「セクショナリズムを乗り超える」「自由におもしろい新サービスを生み出す」メディアラボ白石氏が語る、朝日新聞のオープンイノベーション

Pedia Newsでは、朝日新聞社 メディアラボ 主査 白石健太郎氏にインタビューを実施し、朝日新聞におけるオープンイノベーションのあり方を伺った。


創刊から140年あまりの歴史をもつ朝日新聞社。そこには大企業ならではのセクショナリズムを乗り越え挑戦し続ける実験工房「朝日新聞社メディアラボ」がある。

Pedia Newsでは、朝日新聞社 メディアラボ 主査 白石健太郎氏にインタビューを実施し、朝日新聞におけるオープンイノベーションのあり方を伺った。

テクノロジーが発達し、スマートフォンの普及、またサービスの多様化や多機能化、高機能化が進んだことで、スマートフォンが4大マスメディアであるテレビ、新聞、雑誌・書籍、ラジオの役割を担うようになってきた。生活スタイルが多様化し、メディア環境は日々大きく移り変わり、メディアと生活者は、単に情報の送り手と受け手という関係性からより高度に複雑化されている。その中、朝日新聞は、メディアの潮流を読み取り、自らの殻を突き破るための新組織「メディアラボ」を2013年6月に設立した。

メディアラボは、朝日新聞がもつ、人材・資金・コンテンツなどの既存アセットの活用や外部連携、出資投資などを通じて、既成概念にとらわれない自由な発想で、寝ても覚めても世の中をアッと驚かせるような新規事業を作るために立ち上げられた。すでに社内の新規事業開発コンテスト『STARTUP!』で表彰された社員らが、自社アセット等を活用し、自分史制作をする「朝日自分史」、クラウドファンディングサイト「A-port」、犬や猫の情報webメディア「sippo」などを立ち上げている。

一方、ハッカソンなどを開催し、オープンイノベーションに取り組んできたメンバーもいる。朝日新聞社の記事を利用出来るAPIと他社のAPIを掛け合わせ新しいサービスを開発するハッカソンの定期開催や、リクルートホールディングスが運営する日本最大級の開発コンテスト『Mashup Awards』などにもAPI提供企業として参加をしてきた。そのハッカソンの集大成として、全国紙5紙を集め、各社のAPIを掛け合わせて「ニュースの新しい読み方、楽しみ方」を開発する『新聞5紙NEWS HACK DAY』などを開催してきた。

これらの動きは、社内で新規事業を横断的に生み出すべく行われていたように思えるが、白石氏によれば**「社内におけるスタートアップへの理解を促せると同時に、アクセラレーターを自社で手がけるための第一歩でもあった」**という。

白石氏は、当時を振り返りながら、**「新聞5紙ハッカソンを視察した当時の担当役員が、短時間で高度なアウトプットを出せていたことに感銘を受けていた」**一方で、**「ハッカソンだけで開発を終了させてしまうのを惜しく感じていた」**こともキッカケとなり、 2015年より ”アクセラレータープログラム” を開始することが出来たと語ってくれた。

**2013年にメディアラボを立ち上げ、2014年より渋谷分室をつくり、新聞5紙ハッカソンの開催やスタートアップ紹介イベント、ミートアップイベントなどを社内で開催することで、今まで繫がりの少なかった事業部やグループ企業の担当者とも知り合うことが出来、部門を超えて横断的に事業を検討する下地が出来始めたと思います。以降、『スタートアップ』という言葉も社内に根付いていったのではないでしょうか。その後2015年に『朝日アクセラレータープログラム』を始めました。僕らのアクセラレーションプログラムでは、必ず期間内にサービスをローンチすること(サービスのニーズ検証を終え、少額でも売上を発生させていればベスト)を目的としています。そのため、デモデイまでにサービスが開始できない場合は、どんなに優れた企業であっても、デモデイに登壇できません。**(白石健太郎氏)

2015年9月より開始したアクセラレーションプログラム『朝日新聞アクセラレータープログラム(ASAP)』では、朝日新聞社メディアラボ渋谷分室で、起業家支援プログラム「Reality Program」を運営するOtsumuの代表取締役である郡祐一氏を中心に、有識者やメディアラボのメンバーからも、ビジネスやメディア運営のノウハウの提供を受け、4カ月かけて新しいサービスとビジネスモデルの構築に取り組む。

1期生には、著名人によるイラストやマンガの描き方を動画で学べるWEBサービス『Palmie』、自由に選べる結婚式を実現する『WEDDIT』、紙の流通過程で余った“紙”を売買できる『ReCross』、“筋肉”の情報を網羅した『筋肉バカドットコム』、 “行きたくなる道”と”一緒に走る仲間”を探せるサービス『Runtrip』などが採択されている。
また、2期生には、モータースポーツとクルマ・バイクに特化したWEBメディア「Motorz」と同サイトに連動するECモールを運営計画中の『Middle Field』、従業員満足度調査・モニタリングサービス『Motify』、コンシェルジュ型のリフォーム会社紹介サービス『リフォームガイド』を運営する『グローバ』などが採択されている。

「ASAPの場合、アクセラレーション開始から3ヶ月経過したタイミングで出資検討を行う」(白石氏)実際、1期生、2期生から数社に朝日新聞社とグループ企業から出資されているという。なお、現在、ASAPでは2nd Batchを開催中で、厳正なる審査から選ばれた4社が3月8日のデモデイに向けて開発を進めているそうだ。最後に、白石氏に、朝日新聞メディアラボならではのベンチャー支援の醍醐味を聞いた。

**ASAPでは、バッチ採択企業に対して毎週30〜60分のメンタリングをメンターの郡さんにお願いしています。さすがに私たちには起業経験がないので、メンタリングは郡さんにお任せしますが、それ以外の運営や出来る事は自前でやることにこだわってきました。そうすることで、自社にベンチャー育成の知見がたまると思っているからです。また私たちは朝日新聞というブランドを活かし、スタートアップの営業サポートなどもしています。というのもシードスタートアップの場合、連携を希望する事業会社へ連絡しても、そもそも担当者と面会出来なかったり、会えたとしても話が進まなかったりするのですが、そういう時は私たちが窓口となり担当者にお繫ぎします。同プログラムでは朝日新聞というブランドを、スタートアップが使えるのは大きな魅力のひとつかなと思います。**

**朝日新聞は、昔から自由な文化があります。メディアラボにいるメンバーは、おもしろいことを自由にやっていきたいという想いを強く持っています。その点では、僕らもこれまでたくさん新規事業を作ってきましたし、ベンチャーや起業家と非常に近しい立場にあると考えています。**(白石健太郎氏)