廃業手続きの完全マニュアル|法人と個人事業主の廃業方法を解説!

廃業

「廃業するには廃業届さえ出せば大丈夫」と思っていませんか?

実は、廃業届を出す以外にも必要な手続きがあるんです!

また、廃業をするには、登記や法手続きの費用が必要ですし、高額な撤退コストなどがかかってしまうこともあります。

廃業以外に選べる道があることも多いので、廃業するかはしっかり考えることが重要です。

どうしても廃業しなければならない場合のみ、廃業手続きをしましょう。

廃業に必要な手続きとは?

廃業

廃業に必要な手続きは、個人事業主の場合と法人の場合で異なります。

主な手続きとして、個人事業主なら廃業届の提出法人の場合は解散の登記と清算結了の登記を行わなければなりません。

廃業の手続きを完了してしまうと、事業はなくなってしまいます。

本当に廃業しなければならないのか、しっかり考えてから廃業手続きを行うべきです。

廃業手続きにかかる費用

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廃業手続きを行って廃業を完了させるまでに必要な費用は、例えば以下のようなものです。

  • 債務を返済するお金
  • 登記や法手続きの費用
  • 税理士や行政書士、司法書士への代行報酬
  • 従業員の社会保険や労働保険の手続き (社労士への代行報酬)
  • 店舗や工場の原状復帰費用
  • 解約金や違約金(フランチャイズ契約の場合)

単に廃業届を提出するだけで簡単に廃業できるというわけではありません。

例えば、法人の場合は、登記や法手続きの費用が必ず必要になります。それに加えて債務を返済したり、各士業に代行を頼んだり、店舗の原状復帰をしたり、さまざまな費用が加わります。

廃業手続きにかかる費用の目安は?

廃業手続きにかかる費用は状況によって大きく異なります。

だいたいの目安は以下のようなものです。

登記や法手続きの費用

  • 官報公告の費用:3万3000円
  • 解散登記の費用:3万円
  • 清算人の選任登記の費用:9千円
  • 清算結了の登記の費用:2千円

これらの費用は法人で廃業手続きを行う場合には必ず必要です。

税理士や行政書士、司法書士への代行報酬

廃業の手続きを代行してもらうための報酬の目安は12万円程度です。

代行を頼む場合は、登記や法手続きの費用が含まれているのか注意しなければなりません。

従業員の社会保険や労働保険の手続き (社労士への代行報酬)

  • 健康保険・厚生年金保険の廃止手続き:5万円程度
  • 労災保険・雇用保険の廃止手続き:5万円程度

社労士によって報酬が大きく変わるので、事前に確認しましょう。

店舗や工場の原状復帰費用

原状復帰費用は店舗や工場の状況によって大きく異なります。

目安としては、坪単価3万円程度で計算すると良いでしょう。

  • 30坪=90万円程度
  • 60坪=180万円程度
  • 100坪=300万円程度

あくまでも目安の金額なので注意してください。

解約金や違約金(フランチャイズ契約の場合)

フランチャイズ契約の場合の解約金や違約金がどの程度かは、契約によって変わります。

計算方法も契約によりバラバラですが、高額になることが多いです。

違約金は例えば、「契約期間の残り月数 × 一定の金額」ような方法で計算されることがあります。

契約の内容を確認してみてください。

廃業するならM&Aや店舗売却もあり!

廃業費用は高額になる可能性が高いです。

現経営者がリタイアする場合は、ただ廃業するだけではなく店舗売却やM&Aで事業売却できるかを検討してみるべきです!

M&Aが成功すれば、原状復帰費用を抑えて売却資金を得ることができるので、それ以外の廃業費用をまかなえます。

M&Aで事業や店舗を売却する方法は?

M&Aでの事業や店舗の売却は、以下のような方法です。

 M&Aの目的と戦略・適切な買収相手像・M&A基本計画などを検討

まずは、どのようなM&Aを行いたいか考えなければなりません。

「M&Aの目的と戦略」や「適切な買収相手像」について考えてみましょう。

良い買い手企業を見つけるには、どのような企業が自社に合っているのか知ることから始まります。

M&Aアドバイザーの選定・契約

M&Aアドバイザーを選び、契約を結びます。選ぶ際には、以下のポイントに注意しましょう。

  • 機密保持や業務内容・報酬について明確な契約か?
  • 経験や実績が豊富か?
  • 法律・会計・税務・経営・交渉理論の専門知識があるか?

