広告の本質は「人類の知性の散種を仕組み化したこと」…フリークアウトCOO佐藤氏が語る「広告業界の変遷」

シード・アーリーステージのスタートアップへ投資を行うSkyland Venturesは、講師に株式会社フリークアウト<東証マザーズ: 6094>のCOOである佐藤裕介氏、モデレーターにカウモ株式会社CHROの佐藤励司氏を迎えて、スタートアップやスタートアップ・広告業界に関心のある学生を中心に「収益構造の変遷から読み解く、2017年広告業界勉強会」と題して「Skyland Ventures Campus」を開催した。

svmeetup0420

シード・アーリーステージのスタートアップへ投資を行うSkyland Venturesは、4月20日、講師に株式会社フリークアウト<東証マザーズ: 6094>のCOOである佐藤裕介氏、モデレーターにカウモ株式会社CHROの佐藤励司氏を迎えて、スタートアップやスタートアップ・広告業界に関心のある学生を中心に「収益構造の変遷から読み解く、2017年広告業界勉強会」と題して「Skyland Ventures Campus」を開催した。

イベントは、フリークアウト佐藤氏による講演「収益構造の変遷から読み解く、2017年広告業界トレンド」、質疑応答、ミートアップという構成であった。

本稿では、「収益構造の変遷から読み解く、2017年広告業界勉強会」のフリークアウト佐藤氏による講演についてお伝えしよう。

### 「収益構造の変遷から読み解く、2017年広告業界トレンド」

「収益構造の変遷から読み解く、2017年広告業界トレンド」と題して、株式会社フリークアウトCOOの佐藤氏が登壇。佐藤氏は、2010年に株式会社フリークアウトと株式会社イグニス<東証マザーズ: 3689>の創業に参画。株式会社フリークアウトでは取締役COO、株式会社イグニスでは取締役をつとめる。2014年6月に株式会社フリークアウト、2014年7月に株式会社イグニスがそれぞれ東証マザーズに上場した。また、2013年より、M.T.Burn株式会社の代表取締役 CEOもつとめている。M.T.Burn株式会社は、2016年1月、LINE株式会社と資本業務提携を締結して連結子会社化されており、LINE広告プラットフォーム開発の責任者も兼務している。さらに、 2015年より、Tokyo Founders Fund LLPの代表をつとめる。Tokyo Founders Fundは、8人の起業家と共に運営しており、日本以外の海外スタートアップに投資するベンチャーキャピタル。現在、投資件数は15件以上。

### 「広告」の本質
冒頭、佐藤氏は、今回のイベントで「広告が果たす役割」に触れてもらいたいと説明して、

広告ビジネスに携わらない方からすると、「広告」とは、CM・新聞広告のグラフィック・駅前のポスターなど「最終的に見る広告クリエイティブ」の印象が強く、広告の機能を考えた場合にも「企業が消費者の皆さんに対してマーケティングメッセージを届ける役割」と定義することが多いと思う。個人的には、「広告」の本質は「人類の知性の散種を仕組み化したこと」であると考えている。つまり、「広告」の本質とは「たくさんの人に知性を配っていくという仕組みを作ったこと」だと思う。

と述べ、広告の本質とは「人類の知性の散種を仕組み化したこと」であることを強調した。

### 「広告」は「発明」

fo_satosan0

佐藤氏は「広告の発明」について、

広告は、古くは瓦版などあったが、特に新聞広告に限定すると、約200年の歴史を持つ。初めて広告を掲載したメディアはフランスの新聞「La Press」という新聞で、1836年7月1日の午後から初めて広告を掲載し始めた。当時、フランスはフランス革命の最中で、新聞の購読料も非常に高くて市民が毎日買って読めるようなものではなかった。そのため、市民は政治や経済などの知識を得ることが難しかった。しかし、フランス革命をきっかけに、市民は政治や経済の知識を得て権力を監視する必要性を感じる。そこで、様々な知恵を絞った結果、新聞に新聞広告を掲載することを「発明」する。コンテンツの中の一部のスペースを企業に貸し出して企業から広告料を頂き、その代わりに消費者の購読料を下げることで、より多くの市民に新聞を行き渡るようにした。新聞広告の導入によって、「La Press」の収益は、これまで購読料だけでもたらされていたが、購読料を半分にして残りの半分を広告の収益によってまかなうモデルに変わった。これにより、消費者が支払う購読料は約半分まで抑えられた。つまり、企業は新聞の購読者にマーケティングメッセージを届けられるようになり、消費者は企業のマーケティング情報が届くだけではなく、新聞を気軽に買えるようになった。これは、非常に重要な「発明」だったと思う。

