「10年つかえるSEOの基本」著書・ナイル土居氏が語る「SEOの罠」 #SVMeetup

シード・アーリーステージのスタートアップへ投資を行うSkyland Venturesは、講師にナイル株式会社の取締役である土居健太郎氏を迎えて、スタートアップやスタートアップに関心のある学生を中心に「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」と題して「Skyland Ventures Meetup #SVMeetup」を開催した。本稿では、ナイルの土居氏による講演「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」についてお伝えしよう。

doi0

シード・アーリーステージのスタートアップへ投資を行うSkyland Venturesは、5月2日、講師にナイル株式会社の取締役である土居健太郎氏を迎えて、スタートアップやスタートアップに関心のある学生を中心に「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」と題して「Skyland Ventures Meetup #SVMeetup」を開催した。

イベントは、ナイルの土居氏による講演「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」、質疑応答、ミートアップという構成であった。

本稿では、ナイルの土居氏による講演「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」についてお伝えしよう。なお、過去に開催した「Skyland Ventures Meetup」のイベントレポートは以下でご紹介している。

* Kaizen Platform創業者須藤憲司氏による「スタートアップの経営、資金の使い方、組織育成とは」
* Rubyの父まつもとゆきひろ氏による「Rubyエンジニア向け勉強会」
* FiNC代表取締役社長CEO溝口氏が語る「最高の人材を集め続ける組織の創り方」

### 「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」
今回の講演「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」は、ナイル土居氏によって、SEO初級者から中級者向けに実例を交えながら語られた。

■講師プロフィール

東京大学工学部を2度の留年を経て休学し、復帰すること無く中退。その後フリーターとして飲食店で働くも、ひょんなことから2009年ナイル株式会社(旧ヴォラーレ株式会社)に参画。2010年よりWebコンサルティング事業部 事業部長としてWebコンサルティング事業の立ち上げに従事する。その後執行役員を経て、2015年、取締役に就任。「Appliv」にもサービスリリース時よりSEO/サービスグロース面から携わる。2015年4月には著書「10年つかえるSEOの基本」を出版している。

### SEO = 「検索する人が自分のサイトに集まるように実施すること全て」

doi1

まず土居氏は「SEOの定義」について、

SEOとは、明確に線引きがなく「検索する人が自分のサイトに集まるように実施すること全て」を言う。

とし、

SEOはサイトを運用するプロセスの中に織り込まれているべきことが多く、「SEOのためだけにわざわざ何かする」ことはできるだけ減らしたい。

SEOは、明日すぐに解決できる問題ではなく、短期施策としては不向き。ただし、長期的に正しく行えば必ずポジティブな結果に結びつくと考えて良い。

と基本的な考え方も含めて説明した。

### 「検索」は一つのチャネル
次に土居氏は、

「そのサービスにとって検索がどの程度重要なものか」は判断が難しい。一般的には様々なチャネルがある中で一つのチャネルとして「検索」が重要な場合が多いが、それぞれのWebサービスが持つコンテンツの特性や性質に応じて「検索を重視するか」「それ以外のチャネルを強化するか」を検討すべきだと思う。

と述べた上で、その中でもSEOがメインとなるサービスに共通する点として、「検索需要の高いコンテンツをたくさん掲載している」ことを挙げ、逆に検索需要が無いのであれば力を入れてSEOに取り組む必要もないとした。

サイトの検索需要の高さに加え、「Facebookなど他プラットフォームで流しにくい」「有料トラフィック依存では利益が出ない」のような条件がそろうと、SEOがWebの生命線となると説明した。

### 「SEOの方程式」

doi0

続けて土居氏は「SEOの方程式」

SEOで得られる検索トラフィック総量 = Web資産の総量(コンテンツ + リンク) × 資産価値(リンク × 品質 ÷ コンテンツ) × コンテンツの検索需要の総量 × キーワードの最適化(0~100%) × サイト仕様の最適化(0~100%)

