【大阪ベンチャー特集】関西大手私鉄、阪急電鉄が「大阪・梅田」でベンチャー企業が生き抜くための環境をつくる

私鉄王国の関西において交通インフラを支える、阪急電鉄。その阪急は、関西発のベンチャー企業の育成を精力的な姿勢をみせている。鉄道や不動産のような事業をもつ阪急が、なぜいまベンチャー支援に取り組むのか。その理由を、阪急電鉄の不動産事業本部・都市マネジメント事業部梅田事業創造グループの吉見紫彩氏に聞いた。


私鉄王国の関西において交通インフラを支える、阪急電鉄。その阪急は、関西発のベンチャー企業の育成を精力的な姿勢をみせている。鉄道や不動産のような事業をもつ阪急が、なぜいまベンチャー支援に取り組むのか。その理由を、阪急電鉄の不動産事業本部・都市マネジメント事業部梅田事業創造グループの吉見紫彩氏に聞いた。

近年、大手企業や金融機関におけるベンチャー企業支援の動きが活発化している。政府も、アベノミクスの第三の矢、日本再興計画の中でも、ベンチャーの育成は非常に重要視し、さらに、ベンチャー・チャレンジ2020に基づき、ダイナミックなイノベーションを起こすベンチャー企業を連続的に生み出す社会の実現に向けて、ベンチャーエコシステムの構築を進めている。

一方、グローバルが進む中、国単位ではなく、都市単位において、国際競争が激化しつつある。日本においても、空港や鉄道など交通インフラへの投資などを通じた、国際競争力の向上が求められている。英国運輸省では、時間短縮効果などの直接的なメリットに加て、都市部での交通投資による雇用の集積効果など間接的なメリットを “Wider Impacts” として計測する取り組みが進んでいる。実際、ロンドンを東西に横断する都市鉄道新路線(クロスレール計画)のWider Impactsは約1兆円であり、これまでのメリットの半分をこの計画だけでまかなえるとも言われている。

こうした背景のもと、関西では、政府を中心に、欧米並みの開業率10%を目標に、ベンチャー企業支援の動きが増加傾向にある。また、地方自治体や民間事業者なども、ベンチャーの発掘・育成に向けたアクセラレーションプログラム、ピッチコンテスト、コワーキングスペースなどの取り組みを実施しており、関西の地場を活かしたベンチャーコミュニティの形成を進めている。

中でも、コワーキングスペースの運営、ベンチャーファンドの設立を進め、投資も含めたベンチャー企業支援に積極的に取り組んでいるのが、阪急阪神ホールディングス傘下で関西を代表する鉄道会社、阪急電鉄である。

これには、大阪最後の一等地とも言われる、大阪駅北地区北梅田(うめきた)における先行開発区域プロジェクトが関係する。当時、駅直結の商業施設として国内最大級のグランフロント大阪の登場に伴い、オフィス床の増床が明らかであった。2010年3月に着工したグランフロント大阪は、商業施設のほか、オフィスやホテル、マンションなど高さ154〜180米の超高層ビル4棟で構成されており、2013年4月に公開した。その一方で、うめきたの地価は、先行開発区域プロジェクトが発表された2010年以降、急激な上昇傾向が続いた。更に、梅田地区では阪神百貨店ビルの建替計画やうめきた二期地区の開発計画など、今後も数年毎に新規ビル開発が予定されている。

だれが新しいオフィス床を利用するか、答えはITベンチャー企業しかないーーーそれが阪急の出した答えだった。

「起業家の夢は、大阪の夢。大阪から世界を変える新ビジネスの創造へ。」このスローガンのもと、阪急は、GVH大阪を運営するサンブリッジグローバルベンチャーズとタッグを組み、大阪から世界へシームレスにつながるグローバルネットワークを築くことで、大阪発ITベンチャー企業の発掘、育成を加速させる環境づくりを進めてきた。

阪急電鉄といえば、宝塚線、神戸線、京都戦の主要三路線の始発駅である梅田駅周辺に、商業ビル、オフィスビルなど多くの不動産を所有する。そのひとつである、梅田駅から徒歩2分の好立地な場所に構える、阪急ファイブアネックスビルの5階と10階、11階に、24時間利用可能な会員制オフィスGVH#5がある。

通常の梅田地区のオフィス賃貸条件では、ITベンチャー企業が入居したくても入居できない現状がありました。ITベンチャー企業が仕事できる環境を整備し、大阪にベンチャーコミュニティをつくりたい。他方、グループ内の公益財団法人である都市活力研究所が先行し、2010年にベンチャー向けコワーキングオフィスGVH大阪をサンブリッジグローバルベンチャーズとともに始動しました。我々もこの活動に参加、連携することによって様々なノウハウや知見を習得することができました。その後、GVH大阪のオープンから4年が経ったタイミングで、少しずつGVH大阪を通じて活躍するベンチャー企業の事例が増え、阪急本体からも評価を得ることができました。そして、2014年より、阪急としてベンチャー企業支援を強化していくために、GVH#5を開設しました。(吉見氏)

GVH#5はベンチャー企業支援のための会員制コワーキングスペース。ベンチャー企業を立ち上げたばかりの起業家や準備中の起業志望者に対して、格安の賃料でオフィススペースを提供、さらに、多様な分野の専門家によるメンターやサポーター体制を整えることで、ベンチャーを支えると共に、ベンチャーコミュニティの形成、育成を推進している。

現在、GVH#5のコミュニティには、ベンチャー企業、ベンチャーキャピタル、弁護士など20〜50代まで、卒業生を含めると総勢150名が所属する。特に、ベンチャー企業は、20代も多いが、30〜40代が最多であり、飲食、観光、教育分野を手がけるものが多い。

また、2015年より、創業間もないシードステージのベンチャー企業に事業資金を提供する、梅田スタートアップファンドをサンブリッジグループと共に組成した。

GVH#5を通じて、ベンチャー企業のために、場所を用意するだけでなく、彼らの事業成長に伴い、資金提供も含めた支援が必要であることを実感しました。大阪には、東京のように創業間もないベンチャー企業へ資金提供する投資家の数はまだまだ少なく、東京に出てしまうベンチャー企業も多いです。彼らにとって、首都圏に出ることが事業を伸ばすメリットとして働くと考え、戦略的に東京へ出る方も多いですが、中には大阪に残りたいけどベンチャー企業として活躍できる環境が十分でないから東京へ出る方もいます。だからこそ、私たち阪急としては、大阪でベンチャーコミュニティを形成することで、ベンチャー企業が大阪で生きていくための場所を作っていきます。阪急には、非常に公益性の高い電鉄事業を中心に、商業施設や不動産など様々な事業があります。阪急グループとして、ベンチャー企業を支援することは、事業シナジー効果も期待できると考えています。(吉見氏)

大阪・梅田から世界を変えるスタートアップを応援する会員制オフィス GVH#5