みなし相続財産とは?具体例から相続税の計算方法まで徹底解説

みなし相続財産とは?具体例から相続税の計算方法まで徹底解

「生命保険金や死亡退職金はみなし相続財産と聞いたけど、いったいなんなのかな?」なんて、お悩みの人もいると思います。

生命保険金や死亡退職金は、亡くなった人が持っていた財産ではないですが、相続税の課税対象です。

みなし相続財産とは、そのような相続が原因で相続人が受け取る財産を言います。

みなし相続財産について考えておかなければ、相続税を誤って申告してしまうかもしれないので注意しなければなりません。

今回は、みなし相続財産がどのようなものかや、相続税の計算方法、注意点をご紹介します。

相続税申告の際には、みなし相続財産に気をつけて正しい申告を行いましょう。

みなし相続財産とは?

みなし相続財産とは?

みなし相続財産とは、亡くなった人が所有していた財産ではないものの、亡くなったことが原因で相続人が受け取れる財産です。

相続税の計算にあたっては、相続財産とみなされて課税対象となります。

したがって、相続が発生したときには、みなし相続財産の存在を確認しましょう。

みなし相続財産を確認しないまま遺産分割や相続税申告を行うと、あとからトラブルになりかねません。

「どういうものがみなし相続財産になるのだろう?」なんて、思った人もいるはずです。

まずは、みなし相続財産の具体例を見ていきます。

みなし相続財産の具体例

みなし相続財産の具体例

みなし相続財産の具体例としては、以下のようなものがあります。

みなし相続財産① 生命保険金
みなし相続財産② 死亡退職金
みなし相続財産③ 弔慰金

どれも相続することが多い財産なので、気をつけなければなりません。

それぞれのみなし相続財産について、順番に確認していきましょう。

みなし相続財産① 生命保険金

相続の発生によって受け取ることになった生命保険金は、相続税の課税対象となる場合があります。

相続税がかかるのは、保険料を亡くなった人が負担していたときです。

ただし、「500万円 × 法律で決まっている相続人の数だけ、非課税となる枠が活用できます

例えば、法律で決まっている相続人が3人なら、「500万円 × 3人 = 1,500万円」までは非課税です。

非課税枠の『法律で決まっている相続人の数』がわからない人のために、確認方法を見ておきます。

法律で決まっている相続人の数とは?

相続税の計算のために、相続人となれる人は法律で決まっています。

まず、亡くなった人に配偶者がいれば必ず相続人です。

そして、配偶者以外に親族がいる場合には、配偶者に加えて、①子ども、②父母や祖父母、③兄弟姉妹の順番に相続人になります。

①の子どもがいれば、配偶者と子どもが法定相続人です。

①の子どもがいなければ、配偶者と父母や祖父母が法定相続人となります。

①の子どもと②の父母や祖父母がいなければ、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人です。

 

(「相続人の範囲について、もっと詳しく知りたい」という場合は、『法定相続人の範囲と順位とは?音信不通の親戚がいる時の対処法を紹介』を読んでみてください。)

みなし相続財産② 死亡退職金

相続の発生によって受け取ることになった死亡退職金も相続税の課税対象です。

亡くなった人に支給されるはずだった退職金を受け取った場合には、相続財産としてみなされます。

ただし、相続発生から3年経過後に死亡退職金を受け取るときには、みなし相続財産とはならずに所得税の課税対象です。

相続が起きてから長期間経ってから死亡退職金が支給されるなら、相続税と所得税どちらが発生するのかを確認しましょう。

相続税がかかる場合の死亡退職金は、生命保険金と同様に、「500万円 × 法律で決まっている相続人の数」という非課税枠が活用可能です。

注意するべきなのは、非課税枠は相続人以外が死亡退職金を受け取った際には利用できないこととなります。

相続人として死亡退職金を受け取るなら、非課税枠を活用しましょう。

みなし相続財産③ 弔慰金

場合によっては、弔慰金もみなし相続財産として扱われます。

原則としては、相続の発生によって受け取る弔慰金は、相続税の課税対象ではありません

ただし、亡くなった人の雇用主から実質上、退職金だと認められる弔慰金を受け取ったときには、相続税が発生します。

亡くなった人の職場から弔慰金を受け取ることになった場合には、以下の金額を超える部分に相続税がかかるのです。

  • 業務上での死亡のとき:給与36ヶ月分の金額
  • 業務外での死亡のとき:給与6ヶ月分の金額

弔慰金を受け取る場合には、相続税がかかるケースかどうかを確認しましょう。

以上が、代表的なみなし相続財産です。

みなし相続財産を受け取るなら、相続税の計算方法も確認しておきましょう。

みなし相続財産があるときの相続税計算方法

みなし相続財産があるときの相続税計算方法

みなし相続財産があるときは、以下のような流れで相続税を計算します。

  1. 相続財産の総額を算出する
  2. 相続税課税対象の金額を算出する
  3. 法定相続分で課税される金額を分ける
  4. 各相続人の相続税額を計算する
  5. 相続税の総額を実際に相続する割合で分ける

