資本政策とは?ベンチャーの資本政策の作り方やテンプレートを公開

スタートアップ 資本政策

ベンチャー企業(スタートアップ)がおそろかにしてしまいがちな「資本政策」。資本政策は後戻りができないことが多いため、事前にしっかりと計画しておくことが大切です。今回はベンチャー企業における資本政策の重要性をはじめ、作り方や事例、正田圭が経営するTIGALA株式会社が実際に使っているテンプレートを公開しています。

資本政策とは?

資本政策 とは

創業初期のベンチャー企業にとって、資本政策は関係のないものと思ってしまいがちですが、将来のIPOやエグジットを見据えた資本政策はベンチャー企業を成長させる上で欠かせません。

そもそも、資本政策とは、IPOやエグジットまでの「資金調達」と「株主構成」のバランスをとり、適切な資金調達の施策を行うためのものです。

資本政策を考える上では、中長期の事業計画や利益計画から、IPOやエグジットをする時期を定め、そのときの理想の株主機構成を逆算していきます。また、創業者が一度手放した株式は戻ってこないため、慎重に資本政策を策定する必要があります。

資本政策の目的とは

資本政策

一般的な資本政策の目的とはどんなものがあるでしょうか。以下に挙げてみました。

  • 資金調達で必要な額の割り出し
  • ファウンダーのキャピタルゲインをキープするため
  • 安定株主の比率をキープするため
  • 役員や従業員たちへのインセンティブ付与のため
  • IPO条件の充足のため
  • 事業継承や相続に備えるため

詳しくは後にご説明していきますが、本来はただ資金調達を考えるためのものではないということです。

「デットファイナンスは返済義務があるがエクイティファイナンスなら返済義務がない」という風に、安易にエクイティファイナンスを進めようとすると危険です。

ちなみにエクイティファイナンスとは、新たに自社株を発行することにより、自社の資本を増やすことで資金調達を行う手法です。デットファイナンスとは、主に銀行などから借入をして資金調達する手法です。

これらの二つについてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

エクイティファイナンスとは?メリットや活用法について紹介!

デットファイナンスについて理解しよう!種類やメリットなどを解説

ベンチャー企業が資本政策を考える理由

ベンチャー 資本政策

プロダクト開発や売上をあげるのに全精力を傾けているベンチャー企業にとって、資本政策を考えるのは余計な仕事でしかないように思われます。しかし、実は資本政策を考えることには数々のメリットがあります。今回は3つの点に絞って紹介していきます。

資本政策はやり直しができない!持株比率の維持に必要

株式での資金調達(エクイティファイナンス)において、資本政策を考える最大の理由とも言えるのが、「資本政策はやり直しができない」という点にあります。

例えば、投資家から資金調達をした場合、あとあとになって投資家との馬が合わないとわかった場合でも、簡単に投資家との縁を切ることはできません。また、会社を10億円でExitしたけれど、創業者の持ち株比率が10%しかなくて、創業者はあまり儲からなかったということもありえます。

投資を受ける上で必要

エクイティファイナンスをする際には、投資家から資本政策のシートの提出を求められるのが一般的です。

投資家は事業内容の良し悪しや創業メンバーを見て投資を判断しますが、資本政策が整っていないと投資のゴーサインを出すのに足踏みをしてしまいます。

高いバリュエーションで資金調達をすると次のラウンドへ行けなくなる危険も

昨今の日本でも、「数億円、数十億円のバリュエーションがついて資金調達した」というニュースが増えていますが、バリュエーションが高ければ高いほど良いということではありません。

ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から資金を調達する場合、一般的にシード、シリーズA、シリーズBと続いて行くわけですが、次のラウンドに進むためには前回ラウンドより高いバリュエーション評価を受けなければ基本的に投資を受けられません。

というのも、前回よりも低いバリュエーション評価をその前から投資している投資家が許さないからです。

資本政策の種類(方法)

起業 女性

資本政策には様々な方法がありますが、それぞれの特徴を理解した上で、ベンチャー企業にとって適切な手法を選択することが大切です。一度実行してしまうと元には戻せません。

ここからは実際に使われることの多い代表的な方法を紹介します。

第三者割当増資

第三者割当増資は、IPOを目指すベンチャー企業の資本政策として最も使われる方法で、第三者に新規で株式を発行して割り当てることです。

資金調達に伴い、VCなどの投資家や従業員へ割り当てることが一般的です。また、新株を発行するため、既存の株主の持株比率が希薄化することには一定の注意が必要です。

新株予約権(ストックオプション)

新株予約権(ストックオプション)は、あらかじめ定められた価格で株式を購入できる権利のことで、優秀な人材へ高額な給料を払えないことの多いベンチャー企業において従業員へのインセンティブとして配布されることがよくあります。

ストックオプションには税制面で優遇される税制適格制度があり、ベンチャー企業においてストックオプションを発行する際には税制適格制度が適用されるように設計することが大切なポイントです。

種類株式

日本のベンチャー企業ではほとんど使われませんが、Googleが使った事例で有名な種類株式。種類株式は特定の権利が付与された株式のことで、剰余金の配当、株主総会の議決権、決議への拒否権などがあります。

種類株式を用いた資本政策は難易度が高いですが、有効に活用することで通常の株式では実現できない資本政策をすることができます。

株式譲渡

株式を特定の人から特定の人に譲渡することです。譲渡なので新たに株を発行するわけではありません。

ベンチャー企業の場合は主要メンバーの採用時に株式を譲渡したり、主要メンバーが辞めるときに創業者に譲渡したりといったケースが多いです。創業者が関与しない場合は良いのですが、関与する譲渡の場合は持株比率も変わるので注意しましょう。また、譲渡の制限は定款や登記簿謄本に記載しておきましょう。

