中小企業経営者のための事業承継対策マニュアル!廃業せずに次の世代に受け継ぐにはこうする!

中小企業 事業承継

これまで築き上げてきた事業を守り、引き継ぐ。
事業承継は中小企業経営者にとって最後の大仕事です。

しかし実際には知識や対策もないまま取り組んでしまうと、思わぬところでつまずいてしまい、事業そのものの体力を大幅に失ってしまうことになりかねません。
経営権のスムーズな移行や、後継者の決定というのは、気軽にできるものではないのです。

一方で、事業承継と言えば引退や現在の経営者が亡くなることなどを想起させてしまうものであり、家族や従業員からはなかなか言い出しにくいものです。
事業承継には税理士を始めとした専門家がたくさんいますので、知識を持って早めに専門家へ相談しておくべきでしょう。

今回は事業承継を進める上での問題点や、有利に進めることのできる事業承継税制のご紹介をします。

中小企業にとって事業承継は一大事

「事業承継は考えなければならないことが多すぎる」
「下手に事業承継すると事業が傾く」

このような声がたまに聞こえてきます。
まず、どうして中小企業にとって事業承継はこんなにも大変と言われるのでしょうか。

多くの中小企業では、社長がオーナーとなり、自社株のほとんどを保有しています。
また事業用資産も保有し、ワンマン経営となっていることでしょう。
そして、社長個人の手腕や信用に頼っている部分も大きいです。

にもかかわらず、事業承継の必要はいつ起こるかわかりません。
そのようなときに何の準備をしていないと、実に様々な問題が同時多発的に起こってしまい、企業体力を一気に低下させてしまうのです。

事業承継に関わる2つの問題に焦点を絞って、対策などもご紹介してみましょう。

後継者不足の問題

不動産分割 法定相続人
中小企業経営者の平均引退年齢は70歳と言われています。
しかし、少子化や職業・価値観の多様化などから後継者不足も深刻です。

廃業する中小企業の28.5%が「後継者難による廃業」を理由にしているということからも明らかです。
(日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」より)

では、どうしてここまで後継者が問題になってしまうのでしょうか?

親族を後継者にした場合の問題

近年では親族以外への事業承継が進んではいますが、小規模事業者の場合、親族への事業承継が6割ほど占めています。

やはり一番典型的なパターンであると言えますね。
親族や子への事業承継で問題になるのは以下のようなケースです。

相続人の間でトラブルになる

経営者からすれば、自分が指名した後継者に事業をまるごと託したいのは当たり前です。
しかし、自分の財産だからと言って100%自分の思い通りに引き継ぐことができないのが相続です。

例えば、自社株以外の資産がほとんどない場合、自社株の時価と比べて財産があまりに少ないと、後継者以外の相続人(子供や妻など)への遺産相続分がほとんど残りません。
これではトラブルになるのも無理はないでしょう。

金額にあまりに差がついてしまうと、遺留分減殺請求という相続人同士の争いになります。

対策としては、やはり事前に事業承継を進めておいたり、他の相続人に譲り渡す資産を用意しておく、遺言をきっちり作成しておくなどの計画が必要になります。

相続税が高い

相続税は累進課税で、最大税率は55%です。
自社株をそのまま相続できたとしても、株式の時価に応じて莫大な相続税が後継者の肩にのしかかります。
そのため、自社株を相続する以外の様々な方法を講じたり、税の支払いに必要な資金を調達しておく必要があります。

本人の問題

後継者になりたいという希望を持った親族がいない場合があります。
また、本人が希望していても経営者としての手腕や人望に不安がある場合も、そのまま承継して良いとは言えないでしょう。

従業員を後継者にした時の問題

有能な従業員や役員を後継者として選ぶというのが会社経営にとっては良い方法に思えるかもしれません。
しかし、現経営者が担保を提供していたり保証人となっている債務がある場合、そのような負債も組み換えをしなければなりません。

さらに、自社株を買い上げるだけの資金が後継者側に必要となり、実際には事業承継できないケースが起こりえます。

税金・資金の問題

連年贈与の基礎知識 基礎控除がなくなる? 遺留分減殺請求 税金 資金
事業承継では必ず税金の問題がついて回ります。

贈与によって株式を譲り渡せば贈与税、遺産として株式を相続した場合は相続税、安い価格で株式を売り叩いた場合は所得税が必ずかかります。
事業承継のように資本を移動するときには、まとまった資金や綿密な計画が必要です。

そのため、節税対策を時間をかけてじっくり検討しなければ、いざという時に大問題になってしまいます。

事業承継の後継者対策

事業承継 後継者対策

後継者育成・決定

後継者が親族であれ、従業員であれ、後々のために有能な人材を育てておくことが重要です。
経営者としてふさわしい資質を持っている方には、社内外で研修を受けさせたり、実務とともに人脈を持たせることが必要です。

