「キャピタリストを支えるプロフェッショナル」…WMFA代表取締役山本氏による「ベンチャーキャピタルのミドルバックオフィス」

今回「Pedia News」では、ベンチャーキャピタルのミドルバックオフィスに焦点をあて、WM Fund Associates株式会社(WMFA)の代表取締役山本千秋氏に、WMFAの業務事例をまじえながら「ベンチャーキャピタルのミドルバックオフィス」について教えていただいた。

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スタートアップが日本だけではなく世界を舞台にして華々しく輝く裏には「ベンチャーキャピタル」の存在が大きい。そして、そのベンチャーキャピタルが活躍する裏には影で支える人がまたいる。それこそが、ベンチャーキャピタルの「ミドルバックオフィス」だ。

今回「Pedia News](https://news.thepedia.co/){: target=”_blank”}」では、ベンチャーキャピタルのミドルバックオフィスに焦点をあて、[WM Fund Associates株式会社(WMFA)の代表取締役山本千秋氏に、WMFAの業務事例をまじえながら「ベンチャーキャピタルのミドルバックオフィス」について教えていただいた。

山本氏は、日本アジア投資株式会社(JAIC)に20年以上に渡り勤務し、法人としての管理全般に加え、ファンド運営にかかる豊富な経験を積む。1999年、JAICのファンド事務管理子会社にて、ファンドの事務代行、及び決算書作成等に従事。2003年よりJAIC本体の管理部門とファンド管理部門、すなわちJAICのバックオフィス全般を取り仕切る。また、2008年には、東証上場プロジェクトでリーダーを務めた。その後、2013年3月JAICを退職し、2013年4月、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)事務局企画部長就任すると共に、WMパートナーズ株式会社の設立に参加。2013年9月より、WM Fund Associates株式会社の代表に就任する。

WMFAは、日本でまだ数少ないファンド運営のミドル・バック業務に特化した、ファンドの事務管理サービスプロバイダーとして2013年に設立された。WMFAでは、単に事務作業のアウトソーシングなどだけではなく、GPがコア実務である投資活動にできるだけ集中できるようにファンドのサポーターとしてファンドの運営面におけるソリューションも提供する。現在、契約中のファンド数は21本、GP数は20社。なお、従業員数は5名で男女比率は全て女性。

#### ーWMFAについて教えてください。

WMFAでは、①資産管理をはじめとする「Fund Administration」、②ファンドの決算書作成をはじめとする「Accounting」、③ファンド組成のコンサルティングをはじめとする「GP Support」がある。WMFAの1番の強みは「GP Support」。「GP Support」では、ベンチャーキャピタル業界における20年以上の経験とノウハウを駆使し、ファンド運営者であるGPに対して実務レベルで高品質な事務管理サービスを提供する。例えば、ファンドの設立にあたり組合契約を作成する時に「どのような条項を入れると良いか」など、多くのファンドの契約を見てきた経験からの情報提供をすることで、選択肢を提示できる。これまでに数多くのファンドでバックオフィスを担当してきたが、各ファンドにそれぞれ個性があり、ファンドの出資者であるLPに対するコミュニケーションの仕方や、ミドルバックオフィスに対する考え方が大きく異なる。ファンドのLPコミュニケーションの一部である「決算書」一つにしても「何を表現したいか」考え方がGPによって異なる。

#### ーベンチャーキャピタルのミドルバックオフィスについて教えてください。

ベンチャーキャピタリストが行う投資活動を「フロント」、その他のファンド管理やLP対応も含むファンドオペレーション業務などを「ミドルバックオフィス」又は「コントローラー業務」と呼んでいる。「フロント」と「ミドルバックオフィス」は役割を分担しており、車の両輪のような関係性で両方共がしっかりしていないといけない。

なお、以下では、「ミドルバックオフィス業務」を引き受ける、あるいはサポートする弊社のビジネスモデルの関係上、この「フロント」部隊と「ミドルバックオフィス」部隊をつなぐ人を「コントローラー」と定義させて頂きたい。

優秀なベンチャーキャピタリストが必ずしもバックオフィスに関しても優秀とは限らない。ファンドのオペレーション業務は多岐に渡る。そのため、ベンチャーキャピタリストが投資をしながら管理業務やオペレーション業務など全てのファンドオペレーションを担当することは非常に困難で事故も起きかねない。だからこそ、ファンドの「ミドルバックオフィス」に特化して管理の立場から細かいメッシュで投資活動を見る人が必要だと思う。個人的には「フロント」としての才能と「バックオフィス」としての才能は異なると考えている。

#### ーベンチャーキャピタルはミドルバックオフィスを内製化するところも多いですか。

ある程度の規模以上のベンチャーキャピタルは、フロントだけでなくミドルバックオフィスもしっかりしていると思う。そしてミドルバックオフィスを仕切るコントローラーがいるケースが多いように思う。コントローラーは、ベンチャーキャピタル業界で表面的に目立たないことも多いが、ファンドのオペレーション業務を効率的に進めるためには欠かせない存在だ。もちろん、一部のベンチャーキャピタルではキャピタリストがコントローラーも兼務する。しかし、スタートアップに投資してこれから世界中で新しいイノベーションを生み出そうとする意識と、既存の規律・法令を遵守しようとする意識とは、そもそも次元が違う話だし、ベクトルとして間逆だと思う。だからこそ、フロントとミドルバックオフィスは役割分担をした方が良いと思う。その一方で、ベンチャーキャピタル業界は「投資をしたい」「キャピタリストになりたい」人が多く、「優秀なミドルバックオフィス」を採用しにくいし、どちらかというミドルバックオフィスの元締めであるコントローラーも育ちにくい現実がある。そこに弊社の存在意義がある(笑)。

