日本初の次世代型腸内フローラ検査キットを運営する、理化学研究所認定ベンチャー「サイキンソー」が総額2.7億円を資金調達…沢井社長が語る、創業から今後の展望

サイキンソーは、地域ヘルスケア産業支援ファンドなどから総額2億7,000万円の資金調達を実施した。今回、Pedia Newsでは、株式会社サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏にインタビューを実施し、今回の資金調達の経緯、そして今後の展望などを伺った。

私たちの日常生活に欠かせない「食事」。その食事が健康にどのような影響を与えるか。未だに多くの謎を秘める中、その謎を解くかもしれないのが「マイクロバイオーム」。マイクロバイオームでは、おなかの中に存在する腸内細菌を調べ、その人の健康状態を知ることができる。

* マイクロバイオーム(細菌叢)とは
* 人間の身体に存在する微生物(細菌)のうち、多くの人に共通してみられ、病原性を示さないもの。

* 腸内フローラ(腸内細菌叢)とは
* 私たちの腸内には、1,000種類以上の細菌が、数にして600兆〜1,000兆個もの腸内細菌が住み着いている。腸内細菌たちは、人間が食べたものをエサにして、互いに競い合い、助け合いながら生きる”生態系”を作る。この非常にたくさんの細菌をまとめて「腸内フローラ」と呼ぶ。最新の研究では腸内フローラが美肌、肥満、便秘、糖尿病、大腸がん、アレルギー、自閉症、うつなどにも関連している事が明らかになっている。

マイクロバイオームは、腸内細菌研究の第一人者として知られる辨野義己氏をはじめ、国内外で研究が進められてきた腸内細菌研究と、1990年代より米国を中心に革新的進歩を遂げてきたゲノム研究が、融合して誕生した新しい研究分野。ゲノム情報解析技術の革新的進歩に伴い、2007年12月より、米国国立衛生研究所(NIH)を中心に、ヒトマイクロバイオムプロジェクト(Human Microbiome Project)として、腸内細菌などを解析する研究が進められたことで、2013年以降、全世界でマイクロバイオームの研究が盛んになっている。

アカデミックなバックグラウンドを持つメンバーがマイクロバイオームをビジネスに取り入れ、腸内フローラのDNA解析によってヒトの健康を解明する、理化学研究所認定ベンチャーが「サイキンソー」である。サイキンソーは、地域ヘルスケア産業支援ファンドなどから総額2億7,000万円の資金調達を実施した。

今回、Pedia Newsでは、株式会社サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏にインタビューを実施し、今回の資金調達の経緯、そして今後の展望などを伺った。

サイキンソーは、2014年11月、腸内フローラをDNA解析によって評価することで、健康状態や健康習慣レベルを検査し、セルフケアに貢献するサービスを事業化するために設立された会社。

**腸内細菌分野は、2011年に、アメリカを中心にマイクロバイオームという大きなムーブメントがありました。その背景には、ヒトのDNA解析で培われてきたゲノム技術が大きく影響しています。これにより、これまで主流だった腸内細菌研究とゲノム研究が融合され、おなかにある菌をDNA解析によって調べられるようになり、おなかにある菌がヒトの健康や疾患にも影響していることがわかってきました。**

**私は前職で遺伝子解析の会社にいて、「これからマイクロバイオームがトレンドになる」というのを強く感じ、腸内フローラに着目し、マイクロバイオームの研究を取り入れ、個人向けヘルスケアサービスを手がけたいと思いました。「大きな流れがある中でマイクロバオームをビジネス化する会社が現れてもいいのではないか」「誰もやらないなら自分がやるしかない」いろいろ専門書を読み進めていくと、腸内細菌研究の第一人者でもある辨野先生(理化学研究所 辨野義己氏)と出会いました。辨野先生に、今後の構想についてお話したところ、意気投合し、ご賛同いただいたのがキッカケとなり、サイキンソーを創業しました。**(サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏)

