事業承継を阻む要因と対処方法をわかりやすく解説!うまくいかないのはなぜ?どうすればいい?

事業承継 問題

事業承継税制が改正されたこともあり、事業承継が大変注目を浴びています。
ただ、言い方を変えると、それくらい今まで事業承継が進んでいませんでした。
人口構造が急速に変化するわけでもないので、何年も事業承継の重要さは認識されてきていた一方、事業承継を阻む要因があったために、多くの経営者が見てみないふり状態だったのです。

ところが、ここに来て、オーナー経営者の高齢化が顕著になり、事業承継が待ったなしの状況になってきたのです。
そこで、今回は、そんな事業承継を阻んでいる要因と対策方法について、考えていきたいと思います。

事業承継問題に取り組む覚悟がまず必要

事業承継問題 買収

そもそも事業承継は、多くのオーナー経営者にとって、いつか来る自分の「死」に向き合う問題です。
人間、みんないつか死ぬことは知っていますが、特に健康なうちはその来るべき死について、現実問題として捉えている方はほとんどいません。
それどころか、死という縁起の悪いことに触れるのは、タブーという風潮もあり、なかなか家族や従業員、顧問税理士や弁護士などにも相談できません。
そうすると、いざオーナー経営者が倒れたときや重たい病気にならないと、事業承継問題について取り組み始めないということになります。

ところが、「事業承継はいつから考えればいい?対策の検討開始時期は60歳で、65歳にバントンタッチが最適」でもご紹介したように、60歳を超えると生存率が年々急速に下がっていきます。
自分の死が「いつかくる」から「明日は我が身」へと変わっていくわけです。

そんなとき、

  • なんかめんどくさそう
  • 死を考えるなんて縁起悪い
  • 言い出しにくい
  • 後継者に引き継いだら、追い出されそう
  • 事業承継みたいにいつかくる問題より、目先の金策や重要な案件に追われている

など言い訳をして、いつまでもずるずると事業承継をしないと、いざというときに従業員や家族が路頭に迷うことになります。
ご自身の会社を考えてみると、いきなり社長が倒れたときのことを考えてみると、次の日に大混乱する姿が容易に想像つきますよね。
もしかすると、特に創業者でオーナー経営者の方は、自分が急に倒れることで、いまの副社長や専務が代わりに社長になり、うまく経営できずに倒産していく姿まで、簡単に想像できる方も少なくないと思います。
そうすると、これまでせっかく築いてきた会社がなくなるだけでなく、従業員やその家族の生活が守れず、多くの方に迷惑をかけてしまうことになります。

たしかに、特に事業承継は自分の死という非現実的でかついつくるかわからないものと向き合うことになるので、事業承継をやらない、やりたくないという言い訳はいくらでも考えられると思います。
でも、いつか来るけど遠い未来の問題として言い訳せず、いざという時のために覚悟をして準備をすることが大切です。
市況が変わったときのために、内部留保を積み上げておくのと同様、いざ自分が倒れたときのために事業承継をしておくことが、経営者としての責任です。

事業承継を阻む要因と解決策

相続相談 事業承継 解決

事業承継には覚悟を持って取り組む意思と姿勢が重要という話をしてきました。
その上で、いくら意思と覚悟があっても、事業承継を阻む要因があります。
ここでは、事業承継が進まない要因と解決策について、解説していきたいと思います。

後継者不足

事業承継を阻む要因として、一番よくあげられるのは、この後継者問題です。
一口の後継者問題といっても、

  • そもそも後継者がいない
  • 複数の後継者候補がいて、決めきれない

など、さまざまなケースがあります。
さらに、複数の後継者候補がいる場合は、後継者間での争いやギクシャクした関係、ひとりに絞るときの根拠や関係者の納得感など、さまざまな問題があります。
なので、後継者の選定と同時に、後継者が社長の立場になったときに、経営が円滑に行える環境を整えておいて上げることが大切になります。

また、近年では、息子をはじめとした血の繋がった親戚を後継者にする親族内承継ではなく、社員や社外の人材に社長をまかせる親族外承継が増えてきました。
親族外承継には、本当に社長をしっかりと任せられる実力のある人材が採用できるかという問題もあります。
一度に社長として任せず、経営者に近いポジションから徐々に見極めて行く必要があります。

個人保証や担保資産の問題

個人保証や担保資産の引き継ぎ問題も、事業承継を阻害する深刻な問題です。
多くの中小企業のオーナーが、会社の資金を銀行から借り入れていますが、通常はその借入に個人保証をしたり、個人資産を借入の担保として提供しています。

これらの個人保証や担保を、後継者は引き継ぎするように銀行から言われます。
つまり、後継者として会社を引き継いだら、自分が作った借金でもなんでもないのに、その会社の借金を自分が個人保証しないといけなくなるということです。
まだ株式も相続や贈与でもらっていたら自分が持つ会社の借金なので納得感はありますが、株式を持っていなかったりすると最悪です。
また、親族内承継の場合で、親が経営してきた会社の借金を個人保証するのも、納得できます。
ところが、親族外承継で外部から後継者をいれる場合、個人保証や担保を提供してまで、後継者になるという人がどれだけいるでしょうか。