また、本人にも後継者としての自覚を持ってもらうよう、役員待遇としたり取引先や金融機関との接触も頻繁にさせるほうが良いでしょう。

逆に、後継者がいないという場合は外部の事業者との資本提携(M&A)という手段を考えなければなりません。

遺言の作成

経営者自身が事業承継を終える前に倒れてしまうということもあるでしょう。
自社の資本が分散してしまわないように、後継者が決まっていれば遺言でその旨は記載しておきましょう。

遺言にもいろいろな種類がありますが、最も確実なのは公証役場が内容を保証してくれる公正証書遺言です。

相続人同士での遺産争いを防ぐため、弁護士等に相談しながら公正証書遺言を作成するのがベストです。

民法の特例を利用する

経営承継円滑化法の特例を利用します。
この方法を使えば、自社株式に関しては生前贈与していても遺産相続争いになりにくくなり、株式の分散を防ぐことが可能です。

生前贈与された自社株を相続の遺留分算定基礎財産から除外したり、基礎財産に入れる時にも価額を固定できます。
後継者以外の相続人から異論が出ないように設定できます。

要件としてはいくつかありますが、最も大きなものとしては推定相続人全員からの合意が必要になります。
つまり、経営者の生前に相続人全員の総意がきっちりあれば、相続でモメることを防げるの
です。

会社法で自社株を集中させる

会社の定款を変更し、株式の譲渡制限規定を作ります。
そうすると、株式の分散を防ぐことが可能です。

また、議決権制限株式、無議決権株式を後継者以外の方に譲り渡すことも有効でしょう。

事業承継の節税・資金対策

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資金調達などをしておく

後継者が仮に自社株を買い取りするとなった場合、資金が必ず必要になります。
あまりにも安く株式を買ってしまっても、後継者側は所得税を払う必要があります。

また、相続の問題が残る場合は後継者が、自分以外の相続人に払うための遺留分を用意しておく必要があり、後継者の資金というのが重要になります。

また、自社株を会社が買い取って金庫株にする方法もありますが、会社の資金に余裕を持たせなければなりません。
事業承継を控えてに資金が足りない場合には、事業承継ローンが有効でしょう。

節税対策をしておく

少しでも課税額などを下げておくため、相続で全て譲り渡すのではなく、経営者が生前贈与する方法もあります。

実際には贈与税も累進課税ですが、時間をかけて少しずつ贈与する暦年贈与や、贈与額にかかわらず税率が一定になる相続時精算課税制度などがあります。

相続税を節約しよう!7つの節税方法を丁寧に解説

一般的には、生前贈与と相続を組み合わせて、それらの基礎控除や税率を見ていくのが有利な方法となります。

事業承継税制を活用する

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事業承継税制とは、相続税・贈与税の納税猶予や納税免除が可能な税制で、近年緩和が進んでいるものです。

なにしろ、事業承継を行うということは前述の通り非常に考えなければならない問題が数多く、それだけで廃業になってしまう事業者も少なくないのです。
そのため、事業承継を伴う相続や贈与に関してのみ、優遇される税制があります。

事業承継税制の内容

いくつかの要件を満たさなければならないのですが、事業承継税制を利用すれば決められた自社株分の納税が猶予されます。
さらに事業者として一定の要件を満たせば相続税が免除されることもあり、自社株の価額が高くなる場合は知っておかない手はないでしょう。

贈与税についても、自社株の一定の部分での贈与税が全額猶予されます。
こちらも要件を満たせば免除されることがあります。

年を追うごとに改正されている事業承継税制

事業承継税制は平成27年、平成30年と規制が徐々に緩和されており、要件に適合しやすくなっています。

先程の納税猶予の割合も、要件の一つである雇用確保についても緩和されています。
以前までは承継時の雇用の8割以上を維持することが条件で、5年間は維持しなければならなかったのですが、現在では雇用が維持できなくても猶予が打ち切られることはなくなりました。

事業承継税制はこちらの記事でも解説しています。

事業承継税制とは?適用要件や平成30年度改正のポイントも解説

経営者自身が事業承継をリードするのがベスト

経営者たるもの、やはり事業を引き継ぐとなると少し抵抗があるかもしれません。
しかし、周囲の方々からすると承継=引退であったり亡くなることを考えさせてしまうのでは?という思いから、なかなかアドバイスしにくいものです。

事業承継は時間をかければかけるほど有利に安全に進めることができるものです。
できれば経営者本人から積極的に対策をはじめていただきたいと思います。