オリジナルコンテンツの開放と海外展開…コスメメディア「FAVOR」運営のパペルック小澤氏が語る、コンテンツ回帰のウェブメディア新時代

「FAVOR」は、自社で権利を保有するコスメ写真約1万5,000枚を無償提供するAPIを開始し、記事もRSSの形で無償配信することを発表したばかりだ。今回、Pedia Newsでは、「FAVOR」を運営する、パペルック株式会社 代表取締役CEO 小澤一郎氏にインタビューを実施し、API・RSSの無償提供開始の経緯、そして今後の展望などを伺った。

ウェブメディアの新時代がはじまろうとしているーーーここ数年、アグリゲーションメディア、キュレーションメディア、バイラルメディアなどが多数登場し、一部では市場が寡占化してきているとも言われる中、ウェブメディアの次なる一手が注目される。ウェブメディアならではのスピード感を活かしながらも、トラフィックを追うだけでなく、スマートフォンに最適化された形で、いかに、一次情報を発信し、コンテンツの品質を向上させ、ユーザーのエンゲージメントを育て、ブランド化していくか。いま、ウェブメディアの「コンテンツ回帰」がはじまっている。

最近、注目を浴びるのが「オリジナルコンテンツメディア」だ。料理レシピ動画「KURASHIRU」、女性向け動画ファッションマガジン「C CHANNEL」、女性向けライフスタイル動画「KALOS」、Beauty系動画メディア「MimiTV」など、コンテンツ制作に力を入れるものが人気を集めている。

その中でも、オリジナルコンテンツメディアの潮流を牽引する存在として、ひときわ存在価値を増しているのが、コスメメディア「FAVOR」。「FAVOR」は、今月8日(12月8日)、自社で権利を保有するコスメ写真約1万5,000枚を無償提供するAPIを開始し、記事もRSSの形で無償配信することを発表したばかりだ。

* 関連記事:**コスメメディア「FAVOR」、自社カメラマンが撮影したコスメ写真1.5万枚とライターが執筆した記事の無償提供を開始**

今回、Pedia Newsでは、「FAVOR」を運営する、パペルック株式会社 代表取締役CEO 小澤一郎氏にインタビューを実施し、API・RSSの無償提供開始の経緯、そして今後の展望などを伺った。

パペルックは、これまでに、Open Network Lab、三菱UFJキャピタル、DGインキュベーション、ジャフコ、イーストベンチャーズより資金調達を実施している。

パペルックといえば、会社名でもある、画像切り抜きやスタンプで簡単コラージュ作成できる写真編集アプリ「papelook(パペルック)」やハローキティのコラージュアプリ「ハローキティコラージュ」のイメージが強い方も多いだろう。現在、同社が運営するアプリの総ダウンロード数は全世界で2,000万以上に及ぶが、そのほとんどが「papelook」と「ハローキティコラージュ」によるものだという。

写真編集アプリ事業が順調に軌道に乗るなか、小澤氏が率いるパペルックでは、「papelook」の女性ユーザーの集客力を活かし、次なる事業の柱として「女性向けメディア事業」を模索していたという。

**僕らは、会社名でもあるpapelookのイメージが強い方も多いと思いますが、実は、2012年より、女性向けのメディア事業や電子雑誌事業も手がけていました。**

**当時のメディア事業では、antennaのような女性向けキュレーションマガジンで、読めば読むほどパーソナライズ化されるニュースアプリを運営していました。しかしpapelookが非常に勢いよく伸びており、資金も人材もリソースが少ない状況だったので、papelookに集中することにしました。いま振り返れば、時代の流れにも乗っていましたし、その後キュレーションメディアの流れが来たので、ある程度のところまで伸ばせたと思います。**

**キュレーションマガジンを運営してみて、「スマートフォン時代はコンテンツの力が強いのではないか」「papelookユーザーには、雑誌のようなリッチなコンテンツを見せた方がハマるのではないか」と思いました。**

**そこで、僕らはツールとして雑誌をスマートフォンに最適化するサービスを提供し、コンテンツを出版社さんの女性向けファッション雑誌をいただくという形で、電子雑誌事業をはじめました。実際に運営してみると、雑誌は月に1回出版されるもので、ベンチャーのスピード感に対してコンテンツのスピード感が追いつかなかったですし、さらに、papelookユーザーには、雑誌のようなリッチコンテンツは作り込まれすぎて非現実感が強くて、当初の予想に反してハマらなくてクローズしました。**

