大企業と中小企業でことなるM&A・事業譲渡の目的などの違いを解説!

大企業と中小企業 M&A

M&Aや事業譲渡というと、大企業のイメージが強いですよね。

ところが、最近では、中小企業や店舗などでもM&Aが頻繁に活用されるようになってきており、スモールM&Aという言葉も広く認知されるようになってきました。

スモールM&Aとは、中小企業や零細企業における、数千万円~10億円規模の小規模なM&Aのことをいいます。

いま流行りのスモールM&Aって?案件の探し方や売りやすい物件、注意点など

このように、大企業から中小企業まで、規模に関係なく利用されるようになってきたM&Aですが、その目的や利用する手法は大きく異なります。

今回は、大企業と中小企業において、M&Aの目的や手法にどのような違いがあるのかについて解説していきます。

M&Aとは

M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、日本語では「合併と買収」という意味になり、複数の会社が1つの目標を達成するために協力することをいいます。

M&Aでは、会社や事業を買う側と売る側に分かれ、それぞれ利用する目的が大きく異なります。

買い手側は、既存事業の拡大や新規事業参入など、主に会社を成長を加速させる目的でM&Aを行います。

一方で、売り手側は、事業承継や事業売却して1つの事業に集中するなど、会社を存続させるための手段としてよく利用します。

また、M&Aには「合併」「買収」「会社分割」の大きく分けて3つの手法があり、会社の特性や目的に合わせて選択することになります。

M&Aの手法や一連の流れについては、こちら「M&Aとは?その目的や手法、メリット・デメリットをわかりやすく解説」の記事を参考にしてください。

まずは、大企業と中小企業がそれぞれどのような目的でM&Aを利用するのかについて解説していきます。

大企業と中小企業では利用する目的が異なる

中小企業 M&A

M&Aの主な目的

M&Aを実行する主な目的は、以下のようなものがあげられます。

  • 自社で立ち上げるよりも早いスピードで新規事業、新規エリアへの進出などが可能
  • 競合企業の買収による競争力の強化
  • 売上や利益の拡大
  • 事業シナジーの創出
  • 調達や販売などの効率化によるコストカット
  • 人材の獲得
  • 許認可や特許、商標、ブランドなどの知財の獲得
  • 財務体質の強化
  • 事業再生

このように、様々な目的で実行されるM&Aですが、大企業と中小企業において利用目的が異なる傾向にあります。

その理由は、会社の規模や事業体系もありますが、世の中のIT化や少子高齢化といった時代の流れが強く影響しています。

大企業におけるM&Aの目的

IT技術の発展により市場の変化が早くなってきているため、経営戦略としてM&Aを行う企業が増加しています。

よりスピードが求められる時代において、事業を立ち上げにかかる時間を短縮できる、新しい事業へ参入が可能になる、M&Aの需要が高まっており、2017年には、M&Aの件数が3050件と過去最多を記録しました。

また、上記以外にも、既存事業の発展や国際競争力の強化など、大企業においては様々な目的でM&Aが利用されています。

以下の記事では、最近の国内外の事例が多く紹介されています。

M&Aを行なった目的や内容についても説明があるので、ぜひ参考にしてください。

【M&Aニュース】最新のM&Aから日本・世界のM&A事例まで

中小企業におけるM&Aの目的

中小企業においては、以下のような目的でM&Aが利用されるケースがほとんどです。

  • 事業承継
  • 事業整理
  • 廃業・倒産よりもキャッシュを残す撤退
  • 人材不足の解消
  • 投資

上記の中でも、少子高齢化にともなう後継者不足から、中小企業のM&Aによる事業承継の件数が急激に増加しています。

2017年の帝国データバンクの「後継者問題に関する企業実態調査」によると、国内の2/3以上の中小企業が後継者不足に陥っており、2025年には、6割以上の中小企業オーナーが70歳を超えると予想しています。

中小企業のM&Aが全国で本格化!廃業理由や後継者問題について解説

また、このまま中小企業が廃業していくと2025年には、650万人の雇用が失われるとされ、GDPに換算すると約22兆円が失われることになるかもしれません。

政府もこのことに危機感を感じており、「事業承継税制の改正」など後継者に会社を引き継ぎやすい環境作りに力を入れています。

このような背景から、事業承継を行い、会社を存続させるためにM&Aを行う中小企業が増加しています。

事業承継における後継者問題の概要と対策をわかりやすく解説!

大企業と中小企業で用いる手法が異なる

M&Aの目的が大企業と中小企業で目的が異なるということはお分かりいただけたでしょうか?

目的の次に、大企業と中小企業で違いがでるのは、M&Aの手法です。

事業譲渡 中小企業

このうち、とくに株式取得において、大企業の方が多くの選択肢があります。

たとえば、

  • 第三者割当増資
  • 株式交換
  • LBO(レバレッジド・バイアウト)
  • TOB

などです。

ただ、基本的にこれらの手法を中小企業でやることは、ほぼありません。

また、中小企業は、基本的には、合併や分割などの手法は用いられることがほとんどなく、

  • 事業譲渡
  • 株式譲渡

のどちらかで行われることがほとんどです。

中小企業のM&Aの場合は、取れる手法は少ないですが、手法としては非常にシンプルになります。

大企業と中小企業でM&A・事業譲渡の専門家

M&A専門家

大企業よりも、中小企業のM&Aや事業譲渡の方が、手法はシンプルです。

なので、関わってくるプレーヤーも大企業のM&Aと比較すると少ない専門家が出てきます。

大企業だと、

  • 投資銀行、証券会社、銀行などの金融機関
  • コンサルティングファーム(戦略、FAS、人事など)
  • 弁護士、税理士、公認会計士などの士業

など、多くの専門家チームが、ひとつのM&Aに向けて役割分担をしていきます。

法務デューデリジェンスだと法律事務所、財務デューデリジェンスだと監査法人、税務デューデリジェンスだと税理士法人、人事労務デューデリジェンスだと社会保険事務所という感じですね。

