯斗