【遺言書の書き方マニュアル】確実に相続人に遺書を残す方法を解説

自筆証書遺言書

「遺言書を書いて家族に自分の遺志を残したい!」と思っていますか?

遺言書は簡単に作成できますが、作成のルールを守らないと、その遺言書自体が無効になってしまいます

遺言書の正しい書き方と、作成後の保管方法などをしっかりと押さえておきましょう。

今回の記事では、気軽に作成できる自筆証書遺言書の書き方や遺言書について相談できる専門家を分かりやすく紹介していきます。

最後までしっかり読んで、確実に家族に自分の遺志を残しましょう。

1.そもそも遺言書には3種類ある

終活 遺言書 包括寄贈 書いてみた

遺言書とは、自分が死んでしまった後、残した財産を誰にいくらの財産を渡すかを決めることが出来るものです。

遺書と混合する人も多くいますが、遺書と遺言書は違うものです。

遺書は自分の死後、自分の思いや気持ちを伝えたり、葬式の方法など実現してほしいことをお願いする文書で、自由な形式で書くことが出来ます。

それに対して、遺言書は、法的な効力を持ちます。そのため厳格な様式に従って作成されていないと効力を発揮しません

そして、その遺言書には3つの種類があります。

自筆で作成する自筆証書遺言書、公証人へ遺言を伝え公証人が作成する公正証書遺言書、そして自筆で作成した遺言書を公証人に存在を公証してもらう秘密証書遺言書の3つです。

このうち、自分一人で作成することができるのは、自筆証書遺言書だけです。

そのため、今回は自筆証書遺言書の書き方を詳しく説明していきます。

(最後には、公正証書遺言書についても解説しているので、「手間や費用がかかっても良いから、確実な遺言書を作成したい」という人は、そちらについても確認してください。)

2.自筆証書遺言書の記入例

自筆証書遺言書 記入例

まずは、どのようなことを遺言書に書いていけば良いのか、記入例を見てみましょう。

遺言書

 

遺言者・山田太郎は、この遺言書によって、妻・花子、長男・一郎、次男・次郎、に対して次の通り遺言する。

1.現金1,000万円と家とその土地を、妻・花子に相続させる。

2.現金500万円と別荘とその土地を、長男・一郎に相続させる。

3.現金500万円とすべての証券を、次男・一郎に相続させる。

4.もし、ここに記載のない財産が発覚した場合、そのすべては妻・花子が相続するものとする。

なお、遺言者山田太郎は、遺言者の執行者として、下記のものを指定する。

住所:東京都世田谷区○○ 12-345

職業:弁護士

遺言執行者:鈴木五郎

平成××年5月1日

住所 東京都世田谷区○○ 67-890

遺言者 山田太郎(印)

基本はこのような形式で書いていきます。

ポイントは「何を誰にどれくらい」相続させるのかを明確にしておくことです。

詳しい自筆証書遺言書の書き方を次の章で見ていきましょう。

3.自筆証書遺言書の書き方

自筆証書遺言書 書き方

自筆証書遺言書は、遺言書の全文・日付・氏名を自筆で書き、押印すれば作成できます。

自分で文字が書けて、押印することが出来れば簡単に作成出来ることが最大の特徴です。

また、費用は一切かからず、所定の書式もないので自由に書くことができます。

一方、書き方を間違えると無効になる危険がありますので注意が必要です。

また、自筆証書遺言書を相続人が開封するときには検認を家庭裁判所にて行わなければなりません。
検認については「遺言書の検認の方法を分かりやすく解説!」でより詳しく解説しています。

では、実際の書き方を見ていきましょう。

3-1.残す財産を決めて記載する

財産目録を見れば、どの財産を指しているのか分かるような財産目録を作成しましょう。

財産目録とは、残す財産をすべて洗い出し、その価値を一覧にしたものです。

遺言書 自筆 目録

参考:裁判所ホームページ

土地であれば登記簿、預金であれば銀行名・支店名・口座番号など、詳細まで書くようにして下さい。

また、すべての財産を書き出すことで、書かれていない財産の扱いをめぐって相続人同士の争いを防ぐようにしましょう。

漏れがないように注意しても出てきてしまう場合もあります。

書き出した相続財産に漏れがあってもトラブルにならないよう、「ここに指定のない財産はすべて妻に渡す」などの記載があると良いでしょう。

3-2.相続人の範囲を確認する

相続財産を全て書き出したら、相続人の範囲を確認しましょう。

法定相続人は誰なのかを明らかにし、法定相続人の名前は遺言書に全員登場させるようにします。

相続の順番としては、必ず1番初めに配偶者を書きます。

3-3.必ず手書きで書く

自筆証書遺言書は「その全文、日付及び氏名を自筆」することが規定されています。

代筆、音声、映像など、手書きでない場合にはすべて無効となりますので注意しましょう。

これは、遺言書の偽造を防ぐために定められています。

手書きだったら何で書いても大丈夫ではありますが、鉛筆やシャープペンシルだと消える可能性があるので、ボールペンでの自筆がオススメです。

また、できれば和紙などの丈夫な紙を選びましょう。

3-4.遺言書を書いた日付を明記する

自筆証書遺言書には、遺言書を書いた日付を記載することも規定されています。

必ず年月日を記載しましょう。

もし、遺言書が複数発見された場合、一番新しい遺言書を有効とするために年月日は必要なのです。

3-5.署名と押印をする

自筆証書遺言書には、署名と押印することも規定されています。

署名は、戸籍に記載されている通りの姓名を自筆し、実印で押印しましょう。

また、書いた紙を入れる封筒にも封印をしておくと、開けていないことの証明になるのでオススメです。

3-6.必要なら遺言執行者の選任する

遺言執行者が必要ならば、遺言執行者を選任しましょう。

遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な事務手続きを行う人のことです。

相続だけではなく、相続人以外への遺贈や、非嫡出子認知を遺言書に記載するときには、遺言執行者を選任しておく方が良いでしょう。

もし選任する場合は、信頼できる弁護士などの専門家にお願いすることをオススメします。

4.遺言書を無効にしないための注意点

自筆証書遺言書 注意点
ここまでは、各内容について細かく説明しましたが、遺言書を確実に残すための注意点を3つ確認しましょう。

4-1.パソコンは使ってはいけない

自筆証書遺言書の作成時に、パソコンを使うことは禁止されています。

あくまでも自筆のため、手書きでない遺言書はすべて無効となってしまうのです。

なぜなら、遺言書の偽造を防ぐためです。

自筆以外はすべて認められていないため、代筆・音声・映像などもすべて無効となってしまうことを覚えておきましょう。

4-2.遺言書作成の年月日、記名、押印を忘れない

自筆証書遺言書には、遺言書の作成年月日、記名、押印が絶対に必要です。

1つでも欠けていると、無効となってしまいます。

また、実印で押印するようにしましょう。

4-3.夫婦共同の遺言書は作れない

2人以上で同一の遺言書を作成することは、認められていません。

どうしても2人で残したい場合は共同名義ではなく、それぞれの名義で違う用紙に作成をしましょう。

もし、共同名義の遺言書を残したとしても無効となってしまい、相続人に遺言書の内容を実行してもらうことが出来ません。

5.遺言内容を書き直したいときの修正方法

自筆証書遺言書 修正

一度作成した遺言書は、いつでも訂正することが可能です。

亡くなる時期を予測することは難しく、遺言書を作成してから数年経つと事情が変わることもあるでしょう。

例えば、財産の増減や法定相続人の増減などが考えられます。そのため、遺言書の訂正方法も知っておくべきです。

自筆証書遺言書の内容を訂正する場合は、いつでも修正することが認められています。

該当箇所に二重線を引いて訂正印を押して、書き加えることで訂正が可能です。

もし、2箇所以上訂正がある場合は、はじめから書き直す方が見やすくなるかもしれません。

はじめから書き直した場合、古い遺言書は破棄するようにしましょう。

また、1度目に自筆証書遺言書で書いたからと言って、2度目も自筆証書遺言書を書かなければいけないわけではありません。

公正証書遺言書でも秘密証書遺言書でも、どちらか違う方法で書き直しても大丈夫です。

原則的に複数の遺言書が見つかった場合、新しい日付のものだけに効力があると判断されます。

混乱を招かない配慮として、「以前作成した遺言書の内容は取り消す」という一言を入れておきましょう。

6.遺言書の保管場所

自筆証書遺言書 保管場所

ここまでは遺言書の書き方を説明してきましたが、作成した遺言書をどこに保管するのか悩んでいる人は多いです。

特に自筆証書遺言書と秘密証書遺言書は、遺言書の内容は誰にも知られないメリットがある一方、自分で保管方法を考える必要があります。

自宅で保管をしたり、身近な相続人に預ける人もいますが、この保管方法は出来るだけ避けて下さい

なぜなら、自宅で保管をしていると、紛失したり消失する可能性があります。

自宅の場合、分かりにくい場所に隠そうとするため、死後発見してもらえないこともあるのです。

また、相続人へ預けると勝手に中を見られてしまったり、改ざんや遺棄されることもあります。

このようなことがあると、自分の残した遺志を相続人へ伝えることが出来ません。

そこで遺言書の保管場所として選ばれている場所を2つご紹介します。

6-1.銀行の貸金庫

最も遺言書の保管場所として適しているのは銀行の貸金庫です。

ほとんどの都市銀行、地方銀行の支店に貸金庫が備わっています。

その支店で口座を持っていれば貸金庫を借りることが出来ますので、気軽に預けることが可能です。

貸金庫の費用は、一番小さい引き出しタイプであれば年間2万円程度で借りることが出来ます。

自分が死亡した場合、銀行は口座と一緒に貸金庫を凍結し、相続人が相続手続きをしなければ開けることは出来ません。

そのため、貸金庫の鍵やカードをしっかり管理してさえいれば、遺言書の改ざんや遺棄されるリスクはゼロに等しいと言えます。

また、銀行の貸金庫は相続人によって発見してもらいやすいです。

発見後は必ず開けるはずなので、遺言書の存在に気付いてもらえる可能性は高くなります。

6-2.専門家の事務所

信頼できる弁護士や行政書士がいる場合、その事務所に保管することも可能です。

遺言書の保管サービスを提供している弁護士行政書士は多くいます。

このサービスを利用することで、遺言書の内容を相談したり、自分の死後に検認手続きも任せることも出来るのです。

ただし、自分が死亡したことが遺言書を預けた専門家の事務所に伝わらない可能性があります。

そのため、身近な相続人に自分が死亡した場合、すぐに○○さん(預けた専門家の事務所)へ連絡をしてほしい」と伝えておきましょう。

7.死亡後には検認が必要

自筆証書遺言書 証人

自分が死亡した後、自筆証書遺言書を相続人が読むためには、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。

検認とは、遺言書を発見した人が家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人全員の立ち合って遺言書の開封と内容の確認を行うことです。

これは相続人による遺言書の偽造を防ぐためです。

検認の前に遺言書を開封してしまうと、5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

また、預金や不動産の相続手続きをする際にも、検認手続きを終えている必要があるのです。

このように、自筆証書遺言書を残した場合、少し相続人に手間がかかってしまうことも覚えておきましょう。

より細かな手続き方法などの内容については「遺言書の検認の方法を分かりやすく解説!」をご参照ください。

 

