理学療法士版Uberの遠隔リハビリテーション『Regain』、キャピタルメディカ・ベンチャーズから資金調達…渡辺代表が決断した、アメリカから日本への転換

理学療法士版Uberの遠隔リハビリテーション『Regain』を運営するReturn to the Fieldは、プレシリーズAで、キャピタルメディカ・ベンチャーズより資金調達を実施した。Pedia Newsでは、Return to the Field ファウンダー兼CEOの渡辺拓貴氏にインタビューを実施した。

世界でも類をみない超高齢化が日本で進んでいる。日本における65歳以上の高齢者人口は、1950年には総人口の5%に満たなかったが、1970年には7%、1994年には14%を超え、現在26.7%に達する。高齢者人口は、団塊世代が65歳以上となった2015年に3,392人となり、団塊世代が75歳以上になる2025年には3657万人になることが見込まれる。総人口が減少する中、高齢者が出生数を上回ることで、高齢化率は深刻化し、2035年には33.4%で3人に1人、2060年には39.9%で2.5人に1人が高齢者となる社会が到来すると予想されている。

また、総人口に占める75歳以上人口の割合も上昇を続け、いわゆる段階ジュニア世代が75歳以上となった後に、2060年には26.9%で4人1人が75歳以上の高齢者になるとも言われている。

そのため、介護負担の増大や、生産年齢人口の減少に伴う家族の介護に関わる人の増加が予想されており、身体機能を回復、維持するためのリハビリを支援する理学療法士や作業療法士の需要の増加が見込まれる。

一方、2000年以降、理学療法士や作業療法士の養成数は大幅に増加しており、従事者数も増加傾向にある。

こうした状況を踏まえ、理学療法士や作業療法士の需給が注目されている。その解決に挑むのが「Return to the Field」である。

Return to the Fieldは、2015年に設立された会社。シードラウンドでは、デジタルガレージ、コロプラネクスト、アスリートの為末大氏、連続起業家の柴田陽氏から資金調達を実施。また、リクルートホールディングスが運営するコミュニティスペース「TECH LAB PAAK」の第3期生でもあり、トーマツが東京都から委託を受け運営する青山スタートアップアクセラレーションセンター(ASAC)のアクセラレーションプログラムの第3期生でもある。

Return to the Fieldの創業には、ファウンダー兼CEOの渡辺拓貴氏の原体験が大きく関わっている。その原体験とは、米カリフォルニア州立大学フラトン校でスポーツ科学を専攻しながら、MLSプロサッカークラブ「チーバスUSA」でリハビリトレーナーとして勤務していた際、ユースチームのエース選手が経済的な理由からうまくリハビリを行えずに引退してしまうという悔しい想いをしたことである。

**チーバスUSAでは移民の選手が活躍しており、彼もその一人でした。当時13歳の彼は、スパニッシュ系メキシコ人で、ユースチームのエース選手として活躍していました。チームの中でもその活躍は高く評価されていて、他のチームへの移籍も検討されており、まさにアメリカン・ドリームを実現できる可能性を持っていました。**

**しかし、僕が彼と出会った時には、彼は足を捻挫して怪我をしていました。アメリカに移住した移民の多くが経済的な理由から医療保険を受けられず、病院に行けない現状があります。実際、彼も、経済的な理由から病院に行くことができませんでした。僕は、週に1回、彼のリハビリをボランティアで手伝いましたが、サポートできる範囲も限定されました。その結果、彼はリタイアしてしまって、選手としても引退を余儀なくされました。アメリカン・ドリームを実現できるかもしれない、そんな才能を持っていた選手だっただけに、家族も彼自身もガッカリしていましたし、僕自身も悔しかったです。**(渡辺氏)

この原体験と、帰国後にDMM英会話の立ち上げや500Startupsポートフォリオ企業のPocketSupernovaの事業開発に携わったことが契機となり、Return to the Fieldは創業された。Return to the Fieldは、遠隔医療技術で一人でも多くの人を救うことを使命に、世界最大のリハビリ病院を作ることを目標に掲げる。

Return to the Fieldでは、リハビリテーションに特化した遠隔医療サービス『Regain』を開発・運営する。Regainとは、理学療法士と身体に不調を持つ利用者をマッチングさせる遠隔リハビリテーションプラットフォーム。例えるならば、理学療法士版のUberと言えよう。

