【TLM木暮氏インタビュー】グローバルな視点で、ビジネスモデルを考える

本稿はベンチャーキャピタルTLMを展開する木暮圭佑氏(Twitter @keysket )へのインタビューから記事化。海外の旬なベンチャー企業、国内で話題のベンチャー企業情報などを同氏にインタビューさせていただいた。

本企画は「グローバルな視点で、ビジネスモデルを考える」というタイトルの元、2か月に1度、定期的に連載する。

木暮圭佑 | 1991年生まれ
早稲田大学国際教養学部入学後、2013年6月から大学を休学し、East Venturesにて勤務。ファンド運営の業務を学ぶ。退社後、2015年4月TLM1号投資事業有限責任組合を設立。General Partnerに就任。アプリやインターネットが好き。

聞き手:正田圭(pedia運営/TIGALA株式会社)
編集:pedia salon起業準備チーム

シェアリングエコノミーの展望

自転車大国中国での躍進

ofo, Inc(小黄車)
2014年に北京大学の学生5名により中国で設立された自転車シェアリングサービスを展開するスタートアップ企業。
日本では、株式会社OFO JAPANにより2018年3月に国内初のサービスを開始。


ofo_シェアサイクル

Mobike(摩拜単車)
2015年1月に設立された中国企業であり、世界最大の自転車シェアリング事業者。
2017年8月にモバイク・ジャパンにより、北海道札幌市で日本初の事業をスタート。


Mobike

シェア自転車の市場についてどう感じていますか?

この業界で5月30日に10億USDバリエーションのファイナンスをしているのですが、その数日後にさらに上がって20億USDでファイナンスが回っています。

先日はMobikeが1000億円でバイアウトしました。今年の初めは300億円くらいだったので、伸び率がすごい業界です。

このビジネスはプレイヤーを簡単に作ることができ、ビジネスモデルもシンプルで真似しやすいので、早めにファイナンスをしてナンバーワンになっておくのが最適解なのかなというのが僕の見立てです。

マネタイズポイントはユーザーからのレンタル使用料の徴収だと思うのですが、とはいえ単価は安いです。先日利用してみたのですが、30分で17円くらいでした。でもたくさんの人に利用されているのでエコノミクスが回っています。あとofoの自転車の前輪部分には広告が入っています。でも収入の内どれくらいの割合を占めているかは不明です。

—自転車を所有する人への支払い等はないのですか?

ofoの場合、自転車は全て自社が保有です。華奢な作りなので、製造を安く抑えて大量生産しているのだと思います。使用時に自転車のロックを解除するテクノロジーが使われているので、そこの開発に初期費用が掛かったくらいでしょうか。

ちなみに、どれくらい所有しているかというと、街中の至る所で放置されているくらいの量です。だから最近は製造ペースを少し緩めたという話を聞きます。

—自転車という資産を会社で持っているのですね。減価償却できたりという魅力を感じます。ちなみにですが、仮にビジネスとして成り立たなくなっても、保有資産である自転車を売却処分するなどして、負債を回収する再生プランはあり得るでしょうか?

自転車を売ろうにも、出回っている自転車には壊れているものが多いので、難しいでしょう。

新たな移動手段の台頭はじまるか

Bird

Bird

シェアリングのカテゴリーでもうひとつ注目しているのがスクーターです。日本だとキックボードと言った方がイメージが湧くでしょうか。

シェアで使われてるスクーターは電動タイプのもので、自転車よりも楽に移動できる印象です。こっちは自転車に比べて現状まだまだという感じですが、これから来そうな熱量を感じています。

盛り上がるシェアリングビジネスあれこれ

Lyft

Lyft

他のシェアリング系だと、アメリカの企業で車をシェアする”Lyft”とか伸びています。「自分の家に車とかなくても移動できればいいよね」っていう。保有をしないことって、これから流行りそうな気がするんです。気軽に他のものに変えられるし、別のものを試してもいいと思います。

Fat Lama

Fat Lama

あとは”Fat Lama”というレンタルのCtoCサービスなんていうのもあります。貸し借りのプラットホームなのですが、メルカリのレンタル版みたいなものだとイメージしていただければ分かりやすいでしょうか。貸したものが返ってこないとか壊されたらどうするかとかが気になるところですが、ビジネスとして成立したら非常に面白いと思います。