8.自筆証書遺言書の相談ができる専門家

自筆証書遺言書 専門家

遺言書をせっかく書いても、正しく書いていないと無効となってしまい、自分の思いや願いが相続人に届かないかもしれません。

そういったことを防ぐために、遺言書を書く時には専門家へ相談することをオススメします。

遺言書を扱う専門家は、弁護士・司法書士・行政書士の3つの職業です。

どういった場合にどの専門家に相談するべきなのか、順番に確認していきましょう。

8-1.相続トラブルになる可能性がある場合には『弁護士』

遺産分割で家族内トラブルに発展した場合、解決に向けた対応が出来るのは弁護士だけです。

相続財産が多くトラブルになりそうだったり、指定したい遺産分割の内容で割合の多い人と少ない人が出てくる場合など、相続人から不満が出てくることがあります。

こうした場合には、遺留分減殺請求など紛争に発展する可能性があるのです。

もしトラブルに発展するかもしれないのであれば、解決に導いてくれる弁護士を頼るようにしましょう。

ただし、弁護士に依頼すると他の専門家よりも作成費用が割高になります。

弁護士に遺言書作成の相談をした場合の報酬費用は、20~300万円です。

遺言書に残す相続財産の大きさによって費用が変わるため、金額に大きな幅があります。

数百万円の預金と戸建てほどの一般的な財産であれば、20~30万円ほどで済ませることが出来ます。

8-2.相続財産に不動産が含まれるのであれば『司法書士』

不動産の相続手続きをすることができるのは、司法書士だけです。

不動産を相続するには、相続登記という名義変更の手続きが必要となります。

相続登記をするには、時間と手間がかかるため、司法書士に代理を頼む相続人は多いです。

そのため、初めから司法書士に遺言書作成を頼み、そのまま遺言書執行者として相続登記の代理を任せるとスムーズに手続きすることが出来ます。

司法書士へ遺言書作成の相談した場合の報酬費用は、10~20万円ほどです。

相続財産の大きさに関係なく、一律の料金体系を提示している事務所がほとんどです。

8-3.とにかく費用を安く抑えたいなら『行政書士』

相続財産でトラブルが発生する心配が一切なく、不動産の相続が発生しないのであれば、行政書士に相談することがオススメです。

行政書士に依頼するメリットは、他の専門家と比べて報酬費用が安いことです。

気軽に遺言書作成をしたい場合には行政書士に相談してみましょう。

行政書士へ遺言書作成の相談した場合の報酬費用は、6~15万円ほどです。

司法書士と同様に、相続財産の大きさに関係なく、一律の料金体系を提示している事務所がほとんどです。

9.確実に残したいのであれば公正証書遺言書の選択肢もある

遺言書 公正証書 公正証書遺言

自筆証書遺言書は気軽に作成することが出来る反面、無効になってしまうケースが多い作成方法です。

せっかく書いた遺言書を確実に相続人に残すためには、公正証書遺言書がオススメです。

自分ひとりで書く自筆証書遺言書とは違って、専門家のチェックが入るので無効になることがありません

公正証書遺言書は、遺言者が公証役場の公証人に遺言の内容を伝えて、公証人がその内容を遺言書に落とし込む方法だからです。

また、相続人が発見した際に検認が必要ないことも特徴です。

一方、作成をするのに時間と費用が掛かってしまうこと、内容を秘密にできないというデメリットもあります。

公正証書遺言書の作成費用は以下の通りです。

遺言書に書く財産の総額 作成費用
100万円未満 5,000円
100万円以上、200万円未満 7,000円
200万円以上、500万円未満 11,000円
500万円以上、1,000万円未満 17,000円
1,000万円以上、3,000万円未満 23,000円
3,000万円以上、5,000万円未満 29,000円
5,000万円以上、1億円未満 43,000円
1億円以上、3億円未満 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額
3億円以上、10億円未満 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額
10億円以上 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

作成費用は、相続財産の総額にかかってくるわけではなく、相続人や受遺者ごとに相続させたい財産の価格に応じた手数料が必要です。

公正証書遺言書は、自筆証書遺言書よりも費用や準備時間がかかってしまいます。

しかし自筆証書遺言書では不安だという人は、公正証書遺言書をぜひ検討してみてください。

より詳しい内容は「公正証書遺言のメリットとは?作成方法や費用・必要書類も要チェック!」を参考にしてください。

 

【Q&A】遺言書作成にあてって気になることを解消しよう

相続税申告 必要な人 包括 特定 相続税 必要性

最後に、遺言書の作成にあたって気になることをQ&A方式でお答えします。

最後までしっかり確認しましょう。

Q1.生命保険の受取人は遺言書で変更できる?

A.生命保険の受取人は遺言書で変更することが出来ます。

生命保険の受取人は、一般的に保険を契約するときに指定することが多いです。

その受取人を後から変更したいときには、本人が直接保険会社と連絡を取り、手続きする必要がありました。

しかし、平成22年4月1日から新しく保険法が施行され、遺言書での受取人変更が可能となったのです。

例えば、もともと受取には妻にしていたけれど別居状態になってしまったとしましょう。

そういった場合、遺言書に「保険金の受取人は娘・花江に変更する」と記載すれば、家族に知られないように受取人を変更することが出来ます。

Q2.相続と遺贈の違いは?

A.法定相続人に財産を移転させることを「相続」と言って、遺言によって無償で財産を譲ることを「遺贈」と言います。

そのため遺言書では、法定相続人には「相続させる」それ以外の人や団体には「遺贈する」と書きましょう。

遺贈する相手は、特に制限はありません。

そのため、想定相続人に対しても、それ以外の人・団体に対しても「遺贈する」と書くことが出来るのです。

しかし、法定相続人には「相続させる」と書いた方が、相続人にとってメリットがあります。

メリット1.不動産は相続で譲り受けた方が手続きが簡単

相続で不動産を譲り受けた場合、指定された法定相続人1人が単独で、手続きをすることが出来ます。

そのため、手続きが簡単でスピーディーに出来るのです。

一方、遺贈で不動産を譲り受けた場合、他の法定相続人全員と共同で、手続きをしなければなりません。

そのため、法定相続人全員分の印鑑証明などの書類が必要となり手間も時間もかかってしまうのです。

メリット2.遺贈だと農地を譲り受けられない場合がある

農地を相続で譲り受けた場合、特に手続きに難しいことは発生しません。

しかし、遺贈で農地を譲り受けた場合には、農地法により農業委員会または知事の許可が必要となるのです。

特に遺贈を受けた者が、農業を営んでいない場合には、許可が下りずに所有権の移転が出来ない可能性があります。

このように、法定相続人には「相続させる」と書いた方が、手続きが楽になるというメリットがあるのです。

まとめ

自筆証書遺言書は気軽に作成できますが、自筆でなければならない、記名・押印がなくてはならない、など作成ルールが存在します。

ルールを守らなければ、無効となってしまって、自分の遺志を実行してもらうことが出来ません。

作成の方法や作成後の保管方法までしっかり確認し、確実に家族に自分の遺志を残せる自筆証書遺言書を作成しましょう。