**会社設立後は、2016年2月から6月まで、2002年から遠隔医療が解禁されていたアメリカに渡って事業機会を模索していました。当初は、僕の知り合いをベースに、60名の理学療法士に登録していただいて、シリコンバレーに拠点を持つ日本企業や、サンフランシスコ付近の大学の陸上部にサービスを運営していました。その一方で、日本にある大手企業から口コミベースでお問い合わせをいただくようになり、2016年4月頃から日本でも展開していました。こうした状況の中、「僕らのナレッジは世界で通用すると思うけれど、ビジネスとしては日本で勝負する方がいいのではないか」という考えが少しずつ芽生えてきました。**

**その後、2016年9月に500 Startups Japanが神戸市と開催した500 Kobe Pre-Acceleratorに参加して、500 Startupsのキャピタリストやメンターの方々にも、「ファウンダーマーケットフィットを考えると、日本で挑戦した方がバリューを発揮できる」とアドバイスをいただきました。これが後押しとなり、アメリカから撤退し、日本に集中することを決めました。**(渡辺氏)

Regainは、いわゆる「B2B2Eモデル」であり、企業の従業員に利用されている。現在、ベネフィットワンと提携し、健康経営で有名なフジクラや、ディー・エヌ・エーなど6社で導入されている。

**企業にとっては、従業員が腰痛などの身体の不調を訴えることは生産性の低下につながります。また、自社で健康保険組合を持つ企業にとっては医療費の負担増加にもつながります。実際、健康保険の中でも、整骨院に係る費用は年間数千万円に及ぶと言われており、費用削減に向けた課題解決が求められています。**

**そこで、僕らは、誰もが症状として持ち得る腰痛にフォーカスしています。多くの怪我の場合、触診をせずとも、「職場のストレス」「身体のアライメント」「身体の前面後面の筋肉バランス」「関節の可動状況」という4つのリスクファクターと、患者自身が閉塞感を持たずに「認知」することで治りやすくなると言われています。僕らは、Regainを通じて、理学療法士と患者を結びつけることで、これらのリスクファクターに対して、リアルタイムなビデオ通話やチャットを活用しながら適切な指導を提供します。**(渡辺氏)

創業者の原体験から社員の健康をIT技術で解決しようとする、Return to the Field。そのReturn to the Fieldは、本日(2月8日)、プレシリーズAで、キャピタルメディカ・ベンチャーズより資金調達を実施したことを発表した。

キャピタルメディカ・ベンチャーズとは、ヘルスケアベンチャーを専門に投資を行うベンチャーキャピタル(VC)であり、医療経営プラットフォーマーとして全国に病院や介護施設などのネットワークを持つキャピタルメディカの子会社である。渡辺氏によれば、キャピタルメディカ・ベンチャーズの青木氏は、**「VCの中でもヘルスケア領域に詳しく、事業を作る上で同じ目線で話せる方」**であるという。なお、今回の資金調達は、キャピタルメディカ・ベンチャーズにとって第1号投資でもある。

今後、両社では、キャピタルメディカグループの病院・介護施設を活用したフィールドテストを行うことで、高齢者向けの転倒防止・早期発見プログラムを共同開発し、新たなる価値を共創していく考えだ。

**Regainは、これまで企業に対して展開していましたが、今後は高齢者の課題解決に取り組んでいきたいと考えています。要介護になる要因の第3位にあたるのが骨折・転倒と言われており、高齢者にとって転倒を予防するトレーニングの需要が介護施設内を中心に高まっています。**

**キャピタルメディカグループの病院・介護事施設を活用したフィールドテストを行うことで、高齢者向けの転倒防止・早期発見プログラムを共同開発し、Regainを介護施設でも利用していただけるようにしていきたいと思います。高齢者の中には、ご自身でスマートフォンやタブレットを操作するのが苦手な方も多いので、作業療法士やヘルパーの方々に協力していただきながら、僕らのサービスを利用していただくことを想定しています。**

**将来的には、病院にも導入していただくことで、理学療法士のCRMツールとしても利用していただき、患者のエンゲージメントの向上に貢献することも検討しています。**(渡辺氏)