相続放棄の撤回!やっぱり相続しとけばよかったと思ったときの全知識

事業承継税制で受けられる納税猶予・相続放棄の撤回!やっぱり相続しとけばよかったと思ったときの全知識

遺産相続をする際に絶対に気をつけなければならないことがあります。
それは、

被相続人が残した財産の中に負債はないか?

という事です。

負債がなければ遺産相続は「もらえるもの」ですが、負債の方が多かった場合は「払うもの」になります。
相続した財産を全部売り払ってもまだ借金が残ってしまうような場合には遺産相続をする意味が全くないどころか、かえって困ることもあります。

そのため、遺産相続には相続放棄という方法があります。

相続放棄をすると、一切の財産は相続されません。
同時に、負債の支払い責任が生じるということも一切ありません。

ですが、例外として相続放棄の取消・撤回ができる場合があるのを知っていますか?

今回は相続放棄の撤回手続きや対応できる期間などについて解説したいと思います。

相続放棄は撤回できる?できない?例外は?

相続放棄は撤回できる?できない?例外は?

原則的に相続放棄を一旦申し出て選択した場合、相続放棄の取り消し、撤回はできません。

そのため、何も考えなしに相続放棄をしてしまい、後になってやっぱり遺産相続したい!と思っても相続はできないことになります。

例えば、遺産として残っていた不動産や株式の価格が思ったよりも高くなっていて、遺産相続した方が良かった…と思っても後の祭りです。

相続放棄が撤回・取消できないという事は民法にもきっちりと記載されています。

民法第919条(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
1. 相続の承認及び放棄は、第915条第一項の期間内でも、撤回することができない。

この条文に書いてある期間内というのは、相続の開始から3ヶ月のことを指しています。
通常通り相続をするか(単純承認)、相続放棄をするかはこの3ヶ月の間に決めなければなりません。

民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
1. 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

ただし、3ヶ月の間に相続放棄をして、途中で気が変わったという場合であっても相続放棄の撤回はできないということが書かれています。

しかし、原則的に撤回・取消できない相続放棄を撤回できるケースが例外としてあります。

相続放棄が取り消し・撤回できる6つの事例

相続放棄が取り消し・撤回できる6つの事例

実は、非常に限定的なケースではありますが撤回できる場面があります。
通常はないことですが、以下の6つの場合においては例外として対応できる可能性があるとされています。

  1. 詐欺・強迫により相続放棄させられた
  2. 成年被後見人本人が相続放棄した
  3. 被保佐人が保佐人の同意なく相続放棄をした
  4. 後見監督人が選任されていて場合に、被後見人・後見人が後見監督人の同意なく相続放棄した
  5. 未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄した
  6. 相続放棄の申述が家庭裁判所に受理される前

それではひとつずつ説明をしてみたいと思います。

詐欺・強迫により相続放棄させられた

詐欺・強迫により相続放棄させられた

民法第96条にには「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」と記載があります。

遺産相続の場面においては詐欺や強迫(無理強い)によって

「相続放棄をしない方が得になる」
「相続放棄してくれたら○○の財産を譲ってあげる」
「○○されたくなければ相続放棄をしろ」
「相続放棄しなければ○○してやる」

などと他の相続人やその家族から言われることがあるかもしれません。

相当な財産が絡んでいる場面ではそういったことが起こっても何ら不思議はありません。
もし本人が望まない形で相続放棄を行っているのだとしたら、上記のような場合に当てはまらないかよく考えてみる事をオススメします。

成年被後見人本人が相続放棄した

成年被後見人は精神的な問題などによって判断力が常に欠けてしまっている方です。
そのため、ほとんどの法律行為ができないという扱いになっています。

成年被後見人は後見人が法律行為を代理することになりますが、そうではなく本人が相続放棄をしてしまった場合、間違いの可能性があるため撤回が可能となります。

民法第9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

後見監督人が選任されていて場合に、被後見人・後見人が後見監督人の同意なく相続放棄した

また、後見人がいる場合でも後見人と成年被後見人との利益が相反となる場合があります。

たとえば、後見人が母親、成年被後見人が子供だった場合に、父親が亡くなったとします。
そうすると二人共に相続権が発生してしまうため、母親と子供は利益相反の関係になります。

このような時、成年被後見人の側を代理するための後見監督人という人が選任されなければなりません。

後見監督人が実質的に相続に関する法律行為を行うことになりますので、同意を得ずに相続放棄をすることはできません。
相続放棄をしていたとしても撤回ができる可能性があります。

被保佐人が保佐人の同意なく相続放棄をした

被保佐人とは、成年被後見人と同じく精神的な問題などによって判断力が著しく欠けてしまっている方です。
そのため、ほとんどの法律行為ができないという扱いになっています。

こちらも、その代理として法律行為を行うべき被保佐人の同意を得ずに相続放棄してしまった場合は撤回ができるということになります。

民法第13条(保佐人の同意を要する行為等)

1. 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

4. 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

(一部抜粋)

未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄した

未成年者が法定代理人の同意なく相続放棄した

未成年者も法律行為はできませんので、法定代理人に対応を任せることになります。
しかし、法定代理人の同意なく相続放棄した場合は取消できることがあります。

民法第5条(未成年者の法律行為)
1. 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2. 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

相続放棄の申述が家庭裁判所に受理される前

相続放棄の申述が家庭裁判所に受理される前

相続放棄の申述が裁判所で受理されたあとは、基本的に撤回はできません

相続放棄をしたり撤回をしたりと自由にできた場合、他の法定相続人や利害関係を持った方は、遺産相続の額や負債の額が変わるなどして大きく影響されるため、そのようなことがないように撤回はできないという仕組みを取っています。

しかし、申述を裁判所に行ってからそれが受理されるまでの間であれば相続放棄の取消が可能となっています

期間は具体的にどれくらいかというのは決まっていませんが、もし気が変わったのであればすぐに裁判所に連絡を入れましょう。

相続放棄の取消・撤回ができる期間と手続き内容

相続放棄の取消・撤回ができる期間と手続き内容
相続放棄の取消・取消申し立て手続き

申立人:相続放棄の申述をした人、または法定代理人
申立先:被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

 

申立可能期間

相続放棄から10年以内
追認できる時から6ヶ月以内

※どちらも満たしている期間であれば相続放棄を撤回することができます。

 

「追認できる時」とは…

詐欺の場合 … 詐欺と知った時点
強迫の場合 … 強迫状態が終了した時
成年被後見人・被保佐人 … 本人が回復して相続放棄の事実を知った時

相続放棄を間違ってしないよう調査の徹底を

いかがでしたでしょうか?

非常に特殊な事例ではありますが、相続放棄をしてしまって困っているという場合はこのような方法に当てはまらないかを一度確認してみてください。

また、本人の意志によって通常通り相続放棄をした場合は原則どおり撤回・取消はできません。

そのため、相続開始から熟慮期間3ヶ月の間に、きちんと順序立てて財産内容の調査を行うべきでしょう。
決して早まって相続放棄するべきではないと言えます。

財産の調査、負債の調査などで不安なことがあれば専門家へ相談することで適切な選択肢を見極めることができるでしょう。