M&Aの手法「買収・合併・会社分割」を比較!スキーム選びのポイントとメリット・デメリット

M&A  手法 比較

M&Aには様々な手法がありますが、大きく分けると「買収」「合併」「分割」の3つの手法に分けることができます。

でも、「どの手法が自社にとってベストなの?」と悩んでいる方も多いはず。

そこで今回は、M&Aの手法についてのメリットとデメリットや、事例を詳しく解説。

自社がM&Aを利用する場合どの手法が一番良いのかを見極め、M&Aを成功させましょう。

M&Aについて詳しく知りたい方は「M&Aとは?その目的や手法、メリット・デメリットをわかりやすく解説」の記事を参考にしてください。

M&Aの手法(スキーム)は大きく3つ!

M&A  手法 3

M&Aの手法は「買収」「合併」「会社分割」の3つに分けることができます。

まずはそれぞれの手法ごとに事例をみていきましょう。

買収の事例

【買い手】A社 電子機器設計会社 従業員50名
【売り手】B社 産業装置修理会社 従業員8名
【手法】A社がB車の株式を買収、100%子会社化

B社の社長は高齢による引退を考え、事業承継のために会社の売却を決意。

A社は、電子機器の設計をメインとしており、自社製品の開発をしたいと思っていましたが技術力が足りずなかなか力を入れることができていませんでした。

B社の持つ技術力は、A社が欲しい技術力に相当し、価格交渉に難航したものが最終的には合意。

B社の株主を変更を行って100%子会社の形で買収し、経営権だけがA社に移ったのです。

合併の事例

【買い手】A社 証券会社 従業員数百名
【売り手】B社 証券会社 従業員数百名
【手法】A社がB社を連結子会社にし、B社を消滅させてA社に吸収合併

A社はB社の持つ営業エリア進出のため、M&Aを持ちかけました。

一方、B社は経営困難な状況に陥っており、このまま営業を続けることは困難だと判断。売却を決意しました。

A社はB社に出資を行い、連結子会社としたのち、B社を消滅させ吸収合併を成立させました。

会社分割の事例

【買い手】A社 美容店チェーン会社 従業員100名
【売り手】B社 美容店チェーン会社 従業員200名
【手法】B社の一部事業のみを分社化、その会社をA社が買収

B社は美容院・ネイルサロン・エステサロン等の美容店を関西を中心に展開していましたが、エステサロンの業績が悪化していたため売却を検討していました。

一方、A社は関東を中心にエステサロンを展開。関西への進出を目指していたところB社のM&Aの話を聞き、エステサロンのみの買収を決意。

B社は一度エステサロン事業だけを分社化、その後切り離したエステサロンの会社をA社が買収しました。

『買収』のメリット・デメリット

M&A  手法 買収

M&Aの1つ目の手法「買収」とは、株主だけが変わり、売り手と買い手は別の法人として存続していく手法です。

買収の中でも株式譲渡・株式交換・事業譲渡の3つがあるので、順番にみていきましょう。

株式譲渡

株式譲渡とは、株式を保有して会社を支配することをいいます。

M&Aの手法の中では最も簡単なため、スモールM&Aでもよく行われている手法です。

手続きとしては、過半数の株式さえ取得すれば事業運営の確保ができます。

株式譲渡では、株主が変更になるだけで、会社名や会社の持っている債権債務、契約関係はそのまま引き継がれることがポイントです。

そのため対外的には目に見える変化はなく、従業員や取引先へ与えるショックは比較的少なく済みます

一方、被買収企業がそのまま存続するため、シナジー効果が発揮しにくい点がデメリットです。

株式譲渡については、「株式譲渡の手続きや契約書・税金などについて丁寧に解説!」にて詳しく解説しています。

株式交換

株式交換とは、子会社にする会社の株式を、現金の代わりに自社の株式を割り当てる手法です。

キャッシュレスでM&Aが成立する点が魅力的に考えられています。

また、株主の3分の2以上の賛成を得ることができれば、少数株主を排除して100%子会社化することも可能です。

売り手にとっても、別会社として運営ができるため会社体制の変化が少なくて済みます

しかし、買い手が未上場会社の場合は売り手企業の株主は未上場会社の株式を受け取ることとなり、株式の現金化が難しいです。

買い手が上場企業の場合でも、1株あたりの利益が減少して株価下落のリスクがあります。

株式交換については、「株式交換とは? メリットや手続きを知って活用しよう」にて詳しく解説しています。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の全部もしくは一部分を売却する手法です。

