遺言によって財産を渡す包括遺贈と特定遺贈の全て!どっちを選択すればいい?

終活 遺言によって財産を渡す包括遺贈と特定遺贈の全て!どっちを選択すればいい?

相続は、特に遺言がなくても、民法で定められた法定相続人が、同じく民法で定められた法定相続分に従って相続することが原則です。
ところが、民法の規定に従った相続財産の分配ではなく、遺言によって財産を渡すこともできます。
ここまではよく知られているかと思うのですが、遺言による財産の相続には、

  • 包括遺贈
  • 特定遺贈

の2つがあります。
初めて聞く人には、

「なんやそれ!何が違うん?」

って思いますよね。
そこで、今回は、遺言によって財産を渡す方法である「包括遺贈」と「特定遺贈」の2つについて、詳しく解説していきたいと思います。

包括遺贈の基礎知識

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では、まずは包括遺贈について、基礎的な知識を解説していきたいと思います。

包括遺贈の定義

包括遺贈というのは、

「全財産のXXX%を○○に渡す」

というように、全財産の一定の割合を決めて、その割合を包括的に遺贈するというものです。
具体的に、家は誰に渡して、株券はだれに渡すというようなものではなく、包括的に全遺産の数分の1というような割合で遺産を分割する方法をいいます。

包括遺贈の特徴

包括遺贈の特徴としては、相続人と同じ権利や義務を有するという点です。
遺贈なので、相続人でありませんが、相続人と同じ立場で同じ権利や義務を持ちます。
なので、具体的な遺産分割は、相続人と包括遺贈された人が一緒に集まって、遺産分割協議で決めることになります。

包括遺贈のメリット

包括遺贈のメリットは、

  • 財産内容が変わっても問題が起きない
  • 遺産分割協議に参加可能

という点です。

「遺言書を書いた時点では、〜だけの資産だったんだけど、そのあと不動産とか株とかを買ったりして、いまは全然内容が変わってしまって、どうしたらいい?」

という相談があります。
また、このようなことがある人は、遺言の内容を変更してもまたどうせ資産が変動することになるケースが多いかと思います。
相続財産があまりない方だとそんなに増減がないかもしれませんが、不動産投資などの投資を積極的にしていたり、会社を経営しているようなケースでは、一度遺言を書いても資産が変動していきます。
たとえば、去年は資産はワンルームマンションを5室しか持っていなかったんだけど、今年はさらに買いまして10室になって、しかもこれからもローンができるかぎりはどんどん買いましていくということなんて、結構よくある話ですよね。

そこで活躍するのが包括遺贈です。
「資産の○○%」というような書き方で指定することで、遺言書を書いた時点と相続が発生した時点で財産内容に変化があっても、全く問題になりません。
全資産の一定割合を渡すことを定めるだけなので、あとは相続人が集まって、具体的に割り方を実際に相続が起きたときの資産内容でわけてもらえばいいのです。

また、これはメリットでもあり、反対にデメリットにもなりえますが、包括遺贈の場合、遺贈された人がもともとの相続人でなくても、遺産分割協議に参加できます。

包括遺贈のデメリット

包括遺贈のデメリットは、

  • 借金やローンなどの債務も同時に引き継ぐ必要
  • 相続放棄が出来るのは3ヶ月以内

といった点です。

まず、包括遺贈は、財産だけでなく、借金やローンがあった場合でも、定められた割合に応じて包括的に引き継ぎをすることになります。
なので、財産内容が完璧にわかっている場合は、特に問題なく引き継ぎをしてもいいかと思いますが、隠れた借金やローンがあとで出てきたみたいなことが起きないように、十分に注意しなくてはなりません。

しかも、この包括遺贈の場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをしないと、相続放棄ができないという期限があります。
もし相続放棄をしない場合、上記の通り、隠れた借金やローンがあった場合でも引き継ぎをしないといけなくなります。

つまり、ひとことでデメリットというと、包括遺贈の場合は、包括的に財産や債務を引き受けなくてはならないので、隠れた債務を引き受けてしまうリスクがなきにしもあらずというところです。

特定遺贈の基礎知識

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次に、もうひとつの遺言による財産分与の方法である特定遺贈について、基礎的な知識を解説していきたいと思います。

