ダイリューションとは?ベンチャー企業における希薄化の目安も解説

希薄化 ダイリューション

発行株式数が増えることにより1株あたりの価値が低下する「ダイリューション(希薄化)」。今回はダイリューションの用語説明をはじめ、持株比率による権限、ベンチャー企業の希薄化の目安、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受ける際の資本政策について解説していきます。

ダイリューションとは?

ダイリューション とは

ダイリューションとは、増資などの新株の発行で、発行株式総数が増えることにより、1株あたりの価値が低下することです。また、希薄化、希釈化、ダイリュートすると呼ぶことがあります。

増資による自己資本の充実は、企業の財務体質を安定する効果があります。一方で、既存の株主にとっては1株あたりの価値が下がるので株価も下がる可能性が高いです。ただし、現実には、増資を成長のための好材料と捉えることもあり、株価が上がるケースもあります。

実は、ベンチャー企業にとってもこの仕組みは変わるものではありません。さらに、エンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)から出資を受ける場合は、持株比率の低下についても意識する必要があります。

なぜなら、ベンチャー企業では迅速な意思決定が成否をわけることに直結しますが、創業者や創業グループで一定の持株比率を維持できない場合、意思決定のスピードが失われてしまうからです。

さらに、高い持株比率の株主による経営者層の入れ替えやビジネスモデルの方向転換(ピポット)を余儀なくされるケースもあります。

持株比率によってできる権利は明確に定められていますので、まずは持株比率ごとの権利を理解しましょう。

持株比率の重要性と割合ごとの権利

ベンチャー企業において意識しておきたい割合としては「1%、3%、10%、16.7%、25%、33.4%、50.1%、66.7%、90%」の9つ。それぞれ詳しく見ていきましょう。

持ち株比率が1%を超える株主の権限

  • 総会検査役選任請求権
  • 多重代表訴訟提起権
  • 議案提案権

持ち株比率が3%を超える株主の権限

  • 総会招集請求権
  • 役員の解任請求権
  • 業務の執行に関する検査役選任請求権
  • 役員等の責任軽減への異議権
  • 会計帳簿閲覧請求権

持ち株比率が10%を超える株主の権限

  • 一定の募集株式発行等における株主総会決議要求権
  • 解散請求権

持ち株比率が16.7%(6分の1)を超える株主の権限

  • 簡易合併等の反対権

持ち株比率が25%を超える株主の権限

  • 相互保有株式の議決権停止

持ち株比率が33.4%(3分の1)を超える株主の権限

  • 重要事項の特別決議を単独で否決する権限(拒否権発動)

持ち株比率が50.1%(2分の1)を超える株主の権限

  • 経営権の獲得。取締役・監査役の選任や解任決議
  • 事実上、会社の意思決定のほぼ全てを行える

持ち株比率が66.7%(3分の2)を超える株主の権限

  • 定款変更決議等の重要事項の特別決議を単独で可決する権限
  • 事業譲渡、合併、会社分割、株式交換、株式移転、会社の解散などを決定する権限

持ち株比率が90%を超える株主の権限

  • 特別支配株主の株式等売渡請求

上記の権限については、2015年5月1日に施行された会社法をもとに記載していることをご了承ください。

参考:会社法下の保有割合と株主の権利等

ベンチャー企業における希薄化の目安

個人事業主 注意

持株比率ごとにできる権利がわかったところで、実際には何割程度を持っておけばいいのでしょうか?言い換えると、ベンチャー企業において何割程度ダイリューションさせても大丈夫なのでしょうか?

残念ながら、企業や創業者個人の状態によって違うので、絶対的な正解というものはありません。また、ベンチャー企業において創業者が持つべき株式比率に対する意見は様々なものがあります。

「シードラウンドで◯◯%を」、「シリーズAで◯◯%を」というように、はっきりと言えればいいのですが、ダイリューションの目安はケースバイケースです。

ただし、最初のラウンドでいきなり3割以上のダイリューションをするのは好ましくありません。シード、シリーズA、シリーズB、シリーズCと続いて行くことを考慮に、資本政策を考えましょう。

ダイリューションの具体例

ここまでダイリューションの概念を解説してきましたが、エンジェル投資家やVCから出資を受けるときの、ダイリューションに関する具体的なイメージが湧かない方も多いかと思います。そこで、ここではダイリューションを具体的な例を使って説明していきます。

あなたが資本金100万円で会社を設立して、一人株主だとします。この時点では、あなたは会社の100パーセント株主です。

その後、エンジェル投資家からプレ9千万円で1千万円を調達したとします。そうすると合計(ポスト)1億円の時価総額に対し、あなたの株式保有比率は90パーセントになります。

これを10%ダイリューションしたといいます。下の図は持株比率の推移です。

ダイリューション 希薄化

実際には、シード期のあとにシリーズA、シリーズBと続いていきますので、シリーズA(B)でどの程度ダイリューションさせるのかを考えながら資本政策を考えていきます。

例えば、上記の例の後に、あなたがさらに2億円を調達したくて、自分の持株は70%をきりたくないとしたら、プレバリューはいくらで調達したらよいでしょうか?

ダイリューションさせられるのは20%だけ(=90% – 70%)ですので、20%で2億円を調達する必要があります。また、プレバリューとポストバリューの関係は、「プレバリュー+調達金額=ポストバリュー」、または「プレバリュー=ポストバリュー-調達金額」です。

20%で2億円を調達した後のポストバリューは10億円(=2億円×100%÷20%)になりますから、プレバリューは8億円(=10億円-2億円)となります。

資本政策を考える上で、プレバリューやポストバリューの計算は必須です。さらに詳しく知りたいという方は、以下の資本政策の記事をご覧ください。

また、実際の資金調達では、Aという投資家とBという投資家の、それぞれ提案してくるバリュエーションの条件や総額が違ってくることがよくあります。全ての投資家を入れてしまうとダイリューションしすぎるということも往々にあるので、投資家との駆け引き(交渉)や、どのラウンドで誰に入ってもらうかを判断することが重要になってきます。

まとめ

ダイリューション(希薄化)について解説してきました。

ベンチャー企業においては、資本政策を考える上でダイリューションは避けては通れません。特にベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから出資を受ける際に、将来の資本政策を考えた上で、何%までダイリューションしても大丈夫かを念頭に、出資を受けることが大切です。