私たちの腸内には、1,000種類、数にして約1,000兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しており、「腸内フローラ」と呼ばれる。腸内フローラは、食物の分解や栄養の吸収に大きな役割を果たしていると考えられており、ヒトの生活習慣によって大きく変わる。そのため、個人差を反映する遺伝子についで「第二のゲノム」とも言われる。

サイキンソーでは、2015年秋より、日本初の次世代型腸内フローラ検査キット『Mykinso(マイキンソー)』の提供を開始した。リリース当初は、クラウドファンディング『Makuake』にて先行販売を開始し、1ヶ月で170人から総額463万2,800円の支援を集めた。

『Mykinso』では、生活習慣に関する簡単なウェブアンケートと糞便サンプルを使用することで、腸内フローラのゲノム解析を行う。採便方法は、一般的な検便検査と同じで、専用の採便キットを使えば、手を汚さずに簡単に採便できる。サンプルを採取して検査キットを返送すると、6週間後には、「腸のタイプ」「太りやすさ」「菌の多様性」「主要な細菌の割合」「腸内の菌構成」「腸内環境の推移」に関するレポート結果をウェブで見ることができる。

**まず「腸のタイプ」は、大きくB/P/Rの3パターンとその境界線BR/BR/PRの6通りに分かれています。これは、学術的にもまだ研究段階ではありますが、食べ物に紐づいていると考えられています。日本人の場合は、Bタイプが全体の80%を占め、炭水化物を多く摂取している傾向があると言われています。**

**次に「太りやすさ」は、アメリカの文献で報告されている測定方法を参考に、肥満と関わりがあるとされる、ファーミキューテス門菌(Firmicutes)とバクテロイデーテス門菌(Bacteroidetes)の比率をもとに表示します。普段どのような食べ物を食べているか、例えば油が多いものを食べていると、それを好む菌で肥満の原因でもあるファーミキューテス門菌が増加します。『Mykinso』では、それをわかりやすく「太りやすさ」と表現しています。**

**「菌の多様性」は、ヒトで言えばダイバーシティ、動物で言えば生物多様性に該当するものです。マイクロバイオームは菌の生態系であり、多種多様な菌が複雑に存在しています。よくダイバーシティがある組織は強いと言いますが、菌も同じで、多様性があると、強い腸内環境と言えます。おなかの中には、全部で1,000種類の菌がいると言われますが、『Mykinso』なら、腸内環境を知るために必要な主要400種類の菌を分析することができます。**

**また「主要な細菌の割合」も見ることができます。ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌、エクオール菌といった、いわゆる善玉菌と呼ばれる、身体に良いとされる菌の割合を見ることができます。ビフィズス菌、乳酸菌は、ご存知の方も多いかもしれませんが、酪酸菌とエクオール菌はご存知ない方も多いかと思います。酪酸菌とエクオール菌は、ヒトの身体の中にもともとある菌で、食品にはなかなか含まれていませんが、食べ物によってそれぞれ個体差が出てくるものです。**

**酪酸菌は、アレルギー対策などにも効果があるとされており、今非常に注目されている菌です。この菌のエサは食物繊維です。特に、水溶性の食物繊維とオリゴ糖を摂取すると、酪酸ができて、酪酸菌が腸を活性化し、腸の免疫バランスを良好にすると考えられています。一方、エクオール菌は、更年期と関係していると言われている菌です。エクオールは、大豆のイソフラボンが代謝されて出てくる物質なのですが、アカデミックの世界では、イソフラボンではなくてエクオールが身体に良いと言われています。**

**そのほかに「腸内の菌構成」「腸内環境の推移」も見ることできます。『Mykinso』では、全部で8項目の検査結果を知ることができるのですが、伝え方が非常に重要だと考えています。腸内フローラは、顕微鏡で見るとお花畑のように見えることから腸内フローラと呼ばれており、『Mykinso』でもお花畑の中にいろんなお花が咲くようなイメージで表現しています。菌は本当にかわいいんですよね。**(サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏)

