個人事業主の事業承継!手続き方法や事業譲渡の方法を徹底解説

個人事業主の事業承継!

企業の経営者のみならず、個人事業主の方が事業承継することもあります。

個人事業には、個人商店の服屋さん、八百屋さん、雑貨屋さん、クリーニング屋さんから、料理教室や英会話教室まで、様々です。

自分が引退して子供に事業を継いでもらいたいという方もいると思いますが、今回は個人事業主による事業承継のポイントをまとめました。

個人事業主とは

自営業と言えば小さな町工場や、個人商店、個人の教室、小さな飲食店などをイメージされる方が多いのではないでしょうか?

こういったお店だけでなく、フリーランスで働くデザイナーやイラストレーターなどの仕事も個人事業主になります。

子供に事業を譲渡したい

子供に事業を譲渡したい

個人事業主の方の中でもお店を一から作り繁盛させてきた人は、子供にお店をそのまま継いでもらいたいという思いが強いでしょう。

しかし、個人経営であってもお店をあげるというだけで事業承継はできないのです。

個人事業主が事業を開始する時と同じ様に開業届を出す必要がありますし、お店の設備、備品、土地、商品などは全て個人事業主の財産です。

きっちりそういったものも承継させる相手、つまり「譲受者」に受け渡す手続きなどが必要です。

売買と贈与

また、事業承継に出てくる用語で「譲渡」というものがあります。

譲渡とは、譲り渡しをすることですが、譲渡には売買と贈与の二種類があります。

有償のものが売買、無償のものが贈与ということになります。

贈与の場合、当然ながら親子でも贈与税がかかることがあります。

贈与税については最後の方で解説します。

個人事業主の事業承継方法

個人事業主の事業承継方法
個人事業主が事業承継する場合は、おそらく親族や親子の間で承継が行われることがほとんどでしょう。

しかし、個人事業というものはあくまでも個人の仕事に対して税金がかかったりするもので、明確な形のある法人のように引き継ぎをするという概念がないのがポイントです。

単に、今の事業主が廃業届を出し、後継者が開業届を出す。

それだけで事業の承継自体は完了となります。

では具体的な方法を見てみましょう。

廃業届と開業届を提出する

次に、具体的に提出する必要のある書類をまとめました。

必ずしも当てはまらないものもありますので、ご自身が当てはまるかどうかをよく確認してください。

現経営者が提出するもの

    • 個人事業の廃業届出書
    • 所得税の青色申告のとりやめ届出書

(青色申告の場合)

    • 事業廃止届出書

(免税事業者でない場合)

  • 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

(翌年に予定納税が発生する場合)

後継者が提出するもの

    • 個人事業の開業届出書
    • 所得税の青色申告承認申請書
    • 青色事業専従者給与に関する届出書

(青色専従者を雇用する場合)

  • 雇用契約書等

(従業員を雇用する場合)

屋号の引き継ぎ方

特に屋号の引き継ぎに決まりはありません。後継者が屋号を引き続き使いたい場合は開業届出書に屋号を記載するだけで完了です。

屋号自体は特に法律による制限がなく、簡単につけられます。ただし、屋号に商号登記がされている場合、法務局での名義変更が必要です。会社法と競合避止義務によって、同じ市町村内では同一の名義が使えません。

