リアルオプションとは?その事例や意思決定の方法を解説

リアルオプション

不確実性の高いプロジェクトにおいて意思決定の方法として注目されている「リアルオプション」。DCF法やNPVに取って代わって、M&Aや事業投資の意思決定に使われることが増えています。今回はリアルオプションについて、メリット・デメリットをはじめ、計算方法やそれぞれのオプションの詳細を解説していきます。

リアルオプションとは?

事業計画書 ポイント

リアルオプションとは、オプションという価格評価手法を使い、実物資産(リアル)に対して価値評価をする方法です。

オプションは「選択権」という意味合いがあり、実際の事業投資に段階的な選択肢(オプション)を使って意思決定をすることからリアルオプションと呼ばれています。

特に、リアルオプションは不確実性の高いM&Aや事業投資の意思決定取り入れられているもので、アップサイドのリスクを取りに行くことができる手法です。

また、リアルオプションと一緒に頻出する用語としてDCF法やNPVがあります。詳細の説明は省きますが、これらは将来稼ぐであろうキャッシュを元に計算をしているため、事業環境の変化に対応することができないため、不確実性を考慮したリアルオプションという考えに発展してきました。

リアルオプションの計算方法

リアルオプション 計算方法

リアルオプションの計算の例として、以下のような新規事業があったと仮定します。

  • 総投資額:100億円
  • 初期投資額:10億円(1年後に残り90億円の投資が必要)
  • 成功した場合の利益:150億円
  • 成功する可能性:50%

リアルオプションを考えずに、この新規事業の期待値を求めると、

(150億円-100億円)×50%+(0-100億円)×50%
=-25億円

と赤字になりますから、この新規事業へは投資しないという判断になるでしょう。

しかし、リアルオプションの考え方を使って、まずは初期投資に必要な10億円を使って新規事業を立ち上げ、1年後の状況次第で判断した場合、

(150億円-90億円)×50%+0億円×50%
=30億円

となり、初期投資の10億円を引いても20億円の利益が期待できます。もちろん、1年後に事業の状態がよくなければ撤退すればよく、その場合の損失は初期投資の10億円のみとなります。

このように、1年後に追加で投資をするかどうかの選択権に10億円の価値を見出したというのがリアルオプションの計算方法となります。

また、リアルオプションの計算方法としては、ブラックショールズモデルというものが広く知られています。ブラックショールズモデルを用いれば理論上の価格を計算することができますが、非常に難しくなってしまいますので、ここでは割愛します。

リアルオプションの種類

リアルオプション 種類

延期オプション

延期オプションとは、事業をスタートするタイミングを延期する権利のことです。

例えば、ラーメン屋を出店する場合、土地を購入して、店をオープンする時期によっては期待したリターンが得られない可能性があるという不確実性があったとします。そういうときは、土地だけを購入した状態で、不確実性が解消されるのを待ちます。

拡大オプション

拡大オプションとは、最初から全てを行うのではなく、徐々に拡大していく選択権のことです。

上述のラーメン店を例にすると、いきなり100店舗を展開するのではなく、まずは5店舗だけ出店するなどして様子をみて、事業が順調であれば徐々に10店舗、30店舗と増やしていくのです。

拡大オプションのメリットとしては、段階的に資金を投入することができるため、事業撤退となった場合でも損失を最小限に抑えられるという点があります。

また、ベンチャーキャピタルの投資で、シード期からシリーズA、Bへ進んでいく流れも一種の拡大オプションと言えます。いきなり数億円を投資するのではなく、最初は少額の投資をして軌道に乗ったら徐々に投資額を上げていくというものです。

縮小オプション

縮小オプションとは、拡大オプションとは真逆の選択権で、事業を縮小していくときにコストがかからないという選択権です。

イメージがつきにくいかもしれませんが、ラーメンやアパレルなどの店舗ビジネスで考えてみるとわかりやすいです。店舗展開を考えた時に、大型の店舗を出店すると縮小する時にも莫大なコストがかかります。一方で、小規模の店舗であればあまりコストをかけずに縮小することができます。

縮小するためのコストがかからないというのも価値なのです。

撤退オプション

撤退オプションとは、事業を撤退するときのコストを低く抑えられる選択権です。

店舗を例にすると、設備を購入するのではなくリースにしておくことで撤退のコストは安くなります。

縮小オプションと同様に、コストを安く抑えられるという点に価値があります。

スイッチングオプション

スイッチングオプションとは、事業を展開する方向を変えることできる選択権です。

例えば、複数の仕入先と取引をしておくことで、その時々で条件のいい所と取引をすることができれば、その分だけ事業として利益を出しやすくなります。

転用オプション

転用オプションとは、全く別の業態へ転用できる選択権です。

飲食店が最もわかりやすいですが、例えばラーメン屋をやっていてうまく行かなかったからカフェにしようというのが転用オプションにあたります。

一時中断・再開オプション

一時中断・再開オプションとは、その名前の通り、事業を中断したり再開したりできる選択権です。

事業を進める上では様々なリスクがつきものですが、全てのリスクを考慮していては事業が進みません。そこで、事業を進めていく中でリスクが高くなれば中断を、リスクが少なくなれば再開を容易にできるオプションとなります。

リアルオプションの3つのメリット

リアルオプション メリット

リアルオプションは不確実性の高いM&Aや事業投資の意思決定取り入れられているもので、アップサイドのリスクを取りに行くことができる手法です。

主なメリットとしては3つ。

  1. 損失を抑えることができる
  2. 新たに学習できる
  3. 事業の成長機会を多く持てる

それぞれ詳しく見て行きましょう。

1.損失を抑えることができる

事業を進めて行く中で、不確定な要素によって撤退を余儀なくされたり大きな損失を被ってしまう場合でも、リアルオプションの考えを元に進めていれば、撤退することによって損失を最小限に抑えることができます。

2.新たに学習できる

小規模でも新規事業をはじめることによって、会社内に様々なデータが蓄積されていきます。例えば、海外展開をするのであれば現地での消費者動向や取引の慣習など、海外で実際にビジネスを始めなければわからないデータが蓄積され、その次の事業展開に活かすことができます。

3.事業の成長機会を多く持てる

リアルオプションを使って段階的に事業展開をすることで、様々な成長機会を得ることができます。市場の成長がわからない段階では、不確定要素が多く投資を控えてしまいますが、リアルオプションに従って段階的に事業を進めることで、市場が大きく成長したときに事業の成長機会を逃さないですみます。

リアルオプションのデメリット

リアルオプション デメリット

リアルオプションにはボラティリティ(将来の不確実性)が大きいほど評価が高くなりやすいという特徴があります。

そのため、現段階では投資するという判断ができないものでも、リアルオプションを使って評価をすることで投資に値するプロジェクトになるケースも多々あります。

DCF法だけで判断すると、費用対効果が合わないと判断されたプロジェクトも、オプションの原理を用いることによって、「not Go」と意思決定されたプロジェクトに「GO」を出せる

引用:ファイナンスこそが最強の意思決定術である

一方で、プロジェクトを無理やり進めるためにリアルオプションを用いて価値を高く見せるということもあり、メリットがある一方でデメリットもある点は注意が必要でしょう。

まとめ

リアルオプションの計算方法をはじめ、メリットやデメリットについて解説してきました。

リアルオプションを用いた意思決定は、ビジネスだけでなく私生活にも活かすことができます。リアルオプションは決して難しい概念ではないので、ぜひこの機会に覚えてください。