WACCとは?加重平均資本コストの計算方法と例をわかりやすく解説

WACC

資金調達のコストを表す「WACC」。資本による資金調達と負債による資金調達にかかるコストを加重平均することによって、企業全体の資金調達でかかっているコストを把握できる経営において重要な指標です。ただ、実際にWACCの計算方法をわかっている人は少ないでしょう。そこで今回は、WACCの計算式や実際の計算事例をわかりやすく解説していきます。

WACCとは?

デューデリジェンス ポイント

WACC(Weighted Average Cost of Capital)とは、資本による資金調達と負債による資金調達にかかるコストを加重平均して求めたものです。読み方は「ワック」です。

日本語では加重平均資本コストといい、1円の資金調達をするのにかかったコストを表す指標になります。

お金を調達するのにコストがかかるというのは違和感があるかもしれませんが、株式などの資本による調達(エクイティで調達)をした場合も、借入などの負債による調達(デットで調達)をした場合もそれぞれにコストがかかります。

  • 資本による調達の場合は、投資家から求められるリターン(配当金など)
  • 負債による調達の場合は、利息

一般的に資本による調達の方がコストは高くなります。ただし、調達コストだけを考えて資金調達をすればいいかというとそうでもなく、両者のバランスをとることがとても大切になります。

資金調達の詳しいことについては以下をご覧ください。

WACCが経営指標として使われる理由

WACC ポイント

WACCは資本と負債の調達コストを合計して計算することができるので、企業全体の資金調達でかかっているコストを把握できます。

企業はWACCを超える利回りを出さなければならないため、利回りを考える際にWACCが基準となります。企業が経営を続けていく上で、WACCは超えなければいけない指標ですので「ハードル・レート」と呼ばれることもあります。

また、WACCを使うことによって調達コストを最適化できるという点もWACCが使われる理由です。資本による調達と負債による調達のバランスを最適化し、調達コストを下げることができればその分だけ業績アップに繋がります。

WACCの計算方法をわかりやすく解説

WACC

WACCが資金調達のコストを把握する上で重要な指標であることが理解できたところで、WACCの実際の計算方法を見ていきましょう。

WACCの計算式

WACCの計算に必要な指標は、主に以下の5つです。

  • D:負債額
  • E:株式時価総額
  • rD:負債の資本コスト
  • rE:株式の資本コスト
  • t:税率(法人税率)

これらの指標を使うと、WACCを求める計算式は以下となります。

WACC = D/D+E × rD + E/D+E × rE

ただし、負債の資本コストには節税効果があるため、負債の資本コストに(1-税率)をかけます。すると、節税効果を考慮に入れたWACCの計算式は以下となります。

WACC = D/D+E × rD × (1-T) + E/D+E × rE

ちなみに、(D+E)は企業価値と呼ばれます。また、(D/D+E)は負債比率 ,(E/D+E)は自己資本比率と呼ばれます。

WACCの計算事例

WACCの計算式を使って、実際に計算をしてみましょう。

例えば、以下のような企業があったとします。

  • 負債額:1,000億円
  • 株式時価総額:3,000億円
  • 負債の調達コスト:2%
  • 資本の調達コスト:5%
  • 税率:40%

法人税を考慮しない時のこの企業のWACCは、

WACC = 1,000億円/1,000億円+3,000億円 × 2% + 3,000億円/1,000億円+3,000億円 × 5% = 4.25%

法人税を考慮する場合、以下の通りとなります。

WACC = 0.25 × 2% × (1-0.4) + 0.75 × 5% = 4.05%

WACCとCAPMの違いとは?

WACCとCAPMの違いとは?