と説明し、佐藤氏はこれを「Guntenberg & Advertising」と表現した上で、

多くの人に人間が持っている知性を行き渡すために、印刷技術と同じくらい重要な広告の「発明」があった。

と述べ、「広告」の「発明」によってこれまでの産業の構造が大きく変わったことを語った。

### 「広告」が「コンテンツへの福利的な投資を可能にした」

さらに佐藤氏は「広告のもうひとつの機能」について、

「広告」モデルは、日本でも戦後一気に成長した。「広告」のもうひとつの機能は、「コンテンツへの福利的な投資を可能にしたこと」だと思う。これは、広告収益によって余剰利益が生まれると、その余剰利益を次のコンテンツに投資することで、より品質の高いコンテンツが提供でき、より多くの視聴者が集まり、結果的に広告単価が上がり、さらなる投資実行を可能にするという複利的なスパイラルが回る、ということ。例外はあるものの、コンテンツの品質は投資と比例することが多い。マス広告時代の広告ビジネスでは、良質なコンテンツを投下できると、もっとファンが増えて視聴者が増えて、結果的に番組の広告効果が高まって広告枠の価格も高くなり、広告主は次のコンテンツに積極的に投資できる。

と述べ、「広告」が「コンテンツへの福利的な投資を可能にした」ことを説明した。

### 「Demand & Supply」が「広告」を変えた

また佐藤氏は「広告ビジネスの本質」について、

広告「ビジネス」の本質は、「Demand & Supply(需要と供給)」。「Demand」は広告キャンペーンや広告主で「広告を出したい人」、「Supply」は広告枠を提供するメディアで「広告の場所を提供する人」。特に、マス広告のテレビの時代では「Demand」が大きくて「Supply」が少なかった。さらにいうと、その供給を大手広告代理店が買い切り、独占的に販売した。そのため、「有限な供給」である「広告枠」は、広告単価の高騰、そして、限界利益率の向上を生み出していた。その結果、「Supply」が広告ビジネスに対してリーダーシップをとりやすかった。

と述べる一方で、

日本は、1995年からヤフージャパンが広告販売を始めて、インターネット上の広告枠の販売が開始した。デジタル時代の広告枠は、「Supply」が無限に増え続けるという、非常に重要な特性を持っている。インターネット上でメディアを持つ参入コストは非常に低い。そのため、「Supply」の広告枠が増え続け、「Demand」は「どこに広告を出すか」という選択肢が無限に増える。その結果、広告単価が下がっていく。つまり、マス広告時代の広告ビジネスのような広告枠の「希少性」で価格形成することができなくなった。そこで、インターネット広告の人たちは、広告の「場所」を売るのではなく「効果」を売ることを「発明」した。つまり、デジタル時代の広告ビジネスでは、広告の「枠」を売るのではなくて「効果」を売るようになった。広告を販売する時に「場所」という単位ではなくて「広告効果」という単位で販売することで、デジタル時代の広告ビジネスの「正当性」を作っていった。これが、マス広告とデジタル広告で最も異なる点だ。特に、デジタル時代の広告ビジネスでは「ラストクリックコンバージョン」というものがデファクトスタンダートの成果指標になっている。したがって、ラストクリックを生み出しやすい広告枠の単価向上に「正当性」が出てくる。広告枠への投資がビジネスの成果と定量的に結びつくため、広告主にとって非常にデジタルに投資意思決定を可能にする。この性質は、結果として、インターネットメディアビジネスに大きな収益をもたらした。広告の「スペース」ではなくて「パフォーマンス」を売る、という切り口が非常に良い結果をもたらしたということ。

