決算でみる、ソフトバンクの投資実績と約3.3兆円でARMを買収した真意(2017年第1四半期決算)

今回、Pedia Newsでは、ソフトバンクグループの2017年第1四半期(2016年4月〜6月)の決算をベースに、ソフトバンクの投資実績とARMの買収についてご紹介する。

国内で2017年3月期の企業の第1四半期(2016年4月〜6月期)の決算発表が本格化する一方で、海外でも2017年12月期の企業の第2四半期(2016年4月〜6月期)の決算発表が本格化している。(参考記事:決算シーズン到来!注目IT・ゲーム関連株の決算スケジュールまとめ(2016年7月末)

その中でも、注目企業の一つであるのがソフトバンクだ。ソフトバンクは、先月(7月)に約3兆3,000億円で英国・ケンブリッジのARMホールディングスの買収を発表したばかり。

今回、Pedia Newsでは、7月28日に公開されたソフトバンクグループの2017年第1四半期(2016年4月〜6月)の決算をベースに、ソフトバンクの投資実績とARMの買収についてご紹介する。

### ソフトバンク 2017年第1四半期決算

売上高は前年同四半期比2.9%増加の2兆1,265億2,100万円、営業利益は同0.2%増加の3,192億3,600万円、純利益は同19.1%増加の2,541億5,700万円となった。営業利益は11期連続で最高益となった。

売上高について、事業別にみると、スプリント事業の売上高は減少したものの、国内通信事業、ヤフー事業、流通事業において売上高が増加した。

国内通信事業の売上高は、通信サービス売上と物販等売上が増加し、前年同四半期から401億7,600万円・5.6%増加し、7,546億6,200万円。

スプリント事業の売上高は、前年同期から897億1,500万円・9.6%減少し、8,480億9,800万円。米ドルベースの売上高は前年同期から1,500万米ドルから0.2%減少したが、当第1四半期における対米ドルの為替換算レートが円高になったことで円ベースの減少幅が拡大した。

ヤフー事業の売上高は、ヤフー株式会社がアスクル株式会社を子会社化したことが貢献し、前年同期から928億6,100万円・85.6%と大幅に増加し、2,013億9,200万円となった。

流通事業の売上高は、前年同期から159億6,800万円・5.6%増加し、3,001億4,800万円。

営業利益について、事業別にみると、スプリント事業においてセグメントの利益が242億2,000万円減少したが、国内通信事業において239億6,400万円、ヤフー事業において14億5,600万円、流通事業において62億6,900万円、それぞれのセグメントの利益が増加した。

また、ソフトバンクの投資事業をみてると、投資対象は、①Eコマース、②ライドシェア、③フィンテック、④インターネット&メディア、⑤AI&コネクテッドデバイス、⑥ヘルスケアであり、主な投資先には、Alibaba、Ola、SoFiなどを持つ。

投資金額をみると、米国が約60%、アジアが約40%を占める。また、事業領域別に見ると、ライドシェアが約26%、Eコマースが14%、インターネット&メディアが13%。

なお、インターネット企業への投資実績は7,398億円で、投資リターン額が10兆1,000億円で、IRRが44%となった。

このように、国内通信事業を支えに、安定した収益を示した一方で、市場の関心は、約3兆3,000億円にのぼるARMホールディングスの買収だ。

ソフトバンクの決算をみると、2016年3月末時点で現金及び現金同等物は2兆5,696億円。これに、Alibaba株式の一部資現金化、Supercell株式売却、ガンホーによる自己株公開買付に伴う保有株式の売却で722億円を調達。さらに、みずほ銀行から総借入限度額1兆円のブリッジローン契約を締結。

* 投資回収
* Supercellの株式売却
* 調達総額 78億ドル、IRR 93%
* 資産再分配
* Alibabaの一部株式売却
* 調達総額 88億ドル、IRR 68%

これにより、ARMの買収で、ソフトバンクは、買収額 約3.3兆円のうち、約70%を現金で支払い、ローンは約30%に抑えることができた。これは、ソフトバンクが行ってきたM&Aとしては、現金で約70%を支払ったことは初めてのことで、経営基盤的にも余裕のあるディールだという。なお、2016年3月末時点で有利子負債は2兆6,466億900万円、のれんは1兆6,097億8,900万円。

今回の買収条件は、ARM株式1株当たりの価格1,700ペンス。これは、

* 2016年7月15日付のARM株式1株当たりの終値1,189ペンスの約43.0%及びARMの1ADR当たりの終値47.08米ドルの約42.9%
* 2016年7月15日までの3カ月間における、ARM株式1株当たりの平均終値1,004ペンスの約69.3%及びARMの1ADR当たりの平均終値42.39米ドルの約58.7%
* 2015年3月16日に記録した、ARM株式1株当たりの上場来高値(終値ベース)1,205ペンスの約41.1%

のプレミアを反映したもの。

ARMは、CPUなど半導体の設計を手がける研究開発会社。設計した設計地図を、Apple、Samsung、Qualcomm、HUAWEIなどの会社に提供し、スマートフォンや自動車、家電などの部品に使われている。

ARMのチップ出荷台数は、148億個以上で、インテルの約40倍。また、ARMのマーケットシェアをみると、スマートフォンで95%以上、タブレットで85%以上、ウェアラブルで90%以上、ストレージで90%以上、車載情報機器で95%以上であり、半導体設計では市場を独占している。

さらに、ARMの直近2015年の業績をみると、売上高が1,791億円、営業利益が924億円、税引後利益が578億円、営業利益率が51.6%で高収益だ。

まさに、ARMは、グローバルな半導体の知的所有権と「IoT(モノのインターネット)」における優れた能力を有している、優良企業と言えるだろう。

今回の買収で、ソフトバンクは、IoT(Internet of Things)に注力し、ソフトバンクグループのコア事業として強化していきたい考えだ。

今回の買収について、7月28日の決算記者会見で、ソフトバンクの孫正義社長は、

創業以来「総合インターネット企業」を目指しており、ソフトのアプリケーションメーカーでもOSメーカーでもなく、クラウドを提供する会社になりたいことを目指していた。クラウドに様々なデータを提供するのは、世界中に流通するチップがないと、データが集められない。「チップのあるところにデータあり」そして、そのデータはネットワークを介することで、クラウドに集まることができる。ソフトバンクは、日本とアメリカでネットワークを持っています。今回の買収でARMが傘下に入ることで、ソフトバンクのネットワークを通じて、ARMのチップで世界中から集められたデータをクラウドに集められる。

と語っている。

ソフトバンクは、通信からIoTへとコア事業をシフトさせようとしているように見える。「世界のデータを持つARM、世界のネットワークを持つソフトバンク」ソフトバンクグループとしてその独自ブランドを形成する。そこに、ソフトバンクの新たな成長戦略の命運はかかっているのではないだろうか。