遺言書にはこんな効力がある!名前は知ってるけど詳しく知らなかった遺言書の基礎知識!

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遺言書は遺産相続に関して非常に重要なものです。
単純に言えば財産を遺す方が、亡くなった後の財産の分割を指定できるという便利なものです。

財産を多く持っている方などは、亡くなった後に家族間での無用なトラブルを避けるため遺言書の作成を検討している方も多いでしょう。
遺言書にはできることとできないことがあり、また書き方を誤ってしまうと無効になることもあります。

民法第960条
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

さらに、遺言では自由に遺産相続内容の指定ができますが、必ずしもそのとおり執行されるとは限りません。
しっかりと指定した内容と効力が執行されるために、遺言書に関しての注意点や効力の及ぶ範囲などを解説します。

3つの遺言書の種類と方式の違い

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一般的には遺言書といえば普通方式の遺言書のことがほとんどです。
普通遺言書には以下の3つがあります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

自筆証書遺言

遺言を書く人:本人
証人または立会人:必要なし
署名捺印:必要
日付:年月日を記載する

遺言者自身が自筆で書くのが自筆証書遺言です。
一般的には遺言は自分で書いて保管しているというイメージがあるかもしれませんが、自筆証書遺言がそれにあたります。

遺言書については民法に詳しく書き方が記載されていますので、民法第968条を引用します。

民法第968条

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

つまり、以下の条件が必要となります。

  • 全文、日付、氏名を自書で記入する
  • パソコン、代筆などは不可
  • 書面に記載する
  • 印鑑を押す

遺言を遺す方が自分自身で書くことができ、自身で書き換えなどの変更ができる手軽さの反面、間違いがあると無効になりかねません。
また、遺言書の中身についても無理な内容になっていると後に相続人同士でのトラブルの種になりかねませんので、それなりにリスクがあると言えるでしょう。

 

遺言書のより詳しい内容や、遺言書のテンプレートになる参考例は「【遺言書の書き方マニュアル】確実に相続人に遺書を残す方法を解説」のページをご参照ください。

 

公正証書遺言

遺言を書く人:公証人(口述筆記)
証人または立会人:公証人、証人2名
署名捺印:本人、証人、公証人
日付:年月日を記載する

確実性が高い方法として用いられるのが公正証書遺言です。
公権力を根拠に客観的証明を行ってくれる公証人のもとで遺言を作成します。
作成された遺言は公証人が保管し、遺言者が亡くなった後に記載通りの手続きが執行されることになります。

相続人や受遺者ではない(利害関係者でない)証人が2人必要であったり、公証人に口述で遺産相続の指定内容を伝えるなど手続きが面倒な面もありますが、遺言が無効になることはほぼありません。
公証人が真正性を証明してくれる上、作成するのは公証人ですので書式の問題で無効になることもないでしょう。

信託銀行などに依頼して遺言信託をする場合なども公正証書遺言を使うことになります。

内容の妥当性については公証人がアドバイスしてくれる可能性もありますが、詳細の聞き取りなどをしてくれるわけではないと思われますので、確実性を増すためには弁護士などの専門家に相談して作成する方が良いかもしれません。

公証役場へ支払う手数料は財産の金額によりますが、数千円~数万円程度となります。

より詳しい内容は「公正証書遺言のメリットとは?作成方法や費用・必要書類も要チェック!」をご参照ください。

秘密証書遺言

遺言を書く人:誰でも良い(本人が書く方が確実)
証人または立会人:公証人、証人2名
署名捺印:本人 封書には証人と公証人
日付:年月日を記載する

遺言を遺す方が自ら遺言書を作成をしますが、公証人に遺言書を託し、保管してもらうという部分は公正証書遺言と同じです。
ただし、遺言書の中身に関しては公証人、証人ともにチェックをするわけではありません。
内容については文字通り秘密ということになります。
そのため、書き損じなどがある可能性もありえるでしょう。

特別中身を公証人に見られたくないなどの事情がない限りは公正証書遺言で事足りるでしょう。

秘密証書遺言の手数料は財産の金額などを確認しませんので一律で5,000円となります。

民法第970条 第一項

1. 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一  遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二  遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三  遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四  公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

特別方式の遺言書とは

遺言書 効力

先に挙げた3つの遺言書の他に、特別方式の遺言書というものがあります。
これらは船の事故、伝染病での隔絶、死期が近いなど非常に限定されたケースに用いられる遺言書です。