複雑に感じるかもしれませんが、順番に行っていくことで相続税額を概算できます

ただし、申告するための正確な相続税額を計算したいときには、専門家である税理士に依頼するべきです。

「相続税について話し合って準備するために、まずは自分で計算したい」という場合には、一度やってみてください。

それでは、実際に生命保険金や死亡退職金がある場合の相続税計算例を見ていきましょう。

生命保険金や死亡退職金がある場合の相続税計算例

生命保険金や死亡退職金がある場合の相続税計算例

生命保険金や死亡退職金がある場合の相続税額を実際に計算していきます。

今回は、生命保険金が3,500万円、相続財産が現金6,000万円、相続人が妻と子供2人の場合を例として考えてみましょう。

死亡退職金の場合も生命保険金と同様の計算方法なので、参考にしてください。

相続財産の総額を算出する

まずは、相続財産の総額を求めます。

その際に、非課税枠を差し引いた生命保険金の金額を計算しなければなりません。

500万円 × 法律で決まっている相続人の数 = 生命保険金の非課税枠
3,500万円 – (500万円 × 3人) = 2,000万円

したがって、生命保険金の金額は、2,000万円です。

そして、相続財産の金額に、生命保険金の金額を足し合わせます。

税枠6,000万円 + 2,000万円 = 8,000万円

今回のケースでの生命保険金を含めた相続財産の総額は、8,000万円ということです。

相続税課税対象の金額を算出する

次に、相続財産の総額から、相続税の基礎控除額を差し引いて、課税対象となる金額を求めます

相続財産の総額 − 相続税の基礎控除額 = 課税される金額

相続税の基礎控除額とは誰でも使える控除制度で、以下の計算式により求めることができます。

3,000万円 + (600万円 × 法律で決まっている相続人の数 )= 相続税の基礎控除額

今回の例のように、妻1人と子供2人がいる場合は、以下のようになります。

3,000万円 + (600万円 × 3人 )= 4,800万円

したがって、今回のケースでは基礎控除額は4,800万円です。

相続財産の総額が8,000万円で、基礎控除額が4,800万円なので課税される金額は以下となります。

8,000万円 − 4,800万円 = 3,200万円

つまり、3,200万円が相続税の課税対象だとわかりました。

法定相続分で課税される金額を分ける

ここで、課税対象の金額を、法定相続分で各相続人に分けます。

相続税の計算のために、財産を分けるときに使う法律で決められた割合が法定相続分です。

法定相続分は以下のようになっています。

配偶者と子ども 配偶者=1/2 子供=1/2
配偶者と直系尊属(父母や祖父母) 配偶者=2/3 直系尊属=1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者=3/4 兄弟姉妹=1/4
配偶者がいないとき 子供が全額を相続(2人なら1/2ずつ)

今回の例では、以下のようになります。

配偶者の法定相続分 : 3,200万円 × 1/2 = 1,600万円
子ども2人の法定相続分 : 3,200万円 × 1/2 = 1,600万円
それぞれの子どもの法定相続分 : 1,600万円 × 1/2 = 800万円

つまり、配偶者の法定相続分は1,600万円、子ども2人のそれぞれの法定相続分は800万円です。

注意すべき点は、あくまでも実際にどのように財産を分けるのかとは無関係なこととなります。

各相続人の相続税額を計算する

相続税額の計算には、③の法定相続分で分けた金額を使って、それぞれの相続人の相続税額を出さなければなりません

以下の相続税率を先ほど計算した相続人ごとに分けた財産の金額にかけて、相続税額を計算します。

法定相続分通り分けた金額 税率 控除額
 1000万円以下 10% 0円
 3000万円以下 15% 50万円
 5000万円以下 20% 200万円
 1億円以下 30% 700万円
 2億円以下 40% 1700万円
 3億円以下 45% 2700万円
 6億円以下 50% 4200万円
 6億円超 55% 7200万円

金額が1000万円を超えれば控除額があるので、計算した相続税額から差し引きます。

今回の例では、以下のように計算が可能です。

 

配偶者の相続税額 : 1,600万円 × 15% − 50万円 = 190万円
それぞれの子どもの相続税額 : 800万円 × 10% = 80万円

そして、それぞれの相続税額をすべて足して、相続税の総額も求めてください。

例のケースでは、以下のように計算できます。

190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円

つまり、今回の例では、相続人3人で合計350万円を納めることになるのです。

相続税の総額を実際に相続する割合で分ける

計算した相続税の総額を、実際に相続する割合に応じて相続人それぞれが負担することになります。

負担に応じて割り振ったそれぞれの相続税額が、申告しなければならない税額です。

今回の例で、配偶者が1/2、子ども2人がそれぞれ1/4ずつを相続するとしたら、実際の相続税額は以下のようになります。

配偶者の相続税額 : 350万円 × 1/2 = 175万円
子ども1人あたりの相続税額 : 350万円 × 1/4 = 87万5,000円

 

