バリュエーションとは?その種類や方法、M&Aで使う企業価値の算出手法を徹底解説!

バリュエーション

バリュエーションとは、企業の利益や資産、将来性などから企業価値を算定すること。事業売買などのM&Aで使われることが多く、企業価値を算出するための計算方法としてはインカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチなどがあります。それぞれの特徴やメリット・デメリットをはじめ、ベンチャー企業における適切な価値評価方法を紹介していきます。

バリュエーションとは?

バリュエーション とは

バリュエーションとは、企業の利益や資産、将来性などから企業価値を算定すること。日本語では企業価値評価といいます。

企業価値というと難しく聞こえてしまいますが、簡潔に言うと「モノの値段を見抜くこと」です。

バリュエーションで企業価値を算定する行為は、実は私たちが買い物をするときと本質は同じです。例えば10万円の腕時計を目の前にしたとき、「買うべきか、買わないべきか」と悩みますよね。企業のトップがM&Aで会社を買おうか悩むのも、金額が数十億円、数百億円と高いだけで本質は同じです。

腕時計を買うのも、会社をM&Aで買うのも、「値段に見合う価値があるのだろうか?」と価値を算定することがバリュエーションなのです。

本質的に同じとはいえ、企業は複雑な集合体となっているため、値段を見極めることは簡単ではありません。ましてや、数百億円するM&Aを直感で判断すべきものではないでしょう。

そこで登場したのが以下で紹介するインカムアプローチなどのファイナンスの手法です。直感でバリュエーションを出すのではなく、理論的にバリュエーションを算出することで、関係者全員が納得できる値段を出すことができます。

バリュエーションの種類と方法

バリュエーション 種類 方法

バリュエーションには「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」「コストアプローチ」という主に3つの方法があります。

それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるので、使うべき場面が変わってきます。それでは、1つずつ解説していきます。

コストアプローチ(簿価純資産方式、時価純資産方式)

コストアプローチとは、原価(コスト)をもとに企業価値を算出する方法です。

例えば、みなさんがよく使うスマートフォンをコストアプローチで計算する場合、スマートフォンをバラバラにすれば各部品にかかる原材料費がわかりますよね。そこに組み立てにかかる加工費や運ぶための輸送費、販売店での人件費などを全て足していけば原価がわかります。

このように割り出された原価を元に、利益を考慮してモノの価値を計算する方法です。

では、算出方法を詳しく見てみましょう。

薄価純資産方式

一株あたりいくらか、という算出方法です。帳簿資産合計を企業価値とする考え方です。
帳簿資産合計=薄価純資産法÷発行済株式数で計算できます。
単純な計算にはなりますが、薄価が正しいとは限らないので一般的にはあまり使用されません。

時価純資産方式

企業の保有する資産を全て時価で計算し、負債の資産を差し引くことで正味の資産を求める方法です。
時価資産合計ー営業債務(買掛金や支払手形)で計算します。

メリット

コストアプローチは原価に利益を上乗せして算出する計算方式ですので、製造した製品を売った時の利益を計算しやすいというメリットがあります。

また、将来を考慮に入れず、過去と現在の状態で評価する方法なため、客観性と確実性に優れています。

デメリット

コストアプローチは清算する企業の価値を求めるために使われる方法なので、存続会社の評価には適していません。実際に存続会社の売却値を決定する場合は、営業利益を生む力も考慮されます。

また、利益を計算しやすいというのは売り手側のメリットであって、コストアプローチで製造した商品は市場価格と乖離してしまい売れなくなるという可能性もあります。

マーケットアプローチ(類似会社比較方式、類似案件比較方式)

マーケットアプローチとは、類似商品や類似サービスが市場(マーケット)でいくらで売られているかをもとに計算する方法です。

会社で考えるとわかりにくいですが、不動産取引を例にするとわかりやすいです。例えばマンションの一室である301号室が3,000万円で売れたならば、隣の302号室も3,000万円で売れると考えるのが自然ですよね。

このように、ほとんど同じ条件であれば同じ価格になるという考えがマーケットアプローチになります。

では、算出方法を詳しく見てみましょう。

類似会社比較方式

類似企業の株式時価総額÷任意の指標(売上高や営業利益など)で係数を算出した上で、評価対象企業の任意の指標×係数で評価対象企業の価値を算定します。

類似案件比較方式

類似案件の株式時価総額÷任意の指標(EBITDAなどの財務指標が使われます)で係数を算出した上で、評価対象企業の任意の指標×係数で価値を算定します。
(※EBITDA・・・営業利益+減価償却費)

上記2つは倍率をもとにして計算する方法なので、「マルチプル」とも呼ばれています。

メリット

市場で実際に行われた取引をもとに値付けをしているため、売り手/買い手の両方が納得しやすいというメリットがあります。

デメリット

ベンチャー企業では類似製品や類似サービスが存在しないことが多いため、そもそもマーケットアプローチが使えないことがあります。

また、商品やサービスとは異なり、競合企業の売上や利益が開示されていないことも多いため、バリュエーションを算出できないということがあります。

さらに、マーケットアプローチで企業価値を算定する場合、アバウトな金額でしか算定できないというデメリットがあります。

インカムアプローチ(収益還元法式、DCF)

