個人事業主の事業承継はどうやってやる?事業承継が問題なのは会社法人だけじゃない!

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個人事業主の方が、後継者である子に事業を承継させることは良くありますよね。
しかし、いざ事業承継するとなると個人事業であっても大仕事です。

例えば相続するに任せて遺産として引き継げば問題ないのでしょうか?
それとも、経営者が生前に贈与という形で引き継ぐべきなのでしょうか?

遺産相続をするとなると、相続人が複数いた場合に、事業を後継者だけに引き継げない場合も考えられます。
確実に事業承継するには生前から準備をしておくのが妥当なのです。

しかし、事業の引き継ぎも実はかなり大変。
贈与税などのことを考えると簡単にはいきません。

今回は個人事業主の方が事業承継をする際の注意点や節税のポイントをまとめてみました。

事業承継をするための手続き

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個人事業主が事業承継をするという事は、元々の経営者が廃業するという事です。
次に、後継者が開業をします。

連続した事業ということにならないのがポイントですね。

それにしたがって、税法上の手続きがいくつか必要になります。

所得税について

廃業届出書

経営者は「個人事業の廃業届出書」を税務署に提出します。
これにより個人事業をやめたということになります。

青色申告とりやめ届出書

次に、事業承継に伴って青色申告は継続する必要がなくなる場合が多いと思いますので、その場合は「所得税の青色申告とりやめ届け出書」を税務署に提出します。

ただし、マンション経営などを継続して不動産所得がある場合は青色申告を継続することになりますので、特に必要ありません。

準確定申告

もし事業承継が生前に終わらず、遺産相続で事業承継した場合は、準確定申告が必要になります。
これは、生前経営者が得ていた所得についての確定申告を相続人である後継者の方が代わりに税務署へ申告しなければならない仕組みです。
経営者の方が亡くなってから4ヶ月以内と期限が定められています。

消費税について

事業廃止届出書

まず、免税事業者でなければ事業廃止をすることになるため「事業廃止届出書」の提出が必要です。

消費税簡易課税制度選択不適用届出書

年間の課税売上高が5,000万円以下の事業者の場合、消費税の仕入れ控除を定額で計算できる簡易課税制度で対応していることがあります。
事業者によってはかなり節税になるため、届出をしている場合は「不適用届出書」を提出します。

消費税課税事業者選択不適用届出書

また、免税事業者であったにも関わらずあえて課税事業者として届出を出していたような場合も「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出して「不適用になる」旨を税務署へ伝えます。

この2つの届出書に事業廃止することを記載しておけば、事業廃止届出書をあらためて提出する必要はありません。

生前に承継するほうが消費税は有利

生前に事業承継する場合と遺産相続による事業承継の場合とで、消費税の仕組みは少し変わります。
相続の場合、経営者が亡くなった年の売上高は、その後事業承継をした後継者に引き継がれます。

例えば800万円の売上があった場合、後継者が残りの期間で200万円以上売り上げると消費税の納税義務はその2年後から発生します。

一方、生前の贈与による事業承継であった場合は後継者は完全に新規開業になるため、承継した年度の途中までの売上金は関係ありません。

事業承継は贈与で対応できる

対象企業の要件・相続税・贈与税共通の要件 事業承継 贈与

個人事業主が後継者に事業を引き継ぐには、贈与という方法を取る場合がほとんどです。
事業主が保有している事業用の財産を後継者に買い取ってもらうということによって引き継ぐ方法もありますが、後継者に資産がないと買い取りはできません。
そのため贈与となるケースが多いのです。

贈与は当然無償提供です。
後継者に資産がなくても事業承継ができます。

事業承継で贈与税は発生する?

事業承継をするために親から子へ事業用資産を贈与した場合も贈与税が課税されます。
そのため、しっかりと贈与税を節税できるように考えておく必要があります。

事業承継する時に贈与税が多くかかってしまうと、せっかくの資産が目減りすることになり、事業の体力も低下してしまいます。
しっかりと準備してから事業承継に入りましょう。