現事業主が必要な廃業届などの書類

個人事業主 事業承継 現事業主が必要な廃業届などの書類

現事業主が必要な提出書類の説明をします。

個人事業の廃業届出書

事業をやめる時に必要な廃業届出書です。

個人事業で事業承継する場合は、現経営者は廃業するということになりますので、この書類を提出することになります。

国税庁HP|個人事業の開業・廃業等届出書

所得税の青色申告のとりやめ届出書

青白申告をしている場合のみ「所得税の青色申告のとりやめ届け出書」を提出する必要があります。

今後も別の事業などを行って青色申告を継続する場合は出さなくても大丈夫です。

国税庁HP|所得税の青色申告の取りやめ届出書

所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

廃業する時には、経営者の所得が予定よりも少なくなることが予想されます。

そのような場合には予定納税義務の対象者ですと、税金の予定納税額が多くなりすぎてしまうことがあります。

この書類を出しておけば予定納税額を減額することが可能です。

休業や業績不振のためにも使える申請手続きですが、廃業の時も利用しましょう。

予定納税の時期は、第一期、第二期と二回に分けられており、減額申請の手続きには期限があります。事業承継を行うタイミングを決めるのに参考にしてください。

第一期、第二期の減額申請は7/1~7/5、第二期分のみは11/1~11/15までとなっています。

国税庁HP|所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続

事業廃止届出書

国税庁HP|事業廃止届出書

免税事業者でない場合はこの書類も必要です。

免税事業者とは、消費税を支払っていない事業者のことです。

消費税を一度でも支払ったことがある場合は基本的に提出が必要だと考えておきましょう。

廃業届の書き方など、以下の記事を参考にしてください。

廃業届の書き方や提出先・タイミング・必要書類について解説!

新事業主が必要な開業届などの書類

個人事業主 事業承継 新事業主が必要な開業届などの書類
次に新事業主が提出する必要のある書類について説明します。

個人事業の開業届出書

事業を開始することになりますので、個人事業の開業・廃業等届出書という書類を出す必要があります。

実は廃業届出書と同じ書類になります。

国税庁HP|個人事業の開業・廃業等届出書

所得税の青色申告承認申請書

青色申告で所得税を申請する予定の方はこちらも承継時に出しておきましょう。

事業開始から2ヶ月以内に提出しなければならないとされていますので、開業届を出す時に同時に提出してしまうのがベストです。

青色事業専従者給与に関する届出書

個人事業主の配偶者が事業を手伝う場合、その仕事に対して支払う給料は基本的に必要経費になりません。

しかし、「青色事業専従者給与に関する届出書 」を提出していれば配偶者への給与を経費として計上することが可能になります。

知らなかったら確実に損をしてしまいます。

一定の要件をクリアすることで全額経費とすることも可能です。

雇用契約書など

身内以外の方を従業員として雇用する場合には、また別途書類での手続きが必要です。

雇用契約書、労働条件の書類、雇用保険や労災保険などの加入手続きが必要になります。

事業が引き継がれるからと言って雇用がそのまま継続されるわけではありませんのでご注意ください。

開業届の書き方、提出方法については以下の記事を参考にしてください。

【個人事業の開業届】書き方や提出方法、メリット、注意点を徹底解説!

個人事業主の開業届の書き方についてはこちら「個人事業主の開業届の基礎知識!書き方、申請の仕方、開業届を出すメリット解説」の記事を参考にしてください。

事業承継は贈与とみなされる

個人事業主 事業承継 贈与税
個人対個人での間での事業承継では、基本的に開業届と廃業届だけで事業の承継は終わりです。

これで事業主が変わり、あとは本人同士の同意で事業を引き継ぐことができます。

しかし、この場合、元の経営者が持っている設備や土地などを無償で引き継ぐということにあたりますので、これは税法上、贈与とみなされるのです。

したがって、贈与税が発生するケースは少なくありません。

贈与税の税率と計算方法

経営者から後継者へ、無償で贈与された場合を例にとって、贈与税の計算方法を見てみましょう。

ただし、贈与が親子の間や祖父母と孫の間で行われた場合と、そうでない場合で、贈与税の税率や控除額が変わりますので注意が必要です(特例税率)。

一般税率(直系尊属と子や孫の間以外での贈与)

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

特例税率(直系尊属と子や孫の間での贈与)

