今回、Pedia Newsでは、8月4日に公開された決算短信をベースに、カカクコムの2017年3月期第1四半期連結決算(2016年4月〜6月)を紹介する。
国内で2017年3月期の企業の第1四半期(2016年4月~6月期)の決算発表が本格化する一方で、海外でも2017年12月期の企業の第2四半期(2016年4月~6月期)の決算発表が本格化している。(参考記事:決算シーズン到来!注目IT・ゲーム関連株の決算スケジュールまとめ(2016年7月末))
### 生活者の購買行動にもっとも近いインターネットサービスを生み出す「カカクコム」
その中でも注目企業の一つであるのが、株式会社カカクコム。
カカクコムは、1997年4月に創業、創業から6年目の2003年に東証マザーズに上場。「ユーザー本位の価値あるサービスを創出しつづける」をミッションとし、事業者と生活者をつなぐ情報プラットフォームを構築し、生活者の購買行動にもっとも近いインターネットサービスを提供。
カカクコムでは、現在、創業当時よりサービスを提供している購買支援サイト『価格.com』をはじめ、ランキングとクチコミのグルメサイト『食ベログ』など幅広いジャンルで15以上のサービスを展開中。
### カカクコム 2017年3月期第1四半期連結決算
今回、Pedia Newsでは、8月4日に公開された決算短信をベースに、カカクコムの2017年3月期第1四半期連結決算(2016年4月〜6月)を紹介する。
### 増収増益!売上高104億円・営業利益48億円
売上高は前年同期比12.2%増の104億6,400万円、営業利益は同比13.5%増の48億5,400万円、経常利益は同比13.0%増の48億5,300万円、最終利益は同比18.4%増の34億7,900万円。
### 『価格.com』『食べログ』『タイムデザイン』が鍵をにぎる
これは、①『価格.com』で価値向上に向けた取り組みとしてユーザビリティの改善及び記事コンテンツの拡充、②『食べログ』で飲食店向け集客サービスの販売強化およびサービスの改善・向上に注力、③新興メディアで『タイムデザイン』におけるダイナミックパッケージ予約システムの強化、を進めてきたことが功を奏した。
### インターネット・メディア事業 VS ファイナンス事業
それでは、セグメント別の内訳を見よう。
カカクコムのセグメントは、①インターネットメディア事業、②ファイナンス事業の大きく二つに分かれる。
①の「インターネットメディア事業」には主に『価格.com』『食べログ』「新興メディア」が含まれる。一方、②の「ファイナンス事業」にはカカクコム・インシュアランスが運営する生命保険・損害保険などのの保険総合乗合代理店業務が含まれる。
### 売上高は、12.8%増 VS 9.3%減
セグメント別売上を見ると、インターネット・メディア事業は同比12.8%増の102億2,000万円、ファイナンス事業は同比9.3%減の2億4,500万円。
### 『価格.com』47.4% VS 『食べログ』42.0%
インターネット・メディア事業のうち、『価格.com』による売上高は全体の47.4%で49億5,700万円、『食べログ』による売上高は全体の42.0%で43億8,900万円、新興メディアによる売上高は全体の8.3%で8億7,200万円。
### 営業利益は、14.6%増 VS 37.9%減
セグメント別営業利益を見てみると、インターネット・メディア事業が同比14.6%増の47億9,600万円、ファイナンス事業が同比37.9%減の5,600万円となった。
### インターネット・メディア事業の詳細をチェック
ここからは、「インターネット・メディア事業」「ファイナンス事業」毎に、それぞれの詳細を見よう。
### 『価格.com』=「ショッピング事業」+「サービス事業」+「広告事業」
まず、インターネット・メディア事業の中でも、カカクコムが創業以来主力事業として展開する『価格.com』を見よう。『価格.com』事業は、さらに①「ショッピング事業」、②「サービス事業」、③「広告事業」に細分化されている。
#### 『価格.com』は「ショッピング事業」と「サービス事業」が堅調に推移
今期は、『価格.com』事業の中でも、①の「ショッピング事業」と②の「サービス事業」が堅調に推移した。『価格.com』事業において、それぞれの詳細を見ると、以下のとおり。
##### 1. ショッピング事業
* 消費財のコンテンツ強化を図ったことで事業者からの手数料収入が増加
* 前年比4.7%増 前四半期比10.0%減 22億3,000万円(全体45.0%)
##### 2. サービス事業
* 通信事業は前年比増収、マネー関連事業はクレジットカード比較やローン比較の取次ぎ件数が好調に推移
* 特に、クレジットカード事業は前年比54.2%増、カードローン事業は前年比24.3%増、住宅ローン事業は前年比189.8%増
* 前年比7.5%増 前四半期比19.7%減 18億8,200万円(全体38.0%)
##### 3. 広告事業
* デジタル及び家電メーカーより発売される新製品が減少傾向で広告受注が減少
* デバイス別広告売上高は、SP(スマートフォン)が全体の22.0%、PCが78.0%