M&Aアドバイザーは、会計事務所や税理士事務所、経営コンサルティング会社などの独立系M&A業者といったところから選べます。

買い手企業選び

ぴったりな買い手となる企業を選ぶ必要があります。

1.買収候補先絞込みの評価基準作成

売上高、地域、商品、ブランドなど詳細に基準を策定していきます。

2.買い手への打診

ノンネムシートと呼ばれる匿名の企業概要を使って買い手に打診していきます。

3.秘密保持契約

買い手候補が興味を示し、さらに詳細な情報を求められた場合、秘密保持契約を結びます。

このタイミングで社名や詳細な情報が相手の企業に開示されます。

4.トップ面談の実施

双方ともに売却・買収を進めたいということになれば、経営陣同士のトップ面談を行います。

売却・買収に至った経緯を離したり、経営方針など疑問を解消しあう場です。

M&Aの契約・クロージング

意向表明書の提示→基本合意契約書にて契約締結→デューデリジェンス→条件交渉→最終契約・クロージングという流れです。

まず、トップ面談で納得のいく相手だと判断された場合、買い手側より意向証明書が提出されます。

意向証明書とは、買収方法や買収価格などの提案が書かれた資料です。

意向表明書に合意すると、改めて双方で合意している条件が明記された基本合意契約書を作成し、契約を締結します。

契約を締結したら、買い手は売り手企業をより詳細に把握するため、デューデリジェンスを行います。

デューデリジェンスとは、ビジネス・法務・会計・税務など分野ごとに売り手に資料提出を求めたり、専門家が売り手会社に訪問することです。

デューデリジェンスをすることで企業の実態を知り、リスクの予防・対策ができます。

最後に、条件交渉です。

従業員の処遇や最終契約までのスケジュール、株価、支払方法など条件を細かく決定していきます。

また、最終的な売却価格もこの時点で決定します。

条件が決まったら、最終譲渡契約書の締結によってM&Aの契約は完結します。

譲渡対価の決済や株券・会社代表印の引渡しなどすべての完了をもってクロージングです。

統合プロセス(PMI)

PMIとはPost Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)の略で、M&A成立後の統合プロセスのことです。

M&Aの効果を早期に得るため、両社の従業員意識や管理体制、情報システムなどを機能させる必要があります。

M&A自体が成功してもPMIが上手くいかないと期待したシナジーやメリットは得られないため、綿密に計画を立てておきましょう。

専門家に相談しよう

廃業

M&Aでの事業や店舗売却のことなど、廃業以外の選択肢については早めに専門家に相談しましょう。

費用がかかったり、取引先やお客さんが困ってしまったりする場合があるので、廃業はできるだけ避けるべきです。

中小企業診断士や税理士といった経営コンサルタントなどの専門家に相談すれば、廃業以外の道が見つかる可能性もあります。

M&Aをすることにした場合でも、いち早くM&Aコンサルタントなどの専門家に相談することでM&A成功の確率を高めることが可能です。

廃業手続きをする前に確認しておくこと

廃業

廃業手続きをする前に、もう別の選択肢は選べないのか確認しておく必要があります。

売上が良くなかったり後継者がいなかったりという理由で廃業を考えている方は少し待ってください!

そのような廃業理由であれば、廃業手続きの前にやれることがまだある可能性が高いです。

例えば、事業の方向性を変えて売上を伸ばしたり、後継者を募集して見つけたりすることで、廃業しなくて済むかもしれません。

廃業以外の手段を考えずに廃業してしまうのは、とてももったいないことです!

廃業手続きにかかる費用のことを考えると、損をしてしまう場合があります。

本当に廃業しなければならないか考えてみてください。

ただ廃業してしまうよりも、もっと良い形があるかもしれません。

廃業手続きをする前に、しっかり確認しておきましょう。

売上が悪いから廃業したい場合

売上が良くならないせいで廃業を考えている人は、以下のポイントについて考えてみましょう。

  • 集客方法を見直す
  • 商品ラインナップを見直す (得意な商品だけに絞って効率化する)
  • 新しい事業に挑戦する (今ある技術で違う事業に参入する)
  • コンサルタントに依頼する