について紹介した。(参考:2015年、確実に成果を出すためのSEOの方程式 ※記事の内容と講演内容で若干異なるため注意)

この方程式について土居氏は、

SEOでは、この方程式で言う右辺の絶対値を如何に大きくできるかを考える。右辺の「Web資産の総量(コンテンツ + リンク) 」×「資産価値(リンク × 品質 ÷ コンテンツ)」×「コンテンツの検索需要の総量 」は、検索流入量の上限値とも言える。この数値が大きければSEOでも勝ちやすい。一方、右辺の「キーワードの最適化(0~100%)」「サイト仕様の最適化(0~100%) 」はあくまでも資産を効率よく検索流入に転換するものであって100%以上大きくすることはできない。そのため、それら2種類の施策は切り分けて考えたほうが良い。

特に「品質の掛け算」と「コンテンツ量での割り算」を意識してほしい。ここでいう「品質」とは、①他のサイトにはない独自の付加価値がある、②それが「ユーザーにとって」ありがたい価値である、③ユーザーがストレスなく閲覧・利用できる、などのことを指していて、昨今のSEOでいちばん重要なことと言って過言ではない。一方で「コンテンツ量で割り算する」ことは軽視されてしまいがちだが、こちらも非常に重要だ。例えば、「コンテンツ」をコップ、「リンク」をコップの中に入れる水だとする。水1リットルに対してコップが10個であればそれぞれに十分な量が注げたとしても、コップが1万個となるとそれぞれほんの一滴ずつしか入れられない。同じことがSEOでも言え、「サイトの全てのコンテンツを養うに十分なリンク資産があるかないか」で結果は大きく変わる。

と語った。

### SEOの罠10選

doi2

最後に土居氏は、「スタートアップ・新規事業担当者が陥るSEOの罠」について、10個のトピックを紹介した。

#### 1. 他社の上手くいっている事例を真似してもトラフィックが伸びない

土居氏は、

「何を真似ているか」が肝心で、ほとんどの場合、表面に見える部分を真似ているケースが多いが、それはあくまで表面上の要素でしかなくSEOの勝敗を決める要素ではない。SEOの方程式で言う「リンク」や「品質」については一朝一夕で形成できるものではなく。これがSEOの勝敗を決める要素であり、検索結果でのポジションの優劣を決めるのに最も重要な要素でもある。

と述べた。

#### 2. 資産価値が乏しい状態でコンテンツ量を広く展開し過ぎてしまう

土居氏は、

新規事業の立ち上げ時に、コンテンツを広く展開するだけでは思うような結果は出にくい。ここでもSEOの方程式で言う「リンク」「品質」が関係する。コンテンツ量は、それに見合った品質やリンクが伴って初めてSEOの武器になる。コンテンツ量ばかりが一方的に増え過ぎると、それが足かせになる場合もある。

SEOが強いものは、例えば食べログ、クックパッドのように「テーマとして狭い × 深度として深い × コンテンツとして厚い」ものが多いが、これを最初から大規模で実現することはまず不可能。①限定的に展開して徐々に広げる、②初期は検索以外のチャネルを強化する、③存分に広げてから全体を分厚くする、ことなどが考えられるが、③は選択肢として厳しい場合がほとんどと思う。

と述べた。

#### 3. 検索アルゴリズムの変更 = スパム対策という勘違いをしている人が多い

土居氏は、

「検索アルゴリズム」とは「どのような検索結果を出したいか=どのような検索結果がユーザーにとって良いか」を反映する仕組み。アルゴリズムの変更といっても単にポイントを上げ下げする調整ではなく、よりユーザーが求める検索結果に近づけるために多面的に行っているもの。スパム対策はあくまでもその一部で低品質なコンテンツを排除しているに過ぎない。

逆に言えば、ユーザーが検索結果に出てくることを望んでいないのであれば、そのサイトがSEOをどう頑張ろうとその検索結果で優遇されるのは難しくなってきているとも言える。

