「すべてのシステムとすべてのソリューションにAIを」株式会社ヘッドウォータース 累計3.9億円調達の舞台裏

『エンジニアの地位向上』を考えて至った結論

2018年1月16日。株式会社ヘッドウォータースが2億円を調達し、累計3.9
億円の調達を行ったというリリースが発表された。

ヘッドウォータースは、ロボットアプリ開発において国内トップクラスの実績を有している企業である。
株式会社ソフトバンクロボティクスが提供する人型ロボット「Pepper」用のロボットアプリの開発実績は250件を超える
また様々なロボットとIoTデバイスを連携させた独自のソリューションも数多くリリースしている。

篠田氏は、2015年11月に株式会社ヘッドウォータースを創業。
2016年にはロボットに高度なコミュニケーション能力を与える独自のクラウドロボティクスサービスの提供を開始。これによりロボットに対して顔認識や自然言語解析を使ったアプリケーションの導入が容易になり、ロボットが行う業務領域の飛躍的な拡大に貢献している。

今回、Pedia Newsでは、国内でも有数のロボット×AIアプリ開発・導入実績をもつ株式会社ヘッドウォータース(本社:東京都新宿区、代表取締役:篠田庸介、以下 ヘッドウォータース)の篠田氏に、インタビューを実施した。

ヘッドウォータース設立からAI事業を手掛けるまでの軌跡

株式会社ヘッドウォータース。

設立は2005年11月。

今から約13年前というと、ITバブルが世界的に起こって勝ち組が出ている時代であり、国内ではライブドアやサイバーエージェントなどがベンチャー企業として一世を風靡していた時代だ。

当時、ヘッドウォータースは、技術力があるシステム開発会社としてスタートした。具体的にはシステム開発やサーバー構築が主な業務となり、銀行系、航空系システム、メディア系などの開発を手掛けていた。

事業を創り出すエンジニア集団を目指して設立されてヘッドウォータースの事業領域は受託だけにとどまらず、独自のサービスも次々にリリースをしている。大手企業にも導入が進んでいるナレッジ共有ツールのポケットワークメイトはドン・キホーテやヴィレッジ・ヴァンガードなど有名企業にも導入され高い効果が認められている

創業当時のシステム開発事業から今のAI事業への転機は、2014年、ソフトバンクロボティクスが提供する人型ロボット「Pepper」の発表がきっかけとなる。

Pepperはスマートフォンやタブレットと同様にアプリケーションが必要となりますが、ユーザの体感が重要となるロボットというデバイスに非常にやりがいを感じ、一歩踏みだしました。Pepperの発表当初は、ソフトバンク様のプロモーションのお陰もあり集客に力を発揮しました。しかし、Pepperというデバイスの珍しさから生まれる集客効果は時限的であると考えていたため、早い段階でロボットの役割を「集客」から「業務」に変えなければならないと考えていました。
「業務」をさせるにはロボットをもっと賢くし、コミュニケーション能力を上げなければなりません
当時、AI自体は今ほど一般的ではありませんでしたが、独自に研究を開始し、「見て覚える」、「聴く内容を咀嚼する」、「AIで理解力を上げた上で話す」というようなコグニティブな能力をロボットに与える事を試し始めました。
より自然に、人間に近い動きが出来るロボットを目指した
のです。(篠田氏)

2014年といえば、人工知能であるワトソンが知名度を帯び始め、AIが囲碁で勝ったり負けたりして話題になっていた時期であり、まだ業務にどこまで活用されるようになっていくのかの認識はされていなかった時期である。

マイクロソフトとの協業から資金調達に向けて

当時IBMで開発されていた人工知能「ワトソン」は非常に高額で、まだ日本語対応もされていなかった中、篠田氏はマイクロソフトの担当者と出会う。

「pepper関連のアプリ開発実績数では日本でトップランナーである自負はあります。これにAIを組み込んでロボットに業務をやらせたいんです。」と、熱意を持ってプレゼンしたところ、マイクロフトの担当者もロボット✕AIという領域に強い魅力を感じてくれた。

当時、導入コストの非常に高いワトソンに比べ、圧倒的にマイクロソフトが提供するAzure上のAIがイメージしていたよりも安かったのも魅力で、これであれば、すぐに売れるものが作れると感じました。

ただしマイクロソフトの様な世界的な巨大企業にパートナーとして認識してもらうのは簡単な事ではない。マイクロソフトの期待に応えるためにも、より新しい取り組み、より効果的なソリューションをロボット✕AIの領域で矢継ぎ早にリリースするために会社全体をあげてチャレンジする決断をして事業を推進したという。

苦労もありましたが、マイクロソフト様のイベントで事例を紹介して頂いたり、マイクロソフトのブースでうちのロボットを展示して頂いたり、PRに非常に良い影響がありました。シアトルのラーメン屋にロボット✕AIのサービスを提供したのも、そのような取組の一環です。(篠田氏)

このような流れで、マイクロソフトのAzure上のAIを使ってサービス提供が始まった。
このタイミングまで、ヘッドウォータース社はほぼ自己資本のみで事業展開を行っていたが、事業のスピードを加速するため研究開発費用としての資金調達を考え始めるようになる。