と述べ、「広告」ビジネスは「Demand & Supply」の需給バランスの変化によって大きく変わったことを語った。

### 「Time Spent takes all」

佐藤氏は「デジタル時代の広告の今」について、

インターネット上での時間の使い方 = 「Time Spent」でシェアの大きな偏りが今起きている。その結果として、モバイル広告市場の売上をみると、FacebookとGoogleを足し合わせた売上実績が全体の51%を占めている。つまり、「Winner takes all」で勝ち組が市場の成果を占有しており、勝者への収斂が急速に起きているということだ。この明確な理由は「Time Spent」。デジタル時代の広告は「ラストクリックベース」の広告効果であるために、特定の滞在時間が長いメディアが幾何級数的に広告成果を吸収しているからだ。つまり、滞在時間の長いメディアが、相対的に他のメディアよりも広告接触機会が多くなり、コンバージョン前の最終広告クリックが、そのメディアで「統計的に」多く起こる可能性が高くなる。結果として、本来的な需要創出の実績以上に、滞在時間のメディアが「広告効果」の面で過大に評価され、さらなる広告予算を呼び込んでいる。

と述べた。

### 「Brand」「Old School」「Community」

fo_satosan1

最後に佐藤氏は、「デジタル時代の広告のこれから」について、①「Brand」、②「Old School」、③「Community」がキーワードであることを明らかにした。

佐藤氏は、①の「Brand」について、

「Brand」とは、ラストクリックベースの広告効果を売るのではなく、デジタルで「希少性」を売る、ということ。インターネット広告の中で無視されてきた「希少性」をメディアが広告枠に取り戻していく必要がある。「希少性」は、そのメディアのブランドが確立することで実現する。つまり「モバイル広告のインプレッション=Supply」が増え続けても「XXXに広告を出す」という機会は有限である。そのメディアでしか触れることのできないコンテンツが存在し、特定のカテゴリにおいて圧倒的に想起されるメディアブランドであること、結果としてメディア名での指名検索流入やトップページへのダイレクトアクセスが多いことが条件になる。「Yahoo! Japan」や「Cookpad」「kakaku.com」はもちろん、新興メディアでは「MERY」などがこれを実現している代表格。

と述べ、

②の「Old School」について、

「Old School」とは、ツールのサブスクリプションを前提として、有料会員でないユーザーを長期的に囲っていくために広告ビジネスを取り入れる方法。これまで、デジタルの世界ではほとんどサブスクリプションゼロで、基本的に広告収入だけでメディア運営されていたが、マス広告時代のように「サブスクリプション+広告収入」モデルがデジタル広告の世界に戻ってくると思う。代表例は「Spotify」。「サブスクリプション+広告収入」によって、広告収益で維持できる無料ユーザーを大量に獲得してシェアを拡大できるプレイヤーがネットワーク効果やスケールメリットにより長期的な優位性を獲得する。

と語り、

③の「Community」について、

「Community」は、個人的に非常に可能性を感じている。これは、オンラインサロンのようなコンテンツが継続的に変化するようなもの。ソーシャルゲームがインターネット上で集金するパワーという意味では No.1だと思うが、それらと同じように追加のストーリーがあったり、ユーザーとのインタラクションを通じて変化するコンテンツに対して課金する方法は、一般的なメディアにも取り入れられる可能性がある。インターネット上のメディアはデジタル上のコンテンツは限界費用ゼロでコピーができてしまうため、静的コンテンツよりも動的コンテンツに対価を支払う傾向があるからだ。一方で、「Community」はどうしても熱量の変化が伴うので運営が難しい側面もある。個人的には「Community」の方向性でも何か可能性はあると考えている。

と説明し、これからの「広告」では収益構造の変遷に伴い、①「Brand」、②「Old School」、③「Community」の3つの広告の発明があることを紹介した。

[写真協力:株式会社カウモ デザイナー 鈴木友樹氏]