特定遺贈の定義

特定遺贈というのは、相続する資産を特定して遺贈するということです。
たとえば、

「いま住んでいる家は、○○に渡す」

というような遺贈の仕方です。
相続とか遺言というと、こちらの方法で遺贈する方が、一般の人にはイメージが強いようで、多く用いられています。

特定遺贈の特徴

特定遺贈の特徴は、引き渡す資産が遺言によって決められているという点です。
つまり、亡くなった後に、どう資産をわけるかの協議をしなくていいということになります。
通常は、他の相続人や受遺者が集まって遺産分割協議をするのですが、特定遺贈の場合は、すでにどの財産がだれにいくかを指定されているので、話し合う必要がないですよね。
なので、視点を変えると、揉めずに済みます。

特定遺贈のメリット

特定遺贈のメリットは、包括遺贈の反対で、

  • 借金やローンなどの債務の引き継ぎが不要
  • 相続放棄がいつでも可能

という点です。

引き継ぎ資産を特定されているので、借金を相続することというような変な遺言がない限り、借金やローンなどの債務を引き継ぐことはありません。
もちろんかりにそんな遺言があっても、相続放棄すればいいだけです。
あとで知らなかったような隠し借金が出てきた場合でも、問題ないので、安心して相続ができます。
相続放棄も可能で、かつ期限もありません。
引き継ぎ手の視点で考えると、この特定遺贈で財産を引き継いでもらえると大変ありがたいですよね。

特定遺贈のデメリット

特定遺贈のデメリットは、包括遺贈の反対で、

  • 財産内容が変わると問題が起きる
  • 遺産分割協議が長期間になることもある

という点が挙げられます。
つまり、遺言で引き継ぎ手が指定されていない財産をどうするかという問題が残ります。
また、株や不動産など、値段や価値の変動するものを遺贈した場合、当時はそんなにたくさんあげるつもりでなくても、結果的に株や不動産価格が暴騰して、他の相続人間で不公平感が残るときもあります。

また、特定遺贈の場合、相続放棄の期限が定められていないため、相続財産が確定するのが遅れることがあります。
そうすると、いつまでも特定遺贈以外の相続財産の範囲が定まらないため、相続人が集まって行う遺産分割協議が遅れることになります。

「放棄するかどうか、はよ決めろや」

っていうような、不満が相続人に貯まることになりかねません。
もし、受遺者が遺贈を放棄するのかをいつまでもだらだらはっきりさせないケースでは、他の相続人から受遺者に対して適切な期間を定めて、催促をすることができます。
さらに、催促しても意思表示をしない場合、放棄をせずに遺贈を受けたものとみなされます。
ただ、そういう制度はあっても、遺産分割協議が長引くことにはかわらないので、めんどくさいです。

特定遺贈の注意点

特定遺贈には、借金やローンを引き継ぎリスクがない分、包括遺贈にはない注意点があります。
具体的には、

  • 相続税の計算から債務や葬儀費用が控除できない
  • 不動産取得税が課される

という点です。

相続税の計算から、債務や葬儀費用が控除できないというのは、本来特定受遺者は負担する義務がないためです。
なので、もともと相続人である人が、特定遺贈をされた場合は、通常の相続人と同様に、債務や葬儀費用は相続税の計算から控除できることになります。
また、もともと相続人でない人で特定遺贈されたケースでも、債務を負担することを条件に特定遺贈された負担付き贈与の場合、当然に相続税の計算から控除できることになります。

また、不動産取得税については、相続人以外に遺贈した場合は、通常課されます。
反対に、特定遺贈された場合でも、もともと相続人であった場合は、不動産取得税はかかりません。

特定遺贈と死因贈与の違いは?

