争族を「緩和」するファイナンシャルプランナーの仕事とは?

相続の意味ってそもそもなに?・争族を「緩和」するファイナンシャルプランナーの仕事とは?相続について知っているようで知らない基礎知識!

平成25年(2013年)に相続税法が改正しました。基礎控除および法定相続人1人あたりの控除額が下がり話題となる一方、世の中には様々な「相続対策」が生まれました。各所で行われるセミナーは満員となり、専門家のノウハウが求められています。同時に相続対策の範囲も広がり、家族信託や生産緑地といった個別でかつ難解なフレーズもよく耳にするようになってきました。

争族を解決する最大の対策は「家族の話し合い」

争族を解決する最大の対策は「家族の話し合い」

相続がトラブルになる、いわゆる「争族(あらそうぞく)」になる大きな原因は、税金負担のほかに、家族のいずれかが配分される資産(現金、不動産、証券などの相続資産)に納得しないということが挙げられます。これは富裕層も、一般的な家庭も関係ありません。ある統計では、相続トラブルの約75%は総資産5000万円以下というデータもあります。

ただ、様々な資産ポートフォリオを持つ富裕層ではないと、配分できる資産にも限りがあるのも現状。分配する財産がないと、相続人の誰かが納得のうえで「我慢」しなければなりません。このような背景をもとに現実に可能な争族の解決方法は、家族間で話し合いをすることです。ただ、当事者「のみ」で話し合ってもそれぞれの主張に妥協案が見出せず、より大きなトラブルになってしまうことも。そのため、ここに専門家の入ることが効果的です。

家族の話し合いを誘導できる専門家とは?

家族の話し合いを誘導できる専門家とは?

相続のスペシャリストとしては、まず弁護士や税理士が代表的です。弁護士は訴訟領域、税理士は相続税領域といったイメージも強いのですが、実際は横断的に相続の諸課題をコンサルティングできる弁護士や税理士も数多くいます。また、登記ならば司法書士、有効な相続対策である遺言関連ならば行政書士というところでしょうか。生命保険や不動産の世界にも相続のエキスパートは存在しています。

ただ、今にも「争族」が発生しそうな家族にて、家族の誰かが弁護士を連れてくると、やはり「訴えるつもりか」と雰囲気は緊迫化してしまいます。また税理士としても、相続税とは離れた部分で相続の話し合いが求められるということも多いでしょう。

そこで、相続における包括的な対応力を持つ、FPことファイナンシャルプランナーの役割があります。

相続×FPの仕事とは?

事業再生コンサルタント とは・相続×FPの仕事とは?

FPは法律にもとづいた「専門分野」がありません。個別具体的な税務相談に対応することもできませんし、訴訟の一方の代理となれば「非弁行為」として処罰の対象となります。だからこそ相続に悩む当事者からは、「まず全体像を説明し、的確な専門家を巻き込んで解決してくれる」という、医療でいうところの総合診療医の役割が期待されます。顧客から直接専門家に行くと相性がわからないものの、FPを介して専門家の質を「担保」してくれるという役割も担っています。

FPは案件の全体像を掴み、必要に応じ的確な専門家をチームに組み入れます。相続の当事者側にとっては、適切な「専門医」を相談してくれるFPはとても頼りがいがあります。また、この内容はこの専門家…と理解している場合でも、相性もわからない専門家に直接連絡をするより、FPを介して品質が担保された専門家を引き合わせて貰うことで、効率的に相談することができる、という側面もあります。

どのような視点でFPを選ぶといいのか

相続する前に借金があるかどうか調べる方法は?・どのような視点でFPを選ぶといいのか

では、どのような視点でFPを選ぶとよいのでしょうか。ひとつは、「聞き役」となるFPです。相続の場合、FPに出来ることには限度があります。そのため、まずは相続を基軸として家族間で何が発生しているのかを専門家サイドでも理解することが大切です。そのうえで、被相続人なのか相続人なのか、直接の当事者ではないけれど「家族」のなかにいる一員なのか。FPに依頼した人の立場からの「最適解」を目指すことで、専門家としての回答は異なります。それを依頼者と一緒に探すことのできる能力は必須です。

とはいえ、個人の「解」ばかりを推奨しては、家族にとってベストの回答とならないことも多いです。具体例を記してみましょう。

被相続人から「先祖から承継した都市部の土地を売却して、賃貸アパートを建築したい」という相談を受けたFPのAさん。確かに賃貸アパートは不動産の資産運用として、ほかの運用方法と比較しても高い利回りが期待できます。ただ、その一方、予想通りに入居率が維持できなかったときには収益が著しく落ちるため、事業としての赤字や、それまで貯蓄した資産からの持ち出しが発生する「ハイリスク」な運用方法もあります。

少し言葉は悪いのですが、これを投資主体である被相続人が納得していれば何も問題はありません。FPのすべきことは、リターンがある一方で何がリスクなのか、そのリスクはどれくらいの可能性があるのかを客観的に示すことなので、賃貸アパートを建てることも、反対に食い止めることもすべきではありません。被相続人の判断を尊重することです。

ところが、この賃貸アパートの建築において、被相続人の多くは金融機関から十数年に渡る借入金(アパートローン)を借り入れます。返済中に万が一のことがあった場合、指定された相続人が返済義務を承継します。ところが、この承継する当人でさえ、契約時に充分な情報が与えられず、自身がローンという債務を承継することを後になって知らされるということも未だ多いようです。

そのため、相続における「最初の段階」で、被相続人だけではなく、相続人も合わせて課題に対峙することが大切です。相続人にとっても、もちろん被相続人にとっても、十数年も先のことになるかもしれない相続に考えを巡らすのは億劫なことかもしれません。ただ、その可能な限りの一歩が争族を起こさないための一歩。FPはそれを伝える絶好の立ち位置にいる専門家だと思います。

「初回相談」に注意すべきこと

m&a「初回相談」に注意すべきこと

FPが争族を「緩和」するためには、「初回相談」が大切です。いわば、FPを適切に「利用」するために、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。

それは、家族による意見の違いを伝えることです。

現時点でトラブルになっていなくとも、将来的なトラブルの「種」となるのが家族による意見の違いです。法定相続人のAは不動産の積極活用を考えていて声高に主張しているけれど、Bはこのまま維持したいと考えており、Cは共有名義でも自分が所有権を担えればいいと思っている。

このような状況を、初回相談のときに相談者はFPに伝えなくてはなりません。FPは相続人それぞれの意見をまとめ、専門家と共有します。「Cは何も言っていない」と事実を曲げて伝えてしまうと、そもそも専門家との共有に事実誤認が生じ、歯車の狂いに直結してしまいます。ここで掛け違えたボタンは後々、時間が経過すればするほどに、修正するのが難しくなっていきます。初回相談こそ重要です。FPの役割を理解し、存分に動いて貰うためにこの部分に注意しましょう。

争族を緩和するFPの仕事についてお伝えしました。いわば病気を治すときに専門医に繋ぐための「総合診療医」としての役割。家族ごとに異なる相続対策のファシリテータともいえます。専門医がどれだけ優秀でも、対象となる身体の部分に病気を持っていないと、見当違いな治療になってしまいます。争族を無くすために。FPをフル活用していきましょう。