**「リッチにコンテンツを作ったからといって良いわけではない。インターネットサービスならではの更新頻度も大切。それなら自分たちで試しに作ってみよう」と思い、2014年末頃から2015年3月のリリースに向けて動きはじめました。女性向けキュレーションメディアが勢いに乗っていましたが、同じものをやるのではなくて、「これからはオリジナルコンテンツの時代が必ず来る。コンテンツを作れるところが勝ち残る」と信じていました。**(パペルック 代表取締役CEO 小澤一郎氏)

当時を振り返る小澤氏には、キュレーションメディア全盛期に、あえてブランド化の難易度が高い、オリジナルコンテンツメディアに挑戦し続けてきた、その苦悩とそれを支えてきた確固たる強い信念がにじみ出ているように思えた。

**papelookで女性ユーザーがすでにいたので、スマートフォンユーザーにマッチした「女性向けオリジナルコンテンツメディア」を検討していました。ただ、女性向けと言っても、ファッション、インテリア、恋愛など様々なものがあります。僕らは、その中でも一番自分たちが作りやすかった「コスメ」にフォーカスしました。僕の姉がよく海外のYouTuberやブロガーのメイクを参考にしていたのもあって「コスメ動画メディア」への参入を考えていました。**

**実際に動画を撮影してみると、日本のモデルさんは台本通り動いてくれるのですが、海外のYouTuberのように商品の説明以上に会話を楽しんでもらうのが難しくて、満足のいくようなものが作れませんでした。そこで、一旦、動画メディアはペンディングして、ブログ形式で、コスメに特化したオリジナルコンテンツメディアをはじめました。**

**「オリジナルコンテンツメディアとコスメにフォーカスする」「綺麗に写真を撮影して記事を書いてアップする」僕がUI/UXなどサービス設計・開発をして、姉がコンテンツを作っていました。当初は僕と姉とカメラマンの3人でしたね。それがFAVORのはじまりです。**(パペルック 代表取締役CEO 小澤一郎氏)

「FAVOR」は、コスメの実際の使用レポートを、綺麗な写真を使って発信する新しい形のオリジナルコスメメディア。2015年3月の開始以降、すべてのコンテンツを自社で撮影・執筆することで、ライター、編集部が実際に購入して使用した化粧品の感想が掲載されている。2015年夏にはスマートフォンアプリをリリースし、現在iOS/Androidで配信しているほか、今秋より、記事コンテンツで培ってきたノウハウを活かして動画コンテンツにも注力している。なお、日本語、中国語(簡体字・繁体字)、タイ語で展開中。

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また「FAVOR」では、メディアポリシーを重視した運営を行っており、「通常記事」「ご提供品記事」「プレス記事」「まとめ記事」「広告タイアップ記事」の5つにカテゴライズされ、記事のタイプ毎に異なるクレジット表記が明確になされている。これは、**「全ての記事がデータベース化されている」**(小澤氏)からこそ成し遂げられるものだ。

**僕らは、ユーザーに誤解を与えないように、クレジットを非常に重視しています。ブランド企業さんとのタイアップ記事では、もちろん薬事法のチェックなどをした上で、記事を公開しています。雑誌の場合は、通常、記事を作るだけでもブランド企業さんの許可を得てから作成していますが、ウェブメディアの場合は、そのスピード感だと、コンテンツが追いつきません。だからこそ、ウェブメディアできる範囲内で、ユーザーにもブランド企業さんにも敬意をはらって運営しています。**

**ブランド様の多くは、すでにテレビCMや交通広告などのマス広告やウェブメディアでの広告も実施していますが、それでも購入に至っていない層にリーチしたいという需要で、FAVORでの広告を出稿なさっています。今までにエスティ ローダー様等の外資系ブランド様から資生堂様やKOSE様等の国内大手ブランド様にご出稿いただきました。FAVORの広告は、新作やリリースなどで商品を認知して興味を持つ方々に対し、もう一歩踏み出して商品を理解させる役割を担っています。そのため、僕らは、総接触時間(滞在時間 x PV)を重要な指標として捉えています。FAVORでは、通常記事が全体の90%を占めていますが、広告タイアップ記事が記事数は少ないにも関わらず非常によく読まれているという不思議な現象が起きています。ユーザーの滞在時間が、通常記事は1分程度なのですが、広告タイアップ記事はその2倍以上になります。ブランド企業さんからもよく「こんなにコンテンツを作り込んでくれるんだ」と言われるのですが、それはやはり僕らがコンテンツの質にこだわっているからだと思います。また、ブランド企業さんとやりとりしてきた中で、ブランド企業さんに対する理解が深まってきたことも大きいです。**(パペルック 代表取締役CEO 小澤一郎氏)