反対に、引退する側からの観点でも、基本的に引退後に銀行は個人保証を外してくれないケースが多いです。
親族内の承継の場合は、まだ息子などのために個人保証に入っておいてやるという考えもありますが、親族外承継の場合は最悪です。
経営に関与しない赤の他人の元社長が、かつて経営していた会社の債務をいつまでも個人保証しないといけないというのは、制度的におかしいですよね。
でも、それが多くの場合の現状なのです。

とはいえ、個人保証や担保を提供する必要のない借入もありますし、一定の信頼の蓄積などで個人保証が外れることもあります。
完全な事業承継のためには、なんとか個人保証を外せるように、銀行と交渉するしかありません。

共同経営者との関係

意外となさそうであるのが、共同経営者の問題です。
共同経営者といっても、スタートアップのような共同経営者ではなく、親戚が共同で経営陣に入っているケースです。
オーナーの兄弟が取締役に入ってるというケース、結構多いですよね。

このような共同創業者がいる場合に主に問題になるのは、

  • 社長を誰がするか
  • 株式の分散

などのことです。

たとえば、現在の社長の弟と息子が会社にいるケースで、考えて見ると、次だれを社長にするかが問題になります。
特に、社長の弟が結構な割合の株式を持っていると、ことは複雑になります。
社長が死んだときにパターンとして考えられるのは、

  • 弟が社長に就任
  • 息子氏が社長に就任
  • 弟は引退
  • 弟が社長に就任して、さらに弟の息子も将来の経営者候補にする

などなど、多くのパターンが考えられます。
これらの話し合いがしっかりできていないと、事業承継がうまくいきません。
読んでいるだけだと、簡単に話し合いできそうと思うかもしれませんが、長年会社を支えてきた弟にしっかり配慮しないといけなかったり、後を継ぐはずの息子の実力や社員との関係など、さまざまなことを考慮すると、この問題は結構複雑です。
それ故に、億劫で事業承継に手を付けられないでだらだらと先延ばしにしている経営者の方も、多くいらっしゃいます。

また、株式が分散していくことも、事業承継を阻害していきます。
共同経営者にいれた親戚に、自分の形見のような感覚で株式を渡す方がいますが、それが単に自社株の分散につながります。
現在の社長がなくなった1回目の事業承継はうまくいくかもしれませんが、さらに共同経営者がなくなったとき、会社とはあまり関係のない方に株式が相続されていき、結果的に次の世代に安定した事業承継ができません。

これまで共同経営者として長年支えてくれたという功績を認めて株式を上げるのは理解できますが、それでも安定的な事業承継の観点では、株式ではなく、別の財産を承継するようにした方が得策です

相続税の支払い

最後に、事業承継において深刻な問題にんあるのが、相続税をどうするかという問題です。
自社株を移転すると、

  • 相続:相続税
  • 生前贈与:贈与税
  • 売買:譲渡所得税

という税金がかかってきます。
特に、財務状況のいい起業ですと、自社株の評価額が高く、納税資金として多額の現金を容易する必要が出てきます。
基本的に現金一括払いなのですが、自社が上場でもしていない限り、自社株を市場で売って現金化できませんよね。
そうすると、税金が払えず、事業承継ができないというケースがあります。

どれくらい税金がかかるかというと、時価総額10億円の会社を例に考えてみます。
そうすると、相続税は、各相続人の合計額で、

自社の評価額10億円×55%−7,200万円=4億7,800万円

という計算になり、10億円の会社を事業承継するのに、5億円弱を納税しないといけなくなります。
そんな現金、なかなか用意することができません。

なので、一応回避策もあり、

  • 事業承継税制の適用
  • 自己株式取得による現金化

という方法があります。

事業承継税制の適用については、「事業承継税制とは?適用要件や平成30年度改正のポイントも解説」にまとめておりますので、詳細はそちらを参考にしてみてください。
一定の条件下で、この株式の相続税が免除されるという特例です。
さすがに、こんなに相続税がとられていたら、事業承継なんてすすまないので、政府としてもこれはやばいということで、事業承継の際の相続税や贈与税を免除することで、なんとか廃業の数を減らそうとしています。

自己株式取得による現金化は、相続発生後、会社が相続税分を後継者である相続人から買い取ることで、相続税を確保する手法です。
前述の例で言うと、10億円の株式を相続する際に必要となる4億7,800万円を、相続が発生していざ相続税を払わないといけなくなる際に、自己株式買取をすることで相続人の手元に現金を確保します。
そうすることで、なんとか相続税を納付することができるという方法です。
実際には、自社株の取得にも課税などがあるので、税務的には5.3億円分の自社株買取が必要になります。

ただ、この自己株式取得の方法だと、たしかに株式の相続はなんとかなりますが、会社の現金が減ることになります。
もちろん利益剰余金がたくさんある場合はかまいませんが、会社の経営を圧迫しかねないということになります。
なので、できれば避けたいですし、もしくは多少の現金が減っても問題のないような財務体質に整えておいて上げることが重要になります。

まとめ

今回は、事業承継を阻んでいる要因と対策方法について、解説してきました。
事業承継に関わる問題の難しいところは、短期間で一気に解決できない問題が多いということです。
にも関わらず、社長の死は突然やってくるかもしれません。
いつかやるではなく、残された従業員のためにも、なるべく早く覚悟をして、事業承継に取り組むことが、経営者としての責任といえます。