と述べた。

#### 4. どのくらいのテキスト量が良いか?について

土居氏によれば、①の「記事タイプの情報」は

* ストック情報なら重厚長大が未だ有利
* フロー情報なら鮮度や速さが優先

であり、②の「それ以外の情報」は

* 提供しているサービスやコンテンツ次第で、一般的な回答を持たない

と言う。ただし①についてもあくまで「SEOで優遇されやすいのは」という観点での話であって、ビジネスそれ自体の目的が検索結果で上位表示することではないのであればそのまま鵜呑みにするべきでないとも補足した。

#### 5. モバイルファーストでSEOも完結してしまう

土居氏は、

モバイルファーストで作られたサービスでは、「制御する / 削ぎ落とす / ミニマルにする」ことがプロセスに必ず含まれるが、一方でそうして作られたサービスがPCに最適化されていないことが多い。これは、SEO観点から見ると、①インデックス対象となる情報が制限される、②検索エンジンが得られる手がかりが減る、という二つの問題点を抱えている。そのため、モバイルファーストであったとしても、PC向けの最適化や検索エンジンに向けた最適化が必要となる。

と述べた。

#### 6. キュレーションメディアのSEOは今後どうなるか

土居氏は、詰まるところは①ユーザーが価値を感じるか、②権利関係など正しい運営ができているか、③儲かるかどうか、が主に重要になると説明。

Googleはユーザーが価値あるものと感じているものをそのまま検索結果に反映させたいが、だからといって権利関係など必要なマナーを守らないサイトが優遇され続けることは厳しいとし、最終的にはビジネスとして成立するかどうか、とも話した。

#### 7. 一般的にSEOの難易度が高く、SEOの成功が前提になると事業の継続性が低いケース

土居氏は、例として①ユーザー投稿型サイト、②非テキストコンテンツ・マイクロコンテンツ、③アグリゲーションを紹介した。

①の「ユーザー投稿型サイト」では、「投稿を増やせるかどうか」「品質も保てるかどうか」が重要。また、①の「ユーザー投稿型サイト」と②の「非テキストコンテンツ・マイクロコンテンツ」は「テキスト情報が宿命的に少ない」ことも気をつけなければならず、テンプレートの調整などで頑張ることが多い。③の「アグリゲーション」は、そもそも全ての情報に独自価値を持たせることが前提にないので、検索流入に重点を置かないほうが良い。

と述べた。

#### 8. SEOを勉強している人にありがちな「SEO的にどうなのか」という考え方について

土居氏は、サービスに関わるあらゆることをSEO起点の判断基準で決めようとすること自体が間違っていると断言。「SEO的にどうなのか」ではなく「サービスとしてどうあるべきなのか」を考えた上で「それは検索エンジンに対してどう配慮すべきなのか」を決めるのが望ましい、と説明。

#### 9. SEOを目的にしない、前提にしないほうが良いケース

土居氏は縦軸に「SEOの勝算」、横軸に「SEOの生命線」を用いたマトリックスを使って紹介した。土居氏によれば、縦軸の「SEOの勝算」はSEOの方程式で言う「Web資産の総量(コンテンツ + リンク)」「資産価値(リンク量 × 品質 ÷ コンテンツ量)」を競合よりも高められるか、横軸の「SEOの生命線」は、①検索需要の高いコンテンツをたくさん掲載している、②Facebookなど他プラットフォームで流れにくい、③有料トラフィック依存では利益が出ない、ということに尽きると言う。

#### 10. SEOを強くする全てといっても過言ではない、SEOの基本でSEOの奥義とも言えること

土居氏は、「他のサイトを差し置いてあなたのサイトが検索結果で優遇される理由はありますか」に対する明確な回答ができるサイトかどうか、が重要であると語った。特に土居氏は「他のサイトを差し置いて」という部分を強調した。その質問に対する確かな回答ができないのであればSEOで成功することはかなり厳しいとし、そうした理由を作っていくことこそが、SEOの基本でもあり奥義でもある、と語った。

doi3