基礎研究から実用化まで。シームレスにメタジェンが目指すのは「腸内デザインによる病気ゼロ社会」

メタジェンは、山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)発のバイオベンチャー企業。腸内環境研究の第一線で活躍する慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授の福田真嗣氏らによって、2015年3月に設立された。

いま腸内細菌が話題である。私たちの腸内には、数百種類以上でおよそ40兆個にも及ぶと見積もられている腸内細菌が住んでいる。ヒトの体を構成する体細胞数はおよそ37兆個と見積もられていることから、私たちの体の細胞とほぼ同程度の腸内細菌が生息していることになる。腸内細菌の集団が腸管内にびっしりと生息している様子があたかもお花畑のようであることから「腸内フローラ」とも呼ばれている。

近年の研究でこの腸内フローラが、人間の消化酵素だけでは消化できない成分を腸管内で更に分解して栄養素を産生したり、あるいは免疫系や代謝系に作用することで、ヒトの健康維持に寄与したり、逆に腸内フローラのバランスが乱れることで病気の原因になってしまったりすることがわかってきた。この腸内フローラに注目したのが「メタジェン」である。

メタジェンは、山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)発のバイオベンチャー企業として、腸内環境研究の第一線で活躍する慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授の福田真嗣氏らによって、2015年3月に設立された。

IABは、システムズバイオロジー研究分野で国内トップレベルの研究所であり、過去にもバイオベンチャー企業を輩出してきた。世界初、クモ糸の人工合成に成功したスパイバー、血液の代謝物質からうつ病のバイオマーカーを見つけ出したヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、唾液中の代謝物質解析でがんを早期発見するサリバテック。これらの企業に次いで、4社目となるIAB発バイオベンチャー企業がメタジェンだ。

**私たちの健康と密接に関わる腸内環境を適切に”デザイン”することができれば、病気を未然に防ぐことで「病気ゼロ社会」を実現できるのではないか。そのためには腸内環境に関する基礎研究でわかってきたことを、迅速に社会実装することで人類に貢献し、その対価として得られた資金でまた新たな基礎研究を行うといった、持続可能なサイエンスが必要である。素晴らしい研究成果であっても基礎研究で終わってしまったり、あるいは産学連携にしても他人任せでは実用化までに時間を要するケースが多い。自分がリスクを取って、自分で見出した研究成果を自分の責任で実用化すれば、迅速な社会実装が可能と考えている**(福田氏)

ただ、どんなに強い想いをもっていても、一人だけでは実現できない。同じビジョンをもつ仲間が必要である。福田氏の長年の強い想いが転機ともいえる出会いをつくった。バイオインフォマティクス研究分野で新進気鋭の研究者である東京工業大学准教授の山田拓司氏(取締役副社長CTO)、東京工業大学の大学院生で再生医療の研究をしながらヘルスケア事業の実現を目指していた水口佳紀氏(取締役COO)、数々のバイオベンチャー企業を生み出してきたリバネス代表取締役CEOの丸幸弘氏、取締役副社長CTOの井上浄氏。福田氏と彼らの、運命的な出会いがメタジェンの創業に至った。

**われわれが目指す病気ゼロ社会を実現するには、みなさんが “健康”を意識し、それを実践してもらう必要がある。そのためには、これまでなんとなく健康に良いといわれてきたことに、科学的なエビデンスを付与する必要がある**(福田氏)

それを主導するのが「腸内デザイン応援プロジェクト」である。腸内デザイン応援プロジェクトでは、近年様々な腸内環境に関連した食品やサプリメント、サービスが話題にのぼる中、科学的根拠に基づいた確かな商品・サービスを開発し、腸内環境改善による健康維持・セルフメディケーションを提案していく。このプロジェクトには2017年3月時点で、製薬企業や乳製品メーカー、食品メーカーなど、そうそうたる企業が19社参画している。

また、楽しみながら腸内環境を理解してもらおうと、腸内フローラをテーマにした陣取りバトルのボードゲーム「バクテロイゴ」を、東京工業大学と共同で開発した。腸内細菌が互いに生存競争を繰り返し、固有の腸内生態系をつくる様子を陣取りゲームに見立てた。

**少子高齢化社会を背景に医療費削減などが問われているが、病気を予防するためには早いうちから健康を意識する必要がある。子供の頃から腸内細菌のことを遊びながら学ぶことで健康にも興味を持ってもらえれば、将来の患者を減らすことができると確信している。また、子どもたちが腸内細菌に興味を持つことでそこから一人でも多くの科学者がうまれれば、彼らが次世代の人類の役に立つ新たなサイエンスを創出してくれるでしょう。私たちは一人ではできることが限られていますが、仲間が増えればやれることは無限大です。世代を超えて持続可能なサイエンスを実現したいですね**(福田氏)