株式譲渡とは?メリット・税金・手続き・契約書について徹底解説!

事業譲渡 税金

もしもあなたがM&Aや事業承継を考えているのであれば、どのように経営権を引き継いでもらうか悩んでいるのではないでしょうか?

例えば、中小企業のM&Aでよく利用されているのが、株式譲渡という手段です。

株式譲渡は簡単な手続きで柔軟に会社の事業や資産を譲ることができます。

株式譲渡にはメリットが多いので、他のやり方でM&Aをするよりも得になるかもしれません!

今回は、株式譲渡のメリットや手続き、必要となる税金などについて解説します。

株式譲渡についてしっかり理解して、円滑に事業や資産を譲りましょう。

事業承継のためのM&Aとは?メリットや方法、注意点をご紹介

株式譲渡とは?

株式譲渡  とは

株式譲渡とは、売り手企業の株主が保有株式を買い手企業や買い手個人に譲渡して、対価を受けとるものです。

それによって、会社の経営権を買い手側に譲ることができます。

株式譲渡は手続きが簡単なこともあり、中小企業のM&Aでよく利用される方法です。

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1−1.株式譲渡と事業譲渡の違い

事業譲渡は特定の事業を買い手に譲渡するというものです。

事業譲渡では会社の株式は動かないので、譲渡対象以外の事業はそのまま会社に残ります。

それに比べて、株式譲渡は会社の株式を譲渡するというものです。

株式譲渡では、その会社の事業や資産を譲るということになります。

A事業は残してB事業は譲渡したいという場合には、事業譲渡を行わなければなりません。

株式譲渡の売り手側の3つのメリット

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株式譲渡を行う際の、売り手側のメリットは以下の3つです。