この項目では贈与税の課税方式などを説明し、後ほど贈与をどのように進めるべきかのお話をさせていただきます。

贈与税の計算方法

贈与税で贈与できるのは資産と債務です。
買掛金、未払金、借入金などはマイナスとして計上できるため、うまく活用しましょう。

事業用不動産も贈与可能ですが、不動産は単体でも非常に高額になる資産のため、別途で対応をする方が有利です。
この点は後ほどご説明したいと思います。

その上で①資産と②債務の差し引き金額に応じて贈与税が決定されます。

贈与税の計算方法

(①資産-②債務)=「贈与を受けた資産合計額」

贈与を受けた資産合計額 - 110万円(基礎控除額) = 課税対象額

課税対象額 × 税率(累進税率) - 控除額 = 贈与税の額

ここで注意していただきたい点としては、贈与税は累進課税という事です。
つまり、贈与の額が増えれば増えるほど、贈与税で納める割合は高くなっていきます。

なんと、親子間での贈与でも最大税率55%となる累進課税です。
一方最低税率は10%になりますので、同じ資産でも贈与の方法によって大幅に節税ができるポイントとなります。

贈与税の税率

贈与税の税率は二通りあるのはご存知でしょうか。
一般贈与財産の税率である一般税率と特例贈与財産の税率である特例税率です。

特例税率が適用されるのは、贈与者が直系尊属(父母、祖父母など)で受け取るのが子や孫である場合です。
また、贈与を受ける年の1月1日時点で満20歳以上の成人であることも条件となります。

特例税率では贈与税がかなり優遇されますので、親から子へと事業承継をする場合には贈与が適していることがわかります。

また、贈与税は1月1日から年末の間にどれだけの金額を贈与したのかということで計算されるため、同じ年の間に多く贈与するとそれだけ贈与税も高くなることになります。

一般税率

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

特例税率

課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

贈与税がどれぐらいかかるかの実例

次に具体的な数字をもとにして贈与税の例を見てみましょう。
今回は親から子へ事業承継をする場合のお話なので特例税率を使って計算します。

1年間で3,000万円分の贈与をした場合

基礎控除額:110万円
税率:45%
控除額:265万円
贈与税額:1,035万5千円

いかがでしょうか?
なんと、特例税率を使っても3,000万円のうち1,000万円が税金として減ってしまうのです。
贈与税を軽く見ていると事業にとって大変不利であることがよくわかります。

贈与税をできるだけ節税するための具体的な方法

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それではこのような贈与税をできるだけ節税する方法をご紹介します。

暦年贈与を活用する

贈与税は1月~12月までの間の金額をもとに課税することから、暦年贈与という方法を取ることによって贈与税を低く抑えることが可能です。

つまり、毎年少しずつ贈与してゆくのです。
そうすれば、全体の税率を低く抑えたまま贈与ができます。

この方法は長い時間を掛ける必要があることと、相続が起こる三年前までの分は贈与ではなく遺産相続分として換算される点がデメリットです。
しかしそれでもかなり有効な節税対策であると言えるでしょう。

以下に、3,000万円を贈与した場合をまた例にとってみましょう。
1年間で贈与した場合と、10年間に分けて贈与した場合とをシミュレーションしてみます。

1年間で3,000万円分の贈与をした場合

基礎控除額:110万円
税率:45%
控除額:265万円
贈与税額:1,035万5千円

10年間で3,000万円分の贈与をした場合(1年間で300万円ずつ)
基礎控除額:110万円(1年あたり)
税率:10%
贈与税額:19万円(1年あたり)
合計贈与税額:190万円

なんと、10年間時間をかけるだけで800万円以上の差が出ることがわかります。
資産がもっと大きくなればさらに大きな差が出ることも考えられますね。

事業用の不動産は贈与すべきか

不動産の場合は一つの資産が大きな時価になっていることがあります。
価格が高騰している場合もあり、下手に贈与してしまうと贈与税が大変なことになります。
このような場合、経営者と後継者の間で使用貸借をするという方法があります。

使用貸借は賃貸と異なり、権利金などがかからず実質無料で土地を借りることができる方法です。
この方法では贈与税がかかりません。

さらにこの不動産から生じる減価償却費、固定資産税、修繕費などの必要経費を、土地を借りている後継者側が経費として計上できる仕組みがあります。
実際に土地を活用しているのは後継者となるからです。

ただし、土地の権利そのものが譲渡されたわけではありませんので、遺産相続が生じた場合には財産として相続されます。
しかし相続税の場合は基礎控除額が最低でも3,600万円(相続人の数によって増える)となるため、贈与で譲り渡すよりも有利になることもあるでしょう。

まとめ

個人事業の承継といえども、贈与や相続は必ず問題になってきます。
贈与税、相続税のことをよく知れば知るほど、資産をきちんとキープすることの重要性がおわかりいただけたかと思います。

贈与や相続はそれぞれ長所もあれば短所もあり、使い分けさえすれば節税効果も絶大です。
事業承継の準備は早すぎるということはありませんので、先手を打っておきたいですね。