コンテンツの質にこだわり、ユーザーにとって本当に価値あるものを追求してきた「FAVOR」。その結果、UU60万人を超え、半年で月間PVが2倍に増加するなど、コスメメディアとしては最速で成長を遂げている。

「FAVOR」の利用状況を見ると、「コスメ好きな女性」の心をつかみ、20代後半の社会人を中心に10〜20代各世代の女性が愛用している。特に、アプリに限って見ると、毎日利用するユーザーは全体の40%を占め、滞在時間が約1分30秒と非常に高い。通勤・通学時などで知り得た情報情報をもとに、自宅に帰ってじっくり商品を知りたいときに「FAVOR」を利用することが多いようだ。

その「FAVOR」が、自社で権利を保有するコスメ写真約1万5,000枚を無償提供するAPIを開始し、記事もRSSの形で無償配信することを発表した。これにより、公式連携に限り、これまで、日本語、中国語、タイ語で配信してきた数千に及ぶ写真・記事を無償で利用できるようになった。

なぜ、今、このタイミングで、手間ひまをかけて作ってきたオリジナルコンテンツを無償提供することを決断したのだろうか。

**僕らは、ライターや編集部が購入した化粧品を実際に使って、その感想を紹介しています。キュレーションメディアなどで引用されるケースも多く、定期的にパトロールをしていました。「こだわって作り込んでいるのに、情報が曲げられた形で読者の皆さんに届くのを見過ごせなかった」**

**もちろん、ベンチャー企業でKPIを追い求めていくことも大切ですが、僕らは自分たちの得意なクリエイティブ力をもっとより多くの方々に知ってもらいたいと思っています。そう考えた時に、ブランディングも兼ねて無償提供を開始することに決めました。「遮断ではなくて、むしろ使ってもらいたい」「コンテンツを作り続けるのは大変。すでにある情報なら、わざわざお金をかけなくてもFAVORのコンテンツを使ってもらいたい」**(パペルック 代表取締役CEO 小澤一郎氏)

ユーザーにとって価値のある情報を自分たちの手で正しく伝えたいーーー小澤氏の確固たる信念と「FAVOR」にかける強い想いが、今回のAPI・RSSによる無償提供に至らせたのだろう。

最後に、今後の展望について、小澤氏は次のように語ってくれた。

**今後は、オリジナルコンテンツの開放と海外展開に力を入れていきたいと思います。先日の発表後、たくさんの問い合わせをいただいていますが、今後は、外部とのアライアンスも強化していきたいと思います。すでに、LINEさんとは、RSS連携しており、ライブドアニュースのPeachyにFAVORのコンテンツが掲載されています。**

**また、コスメメディアとして、記事でも動画でも「アジアNo.1のコスメメディア」を目指していきたいと思います。現在、FAVORは、日本語、中国語(簡体字・繁体字)、タイ語で提供しています。昨年末頃より、台湾やタイでの利用者が増加しており、今後はアジアでさらに伸ばし、「アジアNo.1のコスメメディア」として成長していきたいと思います。日本向けに作成した記事や動画をそのまま持っていくのではなく、現地に合わせたローカライズをしていきたいと考えています。一部中国語やタイ語だけ提供するコンテンツも試験的に作成していますが、やはり日本向けのものをそのまま配信するのと比べると、ユーザーの反応が大きく違うことを実感しています。**

**さらに、FAVORでは、商品と記事がデータベースで紐づいているので、そのデータベースを活用していきたいと思います。「データベースの情報をどんどん増やし、データベースで使える情報の幅を増やすことで、商品選びに役立ちたい」ユーザーに合わせてリコメンドしたりパーソナライズ化するなどの機能を充実させていきたいと考えています。**

**そして、ブランドさんと記事タイアップだけではなく、プロモーション全体のお手伝いをしていきたいと考えています。今月、表参道駅で実施したデジタルサイネージを使ったFAVORの交通広告はその一環です。僕らとしては、メディアとデジタルエージェンシーの両軸に立って、アナログからウェブ・アプリまでブランドをトータルサポートしていきたいと考えています。僕らの強みは、元化粧品ブランド企業出身者など、化粧品が好きでブランドのこともマーケットのことも詳しいメンバーが多いことです。**

**今、ユーザーさんにも、ラグジュアリー系からプチプラのブランド様にも、僕らFAVORのコンテンツの良さ、質の高さが評価され始めています。「どれだけいいコンテンツを作れるか」僕らのクリエイティブ力を活かしてとことん追い求めて突き抜けていきたいと思います。**(パペルック 代表取締役CEO 小澤一郎氏)

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コスメメディア「FAVOR」

パペルック株式会社