上記2つの計算方法と異なるのが、『時間』という概念を計算に組み込んだ点です。

インカムアプローチは、過去の実績の積み上げだけではなく、将来獲得できるリターンによって評価されるべきだという考えに基づいています。将来獲得できるリターン(価値)を現在の価格に割りもどして、今現在の価値と足し合わせて算出します。

また、インカムアプローチはM&Aをする際の企業価値算出に使われる最もスタンダードな計算方法です。

ここでは、代表的であるDCFでの詳しい算出方法を見てみましょう。

DCF

ここでは1〜3期分で求めると仮定しています。
現在価値をPV、フリーキャッシュフローの1〜3期をFCF1〜FCF3、割引率をp、継続価値をTVとすると、以下のようになります。
PV=FCF1/(1+p) + FCF2/(1+p)^2 + FCF3/(1+p)^3 +  FCF3/(1+p)^3 + TV/(1+p)^3
TVは予測最終期間(ここでは3期)後の永続的なFCFを予測最終期間で算出したものです。

メリット

将来の収益性や事業リスクを価値に反映させやすいというメリットがあります。特にベンチャー企業は過去の実績ではなく将来性で評価する必要がありますので、インカムアプローチが最も適していると言えます。

デメリット

将来の要素を計算に入れるため、計算する上での不確実要素が多く、同じ計算式(例えばDCF)を使っても計算結果が異なります。

M&Aにおけるバリュエーション

M&Aというのは双方の合意のもと、お互いの利益のために協力的に行われるもので、ある企業がもう一方の企業を無理矢理買収するなどということは基本的にありません。

経営戦略としてのM&Aは、買い手側と売り手側によって目的や捉え方などが変わってきます。そのため、どういったM&Aを手段として用いるかはケースバイケースになります。

では、M&Aの場面では実際どのようにバリュエーションを使用するのでしょうか。

M&Aでは、企業をいくらで買収するのかが重要です。多額で買ったものの価値がなかったとなれば、そのM&Aは失敗となってしまいます。また、買収される側としても高く評価してもらうことで高値での売却に繋がります。この買収目安となるのがバリュエーションというわけです。

バリュエーションは企業価値を客観的な数値に置き換えたものであり、これが意思決定の土台として買収価格交渉に使われるのです。

実際は市場株価をベースにはするものの、バリュエーションも併用して複合的に算定が行なわれます。さらには買収対象の企業を取り巻く環境やリスク要因、M&A後のシナジー効果なども含め、多面的に分析されます。というのも、完璧な手法がないからです。

実績のないベンチャー企業に高いバリュエーションがつく理由

ベンチャー バリュエーション

創業数年の若いベンチャー企業に高いバリュエーションがついたというニュースを見ることが増えました。

しかも、現状で赤字であるにも関わらず数億円、数十億円というバリュエーションがつくベンチャー企業も珍しくありません。

ここで疑問に思うのが、なぜ地場でコツコツとビジネスをしてきた企業よりも、創業数年のベンチャー企業に高いバリュエーションがつくのかということでしょう。

ベンチャー企業に高いバリュエーションがつくのには主に以下の2つの理由があります。

ベンチャー企業は革命を起こそうとしているから

ベンチャー企業は既存の事業の延長戦ではなく、全く新しいフロンティアを開拓しようと日々奮闘する企業です。

ハイリスク・ハイリターンであり、事業が軌道に乗ったときのインパクトが大きいためバリュエーションが高くつきやすくなっています。

例えば、Facebookがいい例かもしれませんが、2000年代初頭にはSNSというのは全く存在しない市場でした。しかし、今現在では誰もが当たり前のように使うものになっており、Facebookの時価総額は桁外れに大きくなっています。

投資家の心理が働いているから

株が未公開のベンチャー企業へ投資をしているのはごく限られた一部の投資家たちです。

ムラ社会というと語弊があるかもしれませんが、ベンチャー界隈は非常に狭く、投資家同士や投資家と起業家の繋がりが強いです。

そのため、「Aさんが投資しているからきっといい案件だ、私も投資しよう」というような心理が働きやすく、また投資家自身もエゴが強いところがあるので高い評価をしやすくなるという要素があります。

バリュエーションは目的ではなく手段!

デューデリジェンス とは

ここまでで、バリュエーションの種類や方法、なぜベンチャー企業の株価が高いのかということを説明してきました。

バリュエーションというと企業価値がいくらなのか算出すること自体が目的になってしまうこともありますが、バリュエーションはあくまで手段だということを肝に命じておきましょう。

大切なのは、バリュエーションで算出した値段をもとに、「買うか・買わないか」という判断を下して行動に移せるようにすることです。

腕時計の例で言えば、10万円の腕時計の価値を見定めることが目的なのでなく、価値を見定めるのはあくまで手段であって、価値が十分にあると考えたのであれば買うという行動をすることが目的なのです。

その会社の価値がどれくらいなのかを知ることがゴールなのではなく、「この会社は100億円の価値がある。今、30億円で売りに出ているのだからGO」といった意思決定をすることこそが、ファイナンスを習得する目的なのです。

引用:ファイナンスこそが最強の意思決定術である

まとめ

バリュエーションは企業価値を算出する上でとても大切です。

M&Aに関わる業務をしている方はもちろんですが、あらゆる職種においてバリュエーションの考え方は使えます。取引先の企業の価値を見定めたり、商品やサービスを比較検討する上でもバリュエーションの考え方は使えますので、日常生活でもバリュエーションを意識するようにしましょう。