売り手メリット1.手続きが簡単
売り手メリット2.売却株式の比率設定が柔軟にできる
売り手メリット3.株式譲渡益の税率が低い

順番に見ていきましょう。

売り手メリット1.手続きが簡単

株式譲渡は手続きが簡単なので、手間もかからずスムーズに行えます。

それによって、株主は、株式公開での創業者利益を狙うよりも簡単に現金を手に入れることが可能です。

すぐに現金が欲しいという状況なら、株式譲渡をすることで解決することができます。

売り手メリット2.売却株式の比率設定が柔軟にできる

株式譲渡を行うときには売却株式をどの程度の比率にするか交渉で柔軟に決めることができます。

一般的に株式の持株比率はその会社の所有権の比率ということです。

発行済株式が100株で100株を持っている場合は、その会社を100%所有しているということになります。

持株分は比率によって行使できる権利が変わるので、重要なポイントです。

100%の持株比率なら、その会社の意思決定を全て行うことができます。

会社を売却したい場合は100%譲渡すれば良く、事業提携がしたいなら買い手会社に権利を与えすぎないように適切な割合を譲渡すれば良いのです。

売り手メリット3.株式譲渡益の税率が低い

株式譲渡では、譲渡益にかかる税率が低いです。

したがって、売り手は多額のキャッシュを得やすくなっています。

事業譲渡の場合は、譲渡益は売り手企業の法人所得となるので29%〜42%の法人税が必要です。

株式譲渡の場合は、株主が負担するのは20%の所得税率なので、事業譲渡と比べると税率が低くなっています。

株式譲渡の買い手側の3つのメリット

事業承継ガイドライン 注意点

株式譲渡を行う際の、買い手側のメリットは以下の3つです。

買い手メリット1.手続きが簡単
買い手メリット2.持株株式の比率設定が柔軟にできる
買い手メリット3.資産や契約などを引継ぎやすい

順番に見ていきましょう。

買い手メリット1.手続きが簡単

株式譲渡は手続きが簡単なので、手間もかからずスムーズに行えます。

株式を取得する手続きのみで経営権を引き継ぐことができるのです。

したがって、株式譲渡では後継者にスムーズに事業を譲りやすくなっています。

買い手メリット2.持株比率の設定が柔軟にできる

売却してもらう株式の比率を自由に決めることができることは買い手にとってもメリットです。

100%の株式譲渡でも1%の株式譲渡でも、会社の持株比率が変わるだけなので会社の許認可や契約関係などは特に変わりません。

株式譲渡の目的に応じて、どのような持株比率にするのかを柔軟に決めることができます。

買い手メリット3.資産や契約などを引継ぎやすい

会社は株式譲渡をする前の状態のまま存続しているので、資産や契約関係を引継ぎやすいです。

株式譲渡を行っても、原則としては株主が変わる以外に大きな変化がありません。

事業に関する許認可や取引先との契約関係もそのまま存続しているので、事業を継続しやすいです。

株式譲渡の方法 【譲渡制限株式の場合】

株式譲渡  方法

株式譲渡は、簡単な手続きで行うことが可能です。

ただし、非上場企業の株式は譲渡制限株式の場合がほとんどになっています。

譲渡制限株式を譲渡するなら、売り手は株式譲渡承認の請求を行わなければなりません。

譲渡制限のついた株式譲渡の手続きは以下の4つです。

手続き1.株主から会社に株式譲渡承認の請求・臨時株主総会の開催決定
手続き2.臨時株主総会で株式譲渡を承認・株式譲渡人に承認した旨を通知
手続き3.株式譲渡契約書で契約締結・対価の支払い
手続き4.株主名簿の書換

順番に見ていきましょう。

手続き1.株主から会社に株式譲渡承認の請求・臨時株主総会の開催決定

会社の定款などで持株が譲渡制限株式と規定されているのかを確認し、譲渡制限がある場合は株式譲渡承認の請求を行います。

株主譲渡承認請求書を作成して会社へ提出することで請求が可能です。

株主譲渡承認請求書には、譲渡する株式の種類や数、譲渡先などを記載します。

取締役は、株主から譲渡承認の請求を受けると臨時株主総会の開催を決定し、それぞれの株主へ招集通知を発しなければなりません。

招集通知は原則として、臨時株主総会の日の1週間前までに発します。

手続き2.臨時株主総会で株式譲渡を承認・株式譲渡人に承認した旨を通知

臨時株主総会では、株式譲渡の決議が行われます。

会社は株式譲渡承認請求を受けたなら、2週間以内に株主総会で承認するか否か決議を行い、株主に通知する必要があるのです。

2週間経っても通知をしなければ、請求が承諾されたものとみなされてしまいます。

承認には議決権の過半数を持つ株主の出席と出席株主の議決権の過半数の賛成が必要です。

承認が決定したら、会社は決定内容を株主に通知します。

また、取締役会設置会社の場合であれば、株主総会ではなく取締役会が決議を行わなければなりません。

手続き3.株式譲渡契約書で契約締結・対価の支払い

株式譲渡が承認されたら、株主と譲受人が株式譲渡契約を締結し、対価を支払います。

一般的には有償での譲渡となり、株式譲渡契約書を作成し、株主と譲受人の記名・押印をしなければなりません。

手続き4.株主名簿の書換

株式の譲受人と株主が共同で会社に対して、株主名簿書換請求を行います。

株主名簿に記載されている株主を売り手から買い手に変更するように会社に請求する手続きが必要です。

会社は、株主名簿書換の請求を受けたら、株主名簿を書換えなければなりません。

株式譲受人である買い手の新しい株主は、株主名簿記載事項証明書の交付を受けることができます。

株主名簿記載事項証明書によって、会社の株主名簿に自分の氏名などが記載されているのかを知ることが可能です。

株式譲渡の方法【公開会社の場合】

公開会社とは、会社の承認なしに株式を譲渡できると定款で定めている株式会社のことです。

公開会社の株式譲渡の手続きは以下の2つです。

手続き1.株式譲渡契約書で契約締結・対価の支払い
手続き2.株主名簿の書換

順番に見ていきましょう。

手続き1.株式譲渡契約書で契約締結・対価の支払い

株式の譲渡について、株主と譲受人が株式譲渡契約を締結し、対価を支払います。

一般的には有償での譲渡となり、株式譲渡契約書を作成し、株主と譲受人の記名・押印をしなければなりません。

手続き2.株主名簿の書換

株式の譲受人と株主が共同で会社に対して、株主名簿書換請求を行います。

株主名簿に記載されている株主を売り手から買い手に変更するように会社に請求する手続きが必要です。

会社は、株主名簿書換の請求を受けたら、株主名簿を書換えなければなりません。

株式譲受人である買い手の新しい株主は、株主名簿記載事項証明書の交付を受けることができます。

株主名簿記載事項証明書によって、会社の株主名簿に自分の氏名などが記載されているのかを知ることが可能です。

株式譲渡契約書の作成方法

株式譲渡  契約書

株式の売買は、買い手と売り手の意思表示のみで行うことができます。

しかしながら、意思表示のみでは後々売買の内容などにトラブルが生じるかもしれません。

そのため、契約内容を記した書面である株式譲渡契約書を作成することが一般的です。

6−1.株式譲渡契約書の記載事項

株式譲渡契約書には、以下のような内容を記載します。

  • 譲渡する株式の内容
  • 株式譲渡の合意
  • 株式の譲渡日
  • 譲渡価額
  • 支払い方法・支払い期限
  • 株主名簿の名義書換請求

特に、支払い後に株主名簿の名義書換を請求するということは記載しておきましょう。

6−2.株式譲渡契約書には収入印紙が必要?

