ベンチャー企業のトラブル、記者会見。そのときすべきことは。【後編】

有事の会見で意識しなければいけない優先順位

前編はこちら

目次
【前編】

ポイント1.冒頭のスタンスが会見の「流れ」を決定する

ポイント2.記者会見は24時間以内に開く

ポイント3.「お騒がせして申し訳ありません」はありえない

ポイント4.お辞儀をして頭を上げるときはゆっくりあげる

ポイント5.目線は一箇所に

ポイント6.社長が自らの言葉で喋る

【後編】

ポイント7.スライドやパネルを準備するのも効果的

ポイント8.「検討中です」は乱発注意

ポイント9 企業で大切なのは倫理>法律、社会的信用>法的信用

企業はこういう記者会見の時ってどういうところに頼むもんなんですか?記者会見の進行をサポートしてくれるような会社があるのでしょうか?

蔭山洋介:PR会社はだいたいそういう事を記者のとりしきりとか、音声、写真チェックとかやってくれたりします。ただ、謝罪会見とかではPR会社なんて使いやがってと思う方もいらっしゃったり、急に探すのも難しいため、司会は広報の方がするのが一般的ですね。

ポイント7.スライドやパネルを準備するのも効果的

蔭山洋介:あ、あと話す順序ですが、コインチェックさんは、ちょっとずつ情報を小出しにする傾向があったのですが、それはあまりよろしくないです。

記者の方々は、基本的には情報を取りに来ていまして、それが仕事なわけです。夜中だろうが、早朝だろうが、情報をもらうために集まってくるのです。

それなのに、会見に足を運んでもなかなか情報がもらえないと、記者としては気分を害することになってしまいます。

記者会見のときは、あらかじめ聞かれそうなことを把握しておいて、今までとこれからのロードマップや現況など、場をリードしていくことが大切です。

今回のような技術的な内容が絡むケースだと、最初に技術的な説明をスライドなどを使ってしたほうがよかったかもしれないです。

記者は常に色々な分野の情報に触れているため、それぞれの分野のキャッチアップは疎かになりがちです。
企業側の「勉強してから来いよ」と思う気持ちもわからなくないのですが、積極的に記者に教えてあげるくらいの気持ちでいた方が、良い関係性が築けます

STAP細胞の笹井さんの記者会見は大変素晴らしかったです。彼の会見は30分程度の科学的なレクチャーを最初にしたんですよ。


コインチェックも、仮想通貨とは何か、仮想通貨取引所のビジネスモデルはどのようなものか、マルチシグとは何か、などの情報提供をもっとわかりやすくしても良かったと思います。

正田圭:あー、そういうような、前提知識をきちんと話すのも大切だということなんですね。

もし、良い関係性が築けたら、「今回はお気の毒でしたね」なんて話にもなった可能性はあるのでしょうか?
そもそも、盗んだ側が一番悪い
話じゃないですか。

蔭山洋介:そういう可能性も、大いにあり得ました。

正田圭:じゃあ<>b開始0秒から、記者たちが揃いも揃って叩きに来ていたというよりは、開始10分くらいでそういう流れになっていってしまったということなのでしょうか?

蔭山洋介:そういうことなのです!

記者たちは説明が少ないと「聞かなきゃ、聞かなきゃ」と焦ってしまうのですよ。

何も答えないし、「じゃあ現金なんで止めてるの?」ってことになったら理由が「株主との相談で」ってなってしまうので。

そしたら記者も「株主あなたじゃないか。」って、全然話がかみ合わない。

正田圭:技術的にマルチシグとか、コールドウォレットの話とかをきちんとすれば良かったんですかね?マルチシグ対応ができてなかったのでこうこうこうなってしまいましたって話は、特にコインチェック側から理論立てて説明すべきということですもんね?