つまり、配偶者は175万円、子どもはそれぞれ1人あたり87万5,000円の相続税を納めるのです。

以上が、生命保険金や死亡退職金といったみなし相続財産がある場合の相続税の計算方法となります。

みなし相続財産は、相続税申告の際に忘れがちなので注意してください。

(「相続税の計算について詳しく知りたい!」という人は、『相続税を計算してみよう!追徴課税についても解説』を読んでみてください。)

他にもみなし相続財産については注意するべきことがあるので、確認しておきましょう。

みなし相続財産についての注意点

みなし相続財産についての注意点みなし相続財産がある場合には、注意しなければならないことが以下のようにあります。

(1)遺産分割協議の対象となるか確認が必要
(2)原則として遺留分の対象外
(3)相続放棄をすると非課税枠が使用不可

それぞれの注意点について、順番に確認していきましょう。

(1)遺産分割協議の対象となるか確認が必要

生命保険金など受取人が指定されているみなし相続財産は、遺産分割協議の対象とはなりません

なぜなら、指定されている受取人固有の財産であるためです。

したがって、遺産分割協議による話し合いの結果である遺産分割協議書にも、みなし相続財産は載せる必要はありません

ただし、特定の相続人にだけ著しく多いみなし相続財産の受け取りがあった場合には、注意が必要です。

そのようなときには不公平が生じないように、遺産分割協議で話し合うべきだと言えます。

話し合いを怠ると、相続人の間で揉めてしまう可能性が高いです。

(2)原則として遺留分の対象外

みなし相続財産は、原則として遺留分の対象外となっています。

遺留分とは、相続人に保証されている最低限相続できる取り分です。

ただし、みなし相続財産の金額が、遺産総額と同じくらいの金額であれば遺留分の対象とされる可能性があります。

遺留分の判断は専門家でなければ難しいので、高額なみなし相続財産が発生するときには専門家に相談しましょう。

「遺留分について、もっと詳しく知りたい」という場合は、『遺留分とは?相続人の遺留分の計算と請求方法を分かりやすく解説』を読んでみてください。

(3)相続放棄をすると非課税枠が使用不可

相続放棄をした場合には、生命保険金や死亡退職金の非課税枠は使うことができません。

生命保険金も死亡退職金も相続財産ではなく、受取人固有の財産とされているので相続放棄をしても受け取ることは可能です。

しかし、「500万円 × 法律で決まっている相続人の数という非課税枠を使わずに相続税を納めることとなります。

「相続放棄をすれば、相続税をかけずに生命保険金や死亡退職金を受け取れる」というわけではないことに注意してください。

相続放棄を行ったうえでみなし相続財産を受け取る場合には、相続税を忘れずに納めましょう。

以上のように、みなし相続財産には注意するべきことがあります。

みなし相続財産が発生するときの相続は考えることが多いので、専門家に相談すると安心です。

みなし相続財産について専門家に相談しよう

みなし相続財産について専門家に相談しよう

みなし相続財産について疑問や不安があるときには、早めに税理士に相談するべきです。

税理士に相談することによって、みなし相続財産を含めた具体的な相続税額を計算してもらえます。

自分だけでは相続税を正確に計算して申告するのは難しいので、税理士に依頼するのが良いでしょう。

それだけではなく、相続税の節税について提案してもらえることもあります。

しかし、税理士なら誰でも良いというわけではありません。

税理士には法人税や所得税など相続税以外にも分野がさまざまあるので、相続税に強い税理士を選ぶことが大切です。

相続税について詳しくない税理士を選ぶと、非課税枠などを活用できずに相続税額が高くなるかもしれません。

相続税に強い税理士を選ぶポイントは、相続案件に関わった経験が豊富で幅広い知識がある人を選ぶことです。

また、相談に行ったときに話しやすいと感じる人にした方が、何でも質問できるので安心して任せられます。

多くの専門家は最初の相談は無料で受け付けているので、まずは早めに無料相談に行ってみましょう

ちなみに、無料相談に行く際には、わかる範囲で相続財産やみなし相続財産をリストアップしておくと相談しやすいです。

また、家族構成がわかるメモも準備しておけば、相続税の試算もすぐに行ってもらえます。

まとめ

亡くなった人が持っていた財産でなくても、相続が起きたら相続税がかかるものがあります。

そのような財産はみなし相続財産と呼ばれ、生命保険金や死亡退職金、弔慰金などです。

相続税を計算する際に忘れがちなので、みなし相続財産の申告漏れがないように注意しておかなければなりません。

みなし相続財産も考えた相続税の計算方法を理解して、適切に相続税を申告しましょう。