株式譲渡契約書は課税文書ではないので、原則としては収入印紙が必要ありません。

ただし、株式譲渡契約書に「もう代金を受け取っている」などの記載があると領収書と判断されてしまいます。

領収書は課税文書にあたるので、その場合には収入印紙が必要です。

しかし、課税文書にあたる場合でも、株主が法人ではなく個人であれば非課税となります。

株式譲渡をするときの株主総会議事録の書き方

株式譲渡  書き方

株式譲渡人から譲渡承認の請求があった場合には、議事録には以下のような内容を書くことになります。

  • 株主総会が行われた日時
  • 株主総会が行われた場所
  • 株主の出席状況や議決権の状況(株主総数や発行済株式総数、議決権行使可能な株主数、出席株主数など)
  • 株主総会に出席している役員
  • 議長の氏名
  • 議事の経過の要領や結果(議案や議事の結果どうなったか)
  • 売り手の住所や氏名、譲渡を請求する株式の数
  • 買い手の住所や氏名、譲渡を承認する株式の数
  • 議事録を作成した人の氏名

議事録を書く際には、決定した事項が正確に書かれているかどうかや、簡潔でわかりやすい内容かどうかが重要です。

議事録を書く前に、どのようなことが議題となり、どのような結果になりそうなのかは頭に入れておきましょう。

株式譲渡にかかる税金は?

株式譲渡  税金

株式譲渡にかかる税金は、以下のようなものがあります。

株式譲渡の税金1.所得税・住民税
株式譲渡の税金2.消費税
株式譲渡の税金3.法人税
株式譲渡の税金4.相続税

それぞれの税金について理解し、納め忘れがないように気をつけましょう。

株式譲渡の税金1.所得税・住民税

株式の売却時に手に入れる所得は譲渡所得という名前です。

譲渡所得は、買った金額よりも売った金額が高ければ所得税や住民税の課税対象になります。

株式の譲渡所得については、上場株式も非上場株式も同じ計算式で計算が可能です。

譲渡所得の金額 = 譲渡価額- 必要経費(取得費+委託手数料等)

この計算式を使い、譲渡所得の金額がプラスになった場合には、所得税や住民税を計算しましょう。

株式の譲渡所得への税率は、所得税15%、住民税5%で合計20%となっています。

株式の譲渡所得では、原則として申告分離課税という方式となることに注意が必要です。

申告分離課税とは、他の所得とは分けて税額を計算し、確定申告で納税する課税方式となります。

また、2013年から2037年までは、復興特別所得税の申告や納税も必要です。

それぞれの年の分の基準所得税額の2.1%を、所得税と一緒に申告して納めなければなりません。

基準所得税額は、日本に住所がある場合には、所得税の額となります。

株式譲渡益課税制度とは

株式譲渡益課税とは、株式を譲渡した際の利益に対する課税のことです。

譲渡益課税とは、キャピタルゲイン課税とも呼ばれています。

所得税と住民税が、株式譲渡益に課税されるのです。

株式譲渡の税金2.消費税

株式譲渡の売上は非課税売上ですが、株式譲渡の売上が多くなれば消費税額が高額になる可能性があることに注意が必要です。

事業者は、消費者から預かった消費税を税務署に納める必要があります。

しかし、預かった消費税を全て納税するわけではありません。

消費税の納税額を計算するには、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことで計算ができます。

ただし、課税売上割合が95%以上で課税売上高が5億円未満のときだけ全額差し引くことが可能です。

課税売上割合が高いほど、消費税納税額は少なくなります。

課税売上割合=(課税売上高+輸出免税売上高)/(課税売上高+輸出免税売上高+非課税売上高)