* 前年比10.3%減 前四半期比28.5%減 8億4,500万円(全体17.0%)
#### 『価格.com』の四半期売上高は、2.8%増 VS 17.4%減
結果、『価格.com』の四半期売上高は、前年比で2.8%増加しているものの、前四半期比で17.4%減の49億5,800万円で着地した。
#### 購買意思決定メディアの深耕へ
また、『価格.com』では、購買意思決定メディアの深耕として、ファッションや日用品をはじめとする消費財において、様々な切り口の記事コンテンツを拡充し、カテゴリ及びデバイスに応じた最適化を進めている。
#### 『価格.comマガジン』は月間利用者数155万人突破
新製品などのレビュー記事『価格.comマガジン』は、2015年10月のリニューアル以降、堅調に利用者数が増加傾向で、消費財を取り扱った記事も拡充し、2016年7月の月間利用者数は155万人を突破している。
#### 『価格.com』は月間利用者数5,400万人突破
一方、『価格.com』国内/海外事業の月間利用者数は、前年比3.0%増の5,434万人。『価格.com』海外事業は、インドネシア/フィリピン/タイ/インドの4カ国で展開している。
##### 東南アジアで前月比10~20%増加
それぞれ月間利用者数は、インドネシアが前年比81.0%増・前月比21.4%増の3億8,000万(全体の約40.0%)、フィリピンが前年比81.0%増・前月比12.6%増の2億4,100万(全体の約25.3%)、タイが前年比44.5%増・前月比10.8%増の1億8,500万(全体の約19.5%)、インドが前月比27.2%増の1億4,500万(全体の約15.2%)となった。
##### 海外では消費財カテゴリに注力
『価格.com』海外事業では、消費財カテゴリを強化しており、7月にファッションカテゴリを追加し、カテゴリの拡充によりさらなるユーザー獲得を目指している。
### 『食べログ』は課金飲食店数が伸長
次に、『食べログ』事業を見よう。今期、『食べログ』事業では、課金飲食店数が伸長したことが大きかった。
特に、国内事業の課金飲食店数は前年比11.9%増の5万店舗を突破し、ARPUは前年比13.7%増の1万9,900円となった。
#### 個人向け有料サービス加入者数は151万人突破
個人向け有料サービス加入者数は、実質0円端末販売終了の影響により加入ペースが緩やかになり、年度末特需後の解約が加入ペースを上回り一時的に減少したが、2016年7月末時点では151万6,00人。
#### 四半期売上高は、個人8億円 VS 法人35億円
その結果、『食べログ』の四半期売上高は前年比23.4%増の43億8,900万円となった。うち、個人経由が8億4,900万円、法人経由が35億4,000万円。
#### アプリリニューアルでログイン強化
また『食べログ』では、5月にスマートフォンアプリをリニューアル。一言コメントや写真だけの気軽な投稿ができるようになった他、タイムライン機能の導入で、気になるユーザーをフォローして自分好みのお店探しができるようになった。
今回の影響について、決算説明会の質疑応答で、カカクコムは、
アプリは全体の利用者数から比べると割合が小さいため現時点での影響は軽微である。今回のリニューアルはログイン強化を図っており、ログイン率は年明けから1.5倍と上昇している。ログイン状態で閲覧可能な タイムラインが機能すると、レストランを探すだけではなく、読み物としても価値のあるメディアとなり、こ のような施策を行うことで食べログのロイヤルティを高めていく。
と述べている。
#### 公式アカウント『グルメ著名人』開始
さらに、公式アカウント『グルメ著名人』を開始し、外食にこだわりを持つグルメな方々が、自身のページでおすすめのお店を紹介できるようになった。
#### オンライン予約は前年比70%増で124万人突破
一方、『食べログ』オンライン予約は、オンライン予約人数が前年比69.3%増の124万人を突破。LINE公式アカウントも開設し、オンライン予約とLINEアカウントを連携し、予約完了時のメッセージをLINEで受け取れるようになった。
### 「新興メディア事業」= 『フォートラベル』+『スマイティ』+『タイムデザイン』など
次に、「新興メディア事業」を見よう。これには『yoyaQ.com』『フォートラベル』『スマイティ』『タイムデザイン』『映画.com』『webCG』などが含まれる。
#### 『タイムデザイン』『スマイティ』が好調
「新興メディア」事業では、『タイムデザイン』と『スマイティ』が好調で、 売上高は前年比28.8%増の8億7,200万円となった。
##### 『タイムデザイン』が新しい予約の形を提供する
『タイムデザイン』は、世界中のホテル・旅行会社・旅行サイトの直販を支えるプラットフォーム。新しい予約の形「ダイナミックパッケージ」のASPサービスを提供する。これにより、ホテルや航空会社の公式サイト上で、航空券/レンタカーなどの交通手段とホテルなどの宿泊施設を顧客が一度で自由に予約申し込みできる。