日本におけるシェアリングビジネス

Rentio

Rentio

CLASS

CLASS

先述したシェアサイクルは日本国内でも何年も前から存在するビジネスですが、自転車を置く場所が数カ所に限定されてしまい、シェアが効率的に行われないことがネックでした。アメリカや中国のようにどこでも置けるような環境を作れれば、もっと活発化するかもしれません。

他のシェアビジネスでは、ブランド物のバッグをレンタルする事業や、家電レンタルの”Rentio”が伸びているようです。あとは”CLASS”という家具のレンタルサービスが最近話題になっています。これはバチェラーに出演していた久保さんがやられていることもあって注目されています。

身の回りをレンタル揃えて所有しないっていう身軽さの提案、いいですよね。万が一、壊れても保険に入ってると思うので、リスクを最小限に抑えられます。CLASSでは原価を抑えた自社製造の品をレンタルしているらしいのですが、他所で購入してレンタルするのもアリな気はします。

引き続き、これからも注目していこうと思っています。

GitHub買収劇

GitHub, Inc. | 2008年に設立。
コンピュータープログラムの元となる「ソースコード」を、インターネット上で管理するためのサービス「GitHub」を展開。
2015年6月にギットハブ・ジャパン合同会社を設立。創業以来、主要投資家より総額 $350Mを調達。

GitHub

エンジニア御用達サービスの買収ニュース

国内でも話題になっていましたが、海外でも同じく”GitHub”をマイクロソフトが75億ドル(約8300億円)で買収したというニュースが注目を集めていました。それにより、マイクロソフトの株価が同じくらい値上がりし、利ザヤでペイできるのくらいに盛り上がってます。

ソフトウェア開発などに携わったことがない方に説明すると、GitHubは開発者向けのサービスで、オンライン上にソースコードと呼ばれる情報をホスティングすることで、数百万人のサービス利用者と一緒にコードのレビューを行ったり、プロジェクトの管理をしながら、ソフトウェアの開発を行うことが可能なサービスを提供している会社です。

GitHubはおそらく世界で一番ソースコードの情報を持っているので、マイクロソフトはそこからエンジニアリングのナレッジに繋げていくんだろうなと僕は見ています。現状は「サービスとしての独立性を保っている」とは言ってますが、今現在2800万人のユーザーがいますからね。活用しようと思えば、かなり貴重なデータになります。

マネタイズポイントは有料版があって、ユーザーから徴収するというビジネスモデルです。基本的なエンタープライズの部分があって、一定以上の機能からは有料ということになってます。そして個人開発者なども含めて、有料で使っている人たちは多いと思います。

その一方でネガティブなニュースもいくつか聞いていたので、買収したというのに驚きました。

IoTを使った保険サービスの事例とこれから

ONVI, LLC
2013年に設立された革新的歯科技術に強みを持った企業で、口腔衛生をより良く理解し改善するためのサービスを設計。
2016年には、カメラ付きIoT電動歯ブラシ「Prophix」を発表。


ONVI, LLC_prophix

歯科向けの保険サービスをやっているベンチャー企業のONVIが面白そうなことをやっていました。この会社はIoTの歯ブラシを持っていて、ユーザーがちゃんと歯を磨いているかどうかを毎日トラッキングしているのですが、しっかり磨いている人は「歯医者の診察料がこれだけ安くなります」というようなサービスをやっています。歯の磨き方でA判定のランクをもらえると18パーセント値引きで治療してもらえるというような具合です。

IoTでデータと絡んでいるところがそんなに多くないので、面白いかなと思いました。ロジックは不明なのですが全州の領域で27万人の会員だそうです。

こういう事業は他にいくつかあってもいいなと思っています。汚い話ですが、便はすごいデータが取れるらしく、トイレのIoTサービスがあれば、健康管理ができそうです。

—要職の人などの便は毎日確認しているらしいですね。

すぐに開発できるものではないですけれど、可能性を感じるサービスだと思います。また、便器の一機能として完結するのではなく、歯ブラシのように保険を絡めたら展開があって面白いかなと思いました。

—日本でやるとすると、例えば少額短期保険なら3,000万円から参入出来ますよね。

すごく儲かるイメージはまだないですが、一定数のユーザーは確保出来そうな気がしています。

利益3,000億円越えのマイニングビジネス

Bitmain Technologies
2013年に設立された中国に本社を構える世界最大級のマイニング関連企業。コンピューティングチップ、高密度サーバー装置などを開発。
17年には、米国の老舗GPUメーカーであるエヌビディア(Nvidia)の利益を超えたと伝えられている。


