『ポケモンGO』の開発リーダーが語る、『ポケモンGO』に宿るポケモンとNianticの想いとARの未来 #tctokyo

全世界を席巻するあの『ポケモンGO』は、どのように生まれたのか、そして、これからどこへ向かうのだろうか。『ポケモンGO』のゲームディレクター、米Niantic(ナイアンティック)の野村達雄氏は、『ポケモンGO』誕生秘話と今後の展開を語った。『ポケモンGO』は、スマートフォンの位置情報を活用して、現実世界を舞台にポケモンを捕まえたり、交換・対戦できるゲームアプリ。

全世界を席巻するあの『ポケモンGO(Pokemon GO)』は、どのように生まれたのか、そして、これからどこへ向かうのだろうか。

『ポケモンGO』は、スマートフォンの位置情報を活用して、現実世界を舞台にポケモンを捕まえたり、交換・対戦できるAndroid・iOS対応ゲームアプリ。Googleの社内スタートアップとしてはじまり、後に独立したNianticやゲームフリーク、任天堂、そしてポケモンのIPをもつポケモンが協業で開始したプロジェクトだ。

『ポケモンGO』のゲームディレクター、米Niantic(ナイアンティック)の野村達雄氏は、11月17日と18日の2日間に開催するスタートアップの祭典TechCrunch Tokyo 2016にて、『ポケモンGO』誕生秘話と今後の展開を語った。

### 「”正しい夢”を追ってほしい」

講演の冒頭、『ポケモンGO』を提供するNianticのCEOジョン・ハンケ氏が、Naianticの1人目の日本人社員でアジア統括本部長の川島優志氏と共にビデオメッセージで登場。来場客の起業家に対し、「Nianticが目指すものは、テクノロジーを有効活用して、人々を外に連れ出し、周囲の生活を観察してもらうこと。『イングレス』や『ポケモンGO』を通じ、何億万人もの人々がアドベンチャーを体験することを見てきた」と述べた上で、「起業家のみなさんは、世界をより良い場所にできる”正しい夢”を追ってほしい」と熱い言葉を送った。

### 『ポケモンGO』に宿るポケモンとNianticの想い

続いて、『ポケモンGO』のゲームディレクター野村達雄氏が登壇し、①Niantic参画の経緯、②『ポケモンGO』の歴史、③『ポケモンGO』から見る “今後のARの世界” を語った。

### たったひとつのデモがみんなをひきつけた

野村氏は1986年生まれ。任天堂がポケモンを世に送り出した1996年当時は小学生、まさに子供の頃からポケモンやマリオ、ファミコンなどゲームと共に育ってきた世代だ。

僕らは子供の頃からゲームが好きだった。FPGAでハードウェアを自作したりファミコンを自作していて、子供の頃から最新ゲームよりも少しレトロなゲームが好きだった。

野村氏は、2011年東京工業大学院修了後、Googleに入社。エンジニアとして『Google Map』の開発に携わる。

デモを見せるのと、文章で説明するのでは、インパクトも説得力も違った。数時間でデモを作って見せるだけで、みんなにイメージが伝わり、その企画を好きになってくれて喜んでくれた。

インターネットやベンチャー業界ではおなじみでもあるGoogleのエイプリルフール企画において、『ファミコン版グーグルマップ8bit(2012年)』『Googleマップ宝探しバージョン(2013年)』『ポケモンチャレンジ(2014年)』を開発した。その後2015年、GoogleからNianticへ移籍し、ゲームディレクターとして『ポケモンGO』の開発・運営に携わる。

### Nianticの想いは “Adventures on foot with others”

Nianticは、後のGoogle EarthであるKeyholeの共同創業者でGoogle Mapの責任者も務めた、ジョン・ハンケ氏がはじめたGoogleの社内スタートアップNiantic Labsが、2015年8月にGoogleから独立して設立された会社。

Nianticでは、人々を外に連れ出し「他の人たちと一緒に歩いて冒険をすること(”Adventures on foot with others”)」を追求する。

人々を外に連れ出して、何か発見したりエクササイズしたりコミュニケーションしたり、他の人たちと一緒に自分の足で冒険する。それが、Nianticの目指す世界だ。

### ジョン・ハンケの子供への想いが『イングレス』を生む

そのNianticが生み出した最初のサービスが、後の『ポケモンGO』に繋がる『イングレス(Ingress)』だ。『イングレス』は、ジョン氏が、自分の子供が週末に家のソファーの上でゲームばかりをしているのを見て「外はこんなに晴れていて世界は美しいのになぜずっとゲームをやっているのだろうか」「外で出来るゲームを作れば一緒に外に出れるのではないか」と考えて生み出したもの。2012年11月にベータ版テストが始まり、2013年10月にはオープンベータ版を開始、2013年12月にはAndroidアプリ、2014年7月にはiOSアプリをリリースした。

『イングレス』は、”The World as the Gameboard” をコンセプトに、スマートフォンの位置情報を活用して、現実世界を舞台にエンライテッドとレジスタンスの2勢力に分かれて戦い、ポータルと呼ばれる拠点を線で結んで陣地を取り合う陣取りゲーム。アノマリーイベントを開催するなど、ゲームの中だけには止まらず、現実世界にもゲームの楽しさを持ち出した。正式リリースから3年を迎えた今、全世界200か国で提供され、1,500万ダウンロードを突破する。