売り手は譲渡する資産・負債と自社に残す資産・債務を明確にし、引継ぎの際は再契約が必要となり、時間がかかります

買い手にとって、必要な資産と負債だけを選んで買収できるので、不要な買い物をしなくて済むことがメリットです。

また、簿外債務を引き継ぐ恐れもありません。

一方、税務上の優遇措置がなく、不動産取得税などの税負担が多くなってしまうことがデメリットです。

事業譲渡については、事業譲渡に必要な手続きを丁寧に解説!契約書の書き方や会計処理まで」にて詳しく解説しています。

『合併』のメリット・デメリット

M&A  手法 合併

M&Aの2つ目の手法「合併」とは、売り手と買い手が1つの会社となる手法です。

合併の中でも新設合併と吸収合併の2つの手法があります。

新設合併とは、買い手・売り手のすべての会社が一度解散し、合併をして新設会社を設立する手法です。

吸収合併とは、売り手の企業は消滅させ、買い手の企業が存続させて1つの会社になることをいいます。

合併対価が株式であれば、買い手はキャッシュでなく株式で買収することも可能です。

メリットは2社が1つの会社になるので、M&A後は高いシナジー効果を得ることが期待できる点です。

一方、合併することで企業体制が大きく変わるため、従業員や取引先などへ大きな負担がかかり、営業活動へ影響ができる可能性があります。

また、【司法書士が解説】企業による吸収合併の種類や手続きの流れのすべて!で具体的な吸収合併の種類や手続きを解説しておりますので、こちらもご参考にしてみてください。