非課税売上高が多ければ、課税売上割合は下がってしまうのです。

ただし、株式の場合は、非課税売上高のうち譲渡額の5%のみを課税売上割合を計算する際の分母に入れれば良いという配慮的な取り扱いが存在しています。

株式譲渡をたくさん行うと消費税が高額になる場合もあるので、配慮措置をうまく活用しましょう。

株式譲渡の税金3.法人税

売り手が法人の場合には、株式譲渡益が発生すれば法人税が課されることになります。

譲渡益=譲渡価額 - 取得価格
法人税は以下の計算式で計算することができます。
法人税額=課税所得金額 × 法人税率
法人税率は、原則23.4%です。

自分の法人にかかる法人税率は、国税庁のホームページから調べられます。

(参考:法人税の税率 – 国税庁

株式譲渡の税金4.相続税

相続した株式を売却する場合には、相続税がかかります。

相続税を納めなければならないのは、株式を含めた相続財産全ての額が控除額を超えたときです。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数

株式譲渡をした際の確定申告の方法や損益通算制度

株式譲渡  確定申告

確定申告が必要なのは、主たる給与以外に20万円以上の所得がある場合です。

譲渡損失が出て給与所得以外の所得が20万円以下になったなら、確定申告の必要はありません。

株式譲渡をしたときには、他の所得と分けて税金を計算する申告分離課税となります。

この申告分離課税は原則、自分で確定申告をしなくてはいけません。

株式譲渡は、上場株式の場合と一般株式の場合で、それぞれ別々の申告分離課税で税金計算を行います。

また、証券会社で口座を開設する際に、特定口座(源泉徴収あり)を選ぶことができます。

特定口座(源泉徴収あり)は上場株式しか扱えませんが、証券会社などで税金が源泉徴収されるため、確定申告の必要はありません。

9−1.株式譲渡では損益通算で節税できる?

1年間(1月1日~12月31日)の譲渡損益を通算して、損失となる場合には税金がかかりません。

その場合には確定申告は不要ですが、行っておくことで節税できる場合があります。

上場株式で譲渡損失がある場合には、確定申告で、上場株式等の譲渡損失に係る損益通算及び繰越控除という特例の適用を受けられるのです。

すなわち、上場株式で1年を通して譲渡損失があれば、確定申告をすると、該当年分の上場株式の配当などと相殺できます。

損益通算と呼ばれるこの制度は、大きく節税できることもあるので重要です。

また、損益通算しても損失が残るなら、損失金額を翌年3年間にわたって上場株式の譲渡利益と上場株式の配当と相殺することができます。

これを繰越控除と言って、確定申告をしないと適用がありません。

損益通算制度を利用できる場合には、確定申告を忘れずに行うようにしましょう。

株式譲渡の手続きや税金対策について専門家に相談しよう

事業承継ガイドライン 専門家

株式譲渡では、法務局などの役所で手続きをする必要がありません。

簡単に手続きが行えるので楽ではありますが、手続きが正しいかどうかは買い手と売り手で判断しなければならないということです。

また、株式譲渡では売却される株式の比率を双方の話し合いで決めることができます。

後悔しない株式譲渡をするためには、かなり先の企業経営まで見据えて売却される株式の比率を考えることが大切です。

それだけではなく、税金についてもしっかり考えることが株式譲渡の成功につながります。

株式譲渡の手続きや税金について、何か少しでも不安がある場合には早めに税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう。

不安を残したまま株式譲渡を進めてしまうと、企業経営に大きく影響してしまうかもしれません。

事業承継を行うなら平成30年からの10年間がチャンス

株式譲渡

平成30年4月から事業承継税制が大きく改正され、事業承継を行いやすくなりました。現経営者から後継者に株式を引き継ぐ際、利用することができ、一定の要件を満たせば、納税が猶予、免除されます。要件をクリアするには、長期的な事業承継の計画を考える必要がありますが、これを行うことで、事業の発展につなげることができます。しかし、この制度は平成30年から10年間の特例措置であるため、注意が必要です。

今回の改正では、節税以外にも多くのメリットがあります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

事業承継税制とは?適用要件や平成30年度改正のポイントも解説

まとめ

株式譲渡は、売り手が保有株式を買い手に譲渡して、対価を受けとるものです。

株式譲渡は手続きが簡単であったり、売却される株式の比率を柔軟に決めることができるので便利な手段だと言えます。

株主が変わる以外には、特に会社の状態に変化はありません。

良い買い手を見つけることで、M&Aや事業承継を成功させることにつながります。