限定承認は弁護士に相談すべき!手続きの手順・条件・弁護士報酬を解説

申告漏れの際の罰則

限定承認とは、借金があっても相続財産を超える額は相続しない相続方法です。

相続財産以上の借金は返済しなくて良いというメリットがあります。

しかし、限定承認をしている数は相続の0.1%以下です。

メリットの多そうな限定承認ですが、限定承認には厳しい条件や複雑な手続きがあることから、あまり利用されていません。

「それでも手続きしたいときはどうすればいいの?」と疑問に思う人も多いはず。

限定承認の手続きをする場合は、弁護士に相談することをオススメします。

今回の記事では、弁護士に相談した方が良い理由、報酬の相場などを詳しく解説。

また、限定承認の複雑な手続き方法やあまり利用されていない理由も説明しています。

最後まで記事を読んで、限定承認の手続きを進めていきましょう。

1.限定承認のメリット

限定承認 相談

限定承認とは、借金があっても相続財産を超える額は相続しない相続方法です。

限定承認は、相続財産以上の借金は返済しなくて良いことから、良いところ取りの相続方法に思っている人も多くいます。

そもそも、相続には3つの相続方法があります。

単純承認

相続財産をそのまま相続すること。

ほとんどの相続で選ばれる相続方法です。

相続放棄

相続財産をすべて放棄すること。

借金やローンなどが多く、相続をするとマイナスになってしまうときに選ばれる相続方法です。

限定承認

借金の範囲内で財産を相続すること。

財産と借金のどちらが多いか分からないときに選ばれる相続方法です。

限定承認のメリットは2つあります。

1つ目は、相続財産と借金のどちらが多いか分からなくても相続人が損をしないことです。

例えば、借金が相続財産より多かった場合、相続財産を超えて借金の返済をしなくても良いのです。

このとき通常の相続の場合は、マイナスの相続となって相続人の財産から被相続人の借金を返済する必要があります。

一方、借金が相続財産より少なかった場合、借金返済後に余った財産は相続人が受け取ることが出来るのです。

このとき相続放棄していれば、相続人は余った財産を受け取ることが出来ず、損してしまうことになります。

2つ目は、どうしても引き継ぎたい相続財産を確保することが出来ることです。

例えば、被相続人名義の家に住んでいた場合、相続放棄をすると家まで手放すことになります。

しかし、限定承認であれば、家を守ることが出来るのです。

そのため、住み続けたい家など、引き継ぎたい相続財産を守ることが出来ます。

このように、一見、良いところ取りの相続方法に見える限定承認の手続きをしている人が、全体の0.1%以下なのはなぜなのでしょうか。

次の章で詳しく確認していきましょう。

2.限定承認があまり利用されない理由

相続手続き マニュアル 代襲相続

あまり限定承認が選ばれないのは、利用する条件の厳しさや、発生する税金、複雑な手続きという3つの理由にあります。

それぞれ詳しく確認していきましょう。

2-1.利用する条件が厳しいから

限定承認の手続きをするには、3つの条件があります。

その3つの条件を満たすことが難しいため、限定承認が選ばれないのです。

1つ目の条件は、相続人全員で限定承認をしなければならないことです。

限定承認をすると、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、相続財産を換金して負債の返済を行います。

そのため、ひとりでも単純承認していると、その作業が出来点くなってしまうのです。

2つ目の条件は、相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に手続きをしなければならないことです。

3ヶ月の期間を熟慮期間といいます。

熟慮期間内には家庭裁判所で手続きを終えている状態でないといけなく、検討が間に合わないケースも多いです。

(専門家でなければ判断が難しいので、検討している際は出来るだけ専門家に相談しましょう。)

