2025年は相続試算共有が当たり前に?10年後の「相続サービス」のカタチ

相続試算共有

2015年に相続税法が変わったこともあり、「いま」相続がどうなっているのかを解説する記事は数多くあれど、5年後にどうなっているのか、10年後にどう変わっているのかを予測する記事は少ないもの。

筆者のように相続のサービスを開発していると、当然そこを描けなければ賞味期限の短いサービスになってしまいます。そこで、同じ相続周りでサービスを生み出そうとする起業家などと「未来の擦り合わせ」をしたとき、どのような共通事項が生まれるのでしょうか。

相続を巡る、10年後のカタチ。

1、相続における「当事者」とは誰か

相続試算共有

2018年になって、少しずつ相続を巡るサービスが生まれてきているように思います。実際にローンチ(提供開始)されていなくても、様々なアプローチが注目されています。ここで大切なのは、相続をめぐる「主体」の多さです。このサービスは誰の方を向いているのか。

これからの相続新時代。相続における「当事者」が拡大していくといわれています。現在の当事者はまず、現時点で資産を有している「被相続人」です。相続税はほかの税金に比べ特殊な税金で、対象者(対象財産の所有者)が亡くなったあと、その資産を承継したものに税金が課されます。同じ資産税である所得税も住民税も、このようなことはありません。

その一方で、現状の相続は「被相続人」が中心になって決めている場合が多いです。不動産を購入・売却するといったポートフォリオを変更にしても、被相続人の考えている方向性のもと金融機関や士業といった専門家に相談し、相続対策を完成させます。

専門家に相談するとしても、本来は「被相続人+相続人+専門家」であるはず。ただ現実には、被相続人+専門家で相続の大筋を決めていることも多いです。相続税の基本に立ち返ると、相続税を支払うのは相続人である一方、税金を支払う時点で固まった資産ポートフォリオは既に固まっているという指摘も。

本来は、資産ポートフォリオが固まる時点で、相続人である配偶者や子どもたちに、「家族」としての同意が求められるのが当然だと考えられますが、そうではない家庭も多いようです。相続対策として賃貸アパートの建設を決めたとき、いずれ所有権を引き継ぐ子どもたちは相談が成されなかったということも。それでも被相続人が亡くなったあと、相続人には不動産の所有権が移ります。それはプラスの意味ばかりではなく、入居率によっては資産の持ち出しが発生するという損失の一面も。

このような家庭では、被相続人が亡くなったとき、相続人から「自分が納得して建てられた不動産ではないので、承継しない」といったような意思表示が成され、家族内でトラブルになる「争族」が発生しがち。もちろん、不動産資産を「相続放棄」したからといって、すべてがリセットになることなどあるはずがありません。

この問題を解決するには、相続が起こる前から家族間で、相続における「当事者」は誰かを継続的に話し合っておくことが大切です。特に不動産や証券といった、相続試算に関わるポートフォリオが変わる場合は、関係者の意見を纏め、納得感を出しておくようにしましょう。ここに専門家を入れるというのも、賢い方法です。

2、2025年には相続試算を「共有」することが当たり前になる

相続試算共有 とは

そのうえでいえることは約10年後。2025年付近には相続の試算を「共有」するのが当たり前になるのではないか、という予測です。被相続人が、相続人が、という個人の枠組みよりも、「家族で」相続のことを話し合うのが当たり前になるという考え方です。

現在も相続について共有しようとする動きはあります。ただ、それは実際に相続が見えてきた段階で、という家庭は多い。年齢としては70歳や80歳、年齢のこともあり健康状態に陰りが見え、家族も高齢化を気にするようになってから、という傾向があります。

実際のところ、相続の準備はこの段階からでは「遅い」のが実情。理想は「50歳」といわれています。その理由は、20年~30年後に到来する相続の準備をするには、身体の不調がまだ少ない「元気」なうちに想定しておくことが何よりも大事。仮に認知症になったとすると、相続を巡る様々な意思決定ができず、選択肢が少なくなってしまいます。

もうひとつ、人口動態としての側面もあります。2021年に50歳になるのは、第二次ベビーブームに生まれた世代。まさに「団塊ジュニア」といわれる年齢です。都市居住者を中心に持ち家率も高く、早めの資産ポートフォリオの確率と、それを5年後、10年後にどうやっていくか。家族を含めた「グランドデザインづくり」が大切です。これらの受け手となるものとして、相続を巡る新しいサービスも注目されています。

現状、少しずつ相続や贈与のサービスは生まれているようには思います。ただ、その多くは相続が「起こってから」何をするかという視点でサービスを作ったものです。筆者の考えでは、相続を起こったあとは家族間の話し合いというよりも、手続きを如何に迅速に行うか、そして正確に行うかが大事。Technologyに限らずインターネットを取り入れたサービス化は必然であるため、あと1-2年もすれば様々なサービスが生まれてくることでしょう。

その一方で、相続の「前」はどうでしょうか。相続の準備は本記事の冒頭でお伝えした50歳よりも早ければ早いほど、相続をめぐる選択肢が多いのも事実です。そのため、相続の資産共有を前提としたサービス、それを家族で共有するサービスが浸透すると当社では考えました。また、その動きにともない、現状よりもキャッチ―で手軽な遺言や不動産の価格を手早く算出するサービスが誕生することが予測されます。

3、現状の法律との兼ね合いもポイント

相続試算共有 法律

ただ遺言に関して述べると、インターネットサービスで作成した遺言は法的拘束力を持つものとしては認められません。今年の通常国会で財産目録に関しては印字(パソコン)を利用したものが認められる見込みです。

遺言以外にも、不動産や証券の評価額や、価格の基準となる路線価、価格の変遷などを簡単に算出して、「相続のことはよくわからない」という層に提供する、そんなサービスが求められていくことと思います。

ここでもうひとつ、気になる兼ね合いの法律が「税理士法」です。税理士法では、いわゆる税務相談を税理士の独占業務としています。相続税を巡る状況や計算方法の提示だけでは問題ないのですが、「節税のために不動産を買い替える」や「資産ポートフォリオをこう変えると〇〇円が節税できる」という個別具体的な税務相談を税理士以外が行うと、法律違反になってしまいます。

ここはTechnologyといっても同様です。新しい相続のサービスがどれだけ革新的だからといって、法律に抵触するものは許されるものではありません。相続に限らず、証券や不動産に関わる場合は管理法が設定されています。事業承継やMAも同様です。今後はこれらの分野から相続に伸張したサービスも増えてくることでしょう。

利用者にとって、このようなコンプライアンスは直接関係のあるものではありません。ただ、サービスによってはセンシティブな情報や、財産を預けるサービスもあるため、会社としての信頼感に大きく関わってきます。いわゆる会社としての「姿勢」を利用者が判断するのに、とても大切な要素です。

その視点からも、今後のサービスに注目していきましょう。