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

贈与税がどれくらいかかるかの実例

次に具体的な数字をもとにして贈与税の例を見てみましょう。

今回は親から子へ事業承継をする場合のお話なので特例税率を使って計算します。

贈与税の計算方法

まず、贈与をする資産の総額を算出します。

資産と言えるのは以下のものです。

不動産、預貯金、商品、売掛金、社用車、設備など

次にマイナス計上すべき負債を算出します。

実は、負債も贈与することができます。

買掛金、未払い金(不良債権)、借入金など

そして、これらの差し引き合計額を贈与額として税率にあてはめます。

ただし贈与税の場合は一年ごとの基礎控除と税率計算となりますので、1月から12月にかけて贈与された金額が重要です。

何年かに分けて贈与することによって贈与税を低くおさめることも可能です。

贈与税の計算例(親子の場合)

贈与金額が700万円だった場合のケースで計算をしてみます。

1年間で700万円分の贈与をした場合

基礎控除額:110万円
税率:20%
控除額:90万円
贈与税額:88万円

贈与税の計算方法や手続きについて、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

贈与税の完全版!税率・計算方法・申告手続きについて丁寧に解説!

贈与税の負担を少なくする方法

個人事業主 事業譲渡 贈与税 節税

不動産を使用貸借する

個人から個人への贈与税が高額になってしまうケースをよく見ると、不動産の時価が高いためという点が挙げられます。

こういった場合の対処方法としては使用貸借という手段を活用することもあります。

使用貸借というのは賃貸と違って完全に無料で持ち主から他の人へ貸出をする契約です。

この方法で土地を新しい経営者に貸せば、贈与していなくても事業用地として使用することが可能です。

さらに、事業用地にかかった固定資産税などは経費として計上することもできます。事業承継する際に贈与税が高くなってしまうことを避けるためには、一旦使用貸借をする方が良いかもしれません。

個人事業主は、経費計上できるのかできないのか、迷うことが多々あると思います。

こちら「経費にできる、できない!?個人事業主が迷う経費について解説」の記事で、個人事業主の経費について解説しているので参考にしてください。

暦年贈与を活用する

暦年贈与を利用することで、どのような財産でも毎年110万円までの範囲であれば、税金を気にせずに贈与することが可能です。

したがって、500万円の財産を贈与したい場合、5年間に分けて100万円ずつ贈与していけば、贈与税はかからないということになります。

手続きとしては、契約書や贈与の記憶を残しておく必要がありますが、簡単なものなので、ぜひ活用して節税してください。

暦年贈与の計算方法や注意点など、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。

暦年贈与で贈与税が110万円分まで非課税!メリットや注意点を解説

事業承継税制の活用

事業承継税制とは、中承継業の事業承継において、非上場株式を贈与するときにかかる税金の負担を軽くする制度です。

平成30年の4月に改正にともない、中小企業の事業承継において、かなり有利な制度となっているので、ぜひ活用してください。

今回の改正における具体的なメリットとしては、自社株式を承継する際にかかっていた税金がタダになったということです。

現行の事業承継税制では、納税猶予の対象となる株式は、全体の2/3までと定められていましたが、今回の改正で全株式が対象となりました。

しかし、今回の改正は、平成30年から10年間のみの特例措置であるため注意が必要です。

上記以外にも、雇用確保要件に関するメリットなどがありますが、以下の記事で詳しく解説しているので省略します。

事業承継税制とは?適用要件や平成30年度改正のポイントも解説

個人事業での事業承継も税金がネック!

個人事業主 事業承継 まとめ

いかがでしたでしょうか?

書類の上での事業承継という手続きがいとも簡単である一方、資産の受け渡しということになってくると税金という要素が非常に重い問題であることがおわかりいただけたかと思います。

これらの問題をスムーズに乗り越えて事業承継をするには、節税ということが非常に重要になります。

税金対策をしっかりやりながら事業承継する場合は、専門家に相談するのが賢い方法でしょう。

【事業承継】後継者にかかる贈与税・相続税の節税対策を解説