3つ目の条件は、相続財産に一切手をつけてはならないことです。

葬式の費用などで相続財産に少しでも手を付けると、単純承認したとみなされてしまうので、限定承認はできません。

また、借金があった場合、被相続人への請求に応じてしまった場合にも単純承認したとみなされてしまいます。

このように、限定承認を認められる条件は厳しく、なかなか利用されていないという現状があるのです。

2-2.余分な税金が発生するから

限定承認をすると、みなし譲渡課税と準確定申告による税金が通常の相続よりも余分に発生する可能性があります。

それぞれ確認してみましょう。

みなし譲渡課税とは

相続財産の中に土地がある場合は、その時価の15~30%の税金がかかってしまいます。

なぜなら、限定承認では、一度土地を一度売却し、売却益が発生すると考えられているからです。

この時の税金をみなし譲渡課税といいます。

みなし譲渡課税は、通常の相続の場合発生することはありません。

実際に売却をしていなくても、売却をして売却益を得ていると税務署が判断するのです。

通常自宅を売却すると、居住用財産の特例で税率が軽減されるのですが、このみなし譲渡課税では利用することが出来ません。

そのため、余分な税金と考えられているのです。

準確定申告とは

準確定申告とは、被相続人に収入があった場合に相続人が代わりに確定申告と納税をすることです。

被相続人が亡くなってから、4ヶ月以内に申告と納税をする必要があります。

もし、期限内に申請と納税をしなければ、追加で罰金を払わなければなりません。

しかし、準確定申告をしてしまうと、財産を処分したとみなされて限定承認が認められないことがあります。

そうなると、準確定申告をしたくても出来ない、という状況になってしまうのです。

通常の相続の場合だと期限を守って申告・納税することが出来るので、余分に支払う罰金は不要となります。

2-3.手続きが難しくてお金がかかるから

限定承認の手続きは大変難しく、弁護士に頼ることが一般的です。

そうなると、手続きに必要な費用だけでなく、弁護士への報酬も発生してしまいます。

最低でも40万円はかかると思っておかなければなりません。(報酬については後程詳しく説明します。)

そのため、限定承認でなく相続放棄をしてしまったり、単純承認をして少額の借金を返済しようと考える人が多いのです。

3.それでも限定承認の手続きをするべきケース

不動産 相続登記 ケース 司法書士

このように、限定承認がほとんど利用されていないのですが、限定承認の手続きをすべきケースをご紹介します。

①家や事業に必要な財産など、どうしても必要な財産があるケース

②相続財産より借金が多いか少ないかはっきりしないケース

③相続財産の範囲内であれば借金を返済しても良いと思えるケース

もし、相続財産はすべて引き継ぎたくないなら、相続放棄という手続きもあります。

相続放棄の手続きも、相続発生後3ヶ月以内に申請が必要です。

いずれにしろ、借金がある場合には、出来るだけ早く相続財産の調査を行って相続人同士でどのように相続するかを決めるようにしましょう。

相続放棄については、『6.相続放棄という手続きもある』にて詳しく解説しています。

4.限定承認をするなら弁護士に頼ろう

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限定承認をするのであれば、必ず弁護士に依頼をしましょう。

弁護士に依頼をすべき理由と、弁護士の報酬相場を説明していきます。

4-1.弁護士への依頼すべき理由

弁護士は限定承認の手続きを代理でしてくれるので、相続人のすることの負担が減るからです。

そもそも限定承認をするかどうかの判断が難しいことが多いので、早い段階での相談がおススメです。

また、限定承認は相続人全員で共同申請する必要があり、誰かが単純承認や相続放棄をしてしまう前に声をかける必要があります。

さらに、限定承認の手続きはとても複雑で手間と時間がかかってしまいます。

このような理由から、弁護士にお願いする人が多いのです。

弁護士に依頼をすると、相続人のすることはなくなります。

すべての手続きが終了後、相続財産が余ればお金を受け取るだけで良いのです。

限定承認には3ヶ月という期限があるので、悩んでいる人も早めに弁護士に相談をしましょう。

4-2.弁護士への報酬の相場

弁護士に相談するとなると、気になるのは報酬の相場ですよね。

弁護士に限定承認の手続きを代理してもらうときの報酬の相場は、最低でも40万円はかかると考えておきましょう。

その内訳を表にまとめましたので、ご確認下さい。

相談費用 1時間あたり5,000~1万円(初回は無料としている事務所が多い)
着手金 相続人1人あたり基本料金30万円程度
相続人が1人増えるごとに+5万円程度の料金体系が多い
依頼時に支払う必要がある
成功報酬 一律10万円、もしくは余った財産の10%程度の料金体系が多い
限定承認の手続き完了後に支払う必要がある
手続き費用 裁判手数料800円、裁判所郵便切手400円、
その他、戸籍取り寄せや交通費、郵送費などは実費