また、民法第983条において、特別方式の遺言は「遺言者が普通方式で遺言を作成することができるようになってから六ヶ月生存すると効力がなくなる」という旨が記載されています。
つまり、緊急的な意味合いが強いものであるということですね。

以下の四種類がありますので、違いと状況について解説しておきます。

一般危急時遺言

遺言を書く人:証人(口述筆記)
証人または立会人:証人3名以上
署名捺印:証人3名
日付:年月日を記載する
状況:病気などで死亡の危機が迫っている場合
備考:遺言の日から20日以内に家庭裁判所で確認をする

難船危急時遺言

遺言を書く人:証人(口述筆記)
証人または立会人:証人2名
署名捺印:証人2名
日付:年月日を記載する
状況:遭難中の船舶の中で死亡の危機が迫っている場合
備考:家庭裁判所での確認が必要

一般隔絶地遺言

遺言を書く人:誰でも良い
証人または立会人:警官1名、証人1名
署名捺印:本人、筆記者、証人
日付:年月日を記載する
状況:伝染病、懲役刑などのため外界と隔絶されている場合

船舶隔絶地遺言

遺言を書く人:誰でも良い
証人または立会人:船長または事務員1名、証人2名以上
署名捺印:本人、筆記者、証人
日付:年月日を記載する
状況:船舶にいて外界と隔絶されている場合

緊急の意味合いの強いのが特別方式の遺言と考えた場合、病気でも死期が近いわけでもなければ一般的には普通方式の遺言書を作成するのが普通です。

遺言書の効力を解説

遺言書 公正証書 公正証書遺言

遺言書の効力を使ってできることは以下の8つになります。
以下で一つずつ詳しく説明をします。

  • 相続分や内容の指定
  • 遺言執行者の指定または指定の委託
  • 遺産分割方法の指定、分割の禁止
  • 相続財産の遺贈
  • 相続人となる子の認知
  • 後見人の指定
  • 相続人相互の担保責任の指定
  • 相続人の廃除

相続分や内容の指定

民法には以下のように記載があります。
遺言書では自由に相続人の相続分を定めることができるとあります。

民法第902条(遺言による相続分の指定)

1 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

法定相続分という法律で決められた取り分が民法第900条に定められていますが、これに関わらず決められるということになります。
ただし、上記1項で記載がある通り「遺留分」と言われる割合を超えて指定することはできません。

もし指定したとしても遺留分減殺請求という手続きを起こされる可能性もあり、トラブルを招く原因ともなりかねません。

遺留分については「遺留分とは?相続人の遺留分の計算と請求方法を分かりやすく解説」でより詳しく解説しています。

また、生前に贈与を多くしているなどの場合は特別受益として遺産相続分の割合が変わる場合もあります。

配偶者と子供の遺留分:法定相続分の1/2
直系尊属の遺留分:法定相続分の1/3
兄弟姉妹の遺留分:なし
直系尊属などの用語がわからない方は「相続用語|直系卑属(ひぞく)、直系尊属(そんぞく)とは?」をご参照ください。

遺言執行者の指定または指定の委託

相続財産の分割、不動産や有価証券などの名義変更などが必要になる場合の手続きを進める人を遺言執行者と言います。
この遺言執行者を指定する、または遺言執行者の指定を第三者に委任することができます。

遺言執行者は辞退することも可能です。

遺産分割方法の指定、分割の禁止

遺産の分割方法を指定することができます。
また、分割方法を決めることを第三者に委託することもできます。
さらに、遺産の分割をさせたくない場合は5年間以内で期間を定めて分割させないということも可能です。

相続財産の遺贈

亡くなった際には、法定相続人以外に贈与することも可能です。
慈善団体に寄付をしたり、世話になった人に財産を遺贈する事が可能です。
遺産の額や内容が多く相続税などが心配で相続させたくない場合はこのように処理することもできます。

相続人となる子の認知

認知をしていない非嫡出子がいる場合、遺言者は遺言をもって認知することが可能です。
その場合、非嫡出子は子供ということになりますので法定相続人として加えることが可能です。

後見人の指定

法定相続人となる子供が未成年であって親権者が不在となってしまうようなケースでは、後見人が必要になることがあります。
遺言者は法定相続人の後見人を指定して財産の管理などを委託することができます。