蔭山洋介:はい、先に言ってしまった方がいいんですよ。

だから、最初の段階で、今後のセキュリティとかロードマップとかを出した方が良かったんですよね。

正田圭:突っ込まれる前に自分達からマルチシグ対応とか、どうだったとかマイナスの話は先に自分からした方がよいのですね。

蔭山洋介:そうですね。本当に、今回、スライドなどの準備があっても良かったかと思います。

おそらく、今回はすべてをあらゆる情報を出さないことを決定して出てこられたのではないでしょうか。

そのため「検討中です」が多すぎて、答えようと努力する姿勢が見られず、資産を失った人たちの痛みがわからない人に見えてしまっている。

「検討中です」はなるだけ使わず、なんとか説明しようとすべきですし、その決定はその場でCEOが下すべきです。そこにリーダーシップを感じ、この会社なら大丈夫、となるきっかけになります

懸命に技術的なことを検討してロードマップを示すとか、10時間あればできますので、そこの努力はきちんと行うべきでした。

もっと言えば、 記者がここまで突っ込んでくると思っておらず、準備が結果として手抜きになってしまったのかもしれません。

さきほど、記者自体、一応担当はいるとはいえ別にみんながみんな技術に詳しいわけもなくキャッチアップする暇もない記者が多いので…という話をしましたが、最近の優秀な記者たちは、記者会見に来る前にSNSで有識者のTwitterなどで話題になっていることを予習してくる傾向が強いですね。

ポイント8.「検討中です」は乱発注意

正田圭 現在検討中ってセリフが非常に多かった印象がありますが、それもやはり決まってから出てくるべきだったのですね。

蔭山洋介:夜中に記者会見を開かずに、もう数時間準備したうえで早朝に会見を開くという手もありました。
あと、「現在検討中です」っていうのは、公表できませんの隠語なんです。

正田:あ、そうなんですね。じゃあ、全く何も出さないということはいけないとしても、被害にあった口座数はこれだけです、しかしこのデータは出せません、って、明確に答えちゃっていいってことですか?

蔭山洋介:あ、それは逆に検討中です、で濁していいです。
ただ、彼らの場合、隠語の「現在検討中です」でなく、本当に検討してる感じがしてしまっているので、それは良くないです。

そうです、まず記者会見の前にネットの噂とかでここが技術的にどうだとか出てくるわけじゃないですか。ネットから情報を集めて、どういう言葉を出せばいいのかの対策をしておくわけです。

有事の記者会見って、言ってみれば末期癌になったみたいなものなので、できる治療を全部するべきです。

もうわかった瞬間から、楽してどうなるってことはないので。そういう経営判断をやって会見で話す挑むべきです。

具体的には、ここは発表する、しないなどのリスト分けや、説明のスライド、もちろん事態を収拾するための行動もしなければなりませんし、もうできることすべてをやり切らなければならないのです。

正田圭:10時間の間何をしましたってことも必ず入れなきゃいけないわけですね。

蔭山洋介:はい、もちろんです。

努力したけれどダメだったこともきちん出すべきで、財団に突っぱねられたとかそういう話も、聞かれて答えていましたが、自らすべきです。

追跡調査しているとか、補償の内容をできるともできないとも言えないとか。

特に補償に関しては最初に言うべきです。隠せば隠すほど殴られる

あらかじめ言っておけばいいけど、あとでいうと言い訳に聞こえてしまいます
あと、こういう時、裏で、情報出さないリストと出すリストっていうのを作るわけなんですよ。

で、今回の決断はほとんど何も出さないってことでここに来てしまっているから苦しくなってしまっています。

正田圭:たとえばこれって、広告費ばっかかけて、セキュリティざるの状態でやってたことを突っ込まれていたと思うんですね。

でも、広告確かに目立っているけど、そこまでたいした金額じゃないと思うんですよ。事業の規模感からしたら。


なので、「前回これだけ調達しましたが、実際の広告費って、六本木のあそこの広告はいくらで、計10億くらいで、実際エンジニアとかセキュリティにこれくらいかけてましたし今期もこれくらいかける予定です」とか言えばいいだけですよね?
何人の口座がー、とかって、毎週営業会議でいくつ口座数増えました、とかやってると思うので出せばいいだけな気がします。

蔭山洋介 逆にお尋ねしたいのですが、記者会見中「株主に聞かないと」みたいな発言が目立ち、記者たちもそれに苦笑いするシーンがありました。

ベンチャー企業経営者は、こういう時、株主の言うことを必ず聞かなければならないものなのでしょうか?