### 『ポケモンチャレンジ』と『イングレス』の出会いが『ポケモンGO』をつくる

『イングレス』が全世界で新たなユーザー体験を届ける一方、時を同じくして世界中に喜びと笑顔をもたらしていたのが、Googleのエイプリルフール企画『ポケモンチャレンジ』だった。野村氏によれば、「ポケモンがGoogle Mapにいたらおもしろいのではないか」それが『ポケモンチャレンジ』のアイデアが生まれるキッカケとなったという。

エイプリルフール企画だから、ただGoogle Mapにポケモンがいるだけでは物足りない。ジョークがあるからおもしろい。そこで、GoogleがGoogle Mapでポケモンを捕まえるポケモンマスターを募集しているという採用にかけたパロディ・ストーリーを考えた。151匹のポケモンを捕まえた人には、ポケモンマスターの名刺をプレゼントした。これは「ゲームがデバイスの中に閉じた形ではなく、デバイスの中から外の世界にも広がっていく」ことを実感した、最初の挑戦だった。

この『ポケモンチャレンジ』が、Nianticのジョン氏の目にとまり、共通の知人でもあった川島氏の紹介を受け、Nianticにスカウトされる。

僕は、ポケモンをプレイして育ってきた世代。子供の頃は、ポケモンのゲームや映画、アニメを見て、自分を主人公のサトシに投影し、ポケモンの世界で冒険するのを思い描いていた。ジョンから「ポケモンとイングレスがコラボしたら、おもしろいことができるのではないか」と話があった時、「子供の頃の僕が欲しがったモノができる」と感じた。だからこそ「絶対におもしろい」「ぜひやりたい」と思った。

### “Real World Gaming” が世界を変える

そして、ポケモンの次なる展開を考えていたポケモンの当時社長の石原恒和氏と出会う。Nianticと石原氏をはじめポケモンのメンバーはすぐに打ち解ける。特に石原氏は、Nianticの『イングレス』に夢中になった。そして、Nianticとポケモンのコラボレーションにより、ポケモンの世界観をそのままに、ゲームの中だけに閉じられていない、プレイヤ同士が現実世界で繋がる『ポケモンGO』が生まれる。

『ポケモンGO』は、ゲームの中だけに閉じ込められた世界ではなく、人々の生活や健康に影響を与えている。Nianticでは、『ポケモンGO』にしても『イングレス』にしても、人々を外に連れ出すという “Real World Gaming” を実現している。

### 『ポケモンGO』の移動距離は “地球から冥王星まで” とおなじ

『ポケモンGO』は、現在100か国で配信されており、500万ダウンロードを超える。何より、Nianticが重要視するユニークな数字がプレイヤの移動距離だ。これまでに『ポケモンGO』プレイヤは、たった数か月で、地球から冥王星までの距離にあたる46億キロメートルを移動している。この数字だけでも驚きだが、地域活性や経済、医療など様々な分野で良い影響を与えている。マイクロソフトとスタンフォード大学の共同研究によれば、ポケモンGOを続けることで寿命が41.4日も伸びるとも言われる。

これらを支えるのが、子供から大人まで、世代、年齢、性別、人種を超え、ポケモンを通じてひとつになれる「ポケモンの力」とだろう。ポケモンは、今年生誕20周年を迎える。ポケモンは、この20年で培ってきた幅広いファンによって支えられている一方、ファンをポケモンが支えているのだ。

### “狭義のAR” と “広義のAR” そして “ARの未来”

幅広いファン層に愛されるポケモンと、仮想世界と現実世界を繋ぎ合わせてプレイヤに新たな体験を付与するNianticの特性を融合した『ポケモンGO』。『ポケモンGO』はARの可能性を拡大したとも言われるが、野村氏には、”今後のARの世界” がどのようにうつるのだろうか。

一般的に “AR” とは、カメラの前に3Dオブジェクトがあるものと捉えている人も多いと思うが、それは “AR” の一部にしか過ぎない。カメラの目の前にポケモンがうつる、それは “AR” のほんの一部だ。

新しい情報や意味を付加することで、これまで外に出ても気づけなかった場所に行くことができたり、もともとあったけれどもこれまで気づけなかったモノを気づかせるということが、広義の “AR” だと考えている。カメラや3Dなどのテクノロジーから離れて、「現実世界にどのようにオーバーレイして情報を置いていけるか」を考えてほしい。

すでにスマホではナビゲーション機能で “AR” の世界が実現されている。今後、新しいテクノロジーが生まれ、今のスマホにとどまらない形で、もっと進化していくだろう。いずれは「モンスターボールを手に持ってピカチュウを捕まえられる」それをできるようになる日が、もうそこまできているのではないだろうか。ARの未来は、非常に明るい。

野村氏は、『ポケモンGO』から見るARの未来を語るとともに、来場客の起業家にARの未来に挑戦してほしい、と熱い言葉を送り、講演を締めくくった。