【福岡ベンチャー特集】QBキャピタル・坂本剛代表、VCとして「九州のベンチャーエコシステム創出」の舞台に立つ覚悟 「アカデミアとビジネスの橋渡し」のためのリスクマネー

アカデミアの世界とビジネスの世界を、関門橋のように繋ぐベンチャーキャピタルとして九州に立つ「QBキャピタル」。その代表パートナーを務めるのは、坂本剛氏だ。坂本氏に、地元・九州のベンチャーエコシステム創生に腹を据える覚悟を伺った。

アカデミアの世界とビジネスの世界を、関門橋のように繋ぐベンチャーキャピタルとして九州に立つ「QBキャピタル」。その代表パートナーを務めるのは、坂本剛氏だ。坂本氏に、地元・九州のベンチャーエコシステム創生に腹を据える覚悟を伺った。

同氏は、九州大学工学部生産機械工学科出身で、九大の知的財産本部でベンチャー支援、九大TLOである産学連携機構九州の代表取締役を歴任し、大学発ベンチャー支援ファンドQBキャピタルを立ち上げた。産学連携を、大学・TLO・VCという3つの側面から推進してきた姿を見ると、世界でも稀有な存在だろう。

もともと、九大の知的財産本部で6年間、九大TLOで4年間、合わせて10年間、大学研究室に眠る技術を事業化するために支援していた。その間に事業化の際のリスクマネー不足に気づかされ、さらに経営人材の確保など、アカデミアとビジネスのあいだで避けられない壁にぶつかった。

大学発ベンチャーは、研究者だけが起業するわけではない。技術シーズと共にマネジメントを行う経営人材や事業人材を集めて一つのチームを組成する必要がある。

九州は、銀行、鉄道、電力など金融やエネルギーインフラなどの中核産業が地域経済を牽引してきたこともあり、起業を目指す人材となると、まだ首都圏にはかなわない部分もある。

実際、九大の学生は、約7割が九州の高校から入学する一方、理工系専攻の学生は卒業後7〜8割が九州から離れてしまう現実がある。その中で、さらに起業を目指す人材となると、限られてしまうのが現状だ。

そこで九州に限らず、各所から人材を集める必要がある。「九州へのU・I・Jターンによる優秀な人材と、九州で根を生やす技術シーズと研究者をお見合いすることができれば、九州にベンチャーエコシステムが生まれるはず」そうした思いから、九州地域の大学発ベンチャーを支援するファンドQBキャピタルを、2015年4月に立ち上げた。

そこには、

**九州に帰って働きたいと思っている人は多いのですが、首都圏の大手企業と同じポテンシャルやスケール感で働けるジョブマーケットが九州にはないんです。**

**けど、首都圏とは違う、地方・九州だからこそチャレンジできるものが、大学の技術を活用した大学発ベンチャーという形で実現できるのであれば、やってみようという人はいると思うんです。ただ、それには起業家とともにリスクをとって資金を供給するプレーヤーが必要なんです。**

**これまで九州地域の大学発ベンチャー支援を手がけてきた身として、VCという形で腹をくくる。数年後には、九州地域の大学の知と技術を活用したベンチャーが生まれ、数百億円から数千億円の企業価値になれば、九州に大学発ベンチャーという一つの新しい産業が生まれたと言えます。この土地の技術を使って立ち上げた会社が、従業員やその家族を普通に養えるようになれば、九州でチャレンジしたいという人はもっと増えると思うんです。九州でベンチャーエコシステムをつくる覚悟を決めたということは、そういうことだと思うんです。**

ときっぱり語る。

その一方で、

**九州地域の大学の研究者の中には、ベンチャーに関心が高い方はいるものの、彼らはそもそも研究をやりたくて研究者になった方ばかりなのです。そのため、事業化に向けた補助金・助成金を獲得したとしても、それを具現化する人材がいないと、事業化できずに終わってしまうケースがほとんどです。だからこそ、アカデミアとビジネスとの間に橋を渡すためにリスクマネーを供給し、ハンズオン支援するのが我々の役割です**

と冷静に周囲を分析しながら答える。

QBキャピタルは、九州地域に拠点をおき、大学の技術シーズおよびシード・アーリー段階の大学発ベンチャーを一気通貫でハンズオン支援する目的で設立されたベンチャーキャピタル。

1号のファンド規模は、約31億円。1社あたり、数千万円から3億円程度の投資を行うと共に、事業化プロジェクトの段階から数百万円程度の少額投資を行うプレ投資(ギャップファンド機能)も行う。

主な投資先には、シリーズAで約15億円を調達したのが記憶に新しい、有機EL発光材料の九大発ベンチャー企業「Kyulux」や、現役の九大生が起業した風力発電ベンチャー企業「日本風洞製作所」などがある。

* 参考記事:**九州大学発の有機ELスタートアップKyulux、サムスン・LGなどからシリーズAで約14億8,000万円調達**

心の中に常に熱く燃えるものを持ちながらも、VCとしての冷静さを失わない。そして、九州にベンチャーエコシステムを創出するという使命を背負い、九州の土地に根を生やして取り組む。だからこそ、坂本氏率いるQBキャピタルは異彩を放ち続けるのだろう。