よく混同するものに、死因遺贈というものがあります。
違いは、

  • 遺贈→受遺者の承諾不要
  • 死因贈与→あらかじめ契約が必要

という点にあります。
もちろん、両方がされているケースもあります。
そのような遺贈による遺言書と死因贈与契約書が同時に発見されたケースでは、作成日付が新しいものが優先されることとなっています。

特定相続では遺留分の考慮が必要

特定相続では、遺留分の考慮をして置く必要があります。
相続財産には、遺留分といって、法定相続人に最低限保証された取り分というものがあります。
ひとりの人に全ての財産を渡すことは、たとえ遺言があってもできません。
特定贈与を行う場合、相続人の遺留分を上回る金額を贈与してしまうと、相続人と特定遺贈の受遺者の間に、トラブルが起きます。
そのことを考慮して、特定遺贈の内容を決める必要があります。

ちなみに、遺留分は、

  • 遺留分額 = 遺留分算定の基礎財産 × 個別的遺留分
  • 遺留分算定の基礎財産 = 被相続人の財産 + 贈与財産の価額 - 被相続人の相続債務

という計算で決定します。

包括遺贈と特定遺贈のどっちがいい?

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ここまで、包括遺贈と特定遺贈について、解説してきました。
そして、気になるかと思うのは、結局どっちにすべきかということだと思います。

実際のケースは、ほとんどが特定遺贈です。
というか、そもそも包括遺贈みたいな遺言のイメージは、専門家とか相続についてしっかり調べた人以外は、あまりないのではないかと思います。
とはいいつつ、包括遺贈の方がいいケースもあるので、それぞれどういうときに選べばいいのかを解説していきたいと思います。

包括遺贈の方がベターなとき

包括遺贈がまずベターなケースは、

  • 資産の変動や変更が起きて、相続する資産内容が確定しづらい
  • 具体的な分割は相続人に任せたい

というようなケースです。
つまり、具体的に引き継ぎたい財産を特定できなかったり、特定したくないという方は、こちらの包括遺贈がベターということになります。

特定遺贈の方がベターなとき

一方、特定遺贈がベターなケースは、

  • 借金やローンなどの債務を引き継がせたくない
  • 具体的に誰に何を渡すか指定したい
  • 相続人が仲が悪かったりするので、遺産分割協議が不要な引き継ぎ方をしたい

というようなケースです。
特に、相続では、遺産の分割で揉めることが多くあります。
血みどろの争いをしているケースを、身近にみたことがある人も多いのではないでしょうか。
特に、資産がある方が亡くなると、揉めるケースが多いですし、場合によっては遺産を抱えて遺言執行人から逃げまくることもあるようです。
そんなことにならないように、特定遺贈を選択するのが一般的になっています。

包括遺贈か特定遺贈があいまいな遺言は避けるべき

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遺言の中には、

遺言執行者は、遺言者の預貯金や株式その他の財産を全て換金し、債務や未払金を支払い、残金を○○(相続人)に2分の1、XXX(受遺者)に2分の1支払うことにする。

というような遺言状を書くときがあります。
つまり、全財産を全て換金して、借金とかを精算して、その残ったお金を相続人や受遺者でわけなさいというような内容ですね。
債務を払い終わったあとに残った額を株主で分けるというよな会社の廃業に似ています。
この形式は、「精算型遺贈」とよばれています。

それで、この精算型遺贈のケースで問題になるのが、特定遺贈なのか、包括遺贈なのかです。
残った「残金」を分けるので、特定遺贈にも思えます。
一方で、残金は2分の1ずつ分けるように書かれているので、包括遺贈ともとれます。
どっちやねんということになります。

この場合、実務的には、特定遺贈と判断されることが多いようです。
ただし、細かい話なのですが、遺言書に「包括して遺贈」というように、包括の文字が出てきたら、包括遺贈と捉えることになります。
なぜ特定遺贈か包括遺贈かの解釈が問題になるかというと、贈与税がかかるかもしれなかったり、遺産分割協議が必要になるかどうかもあります。
ムダな税金を払ったり、ムダに議論したりしないですむように、どっちとも取れるような遺言書を書かないことがオススメです。

まとめ

今回は、遺言によって財産を渡す方法である「包括遺贈」と「特定遺贈」の2つについて、解説してきました。
内縁の夫・妻、息子の嫁、養子縁組をしていない子、孫など、法定相続人以外に財産を渡したいことも多々あります。
そんなときに使うのが遺贈という方法。
そんな遺贈には、財産を渡す割合を指定して遺贈する包括遺贈と、引き継ぐ財産を指定する特定遺贈があります。
どちらがいいかはケースバイケースです。