では、WACCとCAPMの違いは何でしょうか。

CAPM(Capital Asset Pricing Model)は「キャップエム」と読み、資本資産価格モデルという意味があります。簡単にいえば株主が企業に期待する利回りです。この理論は投資家にとってリスクが高いほどリターンを求める、という考え方です。なんと、これを創案したW. Sharpeは、ノーベル賞を受賞しています。

株主資本コストをrE、リスクフリーレートをR(f)、リスクプレミアムをR(p)とすると、以下の式で求めることができます。

rE=R(f)+β×R(p)

このβ(ベータ)とは、市場におけるリスクの感応度を指します(個別株式の変動/株式市場全体の変動)。

CAPMは株主が企業に期待する利回りですが、WACCは資金の出す側全てが企業に期待する利回りです。負債も含んでいかどうかという点で異なります。

WACCとROICの関係

WACCとROICの関係

ROIC(Return On Invested Capital)とは、「ロイク」や「アール・オー・アイ・シー」と呼ばれ、投下資本利益率という意味があります。企業が事業のために投下した資本に対し、リターンとしてどれだけの利益が得られたかの指標となります。みなし税引後営業利益をNOPLAT(営業利益×(1−実効税率))、投下資本をIC(株主資本+有利子負債)とすると、以下の式で求めることができます。

ROIC=NOPLAT÷IC

ROICとWACCとを比較して使う方法があります。ROICの方が高ければ、調達コストよりも運用利回りが高いということになります。経営者であればROIC>WACCにおさえることが求められます。これは投資家が投資をするかどうかを判断する基準にも使われるものです。

WACCを下げる方法

WACCを下げるにはWACCが利回りを上回ってしまうと、株価が下がると言われています。では、利回りを上げるだけではなく、WACC自体を下げる方法はあるのでしょうか。

一般的に言われているのが以下の2つです。

  • IRで適切な情報開示をする
  • 負債比率を増やす

IR(インベスター・リレーションズ)は、企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向などを発信する広報活動を指します。このIRに突然赤字やリストラの情報が流れた場合、リスクが高いと判断されがちですが、広報の流し方や手法によってはそのリスク認識を軽減あるいは低下させることができます。

例えばそのリスクが後々価値を創造する能力に繋がると判断できれば、今後に繋がる前向きなものとして評価されることもあります。そのため、IR担当者は重要なリスク開示を行ない、不確定な要素を無くしていくことが必要です。

負債比率とは、自己資本に対して負債がどの程度あるかを表した割合です。負債で調達を行なった時、そこには利息が生じます。この利息が控除対象になるので、負債比率を上げれば節税効果によってWACCは僅かに下がるというわけです。

しかし、これらの方法が必ずしも当てはまるというわけではないので、利回りを上げていったりWACCが上がらないように注意したりしながらバランスを保つ方が得策かもしれません。

WACCと企業価値

WACCと企業価値WACCは、企業価値を計算するDCF法で「割引率」として扱われることが多いです。WACCが低ければ企業価値は高くなるのです。

WACCの計算方法は上場企業も非上場企業も変わりないのですが、非上場企業は株式が証券市場で売買されているわけではないので、株式の時価が測りにくくなっています。投資家は時価で株を買うという前提のもと、非上場企業は株主資本時価と株式のベータ値を推定して計算します。株主資本時価は、類似業種の有利子負債と株主資本時価の平均比率を求めて使用します。株式のベータ値は類似業種の平均アンレバード・ベータ値から推定します。

DCF法によるM&Aでの企業価値評価では、WACCの設定が最終的な算定額に大きな影響を与えます。そもそもWACCの算出式は非客観的かつ非一義的でもあるため、WACCの設定が妥当であるか検証することが重要となります。

DCF法とM&Aについて詳しく知りたい方は、以下もご覧ください。

まとめ

WACCについて解説してきましたが、いかがでしたか?

WACCは経営指標の一つとしてとても重要なものです。計算式を暗記する必要はありませんが、WACCがどのような指標で、なぜ重要なのかを理解しておくことは大切です。計算式を忘れてしまった場合は、いつでもこのページに戻ってきて計算してください。