株式譲渡については主に株主総会で、取締役会が置かれている会社は取締役会で決定されます。

株式分割

株を一定の割合で増加させる方法です。発行可能株式総数は定款で定めているため、その範囲内での分割が可能です。特に多いのが株が高くなってしまった場合に株を分割するという方法で、証券取引所では一単元が50万円未満であることを推奨しているため、主にIPO直前で株を売買しやすくするために行なわれたりします。

IPOを目指す企業の資本政策の流れ

資本政策の流れ
  • 現状分析

資本政策を立案するため、現状の正確な認識をしなければなりません。株主別の株式保有数の把握と、現在の株価の試算は必ずしましょう。

  • 事業計画と財務モデル

将来の利益やキャッシュフローを予測するために作成します。これらの精度に資本政策の成否がかかっていると言っても過言ではありません。

  • IPO時の目標設定

株主構成、必要資金調達額、IPO時の発行済株式数、安定株主比率、創業者自身のキャピタルゲイン等の目標を設定しておきます。

  • 株価を公開する市場の選定

マザーズやJASDAQなど、公開市場を選びます。上場にも審査基準があります。形式用件、実質審査基準を考慮しながら決めます。

  • ギャップ分析

目標とする資本構成と現状の資本構成とのギャップを分析した上で、それを埋めるための手段を計画・実行していきます。

事業計画書の書き方を詳しく知りたい方は以下ををご覧ください。

IPOを目指す企業が資本政策で意識すべきポイント

IPOを目指す企業が資本政策で意識すべきポイント

前段での流れを踏まえ、意識すべきポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。

株主構成

上場時には公募増資をしたり株主が株式を売り出したりするため、議決権比率が低下してしまいます。IPOを見越すのであれば、議決権比率を確保する株主構成が実現できるように、資本政策を考えましょう。VCなどの経営チーム以外に依存すると、重要な意思決定に時間がかかってしまいますのでご注意を。

また、上場の引き受け時には、経営陣が株主の比率を大きく占めているかどうかも評価されますので、こちらも念頭に入れておきましょう。

創業者の利益

上場企業になるとインサイダー取引についての規制があるため、創業者自身の株式が自由に売買できなくなります。上場時は創業者が利益を受け取る最大のチャンスのため、これを逃す手はないでしょう。

資金調達

事業計画を基に、どんな資金をどのタイミングでどうやって調達するべきかを洗い出す必要があります。また、上場に至るまでには数段階にわけて資金調達をするの一般的です。例えばVCから資金調達をする場合、最初にVCに渡す株式は10%程度にしておくのがいいでしょう。

資金調達についてはこちらをご覧ください。

インセンティブプラン

インセンティブプランとは、役員・従業員に刺激を与えて動機付けを行ない、業績向上のために意欲を高めることです。

一般的に代表されるのは報酬制などですが、今回は主にストックオプションのことを指します。ただし、前段にも出てきた通り、ストックオプションはモチベーションの低下に繋がる危険性も孕んでいます。

発行株式総数など

上場を見据えるなら、その上場する市場の形式基準に合わせていく必要があります。上場時点の時価総額や流動性、発行株式総数を想定し、インセンティブプランや増資の立案をしましょう。

資本政策での失敗例

ここで資本政策での失敗例を見ておきましょう。事前に知っておくことでトラブルが防げるかもしれません。

  • 複数の創業者で議決権の当分を維持しようとして分裂
  • 初期にエンジェルに株を過剰に渡しすぎて経営が困難になる
  • シード・アーリー期に過剰な安値・高値で株式資金調達を行ない、後々ファイナンスで行き詰まる
  • ストックオプションを分配しすぎたせいで、上場して利益確定した際に従業員のモチベーション低下や退職を招く

実際に失敗したのではないかと言われている企業の一つとして、facebookが挙げられます。

というのも、シリーズAから高額な増資を行なっていたfacebookは、後にダウンラウンド(時価総額よりも低い評価額での増資)となりました。さらにはゴールドマンサックスからの出資の時には時価総額が5倍に跳ね上がり、IPO時にはそこから2倍の時価総額になることに。この結果、IPO直後には大幅な時価総額の下落を招いてしまいました。

結局IPOまではうまく帳尻を合わせられたものの、一般の株主たちは多大の損失を被りました。

ビジネスがうまく回り始めると事業に全力投球したいところだと思いますが、資本政策を誤らないよう注意しなければなりません。また、必ず専門家からのアドバイスを聞くようにしましょう。

エンジェル投資家について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ストックオプションについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

資本政策のテンプレート

資本政策はエクセルやスプレッドシートで作るのが一般的ですが、0から作るのは手間がかかるため、資本政策のテンプレートを使いましょう。

当Pedia Newsを運営しているTIGALA株式会社が実際に使っている資本政策のシートを簡易化したものを添付しておきますので、あなたの会社に合わせた形に応用して使ってください。

クリックで拡大します。

資本政策

創業時の資本政策の作り方

創業時の資本政策

では、創業時の場合を例に、表の項目に合わせて解説します。

一株あたりの価額×株式総数=資本金という関係が成り立つので、資本金が決まっている場合は次に株式総数を決め、資本金を株式総数で割ることで一株あたりの価額が出せます。

時価総額は本来、企業価値をあらわすものです。今回は設立時なので、資本金をそのまま入れます。

資本準備金は会社が倒産しかけた時などのために、積み立てておくものです。もしあればこちらも記入しましょう。

あとは株主構成に株主となる人が何株持っているのかを記入します。安定比率は各小計を合計します。

このように記入をしていきます。期ごとになっていますが、こまめに記入していくようにしましょう。