「熟練農家の匠の技を、スマート農業で見える化」日本発の技術で世界に挑むルートレックが総額4億円を資金調達 佐々木社長が語る、今後の展望

「ゼロアグリ」を運営する、スマート農業のルートレック・ネットワークスは、グロービス・キャピタル・パートナーズなどから総額4億円の資金調達を実施した。今回、Pedia Newsでは、ルートレック・ネットワークス代表取締役の佐々木伸一氏にインタビューを実施し、「ゼロアグリ」の誕生秘話、今回の資金調達の経緯、そして、今後の展望などを伺った。

伝統ある匠の技を、IoTの力で伝承できる時代が来たーーー。日本の農業は、世界水準で高いレベルの技術が普及し、高品質の農産物を低価格で供給してきた一方、農業者の高齢化が年々深刻化し、担い手不足により、農業技術の伝承が難しくなることが懸念される。

次世代の農業のあり方が問われる中、今後、急速に失われていく可能性のある農家の匠の技を、IoT技術をつかって形式知化し、他の農業者や新規参入者などに継承していく、新しい農業「スマート農業」が注目される。

実際、農林水産省の調査によれば、2015年時点で、農業就業人口は209万7,000人と6年連続で減少し、平均年齢66.4歳となった。一方、新規就農者は6万5,000人で、そのうち49歳以下が2万3,000人となった。

若手の新規参入者に対し、ベテラン農家が持つ様々な経験やノウハウなどを提供できれば、比較的安定した経営を実現できるのではないか。IoT技術を農業分野に応用し、伝統ある匠の技を含めた農業技術を形式知化することで、先人の経験や勘に基づくノウハウや伝統技術を記録・保存し、農業者の技術向上や新規参入者への技術支援に活用できるのではないか。こうした想いから誕生したのが次世代養液土耕システム「ゼロアグリ」である。これは、産業分野で実績を持つルートレック・ネットワークスのM2M(Machine to Machine)通信技術、そして、農業ソリューションを融合したサービス。

「ゼロアグリ」を運営する、スマート農業のルートレック・ネットワークスは、グロービス・キャピタル・パートナーズなどから総額4億円の資金調達を実施した。

* 参考記事:**次世代養液土耕システム「ゼロアグリ」運営のスマート農業ルートレック、グロービスなどから総額4億円を資金調達**

今回、Pedia Newsでは、ルートレック・ネットワークス代表取締役の佐々木伸一氏にインタビューを実施し、「ゼロアグリ」の誕生秘話、今回の資金調達の経緯、そして、今後の展望などを伺った。

ルートレックは、2005年、佐々木氏によって創業された会社。佐々木氏は、もともと、モトローラやウェスタン・デジタルなどの半導体企業に勤めていたが、30歳を機に独立。独立当初は、米シリコンバレー企業の日本進出を支援。その中で、**「シリコンバレーで創業したスタートアップが成功し、次のスタートアップを創業していく」**(佐々木氏)ことに刺激を受け、2005年に、インターネットを使って機械と機械を繋ぐM2Mプラットフォームを提供したいと考え、ルートレック・ネットワークスを創業。その後2010年、総務省委託事業にて農業と出会い、農業市場へ参入する。

**農業との出会いは2010年でした。総務省の方々とお話しする機会があり、ブロードバンドの利活用が日本は進んでいないということに課題をお持ちだとわかりました。その中で、新しい分野で協力したいと考え、農業の見える化をやりたいと思って、手をあげました。**

**総務省の委託事業では、農場をセンサーネットワークで繋ぎ、そこで得た情報をブロードバンド経由で一箇所に集めて、農家や自治体などにフィードバックすることで、農家が情報を活かすことを想定していました。実際に取り組んでみると、これまで農家は経験と勘でやってきていて、自分たちの行動と情報が紐づいておらず、ただ農業の見える化をするだけでは情報を使いこなせる人がわずかだとわかりました。そこで、農業はブルーオーシャンで非常に大きなビジネスチャンスがあると捉え、僕らが得意とするM2M通信技術を活用し、農業の見える化から制御まで支援する農業ソリューションを手掛けたいと思いました。**(ルートレック・ネットワークス 代表取締役 佐々木伸一氏)

