【福岡ベンチャー特集】世界初、小型SAR衛星開発宇宙ベンチャー「QPS研究所」が「データ」でAIの未来を思い描く

近年、低コストで開発できる超小型衛星の利用が増える中、九州大学名誉教授と三菱重工のロケット開発者により創業されたベンチャー企業、QPS研究所。今年、創業12年を迎える同社は、70歳を超えるベテラン技術者と若手の異色な「宇宙工学の梁山泊」である。

近年、低コストで開発できる超小型衛星の利用が増える中、九州大学名誉教授と三菱重工のロケット開発者により創業されたベンチャー企業、QPS研究所。今年、創業12年を迎える同社は、70歳を超えるベテラン技術者と若手の異色な「宇宙工学の梁山泊」である。

代表取締役社長の大西俊輔氏は、子供の頃から宇宙に関心を抱き、九州大学大学院工学府航空宇宙工学の研究室で、人工衛星の研究に没頭した。

そのとき出会ったのが、同社創設者で九州大学名誉教授の八坂哲雄氏だった。八坂教授に認められ、2008年より小型人工衛星QSAT-EOSのプロジェクトリーダーに任命、2014年には九州地域の大学との協力体制のもと打ち上げに成功した。

こうした中2013年、大学の研究室で一緒に仕事をしたQPS研究所へ入社を決める。その半年後には社長に就任した。「地元、九州に宇宙技術を根付かせたい。そのためにはこれまで築いてきたものを、若い世代に継承したい」八坂教授の想いを、愛弟子が引き継ぐ形となった。

宇宙に浮かぶ、観測衛星からの映像をリアルタイムでみる、というとSF映画の一幕にも登場しそうだが、自然災害や人為災害など緊急事態の発生した時には、社会インフラとしての役割が求められる。

衛星のほとんどは、光学衛星と言われるカメラを使用して撮影するものである。夜間や悪天候では撮影できない上に、これまで主流の大型衛星では一機数百億円かかるため、常に衛星が上空を飛んでいる状態にするためには何十機も打ち上げなければならず、数千億円から一兆円以上の莫大な費用がかかる。

そこでQPS研究所は、夜間、天候不良時も撮影可能な100kg以下の「小型レーダー(SAR)衛星」を世界で初めて開発した。アンテナとレーダー送受信機からなる100kg級衛星用SARシステムの第一号を2016年12月に納入した。

これまでSAR衛星といえば、大きなアンテナと多量の電力を消費するため、政府・防衛用途でさえも100kg以下のものは世界中で存在しないと言われており、民間で商用利用されるものは1~2トンを超える重量を持つものが主流だった。

こうした中、QPS研究所は収納性が高く、軽量で大型のアンテナを開発することで電力とアンテナのハードルを乗り越え、1mの高分解能でありながら、従来の20分の1の質量の100kgへの軽量化、コストも従来の約100分の1を実現できるなど、常識を超えるイノベーションを実現した。

同社の小型SAR衛星は、夜間や悪天候時でも、必要時に必要な観測地点を観測できる。そのため、36機の衛星で世界中のほぼどこでも約10分以内に撮影し、特定の地域を10分に1回定点観測できる。つまり、継続性のある画像を、データとして収集できるようになり、土地や建物など”静止体”だけでなく、人や交通機関などの”移動体”をデータとして蓄積できるようになる。

そうすると、思い描く未来の像が見えてくる。気候データ、市場・経済データと組み合わせることで、例えば交通データから地域や国の経済活動の状況を予測したり、自動運転のナビゲーションを支援するかもしれない。小型SAR衛星が生み出す、価値のあるリアルな「データ」にこそ「AI」を活用した思い描く未来が見える。