現在『Mykinso』は、自社ECとアマゾンで販売しており、これまでの累計出荷数は2,000キット。沢井氏によれば、「検査好きな健康マニアなヒト」「おなかが弱くて腸内環境を調べたいヒト」に利用されているほか、「食品会社を中心に自社食品の評価検査」でも利用されているという。

腸内フローラへの関心が消費者と企業の中で高まる中、日本初の次世代型腸内フローラ検査キット『Mykinso』の販売数を着実に伸ばしてきた、サイキンソー。そのサイキンソーは、地域経済活性化支援機構のファンド運営子会社である、REVICキャピタルとAGSコンサルティングが共同で運営する「地域ヘルスケア産業支援ファンド」などから、総額2億7,000万円の資金調達を実施した。今回の資金調達に伴い、REVICキャピタルから取締役および監査役が派遣される。

今回の資金調達によって、サイキンソーは、腸内フローラの解析・評価結果を生活習慣病および消化器疾患の発症リスク評価に応用するためのエビデンス構築を進めると共に、個人が健康習慣を改善するにあたって医師・薬剤師・管理栄養士などヘルスケア専門職がキープレイヤーとなることから、これら専門職に対し、健康指導支援プラットフォーム『Mykinso Pro』を開発・提供していきたい考えだ。今回の資金調達について、沢井氏は、以下のように説明してくれた。

**将来的には、今のヘルスケアだけでなく、メディカルにも進出していきたいと考えています。ヘルスケアサービスをはじめたからには、予防の延長線上にあるメディカルの分野にも進んでいきたいです。その中で、これから検査だけではなく、新しいサービスの開発やデータのクオリティを向上させていきたいと考えており、今回の資金調達に踏み切りました。1年ほど前から検討をはじめていましたが、まだ私たちはR&Dのフェーズにあるので、ヘルスケアとメディスカル分野に強い方々に投資していただきたいと考えていました。**

**今回、投資いただいた地域ヘルスケア産業支援ファンドは、ヘルスケアとメディカル分野に非常に強いです。支援先にも病院があったりと病院とのコネクションも強いので、今後、私たちが新たにメディカル分野に参入する際の広がりを期待できると思いました。また、地域ヘルスケア産業支援ファンドは、投資先に対して何人もメンバーの方々が動いてくださるので、私たちのような事業がはじまったばかりのベンチャーにとっては、いろんな支援をしてくださるので、心強いです。**(サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏)

細菌叢(さいきんそう)で人々を健康にーーー今、サイキンソーは、ヘルスケアサービスからメディカルサービスへと、その事業領域を拡大していこうとしている。最後に、沢井氏は、今後の展望について、まっすぐな眼差しで真摯に語ってくれた。

**今、外部委託先も含めて全部で15名のチームで動いていますが、メンバーはバイオ系、IT系、ヘルスケア系の3カテゴリに分かれています。創業時はバイオ系出身のメンバーが多かったですが、会社のフェーズが変わっていくにつれて、IT系出身のメンバーやヘルスケア系のメンバーがジョインしてきました。私たちの事業は、アフターフォローが非常に重要なので、来年以降はヘルスケアの専門家を巻き込んでいきたいと思います。**

**腸はそのヒトの一生と大きく関係しています。これからさらにマイクロバイオームの研究が進められていくことで、病気のなりやすさや体質などに腸内フローラが関わっていることがもっと明らかになります。そうすると「腸を良くしたい」というニーズが高まると考えいます。その中で、私たちは、「腸にいい生活を普及させる」ことを大きな目標に掲げて事業を展開していきたいと思います。**

**日本人は、世界でも寿命が長く健康的と言われています。それを支えているのが日本食です。日本人が食べているものによってできている腸内フローラを調べれば、世界の人が目指すべき理想の腸内フローラがわかると思います。今後、会社を拡大していくフェーズで、腸に良い生活習慣を、日本から世界へ広めていきたいです。**(サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏)

日本初の次世代型腸内フローラ検査キット『Mykinso』

株式会社サイキンソー