法律事務所によって報酬の考え方が違うので、初回の相談時に必ずいくら必要なのか説明をしてもらうようにしましょう。

5.限定承認の手続きの流れ

相続税 借金 対策 吸収合併 流れ
弁護士に相談をする場合、限定承認ではどのような手続きがされるのか確認しておきましょう。

限定承認の手続きをするには12のステップが必要です。

もしかすると、お金をかけたくないという理由で「自分で手続きしてしまおう!」と思っている人もいるかもしれません。

しかし、手続き内容を見ると、弁護士に頼ったほうが良いという判断をする人が多いはずです。

それでは、限定承認の手続きの流れを順番に見ていきましょう。

5-1.相続財産・負債の調査

まずは、限定承認をするかを決めるために、相続財産を資産と負債に分けて調査します。

不動産や預貯金などのわかりやすいものは簡単に洗い出すことが可能です。

また、お金を貸している等の債権や株式も資産に含まれます。

一方、借金や未払い金、ローンなどは郵便物を確認して、洗い出しをしていきます。

十分な調査をしないと、後で資産が見つかることもあり得るのです。

そうすると、「単純承認しておいた方が余分なお金を払わずに済むんだ」なんてこともあるので、十分な調査を行いましょう。

5-2.他の相続人との連絡

あらかじめ、相続人全員を洗い出し、限定承認を考えていることを話しておきましょう。

相続人が複数人いるのであれば、限定承認は相続人全員で手続きをしなければなりません。

そのため、早めに相続人全員と連絡を取り合う必要があります。

なぜなら、他の相続人が1人でも単純承認したり、相続放棄をしてしまうと、限定承認が出来なくなってしまうからです。

5-3.必要書類の取得

限定承認の手続きをするときに、被相続人と相続人の関係を証明するための戸籍などの提出も必要です。

必要書類は以下の通りですので、確認しましょう。

被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本まやは除籍謄本
被相続人の住民票除票または戸籍附票
申述人全員の戸籍謄本
被相続人の子が死亡している場合は、その子の出生~死亡までの戸籍謄本まやは除籍謄本

その他、申述する人によって、必要な書類が増える可能性もあります。

必ず事前に、家庭裁判所で確認するようにしましょう。

5-4.申述書と相続財産目録の作成

限定承認の手続きは、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所で申述書と財産目録を提出する必要があります。