ルートレックでは、明治大学農学部小沢聖特任教授との共同開発を通じ、2013年より、次世代養液土耕システム「ゼロアグリ」を提供する。農業の中でも最も経験と勘が必要な「かん水・施肥」を、IoTと独自の栽培アルゴリズムで自動化する(Irrigation on Demand)を実現する。

「ゼロアグリ」では、施設栽培面積の98%を占める複合環境整備のない一般的なパイプハウスに対して、これまで見えなかった地下部の状態が、作物にとって重要な影響を与えることに着目し、地下部の環境を制御することで、作物の生長状態に合わせ、培養液を自動で供給する。ハウス内に置かれた土壌センサーで、地温、土壌水分量、土壌EC値を測定し、土壌の状態を把握する。

さらに、ハウスの外に設置された日射センサーと、ハウス内の土壌センサーからの情報を合わせることで、現在の作物状況にあった最適な培養液量を判断する。これにより、作物の生長に最適な培養液量を供給できるようになり、収量増加、品質安定、品質平準化、規模拡大、省力化に繋がる。

**2011年より、明治大学と共同研究を開始し、2013年にゼロアグリ第一世代として初代ICT養液土耕システム、2016年にゼロアグリ第二世代として農業ソリューションの提供を開始しました。**

**第一世代のリリースに向けて苦労した点は、独自の栽培アルゴリズムシステムの開発です。ゼロアグリでは、各センサーの値から、現在の作物の生長状況を判断し、培養液の供給量を決めていますが、その培養液供給量を決める最適化の数値は、明治大学の小沢特任教授監修のもとに作られた計算式で算出します。農業は、半導体やITサービスと異なり、基本的には1年に一回しか開発・改善の結果を見ることができません。そのため、システム開発に多くの時間を費やしました。今でも継続的に、明治大学黒川農場において、各種作物を栽培し、検証を行い、システムの改良を進めています。第二世代では、製造コストを抑えることで制御部分の小型化、また、ゼロアグリ1台で最大6区画までを管理できるようにすることで通信部分の小型化を進めました。**(ルートレック・ネットワークス 代表取締役 佐々木伸一氏)

現在、ゼロアグリは、トマト・キュウリ・イチゴ・トルコギキョウなどの果菜類や花を中心とした、施設園芸の橋頭保市場8県12品目50拠点に導入されている。**「農業は口コミの世界」**(佐々木氏)であり、それぞれの地域で特定の作物で成功体験を積み重ねていくことで、地元の農家ネットワークの口コミでサービスが広まっているという。また、佐々木氏によれば、**「導入先は20代〜40代の若手」**(佐々木氏)であり、これから農業を営みたい人たちが利用しているそうだ。

まさに「ゼロアグリ」は、IoT技術と独自栽培アルゴリズムを通じて、農業の未来を担う若手たちを育成し、農業という社会問題を地域レベルから解決していると言っても過言ではないだろう。

その「ゼロアグリ」を運営するルートレックに共感し、ファーストインベスターとして出資したベンチャーキャピタルが東京大学エッジキャピタル(UTEC)だ。ルートレックは、2015年3月に、UTECから、シリーズAで2億円の資金調達を行い、**「創業以来、5名のチームを、13名まで拡大し、営業・開発を強化」**(佐々木氏)してきたという。

**UTECの井出さん(東京大学エッジキャピタル 井出啓介氏)とは、前職の時からの知り合いでした。リーマンショックのタイミングで増資を検討していた際に、当時の日本は今のようにICTやIoTが広まっておらず、プラットフォームでブレイクするという絵を描ききれずにご一緒できませんでしたが、時代が変わってきたというのと、僕らの事業もワンストップなトータルソリューションに変わったことで投資を決めていただきました。**(ルートレック・ネットワークス 代表取締役 佐々木伸一氏)

