ストックオプションとは?その制度や税金、ベンチャー企業における行使のタイミングを解説

ストックオプション

ベンチャー企業で社員や役員のモチーベーションを上げるために発行されることの多い「ストックオプション」。業績連動型の賞与として導入する企業も増えており、ストックオプションを発行する企業側だけでなく、受け取る従業員側も正しい知識を身につけることが大切です。今回はストックオプションについて、メリットやデメリットをはじめ、行使する条件、タイミング、税金などを簡単に解説しています。

ストックオプションとは?

ストックオプション とは

ストックオプションとは、社員や役員のモチベーションを上げるために、あらかじめ定めた価格で自社株を買う権利を付与するインセンティブ(業績連動型)制度です。

ストックオプションを与えられた社員や役員は、会社が上場することによって利益を得ることができます。また、会社の業績が良くなれば良くなるほど株価も上がり利益を得られるので、結果として業績アップに繋がるという株主と従業員のWin-Winを前提にした制度です。

ただし、ストックオプションは株を自由に売買できることが前提であるため、ストックオプションを制度として導入するのは上場企業か上場を目指す(IPOをする)ベンチャー企業になります。

また、かなり簡略になりますが、ストックオプションによって従業員が儲かる一例を紹介します。例えば、1株1,000円で1万株購入できるストックオプションの権利を持っていたとして、株価が3,000円になったところで権利を行使して株式を購入、そのまま売却をした場合、2千万円(=差額の2,000円×1万株)儲かることになります。もちろん、税金がかかりますので、2千万円全てが利益になるわけではありません。

ストックオプションのメリット・デメリット

ストックオプション メリット デメリット

ストックオプションの細かい制度や仕組みを見ていく前に、まずはストックオプションにおけるメリット・デメリットを、会社側と社員側の2局面から見ていきましょう。

ベンチャー企業におけるストックオプションは、無償ストックオプションがほとんどですので、今回はベンチャー企業における無償ストックオプションについてのメリット・デメリットを解説していきます。

権利をもらえる社員のメリットとは?

無償ストックオプションは20%しか課税されないので税金面のメリットが大きい

ストックオプションの最大のメリットとも言えるのが税金面。給与が最大50%程度課税されるのに対し、無償ストックオプションでは20%しか課税されません。

会社への貢献が自分自身の利益に反映される

会社へ貢献することによって会社の業績がアップし、結果として会社が上場をすれば利益が得られます。

一方で、ボーナスなどと異なり、業績に貢献していない場合でも、会社が上場を果たせば利益を得られるという面も持ち合わせています。

権利をもらえる社員のデメリットとは?

上場できないことによりストックオプションが価値を持たない

ストックオプションは上場をして初めて利益を生む制度ですので、上場を目指していたベンチャー企業が上場できなくなった場合には利益になりません。

ベンチャー企業のストックオプションはハイリスク・ハイリターン

ベンチャー企業では優秀な人材に高い給与を出すことができないことが多く、給与の代わりにストックオプションで人材採用を促進する場合が多々あります。将来得られるストックオプションの利益をあてに、低い給与でベンチャー企業にジョインしてしまうと、IPOできなかった場合に大きな損をしてしまうデメリットがあります。

ただし、ストックオプションは給与とのトレードオフであることを理解して、ストックオプションと給与を適切な割合でもらうのであればハイリスクにはなりません。

権利を与える会社のメリットとは?

給料を減らしてバーンレートを下げることができる

先述した通り、ストックオプションは本来の給与よりも低い給与で優秀な人材を獲得する手段です。毎月の給与を下げることができますので、バーンレートを下げることに繋がります。

高い給与とストックオプションの両方を出すベンチャー企業がありますが、両者はトレードオフの関係にあることを理解して、適切なバランスを保つことが大切です。

経営に参画させるときに生株を渡さないですむ

会社視点で見たストックオプションのメリットとして、ストックオプションが生株ではないということがあります。

生株で渡すわけではないので、「直近のダイリューションを防ぐことができる」「契約で縛ることができる」というメリットがあります。

ダイリューションが著しいと、次のラウンドにいけなかったり、経営に参画するメンバーが増えてしまって会社の方向性が定まらないなどが起こり得ます。

また、ストックオプションは行使条件を契約で縛ることができるので(例えば上場後2年間は行使できない)、上場してすぐに退職されるということを防ぐこともできます。

社員や役員のモチベーションを上げられる

ストックオプションを付与した社員や役員のモチベーションをあげることができます。社員や役員のモチベーションは業績に直結しますので、業績アップの手段としてストックオプションを用います。

優秀な人材の採用ができ、流出を防げる

上記と同様に、ベンチャー企業は高い給与を出せないことが多く、優秀な人材を採用することが難しいです。そこで、ストックオプションという「将来」お金を支払う約束をすることで、優秀な人材を採用することができるのです。

ストックオプションの正体は、「現在高給を支払えない企業が、給料を抑えてもらう代わりに、将来大きな給料を払うという口約束」なのです、

引用:ファイナンスこそが最強の意思決定術である

権利を与える会社のデメリットとは?