フォーマットは以下よりダウンロードすることが出来ますので、確認して下さい。

家事審判申立書(申述書) ダウンロード
土地遺産目録 ダウンロード
建物遺産目録 ダウンロード
現金・預貯金・株式等遺産目録 ダウンロード

これらの記入例は、裁判所ホームページより確認することが出来ます。

5-5.限定承認の申述

申述書・財産目録を作成したら、必要書類と一緒に家庭裁判所へ提出し、限定承認の申述を行います。

提出する家庭裁判所は、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所のみです。

管轄の家庭裁判所は、裁判所ホームページで確認をしましょう。

このとき、手数料800円と郵便のための切手代400円も必要です。

あらかじめ準備しておきましょう。

5-6.限定承認申述受理の審判

申述後、確認事項があれば直接問い合わせがあったり、追加資料の提出を求められることもあります。

問題がなければ、家庭裁判所から照会書が送付されるので、回答をして返送しましょう。

その後、限定承認の審判が行われます。

問題なく審判が終わると、家庭裁判所から限定承認受理について通知書が送られてきます。

5-7.相続財産管理人の選任

限定承認が認可されると、次は相続財産管理人を選任しなくてはなりません。

相続財産管理人とは、相続財産を換金して負債の返済を行う人のことです。

相続人が1人しかいない場合には、申述をした人が今後の手続きを進行していきます。

もし、相続人が複数人いる場合は、家庭裁判所によって相続財産管理人審判で相続人の1人が相続財産管理人に選任されるのです。

5-8.債権申出の公告・催告

限定承認の認可が下りた後、相続財産管理人はすみやかに相続財産の清算手続きをしなければなりません。

まずは、認可後10日以内に「限定承認したことと一定の期間内にその請求を申し出るように」と、官報を公告します。

官報公告の申し込みは官報公告のホームページから、簡単に手続きすることが可能です。

官報の期間は2ヶ月以上と定められているので注意しましょう。

また、すでに被相続人の債権者が分かっている場合には、別途請求申出を催告します。

催告書は、配達証明付きの内容証明郵便で、郵便局から発送しましょう。

5-9.相続財産の管理・換価

相続財産管理人は、相続財産を管理しながら、それらを順番に換価処分しましょう。

つまり、金銭に換えていくのですが、一般的には競売手続きを行って換価することとされています。

5-10.鑑定人選任の申立て

相続財産を競売で換価していきますが、相続人には優先権があります。

優先権とは、優先的に購入することが出来る権利のことです。

もし、家など相続人が取得したい相続財産があるときには、家庭裁判所に対して鑑定人選任の申立てを行います。

選任された鑑定人に相続財産を鑑定してもらい、価格が決定されるのです。

その価格を相続人が自分の財産の中から支払うことが出来れば、取得することが出来ます。

5-11.請求申出をした相続債権者への弁済

官報公告期間中に申し出があった場合、その請求に弁済をしていきます。

すべての額を払うことが出来ない場合は、それぞれ債権額の割合に応じて支払いを行うことが必要です。

5-12.残余財産の処理

弁済後、相続財産に余りがあればその残余財産を相続人で遺産分割をします。

以上が限定承認の手続きの一連の流れです。

6.相続放棄という手続きもある

配偶者控除 相続破棄

限定承認はハードルが高いけど、借金まで相続したくないという人には相続放棄という選択肢もあります。

相続放棄について詳しく確認し、手続きの方法も確認しましょう。

6-1.相続放棄とは

相続放棄とは、相続財産を受け取ることをすべて放棄することです。

被相続人(亡くなった人)に多額の借金がある場合に相続放棄の手続きをする人が多くいます。

相続放棄をする場合も、期限は相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内の手続きが必要です。

限定承認と比べると、相続人1人でも相続放棄することができることは大きなメリットとなります。

しかし、一度相続放棄をすると、撤回することは出来ず、一切の相続財産を受け取ることが出来ませんので注意が必要です。

(相続放棄については、『相続放棄をする方法とは?法律上の注意点を徹底解説!』に詳しく説明しています。)

6-2.相続放棄の手続き方法

相続放棄の手続きをする場合にも、弁護士へ依頼することをオススメします。

弁護士への報酬の相場は、5~15万円程度と、限定承認と比べると低い価格です。

もし、自分で手続きをする場合には、家庭裁判所で相続放棄の申立てをする必要があります。

申立て後、家庭裁判所から相続放棄に関する照会書が送付されるので、質問に回答してから家庭裁判所へ返送しましょう。

その後、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届いたら手続きは完了です。

(相続放棄の手続きについては、『相続放棄手続きが出来るは一度きり!手続き前に確認したいこと全て』に詳しく説明しています。)

まとめ

限定承認とは、借金があっても相続財産を超える額は相続しない相続方法のこと。

限定承認の手続きをする場合は、複雑で時間と手間がかかるため、弁護士に相談するようにしましょう。l

最後まで記事を読んで、確実な限定承認の手続きを進めていきましょう。