研究開発内容とは、マルチAIプラットフォームの構築がメインである。

国内外あわせて様々なAI機能がパーツとして存在するが、絶対的にすべてをまかなう一個のAIと言うのは存在しない。

それぞれに特徴があり、人の言葉の意図を認識することが得意なAI機能もあれば、画像や動画の解析が得意なAI機能も存在する。

それぞれの特徴を活かすために、様々なAI機能を連携、部品化し、横断的に使えるプラットフォームにさせていく考えだ。

また、企業独自のデータを集積して作られた企業毎のAIのアルゴリズムは、マルチデバイス、マルチインターフェースで活用できる仕組みになっており、Webへの組み込みやチャットボットへの組み込み、スマートデバイスやスマートスピーカー、ロボットなど、ハードもUIも横断して容易に水平展開できる

これがビジネス上でどのような強みになるかというと、案件ごとに0ベースでAIを検証し開発に取り込んでいくのではなく、部品を組み合わせ、カスタマイズすることで個別の事案に対応できるようになり、開発スピードは圧倒的には早まり、コストも削減できる

例えば、ヘッドウォータースが手がけたもので、45か国語を自動翻訳することが出来る翻訳エンジンの開発事例がある。当時、世界でトップクラスの翻訳能力を誇る開発エンジンだったが、ヘッドウォータースがこの開発に要した時間はたったの正味3日だ。

実際に何もない状態からクライアントの要望通りにシステムを開発していては、このようなスピードで開発を進めることは不可能である。AI導入のカギは、一秒でも早く、動くモノを作り、現場で実証実験を繰り返すことにある。スピード的にもコスト的にも、これを可能にするのがヘッドウォータースが提唱するマルチAIプラットフォームだ。

市場の要望に応えるための研究開発を進めるために、ヘッドウォータースは調達を行っているのである。

ヘッドウォータース2つの強み

この、AIビジネスの最前線を走っているヘッドウォータースには2つの大きな強みがある。1つは、ビジネスモデルに関する強み。もう一つは、組織構成に関する強みだ。

まず、ビジネスモデルに関しての強みであるが、ヘッドウォータースは、AIのエンジンの開発ではなく、そのエンジンを取り込んだり、既存テクノロジーと掛け合わたり、誰でも使いやすくしたりする周辺技術も含めて「マルチAIプラットフォーム」に搭載し、様々な企業とタイアップしながら、AI活用ビジネスを生み出すことを、より早く実現することを優先している

現在、多くの大学の研究室や企業の研究機関でAIの研究が進んでいます。弊社ではAIのエンジン自体の研究よりも、AIを多くの人が使うと言うことに軸足を置いています。過去を振り返るとインターネットの普及とAIの普及が重なると感じます。インターネット自体を研究する事も必要ですが、インターネット上で世界中の人が使うサービスを作り込む存在も必要です。Google、Amazonはネット関連企業ですが、人々にインターネットを意識させず、人々が使うサービスにフォーカスした企業だと思います。我々はその役割をAIの領域で担いたいと考えています。

AIはそれ自体がサービスとして成長していくのではなく、インフラとしてより高性能になっていくと思います。
我々はそのAIを最大限に活用し、今までにない価値、今までにない体験を生み出して行くリーディングカンパニーでありたいと願います。インターネットの普及に比肩するAIの進化が訪れます。
この分野で大きな貢献と、発展を実現する為に、マルチAIプラットフォームを主軸とした事業展開に舵を切りました。
クライアントは、AIの使い方、料金、優劣などに迷うこと無く、ヘッドウォータースに全てを任せれば一番良い成果が得られる、そんな未来を目指します。(篠田氏)

そして、2つ目の強みとなるのが、ヘッドウォータースの組織体系だ。

ヘッドウォータースの社内は100人弱在籍するが、その中で純粋な管理部門での業務を行っている者はわずかが6、7人だという。約9割の社員がエンジニア出身である。営業担当者たちがエンジニア出身というだけでも驚きだが、PRの責任者ですら、元々はエンジニア経験があり、技術的なことまで理解することができるのだ。この事実だけでもバリューがあると、投資家に評価されているという。

ヘッドウォータースのミッションには、『エンジニアの地位向上』というものがあります
エンジニアの役割は研究者とは違うので、技術そのものの追求がゴールではなく、技術を使い誰かを幸せにする、言い換えれば技術をビジネスに活用していくのが存在意義だと考えます。

我々は本質的に人を幸せにすること、世の中を快適にしていくことを喜べるエンジニアだけを採用し、育てていく集団であると決めています。

その延長線上にエンジニアの付加価値の向上があり、我々がミッションにしている『エンジニアの地位向上』が実現できると考えています。

ビジネスを熟知したエンジニアの集団、新しい価値を創造できるエンジニアの集団、こういう環境は他に知らないので、ヘッドウォータースで実現していきたいですね。篠田氏

すべてのシステムとすべてのソリューションにAIを

AIは非常に現在盛り上がっている市場である。
トヨタから出資を受け、自動運転の共同開発に取り組んでいるパークシャーテクノロジー。「AIレジ」のサインポストなど、2017年もAI関連ビジネスのIPOは目立つ案件が多く、初値からの上昇率も高い傾向にある。

余談ではあるが、本メディアpediaも、ヘッドウォータースとの共同開発を行っており、

弊社以外にも、金融、医療領域などでヘッドウォータースのプラットフォームを通してAIビジネスを本格化させていく企業は後を絶たない。

すべてのシステムとすべてのソリューションにAIを」をミッションに掲げるヘッドウォータースの取り組みに引き続き注目していきたい。