一方で、中小企業のM&Aだと、規模によりますが、そこまで多くの専門家チームを作ることはありません。

もちろん、買収金額が数千万円以上のある程度金額の大きな案件では、それなりにしっかりとデューデリジェンスをしますが、通常はそこまでできないこともたくさんあります。

当然金額の規模によりますが、多いケースでいうと、

  • M&Aアドバイザー・仲介
  • 弁護士

くらいです。

数百万円〜1,000万円の案件を買収するのに、わざわざいろいろなデューデリジェンスを数十万円〜数百万円かけてすることはほとんどないです。

もちろん、事前に聞いていた内容に嘘はないかなどは表明保証として、契約書に入れ込みます。

さすがに、契約書に不備があると後で大変なトラブルになる可能性が高いので、契約書に関してはきちんとリーガルチェックをプロの弁護士にしてもらうケースが多くなります。

とはいえ、数百万円くらいの店舗の売買とかになると、それすらせず、M&Aアドバイザーや仲介の方が持っているフォーマットでやってしまうケースもあります。

デューデリジェンスについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

デューデリジェンスとは?その種類や方法、M&Aで使用する際の注意点を解説

中小企業のM&Aの問題・注意点

M&A注意点

中小企業のM&Aだと関わってくるプレーヤーが少ないので、注意しないといけないのが、怪しいM&Aの業者です。

M&Aのアドバイザリー業をするのには、特に資格や許認可はいりません。

一応、民間の資格では、

  • M&Aシニアエキスパート(一般社団法人金融財政事情研究会)
  • M&Aスペシャリスト(社団法人全国能率連携、一般社団法人日本経営管理協会)
  • M&Aアドバイザー(一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会)

というのがありますが、特になくても全く問題はありません。

あくまで民間資格です。

リラクゼーションサロンが、国家資格である柔道整復師や鍼灸師の資格なしでもできるのと同じイメージです。

もちろん、それでも大手企業を対象にしたM&Aのアドバイザリー業務を行っている会社は、しっかりとしていますし、東証一部に上場していたりして信用があります。

中小企業や店舗を中心にM&Aのアドバイザーや仲介をされている方も、ある程度の大きさの中小企業や店舗の売買だとそれなりにしっかりしていることが多いです。

ところが、売却額が1,000万円を切るような案件の売買だと、かなりいろいろなプレーヤーが出てきます。

たとえば、詐欺や詐欺に近いような方、特に財務や経営、法務などに知見がなく、営業力だけでマッチングさせている方などです。

「じゃあ、税理士とか資格を持っている人に頼めば大丈夫なのね。」

と思われるかもしれませんが、資格があれば安心というわけでもありません。

たとえば、行政書士や税理士などの士業の資格を持っている方が仲介をしているというケースでいうと、もちろん、中にはM&Aに非常に詳しく、過去に関わった経歴を持っている方もいらっしゃいます。

ただ、一方で、本業は別が専門で、とりあえずM&Aアドバイザーとか、M&Aコンサルタントとも名乗っておくかくらいでやっている人も、中には少なからずいます。

そういう人にあたるとどうなるかというと、たとえば、営業力だけで勝負し、会計などをあまり知らず、平気でいい加減な財務状況を開示してきたりすることがあります。

また、渡された事業譲渡契約書のフォーマットが、士業だから大丈夫かと安心していると、弁護士に見せたら実は指摘箇所がめちゃくちゃあるようなものだったりというケースもあります。

そういう案件をとくにデューデリジェンスをしっかりせずに買ってしまうと、あとで本当にいろんな問題が起きてきます。

特に、中小企業や店舗をM&Aをする際は、本当に信頼できるアドバイザーや仲介かを注意しておいた方が良いでしょう。

もちろん、数百万円の案件を買収するのに、M&Aアドバイザーや士業に数十万〜数百万円払うというのもばかばかしいので、期待値を下げて、注意して使うというのがいいかと思います。

まとめ

M&A まとめ

今回は、大企業と中小企業でことなるM&A・事業譲渡の目的などの違いについて、解説してきました。

同じM&Aや事業譲渡でも、大企業と中小企業では目的や手法、注意する点などが違います。

大企業の場合は、資金力も豊富ですし、専門家もたくさんいて環境が整備されていますが、中小企業や店舗などのスモールM&Aの場合、まだまだ環境が整っているわけではありませんし、注意するべきポイントもたくさんあります。

とはいえ、事業承継のニーズの高まりとともに、中小企業や店舗のM&Aや事業譲渡はしやすくなってきています。

M&Aや事業承継をよくわからないものと遠ざけず、スモールM&A関連のニュースをフォローしておくことで、思わぬ投資物件や事業拡大のチャンスに巡り会えるかもしれません。