BITMAIN

利益を上げていそうなビジネスで言えば、マイニング装置販売会社最大手の”BITMAIN”をよく耳にします。昨年の利益は3,200~4,300億円だそうです。マイニングから参入して、そこからマイニング用の装置を売りに出しはじめました。

マイニングしかできない代わりにすごく性能のいいデバイスを作っています。”アントマイナー”という装置が市場にヒットして、70%のシェアがあります。初期費用は高いけれども、安定性が高いのが売りです。

あとはクラウドマイニングという、専門の会社に出資してマイニングしてもらい、その配当を受け取るというシステムがあります。こちらは初期費用が安いので、敷居が低いかもしれません。

ただ、今から日本でマイニングをやるというのは難しい気がしています。それから、利益には仮想通貨の価格変動によるボラティリティも入っているので、その点も注視しておくべきところでしょう。

海外ではブロックチェーンの話題は頻出していて、ICOの話題は多いです。ただ、明確に融資決済というわけではなく「今度出します」ということで10億から20億くらいを集めているようなイメージです。

海外、特にアメリカではVCからそこそこ集まっている印象があります。日本ではICOが難しい環境なので、今はdApps(分散型アプリケーション)などに魅力を感じています。

マッチング・サービスでデータ販売は可能か?

Thumbtack

Thumbtack

地域サービスのマーケットプレイスを運営する会社が伸びてきています。具体的には家のちょっとした補修をしてくれる大工とか、パーティーを盛り上げてくれるDJとかを気軽にマッチングしてくれます。そういうのが他にもあっていいかなと。

あとは親が注文して、子供を送り迎えするサービスが実際にファイナンスしているので、育児向けUberとかあり得る気がしています。確実に儲かるか、現段階では未知数ですが、面白そうです。

マネタイズポイントは、マッチングに対して手数料を取っているところが多いですが、徐々にユーザーが増えてくれば、優先的に表示をあげる際に価格設定が出来たり、収益性を高められるサービスを増やしていけると思います。

—マッチングのデータを売るというのは成立すると思われますか?

成立させるためにはかなりの量が必要になってくると思います。領域にもよりますが100万や200万では足りないでしょう。1億くらいのデータが集まってやっと、さまざまなものに紐付けも可能になってくる量ではないでしょうか。

新しくて古いWebメディアのサービス

theSkimm

theSkimm
“theSkimm”というWebメディアがメールマガジンを送るというサービスを提供していて、ここにきてメールというツールに逆に目新しさを感じています。

国内ベンチャーの話題あれこれ

デートアプリの今

デートアプリ市場は、新規で参入するところ以上に、パパ活やギャラ飲みのマッチングサイトやアプリの伸び率の高さを感じています。人気のあるアプリでは女性ユーザーの質にもすごくこだわっているみたいですよ。

市場的には、出会い系のアプリは他にも展開がありそうな気がしてますね。

LINE@を活用するサービスが続々と

“LINE@”で相談する系のサービスが増えたように思います。自社開発ではない既存のプラットフォームに乗っかるっていうのはある意味で賢い選択肢ではないでしょうか。

若い人にとっては使い勝手のよいツールとして定着しているので、メールでカスタマーサポートするよりもリアクションが高い場合が往々にしてあります。LINEはみんな使っていますからね。

国内のズボラなユーザー歓喜

ズボラ○○とつくビジネスが多くなってきている印象がありますね。ユーザーの「面倒臭い」という負担を軽くしようというビジネスです。LINE@もそうですが、気軽に一定数のメールでやりとりするものが流行る兆しを感じます。

ベンチャー企業の株主になれるクラウドファンディング

ベンチャー企業に投資したい人のニーズを満たしている”FUNDINNO”は、中小系の証券から人が流れている感じがしています。こちらもこれからを注目しています。

高校生の作ったレシート買取サービス

“ONE”の話題がバズっています。レシートを自分で買うというアイディアは面白いと思いつつ、それでちゃんとペイするのかな?という素朴な疑問を持っているので、これからどうやって展開していくのかを注目していきたいと思います。

終わりに

—貴重なお話をどうもありがとうございました。最後に木暮さんはどんな人に投資をしたいと考えていますか?

基本的にヒト投資の部分があるので、ビジネスモデルよりも、その人自身が諦めなさそうかどうか、あくまで例えですが、泥水啜っても生きられるかどうかとか、そういうところを見ているところが多いですね。海外事例からヒントを得ることで、皆さんの事業の成功につながれば幸いです。