相続人相互の担保責任の指定

相続財産に欠陥がある場合、法律上相続人は担保責任を負うことになります。
遺言者は担保責任の負担者、負担割合などを遺言で指定することが可能です。

相続人の廃除

法定相続人となる予定の人を相続廃除(排除)と言って相続できなくさせることができます。
ただし、相続廃除となるには明確に条件があり、被相続人に対しての虐待・重大な侮辱、著しい非行など特別な事情がある場合に限ります。

また、遺言で相続廃除とする場合には被相続人が亡くなってから家庭裁判所に請求をし、認められた場合に限りますので確実な方法とは言えないかもしれません。

より詳しいことは「知ってると便利!相続人に相続させたくない人がいるときの廃除制度とその手続」をご参照ください。

遺言書が絶対的な効力を発揮しない場合

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遺言を作成する上では、相続財産の金額などを決めることができます。
しかし、法定相続人には一定の法定相続分に応じて遺留分が生じます。

この遺留分というのは「最低限保証された相続できる割合」のことです。

遺留分よりも少ない相続財産の割合であったとすると、相続人は遺留分減殺請求などの手続きを行い、最低限の遺産相続をすることができます。

そのため遺言者は法定相続分に応じた遺留分を確認し、この遺留分以下にならないよう配慮する必要があります。

遺留分の割合

配偶者と子供の遺留分:法定相続分の1/2
直系尊属の遺留分:法定相続分の1/3
兄弟姉妹の遺留分:なし

遺留分の例

相続財産総額:5,000万円
法定相続人:妻1人、子供1人
法定相続分:それぞれ2,500万円ずつ
遺留分:それぞれ1,250万円ずつ遺贈などによって第三者に贈与できる金額:2,500万円まで

注意!遺言書の効力が無効になるかもしれない事例集

すでに遺言書の書き方などの基本的なことを解説しましたが、あらためて遺言書が無効になってしまう事例を挙げてみました。
遺言書を自分で書く場合には、こういったことをチェックしておきたいですね。

自筆証書遺言の例

  • 日付が書いていない(年月日が必要)
  • 全文を自筆で書いていない遺言書
  • 署名がない
  • 押印がない
  • 誰かと共同で書いている
  • 遺言作成の日と別の日付が記載されている
  • 相続財産の内容が不明確、明らかな誤りがある
  • 自筆ではなく録音物であったりパソコンで書いたもの

公正証書遺言の例

  • 証人欠格者が立ち会った遺言書
  • 証人が2名いない
  • 証人がいない間に作った遺言書
  • 公証人に口述していない

実際問題として、公証人はこういったことが起こらないよう努めて対応をしてくれるものですので、無効になることはないと言っていいでしょう。

公正証書についてより詳しくは「公正証書遺言のメリットとは?作成方法や費用・必要書類も要チェック!」をご参照ください。

遺言書に有効期限はある?

遺言書には有効期限はありません。
例えば20年前に書いた遺言書でも有効になります。

ただし、財産の中身は時間と共に変化するのが当然ですので、実際には古すぎると遺言どおり執行できないという問題が起こる可能性もあるため、個人で作った遺言書が確実に有効になるかというと疑問が残ります。

できることであれば弁護士や司法書士などを通じて遺言書を作成し、元気なうちは定期的に遺言書の変更、財産のチェックなどをしておくべきでしょう。
遺言書の作成をする前に財産目録をあらかじめて作っておくというケースもあります。

遺言書を勝手に開封した場合

遺言書は通常、発見された後は家庭裁判所へ提出することになります。
しかしこの家庭裁判所の検認をする前に遺言書を勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料に処せられます。

ただし、このように開封があったからと言って特別遺言書の効力がなくなることはありません。
こういった事を防ぐためにも遺言書は信頼できる執行者や公証役場に託しておくことが確実でしょう。

遺言書は書き方、内容ともに確実に!

いかがでしたでしょうか?

遺言書の効力を使うことは非常に便利で、遺産相続をスムーズに行うためにはもはや必須と言えると思います。
遺言書を残さず遺産相続に移行してしまった場合、相続人も非常に時間と手間と労力を割かねばならず、遺産分割におけるトラブルの火種にもなります。

財産をきっちり遺すためにも、専門家へアドバイスを受けて間違いのない遺言書作成をしてみてはいかがでしょうか?