『会社分割』のメリット・デメリット

M&A  手法 会社分割

M&Aの2つ目の手法「会社分割」とは、多角化した事業を切り出して企業規模を適正化する手法で、新設分割と吸収分割の2つがあります。

事業譲渡と似ていますが、事業譲渡との違いは、対価が現金でなく株式であることです。

新設分割の場合は、会社を新たに設立し、その会社に事業の全部または一部を承継させ、株式や社債も新設した会社に継承させます。

吸収分割の場合は、事業の全部または一部を既存の別会社に吸収させて、株式や社債も一緒に譲渡してしまいます。

メリットは資金がなくても株式で買収ができること、事業譲渡と比べて契約関係の移転手続きが簡単であることです。

またM&A後、経営統一ができるので高いシナジー効果を早期に発揮することが期待されます。

一方デメリットとして、会社体制が大きく変わるため、統合作業での負担が大きいことです。

さらに買い手企業が上場企業の場合は1株あたりの利益が減少して株価下落のリスクがあります。

M&Aの手法を選ぶポイントを確認しよう

隠し口座 対策

M&Aでどの手法を活用するかを検討する際に、押さえておきたいポイントを確認しましょう。

資産負担はどれくらいかかるか

M&Aでは、会社の株で払う方法と現金で払う方法があります。

合併や会社分割を活用すれば、売り手は資金を用意せずにM&Aを実行することができます。

ただし、売り手が現金で欲しがっている場合は交渉が難しいかもしれません。

事務コストはどれくらいかかるか

M&Aにおいてコストを少ないほうが望ましいです。

弁護士やM&Aに支払う報酬を手法によって変えることはできませんが、事務負担は手法によって異なります

一番事務負担が少ないのは契約書を交わすだけの、株式の売買です。

合併や株式交換、会社分割の場合は株主総会での特別決議が必要ですし、合併と会社分割の場合は債権者に対しての交渉も必要なのでコストがかかります。

どれだけ時間や費用をかけるのかは事前に検討しておきましょう。

買収範囲は適切か

M&Aにて欲しい部分だけを買収できるのか(要らない部分だけ売却できるのか)は重要です。

事業譲渡や会社分割であれば、会社の一部だけを買収することができます。

その他の手法では会社を丸ごと買収することとなるので、M&A後に不要部分を処分する必要があるのです。

売り手への課税はあるか

M&Aでは売り手に課税されるケースがあり、M&Aの実行にあたって懸念となることがあります。

株の売買や事業譲渡の場合は利益が出れば課税の対象となりますが、株式交換の場合は現金決済ではないので課税を繰延べることが可能です。

合併や会社分割も条件次第では売り手に課税はされません。

M&Aの手法はM&Aアドバイザーに相談しよう

M&A  手法 アドバイザー

M&Aの手法の決定はM&AのプロであるM&Aアドバイザーに相談しましょう。

M&Aアドバイザーの必要性

M&Aを確実に成功したい場合、M&Aを支援する専門のM&Aアドバイザーに相談することがオススメです。

M&AアドバイザーはM&Aの相手探しから調査、交渉、契約を行ってくれますが、M&Aの手法に対しても助言してくれます。

M&Aの手法によって変わる税金問題や法的手続きなど、専門的な知識面からのアドバイスが期待できるからです。

M&Aを成功させるために、必ず優秀なM&Aアドバイザーに相談しましょう。

M&Aアドバイザーの選び方

M&Aを成功させるために、M&Aアドバイザーの選ぶポイントをおさえておきましょう。

まずは出来るだけ、自社の規模や業界と同じ取引経験や実績があるかを確認が必要です。

WEBサイトを見ればどの規模や業界のM&Aを得意としているか分かりますので、事前に確認することができます。

また、M&Aアドバイザーには専門性が高い会社と営業力の強い会社に分かれますが、営業力の強い会社がオススメです。

会計・財務・法律・税務などの専門知識は士業に任せることも出来るので、ネットワークが広く営業力のあるM&Aコンサルタントを選びましょう。

M&Aアドバイザーについては、「優秀なM&Aコンサルタントとは?仕事内容から選び方まで解説」にて詳しく解説しています。

戦略的M&Aって何?

M&A 手法戦略的M&Aとは、自社が抱える経営課題を解決するためにM&Aを行うことです。

M&Aによって市場での競争力を高め、高収益を得て、企業価値を高めていこうという戦略があることがポイントになります。

有名企業が行った戦略的M&Aの事例を2つ見ていきましょう。

日本電産

日本電産はコーポレートサイトにも「M&Aの歴史」というページがあるほど、戦略的にM&Aを利用しながら会社を成長させています。

日本電産におけるM&Aは、”技術・販路を育て上げるために要する「時間を買う」”という考え方に基づいているのです。

日本ではあまり活発でなかった1984年に初めてのM&Aを成功させ、現在では国内外の企業を57社もM&Aにて買収しています。

実は、「Vision 2020」という中期戦略目標を掲げており、その実現に向けM&Aが戦略的に行われているのです。

2017年だけでも、ヴァムコ・インターナショナル社・セコップ グループ・東京丸善工業株式会社など、「回るもの、動くもの」を扱う8社とのM&Aに成功しています。

ソフトバンク

ソフトバンクもM&Aを上手く活用して成長させている企業です。

1981年創業以来、1995年コムテックス買収、2004年日本テレコム、2006年ボーダフォン買収などさまざまな企業を買収しています。

1995年の株式公開時には売り上げが1,000億円に満たなかった企業が2015年には売り上げ8兆6,700億円と、20年間で86倍の成長をしていることは驚きです。

創業者である孫正義は常に大きなリスクを取ってM&Aにて買収していますが、一方で上手く収益を上げることができない事業の売却も同時に行っています。

自社にとって、買い時・売り時を瞬時に見定め、戦略的にM&Aを活用し、今でもソフトバンクは成長し続けているのです。

まとめ

M&Aの手法には「買収」「合併」「分割」があります。

それぞれのメリットやデメリットを把握し、M&Aアドバイザーを活用しながら最適なM&Aの手法を選びましょう。

そしてM&Aを会社の成長へと繋げてくださいね。