そして、今回、ルートレックは、シリーズBで、グロービス・キャピタル・パートナーズをリード投資家に迎え入れ、UTEC、テックアクセルベンチャーズ、オイシックスなどから総額4億円の資金調達を実施した。

**今回の資金調達は、今年6月から本格的に動き始めました。農業を手がけるスタートアップが少ない中で、リファレンスなどで思った以上に時間がかかりましたが、グロービス、UTEC、テックアクセル、オイシックスの4社から総額4億円の資金調達を実施できました。**

**今回、リード投資家としてグロービスに投資していただきましたが、グロービスもUTECも、デューデリーが比較的厳しいVCだと思っています。シリーズAのUTECに続いて、シリーズBでグロービスに投資していただいたことで、会社としての信頼も向上すると考えています。**

**テックアクセルは、LPにオムロン、リコー、産業革新機構、SMBCが入っています。テックアクセルの小澤さん(テックアクセルベンチャーズ 小澤尚志氏)とは、以前、オムロンベンチャーズを訪問した時にお会いしたことがありました。テックアクセルのLPであるオムロンをはじめ、センサーや農業に知見のある方々に投資していただくことができたと思っています。**

**オイシックスとは、事業提携を含めて投資を決めていただきました。オイシックスは、日本全国に1000以上の契約農家を持っていますが、収量と品質が高いことで有名です。オイシックスの契約農家にゼロアグリを導入していただくことで、品質の平準化・収量の上昇を進めていくことができると考えています。**

**今回の資金調達によって、これまでに培ってきた農業データを用いたデータビジネスを強化すると共に、営業、開発、マーケティング、サポート、人員の強化を進め、全国展開、そしてアジアを中心とした海外展開を一気に進めていきます。アジアは、水の枯渇や多施肥による環境破壊に対する問題意識が大きいです。アジアは、日本と気候も土壌も似ているので、日本で成功した農業を展開できると考えています。**(ルートレック・ネットワークス 代表取締役 佐々木伸一氏)

産学官連携、そして、VC、事業会社との連携により、日本発の技術で世界の課題を解決しようとするルートレック。これまで、地域に密着し、新規就農者の支援、農地の規模拡大、高齢化時代の省力化を進めてきたが、今後は、日本の農業強化、さらにアジアの農業を強化し、世界が抱える課題を解決していく。最後に、佐々木氏は、ルートレックのビジョンとミッションを、まっすぐな眼差しで熱く語ってくれた。

**農業は、最後のブルーオーシャンだと考えています。農業は初期投資に数億円の規模がかかる一方で、ビジネスロットが大きな農家と小さな家族経営とでは桁が異なります。中小規模の農業に対するサービスは、僕らのようなベンチャーがやるべきだと思います。**

**今、農業は若い方が少しずつ増えてきて、次の世代に移ろうとしています。もちろん、農業といえば、収入が低くて、毎日の労働が辛いというイメージを持っている方々も多いかもしれませんが、農業にICTやIoTといった新しい技術を取り入れることで、農業に対する敷居が下がると考えていますし、若い方々はすでに新しい技術を柔軟に取り入れています。僕らは、M2M通信技術、IoT技術、独自栽培アルゴリズムを通じて、農業生産性向上、収量増加、品質安定化を実現していきます。**

**日本の農業の素晴らしいところは、農業技術だけでなく、味へのこだわりが最先端な点だと思います。もちろん、匠の技が重視されていて、伝承されにくい部分でもありますが、ゼロアグリという道具をうまく使いながら、自分自身の味へのこだわりをどんどんブラッシュアップしていってほしいです。**(ルートレック・ネットワークス 代表取締役 佐々木伸一氏)

次世代養液土耕システム「ゼロアグリ」

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