廃業を決める前に、会社の現在の状況をしっかり把握して改善できないか検討してください。

事業の方向性を変えることで、売上が良くなる可能性は高いです。

売上を良くするため、何か廃業をする前に取れる手段はないか探してみてください。

事業を続けていく資金がないから廃業したい場合

資金がなくて廃業しようと考えている人は、以下のポイントを見直してみましょう。

  • 銀行からの融資を受けられないか
  • クラウドファンディングを活用できないか
  • 補助金を利用できないか

事業を続けるための資金の調達手段はいろいろあります。

廃業手続きに入る前に、利用できるものがないか確認しましょう。

後継者がいないから廃業したい場合

後継者がいなくて廃業を考えている人は、以下のポイントを見直してみましょう。

  • 後継者は募集したか
  • 親族と事業承継について話し合ったか
  • 従業員で教育すれば経営者になれる人はいないか

後継者は、親族外や社外など身近なところ以外からも探すことができます。

廃業手続きに入る前に、まだ探していないところはないか考えてみましょう。

どうしても廃業しなければならない人のために、ここからは廃業手続きの方法をご紹介します。

個人事業主の廃業手続き、4つのステップ

廃業

ここまで、廃業以外に検討するべき選択肢をお伝えしてきました。

しかし、「どうしても廃業しなくてはいけない」という場合には、廃業の手続きを進めていかなくてはなりません。

まずは、個人事業主の廃業手続きを見ていきましょう。

個人事業主の廃業手続きは、以下の4つのステップが必要となります。

1.事業を終了する日を決める
2.取引先やお客さんに廃業のお知らせをする
3.廃業届など必要な書類を提出する
4.廃業手続きを終え、確定申告する

それぞれのステップを順番に見ていきましょう。

 事業を終了する日を決める

事業を終了する具体的な日にちを決めます。

廃業するということだけ決めても、計画をたてることができません。

まずは、いつ事業を終えるのか考えましょう。

取引先やお客さんに廃業のお知らせをする

今まで関わってきた取引先やお客さんに、廃業することをお知らせする必要があります。

いつも通りに取り引きをしようとしたり、商品を買いに来たときに廃業していたら、相手に迷惑をかける可能性があるのです。

遅くとも事業を終了する日の1ヶ月前までにはお知らせしておきましょう。

廃業届など必要な書類を提出する

取引先やお客さんに廃業をお知らせしたら、必要な書類を提出します。

個人事業主が必要となる書類は以下です。

個人事業主の廃業手続きの際に、税務署へ届出する書類

  • 個人事業の開業・廃業等届出書
  • 青色申告者の場合、所得税の青色申告の取りやめ届出書
  • 消費税を支払っていた課税事業者の場合、事業廃止届出書
  • 予定納税者の場合、予定納税額の減額申請書
  • 給与を支払っていた場合、給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書

個人事業主の廃業手続きの際に、都道府県税事務所へ届出する書類

  • 個人事業廃業届出書

この中でも、特に重要なのが全員必ず税務署に提出しなければならない「個人事業の開業・廃業等届出書」です。

個人事業の開業・廃業等届出書については、「廃業届の書き方や提出先、タイミング、必要書類について解説!」で詳しく説明しています。

書き方などについてはそちらを参考にしてください。

他の書類についても税務署が相談窓口です。

都道府県税事務所への届出は、税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を出していたら不要な場合があります。

事業を管轄している都道府県税事務所に確認してみましょう。

廃業手続きを終え、確定申告する

前の項目までで廃業手続きは終了です。

廃業を完了したら、今まで通り確定申告をしてください。

廃業してから新たに会社勤めを始めたときは、給与所得も事業所得に合算することに注意が必要です。

個人事業主が死亡した場合の廃業手続き

個人事業主が死亡した場合、相続人は個人事業者の死亡届出書を事業を管轄している税務署へ提出しなければなりません。

個人事業主の死亡届出書の提出に明確な期限はありません。

しかし、事由が生じた場合には速やかに提出することとされているので注意してください。

相続人が事業を引き継がない場合、「個人事業の開業・廃業等届出書」も税務署に提出します。

廃業してから1ヶ月以内に税務署へ提出する必要があるので、できるだけ早く出さなければなりません。

亡くなった個人事業主が青色申告者の場合は、所得税の青色申告の取りやめ届出書を一緒に出しましょう。

また、亡くなった個人事業主が従業員を雇って給与を支払っていたなら、給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書を提出します。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書の提出期限は、1ヶ月以内です。

このように、個人事業主が死亡した場合は1ヶ月以内に行うことが多いので、早めに手続きに取り掛かりましょう。

個人事業主をやっているという方は、相続人に何をどのように行えば良いのか伝えておけばスムーズです。

法人(株式会社・有限会社)の廃業手続き、廃業完了までの流れ

廃業

次は、法人の廃業手続きを確認していきましょう。

法人の廃業手続きは、以下の流れで行われます。

  1. 営業終了日を決定する
  2. 廃業挨拶状で関係者に廃業のお知らせをする
  3. 解散手続をする
  4. 清算手続をする
  5. 廃業による労働保険廃止手続き(確定保険料申告書の提出)をする
  6. 確定申告を行う