制度設計のミスによる士気低下

ストックオプションはメリットが大きい反面、制度設計を間違えてしまうと従業員のモチベーションアップに繋がらないばかりか、モラルの欠如に繋がる可能性もあります。

公平性を欠くと社内の人間関係が崩れる

ストックオプションの制度を作る上で多くの設計者を悩ませるのが分配比率。業績への貢献度や入社時期に応じて分配比率を決めるのが一般的ですが、全てを数値化できるわけでもないので、どうしても主観的な判断が入ってしまいます。そして、多くもらった社員と少ししかもらえなかった社員の間で人間関係が崩れてしまい、結果として業績アップに繋がらない、むしろマイナスの効果が出てしまうというデメリットもあります。

優秀な人材の流出

メリットのところで優秀な人材の採用ができ、流出を防げると説明した後で矛盾しているようですが、ストックオプションの利益が確定した後に人材の流出が起きやすいのも事実です。例えば、ベンチャー企業がIPO後、社員や役員がストックオプションを行使して利益を確定させ退社するというのは良くあるケースです。もちろん、会社の新陳代謝の面で、ストックオプションを行使した後に辞めることが必ずしも悪いわけではありません。

ストックオプションの制度と仕組み!権利付与から売却までを理解しよう

ストックオプション 仕組み

ストックオプションは会社が権利を付与してから、従業員が実際に利益を確定させるまで、主に3つのステップがあります。それらステップを1つ1つ見ていきましょう。

権利の付与

一番最初のステップは会社から従業員に対する「権利の付与」です。

会社側は、従業員があらかじめ定められた価格で株式を購入できる権利を付与します。定められた価格というのは、この後紹介する制度設計に応じて変わってきます。

権利の行使

次のステップはストックオプションを与えられている従業員による「権利の行使」です。

ストックオプションの権利を行使できるタイミングになったら、権利を行使して株式を取得します。この時、株式は自己資金で購入する必要があります。

権利を行使できるタイミングは制度次第ですので一概には言えません。期限が来れば全て行使できる場合もあれば、毎年少しずつ行使できるものまで、様々な制度があります。

もちろん、「権利行使価格>株価」であればストックオプションを行使する必要はありません。

株式の売却

最後のステップはストックオプションを使って購入した「株式の売却」です。

ストックオプションの権利を行使して株式を取得しただけでは、株を保有しているだけですので、現金として利益を確定させるためには株式を売却する必要があります。

ただし、長期保有や配当などを目的とする場合は、必ずしも売却する必要はありません。

ストックオプションの種類と税制!あなたの会社はどの種類を選ぶべき?

資本政策 とは

ストックオプションには様々な種類がありますが、ストックオプションは報酬ですので課税対象になり、注意すべきは課税のタイミングです。ここでは、税制非適格ストックオプション、税制適格ストックオプション、有償ストックオプションの3つを解説します。

税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションは、課税割合が最も高いストックオプション。

権利を行使した時に最大で55%、売却した時に20%と2回課税されます。さらに、権利を行使した時は利益が確定しているわけではないので手元に現金はありません。にも関わらず、先に課税されてしまうため、納税者(ストックオプションの権利者)の負担が大きい制度と言えます。

また、行使価格に規制はありませんので、例えば行使価格を1円としてストックオプションを付与することも可能です。

税制適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションでは、税率が高い上に税金が収入に先行して発生してしまうため、ストックオプション本来の役割を果たせません。

そこで設けられたのが税制優遇制度。権利行使時の課税をなくし、売却時のみ20%の固定税率となっています。

ただし、税制適格となるためには多くの条件を満たす必要があり、主な条件としては以下があります。

  • 権利付与後2~10年以内に行使する
  • 権利行使価格が付与時の株価よりも高いこと
  • 上場以外では使えない
  • 他者への譲渡不可

上場(IPO)ではなく売却(EXIT)の時には使えないストックオプションのため、会社が上場ではなく売却へとシフトした場合、会社と社員の間で揉めることがしばしばあります。権利を付与する側、もらう側ともに事前に把握しておくことが大切です。

有償ストックオプション

ここまで紹介した制度は全て無償で会社側が役員や社員へ与える「報酬」でしたが、有償ストックオプションはストックオプションの権利を買う「投資」活動です。

無償で与えられるストックオプションでは受け取る側が受動的なことが多いですが、有償ストックオプションでは能動的に投資をするかどうか判断することが求められます。

また、能動的に意思決定をしているため、他の制度よりも業績貢献に対する強いインセンティブになるというメリットがあります。

税制面に関しては、有償ストックオプションは報酬ではなく投資ですので、利益が確定する売却時に発生する20%の課税のみとなります。

最後に、有償ストックオプションを発行する上での主な条件は以下の通りです。

  • 有償であること
  • 行使価格が付与時の株価よりも高いこと
  • 行使のための業績条件(株価条件)があること

まとめ

ストックオプションに関して詳細を説明してきましたがいかがでしたか?

ストックオプションは従業員のモチベーションを引き出し、業績をアップさせるためにも効果的な制度です。しかし、ストックオプションの制度設計を失敗してしまうと、会社側も従業員側も大きな損失を被ることになります。

その時の会社の状況にあった制度設計をしましょう。