##### 国内最大級の賃貸物件検索サイト『スマイティ』
一方、『スマイティ』は国内最大級の掲載物件数から理想の部屋を探せる賃貸物件検索サイト。業界初となる間取り図、画像、建物名を全物件で掲載し、サイトへの掲載料を無料にすることで、国内最大級となる約440万件の賃貸物件情報を掲載。現在、マンション・一戸建ての売買物件などを含め、不動産情報を総合的に提供。
#### 新・新興メディア『レシぽん』『icotto』
また、新たな種まきとして、毎日使える料理レシピアプリ『レシぽん』とおでかけ・グルメ情報マガジン『icotto』の提供を開始。
##### 『レシぽん』は100万ダウンロード突破
『レシぽん』は、クッキングスクールや料理研究家などプロのレシピを中心に、信頼・安心のおいしいレシピが約7万件を掲載しており、無料でレシピを検索することできるアプリ。ダウンロード数は、iPhone/Androidで累計100万を突破。
##### ビジネスモデルは広告モデル
『レシぽん』を提供した背景について、決算説明会の質疑応答で、カカクコムは、
競合が強い中で質の良い写真、質の良い投稿だけでメディアを形成したいと考えた。ダウンロード数は小規模であるが、ダウンロード数に対する利用者数やアクティブ率が高いので他社に劣らず使われているという感触がある。ビジネスモデルについては広告となる。
と明かしている。
##### 『icotto』は月間利用者数が88万突破
『icotto』は、おでかけやグルメが大好きな人に向けたキュレーションメディア。観光カテゴリではフォートラベルと連携している。2016年7月時点で、月間利用者数が88万を突破。
### 最新カカクコム主要サイト利用状況まとめ
その他、カカクコムの主要サイト利用状況をみると、以下のとおり。
#### 『価格.com』利用者推移
* 全体 2015年6月 4,745万人 → 2016年6月 4,626万人
* PC 2015年6月 2,501万人 → 2016年6月 2,192万人
* スマートフォン 2015年6月 2,208万人 → 2016年6月 2,412万人
#### 『食べログ』利用者推移
* 全体 2015年6月 6,722万人 → 2016年6月 7,265万人
* PC 2015年6月 2,362万人 → 2016年6月 2,189万人
* スマートフォン 2015年6月 4,284万人 → 2016年6月 5,028万人
#### 『フォートラベル』利用者推移
* 全体 2015年6月 848万人 → 2016年6月 803万人
* PC 2015年6月 381万人 → 2016年6月 327万人
* スマートフォン 2015年6月 466万人 → 2016年6月 476万人
#### 『映画.com』利用者推移
* 全体 2015年6月 926万人 → 2016年6月 1,143万人
* PC 2015年6月 325万人 → 2016年6月 263万人
* スマートフォン 2015年6月 588万人 → 2016年6月 870万人
#### 『Priceprice.com』利用者推移
* 全体 2015年6月 532万人 → 2016年6月 808万人
* PC 2015年6月 242万人 → 2016年6月 289万人
* スマートフォン 2015年6月 289万人 → 2016年6月 519万人
#### 『キナリノ』利用者推移
* 全体 2015年6月 402万人 → 2016年6月 610万人
* PC 2015年6月 95万人 → 2016年6月 149万人
* スマートフォン 2015年6月 307万人 → 2016年6月 461万人
### ファイナンス事業の詳細をチェック
次に、ファイナンス事業を見よう。
#### 火災保険の契約期間短縮で、売上高9.3%減少
ファイナンス事業では、火災保険において2015年10月の改定による契約期間の短縮が影響し、売上高は前年比9.3%減の2億4,500万円。
#### 生命保険は堅調、損害保険は大幅下落
カテゴリ別にみると、生命保険が前年比8.3%増、ダイレクト保険が同比8.1%増、損害保険が同比34.6%減となった。
### カカクコムの今後の戦略方針は?
次に、カカクコムの今後の戦略を見よう。
#### 営業利益は100億円へ
『価格.com』『食べログ』が引き続き堅調な成長を継続するとともに、持ち前のメディア力を活かし、「新興メディア事業」「ファイナンス事業」の売上構成比を向こう3年で20%の到達を目指す。第2四半期累計で営業利益は、前年比15.3%増の100億円の見込み。
#### 国際会計基準(IFRS)の任意適用へ
カカクコムでは、財務情報の国際的な比較可能性の向上や開示の充実を目的として、2018年3月期第1四半期決算より国際会計基準(IFRS)の任意適用を予定。なお、カカクコムは、IFRS適用によるM&Aの積極化はない、としている。
### 決算発表後の株価は?
最後に、今回の決算を受けて、マーケットはどのように動いたか。カカクコムの株価を見よう。
#### 後場急落、増収増益も市場予想に届かず
決算発表後の8月4日、カカクコムの株価は、後場に一段安となった。この日、カカクコムの株価は、6月28日以来、2,000円を割れ込んだ。増収増益ではあったものの、好決算期待銘柄として人気があるだけに、市場予想を下回る着地となったため、売りが優勢した。