それぞれの手続きを順番に見ていきましょう。

1.営業終了日を決定する

事業を終了する具体的な日にちを決めます。

法人の廃業は、手続きが多く時間がかかります。

最短でも2ヶ月半程度の期間が必要となるので、それを考慮して営業終了日を決めてください。

2.廃業挨拶状で関係者に廃業のお知らせをする

廃業挨拶状とは、廃業することを取引先やお客様にお知らせするものです。

廃業のお知らせをしなければ、今までお世話になってきた取引先やお客様に迷惑をかけてしまいます。

関係者を困らせないために、遅くとも1ヶ月前には廃業挨拶状を出すべきです。

できれば、2ヶ月前や3ヶ月前に出せるようにしておきましょう。

3.解散手続をする

廃業をするには、会社の解散手続きが必要です。

解散手続きは、株主総会の特別決議か、株主全員の書面決議によって行います。

  • 特別決議で解散する場合:発行済株式総数の半分以上の株式を持っている株主が出席する株主総会で、3分の2以上の賛成を得ることが必要
  • 書面決議で解散する場合:議決権を行使できる株主の全員が書面などで同意することが必要

解散は法務局で登記をする必要があります。解散してから2週間以内に行ってください。

また、その際に清算人の登記も行い、事業を所轄している税務署に異動届出書を提出しなければなりません。

解散事業年度の確定申告もこのときに行うことになります。

4.清算手続をする

解散登記を終えて税務署に異動届出書を出したら、官報で解散公告を出します。

最低でも2ヶ月間は公告をする必要があるので注意しておきましょう。

2ヶ月以上の解散公告を終えると、会社は清算手続に入ります。

精算手続きとは、債権の取り立てや債務の弁済、残った財産の株主への分配などです。

精算を全て終えたら、法務局で清算結了の登記を行います。

法人には廃業届はありませんが、消費税課税事業者であれば税務署に事業廃止届出手続が必要となります。

 

消費税課税事業者とは?

消費税課税事業者とは、以下の条件に当てはまる場合です。

  • 2年前の課税売上高が1,000万円を超えている
  • 1,000万円以上の資本金で法人を新しく設立した
  • 消費税課税事業者選択届出書の提出を行っていた

消費税を課税されていた場合には、忘れずに事業廃止届出も提出しましょう。

5.廃業による労働保険廃止手続き(確定保険料申告書の提出)をする

廃業する場合、労働保険を廃止する必要があります。

労働保険の保険料は年度初めに概算で申告して納付を行う仕組みなので、廃業してから50日以内に確定保険料申告書を提出しなければなりません。

提出先は、労働基準監督署、都道府県労働局又は日本銀行です。

確定保険料の金額がもともと概算していた保険料の額より多いなら、その差額を同時に納付します。

逆に、既に納付した概算保険料が確定保険料より多く、保険料を払いすぎていた場合には、労働保険料還付請求書の提出が必要です。

所轄の労働基準監督署または都道府県労働局に提出し、清算が行われます。

6.確定申告を行う

これまでの手続きを全て終えたら、清算確定申告書を作成します。

清算事業年度(残余財産確定事業年度)の確定申告を行わなければなりません。

確定申告を行えば、廃業手続きは終了となります。

【業種別】特に注意すべき廃業手続き!

廃業

業種によっては、廃業に必要な手続きが増える場合があります。

例えば、以下の業種を廃業する場合には注意しなければなりません。

  • あん摩マッサージ指圧・鍼・灸院、接骨院・整骨院
  • 建設業
  • 旅館・ホテルなど旅館業
  • 宅建業(宅地建物取引業者)

順番に確認しておきましょう。

あん摩マッサージ指圧・鍼・灸院、接骨院・整骨院の廃業手続き

あん摩マッサージ指圧・鍼・灸院、接骨院・整骨院を廃業する場合には、保健所に施術所廃止届出書を提出する手続きが増えます。

廃業してから10日以内に届出書を出さなければなりません。

建設業における建設業許可の廃業届出の手続き

建設業で廃業する場合には、行政庁に建設業許可の廃業届出を提出する手続きが増えます。

廃業届を出すことで、行政庁による許可の取消処分が行われます。

廃業してから30日以内に届出書を出さなければなりません。

旅館・ホテルなど旅館業の廃業手続き

旅館やホテルなどの旅館業で廃業する場合には、保健所に旅館業廃止届を提出する手続きが増えます。

廃業してから10日以内に届出書を出さなければなりません。

宅建業(宅地建物取引業者)の廃業手続き

宅建業で廃業する場合には、県土整備事務所に廃業届を提出する手続きが増えます。

その際に、宅地建物取引業者免許証も一緒に出すことが必要です。

廃業してから30日以内に届出書を出さなければなりません。

まとめ

廃業をする場合は、廃業手続きを行う必要があります。

単に廃業届を出すだけではないので、注意しておきましょう。

廃業するには、登記・法手続の費用や原状回復費用など、さまざまな費用がかかります。

廃業以外の道を選ぶことができないか、しっかり考えてから廃業手続きを行ってください。