36歳で「遺言」を書いてみようと思ったこと

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筆者(本記事は『私』という一人称です)は今年36歳。

干支を3回転しての年男を迎えています。縁あって相続のサービスを世の中に提供することになりましたが、最近つくづくと感じているのは、相続の準備をすることに「遅い」はあっても「早い」はないということ。

 

それは専門家の共通した意見だと思います。

たとえば相続税の試算をするにしても、現時点の計算根拠となった所有資産の配分(ポートフォリオ)に変更があれば、再度計算をして家族間で共有すればいいもの。話し合いの時間を長くすることで、心理的な壁を緩和し、いわゆる「相続トラブル」にならない可能性も高めます。

 

これは相続を代表する遺言も一緒。手書きの遺言(自筆証書遺言)をいま作成して、2年後に遺したい意志(遺志)が変わったら、再度所定の手続きを守った遺言を再作成すればいいだけのこと。

 

そこで、相続に関わる仕事をしていることもあり、今回は36歳で遺言を書いてみようかな、と思いました。

 

30代で遺言を書くとどんなメリットがあるのか

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言わずもがな30代が現役生活の只中です。よく40代以降を「脂の乗った世代」といわれますが、雌伏の時というのでしょうか、脂に乗る前の準備段階という言葉が相応しい年代です。

40代や50代では実際に相続のことを考え、遺言など具体的手段に移っている方が多い一方(それでも取組がもっと増えて欲しいとは思いますが)、20代では新社会人ということもあり流石にまだ早い。

 

社会人にも慣れ、少しずつ立場を確立した30代だからこその意味合いがあります。

 

その一方で哲学的な書き方ですが、人間はいつ人生の終わりを迎えるかはわかりません。

人生を全速力で駆け抜けている途中だからといって、相続税は容赦されることなく、死亡時の財産に対して課税されます。特に「新しく自宅を購入した」、「将来に向けてiDeCo(確定拠出年金)の積立を開始した」という30代の場合は、そのぶん銀行口座に入っているキャッシュこそ少なくなっていますが、不動産や証券資産を受け取った相続人にも税金は課税されます。

 

また、相続というと資産を承継する人も独立した成年を思い浮かべますが、子ども、孫もいずれも誕生した時点で「相続権」を得ます。

 

つまり、90代で相続を迎えようが、30代で迎えようが、相続は変わらず重要なテーマになる「ライフイベント」といえます。

基本的には、私が「遺言」を遺しておいた場合はその内容が優先され、遺言を遺していない場合は遺された人間間の話し合いと法律による「法定相続分」で決められます。

 

ちなみに。私は2歳下の妻がいるため、財産の2/3は妻に、残りの1/3は二等分され1/6ずつ実家の両親に分配されます。(縁起でもないですが)仮に両親が亡くなっている場合は2人居る兄弟に財産が分配されることになります。

 

私の相続試算の中心は、会社の経営者のため「非上場の株式」です。

特にベンチャー企業は、10年後に同じ価格とは言えないために値付けがとても難しいのですが、仮の価格をつけたうえで相続試算として承継します。また、私は自宅など不動産資産を所有していませんが、これらも購入時から目減りをしていく資産として代表的な存在です。

 

これを理解しているのは何よりも私自身です。

そのため、私がどのように資産を承継して欲しいのかという「最優先事項」を書面で残すことによって、「相続対策」をすることができます。これが遺言の最たる役割です。

 

若年のうちに遺言を書くとデメリットになること

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それでは逆に、30代で遺言を書くとデメリットになることは何でしょうか。

それは、「遺言を書いたあと財産状況が変わる可能性がある」ということ。

もちろん財を成して増えることがあれば頼もしいのですが、反対に大きく減ることもあります。3年前に書いた遺言が、現実の資産状況とまったく合わないというケースも。

 

実はその場合も、まったく問題はありません。

例えば平成30年に書いた遺言があり、5年後の平成35年に作成した遺言がある場合、内容の重複部分に関しては「新しい遺言」がすべて優先される仕組みになっています。

 

極論を書くと、毎年お正月やお盆の恒例行事として、新しい遺言を書いても何も問題がない、ということがいえます。

 

なぜ若いうちに遺言は書かれないのか

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ライフプランにおいてここまでメリットが際立つのに、なぜ若年のうちに遺言は書かれないのか。それは、遺言という言葉が持つネガティブさです。

 

30代のうちに体調が悪いな、と思うことがあっても、誰しも明日人生の終わりを迎えるとは考えていません。現実に30代の死亡率は(高齢者に比べ)、著しく低くなっています。

ただ、明日自分が死亡することを考えるのは「縁起でもないこと」であり、できるだけ考えたくないことです。若いうちに遺言を書いて、万が一近いうちに、これを使うようになったらどうしようという思いもあるでしょう。

 

少し時間がかかるかもしれませんが、ここで発想の転換をしてみましょう。

遺言はネガティブなものではなく、遺される家族のことを考えた、ポジティブなものです。

また、遺言を活用した相続対策というと、どうしても「節税」という言葉ばかりがピックアップされてしまいますが、配偶者や複数の子ども(合わせて相続人といいます)に資産をどのように分けるのか、どのように分ければ自分の死亡後に家族親族がトラブルにならないのかを考える貴重な機会です。

 

遺言を書くのにベストなタイミング

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私は遺言を書こうと思うにあたり、ベストなタイミングを探るようになりました。日常のメモ書きのように書いてもいいのですが、やはり特別なもの。現時点の候補は以下のタイミングです。

  • 誕生日(7月)
  • 結婚記念日(12月)
  • お正月

 

いずれも今年の区切りとなる大切な日です。この日に「もしも」の時に対するメッセージを書くことで、毎日の生活にもより意味を持たせられるのではないだろうかと考えています。そして、ここで大切なのが「家族にいうかどうか」ということ。

 

遺言は、家族に見つけられなければ意味がありません。ただ、日常を頑張っている家族に突然、遺言の話をすると、「そんな不吉でもない」という反応をされるのが落ちです。家族と将来のこと、万が一亡くなったときのことを話したことがあるなど、ポジティブさを持てる人であればいいでしょう。そうではない場合は、「誰かに預ける」という方法があります。

長年続いている親友関係や、親や兄弟などの親族、若しくは正規の方法である公証役場という方法もありますが、お勧めしたいのは専門家。弁護士や司法書士、行政書士といった遺言に詳しい専門家に預ける方法もあります。

 

これらは金融機関が遺言信託という形でも受け入れていますが、顧問としての専門家がいる場合は、頼ってみるのもいいでしょう。

この場合は遺言を専門家が預かるというよりも、ともに遺言を作り、遺言として有効になりそうか(実際に有効かを判断するのは死亡時)、そして保管場所をどうするかを共有認識しておくことが効果的です。

 

36歳で遺言を書いてみようと思ったこと。毎日を全速力で走るということは、「万が一」に対して可能な限りを準備をすること。相続など縁起でもない年代だからこそ、考え始める。少しずつ、そんな方が増える時代になればと願っています。