JR九州がIPO。時価総額4,900億円超えでLINEに次ぐ大型の新規上場ヘ

九州旅客鉄道株式会社(JR九州)は、本日(10月25日)、東京証券取引所市場第一部へ新規上場を果たした。証券コードは9142。初値に基づく時価総額は4,960億円。これは、今年7月に上場したLINEに次ぐ、大型上場となった。本日の新規上場に伴い、JR九州は、2017年3月期第1四半期の連結決算を発表した。

JR九州は、日本国有鉄道(国鉄)を抜本的に変革し、九州における鉄道事業の再生を図ることを目的として、1987年に誕生。JRグループの上場は、東日本、西日本、東海に次いで4社目となる。北海道旅客鉄道、四国旅客鉄道を含む「三島会社」の中では、初めての上場となり、投資家の関心を高めていた。

9時36分に、売り出した公開価格2,600円を500円(19%)上回る3,100円の初値をつけ、公開開始後1分で3,120円まで上昇した。初値時点の売買高は2,786万9,100株。初値に基づく時価総額は4,960億円。これは、今年7月に上場したLINEに次ぐ、大型上場となった。

本日の新規上場に伴い、JR九州は、2017年3月期第1四半期の連結決算を発表し、営業収益794億5,600万円、営業利益123億6,400万円、経常利益129億8,300万円、最終利益71億6,400万円となった。

セグメント別の業績は?

以下では、セグメント別に業績を見る。JR九州のセグメントは、①運輸サービスグループ、②建設グループ、③駅ビル・不動産グループ、④流通・外食グループ、⑤その他グループ(ホテル業、シニア事業)に分かれている。

運輸サービスグループは、営業利益72億1,300万円の黒字

①の「運輸サービスグループ」から見よう。まず、鉄道事業では、JR九州グループ全体の安全風土をつくるべく「使命を果たす!~一人ひとりの力を確かなものに~」をスローガンとした、安全創造運動を展開。また、異常時対応能力の向上を図るため、関門トンネル総合防災訓練等を実施。

安全投資では、老朽設備の取替を着実に実施するとともに、防災対策として豪雨対策や構造物の耐震補強、新幹線における脱線防止ガードの設置等に引き続き取り組んだ。サービスでは、基本となる「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」を徹底し顧客を迎えるとともに、顧客の身になって考え行動する取り組みを進めてきた。

営業面では、5周年を迎えた九州新幹線を中心とした鉄道利用促進を図るべく、「九州新幹線2枚きっぷ」や新幹線定期券「新幹線エクセルパス」等の各種商品の販売促進に努めるとともに「KAGOSHIMA by ROLA」キャンペーンを展開。さらに「JR九州インターネット列車予約サービス」は、インターネット限定商品の拡充のほか、乗換検索サイトとの連携等による利便性の向上に努めた。地域の元気をつくる取り組みでもある「JR九州ウォーキング」は、地元民と連携した魅力あるコース設定に努め、多くの顧客に利用された。

一方、「平成28年熊本地震」以降は厳しい状況にあるが、クルーズトレイン「ななつ星in九州」やD&S(デザイン&ストーリー)列車をはじめ、九州の自然・食・温泉・歴史文化・沿線地域の方々によるおもてなし等、九州ブランドの認知度向上と九州への誘客促進に努めたほか、「元気に!九州」をテーマとして、ラッピングトレインの運行や観光PRイベントの開催、「元気に!九州パス」の発売等観光需要の回復に取り組んだ。

海外からの利用者向けの主力商品「JR九州レールパス」は、韓国、台湾、香港、中国、タイを中心としたそれぞれの国及び地域に適した情報発信や販売促進に努めた。

輸送面では、列車の増発による輸送力の増強等、きめ細かな輸送施策を展開し、各線区の需要動向に応じた効率的な輸送体系の構築に努めるとともに、九州新幹線を中心とした輸送ネットワークの更なる充実を図ることで利用促進を進めた。

次に旅行業では、強みである九州を中心とした鉄道利用国内旅行商品をはじめ、高速船ビートルを利用した商品やジェイティービー社とのアライアンス関係を生かした海外旅行商品を展開し、販売促進を進めた。またホームページのスマートフォン対応を進め、旅行申込における利便性の向上を測った。

次に船舶事業では、福岡~釜山航路及び対馬~釜山航路において、韓国の未来高速社との共同運航契約の終了に伴い、2016年4月より新しいダイヤでの運航を開始するとともに、質の高い輸送サービスを提供した。

次にバス事業では、2016年3月にに高速バス路線「福岡・小倉~松江・出雲間」の運行に参入したほか、九州新幹線と接続する高速バス「B&Sみやざき」の利用促進や貸切バスの営業強化に取り組んだ。

これにより、営業収益388億100万円、営業利益72億1,300万円、EBITDA77億5,500万円となった。

建設グループは、営業損失4億5,700万円の赤字

続いて、②の「建設グループ」を見よう。建設業は、鉄道高架化工事、新幹線関連工事等を受注するとともに、工事を着実に遂行したが、期初の四半期であるため、工事が完成した案件は多くなかったという。結果、営業収益92億4,000万円、営業損失4億4,700万円の赤字、EBITDA2億6,000万円の赤字となった。

駅ビル・不動産グループは、営業利益48億2,500万円の黒字

次に、③の「駅ビル・不動産グループ」を見よう。不動産販売業では「MJR赤坂タワー」や「MJR九大学研都市レジデンス」等の販売を進め、不動産賃貸業では2016年4月にオフィスビル「JRJP博多ビル」を開業し「JR博多シティ」等の周辺施設とあわせ博多駅周辺のさらなるにぎわいづくりに取り組んだ。

また今春、「アミュプラザ長崎」「アミュプラザ小倉」「アミュプラザ鹿児島」のリニューアルを実施したほか、各駅ビルにおいて積極的なイベント展開を行い、収益確保を進めた。

これより、営業収益114億7,600万円、営業利益48億2,500万円、EBITDA69億5,600万円で着地した。

流通・外食グループでは、6次元の取り組みを拡大

次に、④の「流通・外食グループ」を見よう。小売業では、コンビニエンスストアやドラッグストア等の新規出店を進め、飲食業では、2016年4月に開業した博多駅前商業施設にパンケーキ専門店を出店する等収益拡大に取り組んだ。

また、農業は、九州産の旬の野菜を販売する「八百屋の九ちゃん」の2号店・3号店を出店したほか、できたてのお菓子とたまごを販売する専門店「うちのたまご」をオープンする等、6次化の取り組みを拡大した。

これより、営業収益238億2,600万円、営業利益7億6,000万円、EBITDA11億6,900万円だった。

ホテル業は営業活動促進、シニア事業では住宅型有料老人ホームを新設

⑤の「その他グループ」を見よう。これには、主にホテル業とシニア事業が含まれる。ホテル業では、顧客に選ばれるホテルを目指してサービス向上に努め営業活動を行い、シニア事業では、2016年5月に住宅型有料老人ホーム「SJR大分」を開設した。

その結果、営業収益139億5,800万円、営業利益1億4,400万円、EBITDA3億5,200万円となった。

今後の業績予想は?

2017年通期の営業利益は、前期比147.9%増の見込み

2017年3月期の連結業績予想は、営業収益3,788億円(前期比0.2%増)、営業利益518億円(前期比147.9%増)、EBITDA670億円(前期比3.2%減)、経常利益は535億円(前期比67.0%増)、最終利益は382億円の見込み。

JR九州によれば、経常利益については、営業外損益で2016年3月に実施した経営安定基金の取崩しに伴う経営安定基金運用収益(2016年3月期実績111億4,300万円)の減、最終利益については、2017年3月期第1四半期累計期間中に実施した金銭の信託の売却に係る特別利益(30億1,400万円)を見込むほか、「平成28年熊本地震」により被害を受けた鉄道設備及び車両の復旧等に要する費用等に係る特別損失(85億円)等を見込んでいるという。

2018年度には、営業収益4,000億円へ

また、2018年度の連結経営数値目標には、営業収益4,000億円、EBITDA780億円を掲げる。なお、設備投資額は2016年〜2018年度の総額で1,900億円の見込み。

「JR九州グループ中期経営計画2016-2018」を公開

JR九州では、「JR九州グループ中期経営計画2016-2018」のもと、「やさしくて力持ちの“総合的なまちづくり企業グループ”」を目指している。

「中期計画2016-2018」の基本方針には、①すべての事業の根幹である強靭な鉄道づくり、②九州における積極的なまちづくり、③新たな事業と九州外エリアへの挑戦を掲げている。

①の「すべての事業の根幹である強靭な鉄道づくり」では、安全・安心・快適な鉄道基盤の強化、ブランドや連携の強化による収益力の増進、技術革新と効率的な事業運営の追求を進める。

②の「九州における積極的なまちづくり」では、福岡都市圏におけるまちづくりの推進、九州の拠点都市におけるまちづくりの推進、さまざまな事業による九州のにぎわいづくりを進める。

③の「新たな事業と九州外エリアへの挑戦」では、さらなる事業領域の拡大を目指して、M&Aやアライアンスなどを含めた新規事業に積極的に挑戦する。

これらにより、JR九州では、すべての事業において安全を基本に、より一層のサービス向上に努め、各事業において積極的な事業展開による収益の拡大を図るとともに、より効率的な業務運営と徹底的なコスト削減を推進する。

なお、JR九州は、「平成28年熊本地震」からの早期復旧に向け、安全を最優先にグループ一丸となって取り組むとともに、被災地域の復旧に向けた連携を進めていきたい考えだ。