正反対の「災害復興×相続準備」を「もしも」への対策にするために

災害復興

今日を代表する社会課題である相続。繰り返し相続の準備の大切さを本サイトでは何度もお伝えしてきましたが、それは個人だけの問題ではありません。実際に相続税を支払うのも、「相続対策」として進めるのも、「家族」で行うものです。

日本は災害国家です。忘れた頃に大きな地震や、未曽有の災害が襲い、甚大な被害がマスメディアなどでも報じられています。その一方で災害で命助かった人が、どのようにして日常生活に戻れているか。また、どれくらいの期間で戻れているかは、あまりメディアで報じられない部分でもあります。

最近は特に太平洋海岸沿いを中心として、「今後10年から20年のあいだに南海トラフ地震が来るかもしれない」という予言も頻発され、各家庭は水や食料など備蓄の見直しをしたところも多いでしょう。それはとても大切なことです。

そのうえで、次に災害が起こって長年の住処が流されたとき、当然ですが家庭にまつわる多くのものが無くなります。

そのなかで最も重要なものは何でしょうか。

それは、「情報」です。いま「日常」と呼ばれるものの情報がすべて無くなってしまったときに、どのようにして復興の一歩を始めればいいのでしょうか。

1、相続対策に重要な「日常の情報」

事業継承

たとえば津波で長年の住処が流されたとき、幸せなことに自宅から逃れて怪我ひとつ負わず助かった家庭があります。時間はかかりますが、復興に向けて一歩ずつ進んでいきます。

時間を経て家族の気持ちが前向きになり、「復興」を意識し始めたとき、流された家の証拠はどこにあるでしょうか。また、災害を被る前の「財産の証明」はどこにあるでしょうか。

 

銀行口座に預金はあるが、引き出すキャッシュカードがない。証明する通帳がない。ネットバンキングで管理をしていたが、主に使用していたパソコンが流されてしまって自動保存していたIDやパスワードがわからない。

日常生活では自宅と職場で管理していた重要な書類。家族のなかのひとりが管理場所を知っている、というものも多いでしょう。災害によって対象の書類が無くなったのか、残っているのかも家族のうちの1人しかわからないということも生じます。

この対象はもちろん、現金だけではありません。

荒野となった被災地のなかで、「自宅はこのあたり」と目星がついているけれど、測量図も流されてしまったうえ、そもそも目安となる道路(接道)もわからないため、自宅の場所を証明しようがない。不動産のほかにも、生命保険の約款や動産の証明書もない。いわゆる、「資産の死亡」といわれるものです。

 

大きな災害に襲われなければ、ここにあるのは当たり前の情報。資産の死亡は、今までも必要性が訴えられることはあったものの、インターネットの隆盛によって。更に正確にいえばクラウド環境の急激な整備によって。

2015年の相続税法改正を契機として、家庭内における相続のトラブル、いわゆる「争族」を回避するため、様々な相続準備の大切さが叫ばれるようになりました。

公的遺言の作成然り、生前贈与を活用した早期の財産移転然り。ただ、それらの証明は未だ書面によるため、万が一のことがあると「まるごと無くなってしまう」可能性があります。

 

そこで、相続対策を兼ねて、相続や贈与をめぐる書類を「クラウドデータ」と共有するという方法があります。不動産のデータ、たとえば所有権の権利証や検査済証、土地の測量図などです。災害から復興で切り替わる段階でこれらの資料があると、新しい生活のために一歩踏み出すことができ、復興にスピード感がつくと考えています。

2、なぜ、このようなサービスが生まれないのか

事業継承 いつから

日本は災害大国です。では、このようなサービスが生まれないのは何故なのでしょうか。それは、以下のような複数の理由があります。

(1)日本では「死亡後」に関する議論がタブー

最近こそエンディングノートなど「終活」に関する熱が高まっていますが、10年前の日本では「死亡後」に関する議論がタブー視されることも多かったように思えます。

現在も町工場などでは、非上場株主の大半を所有しているオーナーが会社の情報を把握している一方、配偶者や子世代といった家族はその情報を得ないまま、オーナーである被相続人が亡くなると、よくわからないまま非上場株の相続に対応しなければなりません。

これは日本元来の中小企業だけではなく、いわゆる2010年代に入り隆盛したベンチャー企業や、個人投資家などにも当てはまる傾向です。資産づくりにおいて、個人ではなく「家族」で考えることが求められていくでしょう。

(2)「資産の死亡」がまだ一般的ではない

災害にて生命が助かった、それはとても素晴らしいことです。

ただ、今まで蓄積してきた財産が無一文になったとき、災害前の暮らしまで復興することはとても難しい。その時に「財産のあった証明」をすることができれば、復興は何段階も前に進むことができます。

これまで紙媒体で管理していた「資産」の各種データ。ところがインターネットが発展して、クラウドで管理することが出来るようになりました。

不安事項といわれたセキュリティも、むしろ貸金庫で管理した方が危険なのではといわれるほど、頑丈な鍵をかけられるようになりました。最近はここにブロックチェーンによる管理が生まれ、更に高いセキュリティを実現しています。

(3)相続のベンチャー企業が少ない

保険や不動産の世界は、それぞれ生命保険会社や不動産会社を卒業した起業家が中心となり、様々な視点からのベンチャー企業を作り出してきました。また、出身母体となった会社も彼等を支援することによって、新たなビジネスチャンスを誕生させてきました。

一方で相続をこれまで担ってきた主体は税理士や弁護士などの「士業」です。

これまでは新規事業への積極性も低いため、相続をテーマとするベンチャー企業や起業家が生まれなかったのではと考えられます。最近は税理士や弁護士でも自身の事務所を経営しながらサービスを提供するところが生まれており、次代の流れを感じさせます。

3、「終活」は更に長期化し、家族化する

相続・贈与から5年間の条件 請求期限 不動産 相続登記 期限

何度か本記事でお伝えしていることですが、相続は被相続人となる人に認知症などの症状が認められた後は意思決定をすることはできません。

50歳や55歳といった現役バリバリの若年で相続の第一歩を考えるように、これから世の中は少しずつ変わっていくことでしょう。その流れと同時並行をたどって、言葉を選ばずにいえば被相続人となる個人が「独占」していた資産データが、家族での共有に変わっていきます。管理する時間も長期化し、個人から家族化をし、「終活」は更に長期化をすることと考えられます。

相反する「災害復興×相続準備」という考え方。10年後にはさも当然のように、終活の一環として世の中に浸透し、「もしも」への対策になっているのかもしれません。

4、災害復興×相続準備は悲観的なものではない

災害復興

このように災害復興×相続準備は、決して悲観的なものではありません。人生には「まさか」があり、その「まさか」に向かってどれだけ準備が出来るかが大切になってきます。

今後、災害に向けて臨時の水や食料を準備するように、資産に「もしも」があったときの準備が今後、当然のこととなっていくでしょう。

少しでも早く、日本全体にこの考え方が伝わることを願います。