正田圭:株主の許可を得ないと情報開示ができないかというとそんなことは一切ないですね。

喋っちゃうだけですから。
まあ、株主間契約があったり、株主から色々言われてとか、わかるっちゃわかるんですけど、そんなこと言ってるうるさい株主がいたとしても、無視して喋るべきくらいの内容に思うんですよね。困ってる人のこと考えれば。

むしろ株主は、必要があれば会社の情報を見られる、ということはあったとしても、株主の許可なんてなかったとしても…たとえばここに決算申告書全部持ってきたとしても、法的には問題ないですよ。

蔭山洋介:だったらなおさら、積極的に情報開示するべきだったと思います。これだと「顧客を舐めすぎだ」って人も少なからず出てきてしまいます。

あと、記者会見での印象がとにかく悪くなってしまいます。記者側からすると、お金の痛みのリアリティが0なんですよね。
人によっては200万で人生変わっちゃうので。その痛みを背負ってる顔は出すべきですね。

別に、悲壮感をテクニック的に出せと言う話ではありません。

コインチェック側で、ポジティブなこともしっかりやってるはずなんですから、それはしっかり出さないともったいないという話です。

ポイント9.企業で大切なのは倫理>法律、社会的信用>法的信用

正田圭 いやー、大変勉強になりました。最後にですが、蔭山さんから、なにかこれだけはみたいなポイントってありますか?

蔭山洋介:はい、最後に、これが一番大事だというポイントを話しますと、会見で世論がどう動くかを考えておかなければならないということです。

企業はどうしても法律をベースに考えます。
ただ、法律を守れば何やってもいいかと考えれば答えはノーなんです。

だって不倫問題は法律は何にも触れてないわけです。

だからといって、法律でオッケーだからオッケーなわけじゃないんですよ。

注意しなければならないのは、法律だけでなく、世論がどう動くかといことです。

法的信用を得ても、社会的信用を失ってしまっては再起できないんです。だから、このような会見では、社会的信用を重視すべきです。

堀江さんとか西村さんとか法的に負けまくっても再起できてるじゃないですか。あれは社会的信用があるからです。

世間とどうコミュニケーションをとるかって視点は絶対欠かしてはなりません

正田圭:弁護士だけの話を聞いてやると、そういう意味では燃えやすくなっちゃうと?

蔭山洋介:よくありますし、それで再起不能になって自己破産された方も知ってます。弁護士さんの言うことだけを信じちゃダメです。

絶対やっちゃいけないこと結構やっちゃってる感じあります。

ユーチューバーのヒカルさん騒動の時の謝罪会見は、実は今回のコインチェックとは真逆でした。

彼らも、株主ではないにせよ、喋るなという色々な圧力はかけられていたと思います。

ただ、彼らは「裁判で不利になったり、企業に迷惑がかかる可能性があり、自分たちが真実だと思うことを話すことが許されない状況があった。しかし、この状況は耐え難い苦痛であり、裁判以上に名誉回復を図るために自分たちの真実と信じることを公に話したい」ということを会見の後半で話していました。

ベンチャー企業の経営は、ハイリスクハイリターンな側面があり、どんなに気をつけて経営していようと、このようなトラブルはどうしても出てきてしまうと思います。そのようなトラブル時に、ネガティブなイメージが残ることは、極力避けたいです。

人間は評判の生き物です。評判が傷つけられることは、それはそれは耐え難い苦痛ですし、これからのビジネスにも影響が出てきてしまうと思います。

特に今はSNSが発達したソーシャルな時代です。企業のコミュニケーション戦略を考える事例として、ベンチャー起業家の皆様の参考になればと思います。ありがとうございました。

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