#### ー優秀なキャピタリストとはどのような人ですか。

「優秀なキャピタリスト」とは、しっかりした投資フィロソフィーを持ち、実績としてトラックレコードがある、ということも必要だと思うが、コミュニケーションが上手な人が多いと思う。あらゆる人とのコミュニケーションを円滑に進め、上手に相手が考えることを引き出し、色々な人を引き込んで大きなことを成し遂げていく人であると考えている。

#### ー優秀なコントローラーとはどのような人ですか。

「優秀なコントローラー」とは、勉強熱心でファンドに関連する規律・法令などをある程度自分で把握し、ポイントを押さえる、つまり「勘どころを押さえられる」人だ。そして、重要なことは専門家に確認して、取れるリスクと取れないリスクを考えて「正しい線引きをする」必要がある。コントローラーは必ずしも全ての規律・法令を把握する必要はないし、具体的な作業は弊社に任せてもらえばよいわけだが(笑)、ファンドの目指す投資スタイルや方向性を理解した上で、有限なリソースの中で優先順位を付けてファンドオペレーション業務を円滑に進めるためには非常に重要だ。投資サイドとミドルバックオフィスサイドの両方を理解できる、そこがコントローラーとして必要な才能だと思う。

#### ーコントローラーに向いている人はどのような人ですか。

一般的に、特にPE業界ではコントローラーは女性が多いように感じる。個人的にもコントローラーは女性の方が向いているのではないかと考えている。これは、①キャピタリストに男性が多くて男性同士だと意見が衝突してしまう懸念がある、②女性の方が男性に比べてピンポイントに「投資したい」というのでなく、もう少し幅広く「貢献したい」という感覚でコントローラーの仕事に徹せられる人が多い気がする、③女性の方が母性でもってやわらかく包み込むような関係性が構築できる、と考えているためだ。自分自身を振り返ると、ベンチャーキャピタルの仕事が好きでベンチャーキャピタルの仕事の中で「何かやりたい」と考えた時に「ミドルバックオフィス」なら自分でもできると考えたことがキッカケだった。コントローラーには、ベンチャーキャピタルやスタートアップが大好きで応援したいが、自分は投資ではなく「ミドルバックオフィス」なら才能を発揮できると考える人には向いているかもしれない。

#### ー今後、日本のベンチャーキャピタルに必要なものを教えてください。

「ファンドレイズ」という観点で見ると、日本のベンチャーキャピタルのファンドサイズは世界基準では小さくて機関投資家の間尺に合わない。この原因の一つには、(日本のベンチャー企業を投資対象とする場合)日本には多額な資金調達をするベンチャー企業が(このところは多くなってきてはいるけれど)海外に比較すると少ない、ということと、もう一つは管理の問題があると考えている。現在、日本のベンチャーキャピタルの多くは、エンジェル投資家や事業会社などの出資者から資金を募っている。主に、各ファンドの投資スタイルや投資ポリシーに賛同したことによる出資、事業会社が新たな新規事業を求めた出資や事業シナジーを検討した出資などが多い。その一方で、機関投資家は、様々なアセットクラスの中から「ベンチャー投資」を選択する理由はリターン、つまり資産運用が目的となる。そのため、同じファンドのLPでも、シナジーを求める事業会社と機関投資家では出資の目的が異なり、コミュニケーションの仕方も違ってくるし、管理体制がちゃんとしていないと投資家の要求に応えられない。もちろん、各ファンドでそれぞれの考え方があるので、必ずしも機関投資家から出資を集める必要もないが、いずれにしてもリターンを出しながら継続的にファンドを組成していくためには「どのような投資家から資金を集めるか」を考えなければならない。そのために、管理体制を整えることは非常に重要だと考えている。

さらに言うと、管理体制をすべて自前で用意しなければいけないかどうか、という点については、海外では、弊社のようなアドミニストレーターを使うことが一般的になっているので、そういう外部の力も使ったフォーメーションを組むことも可能である。でも、その場合にも社内(GP内)に「コントローラー」は必要と思う。

#### ー最後に、1日の時間の使い方を教えてください。

基本的には1日中クライアントであるファンドの業務を行う。社内ではダブルチェック体制を整えており、作業する人と確認する人で役割分担をして、書類のやり取りを頻繁にしてチェックし合うようにしている。午前中はファンドの資金残高のチェックや入出金予定の確認等「資金管理」をしていることが多く、午後はクライアントとメールや電話、あるいは直接お会いしてのコミュニケーションに費やすことが多い。また、月初は月次レポート作成などの「レポーティング」、月中は取引が生じた毎に内容の起票やファンドレイズ、キャピタルコール等々の「GP Support」、月末は投資や経費の精算なども多いことから「お金を動かす」ことが多い。さらに、年間のスケジュールとしては、決算期が12月のファンドが多く、税務署等への報告書類の提出が1月~2月に集中することから1月~3月は非常に忙しい。20本超のファンドを受託しているため、それぞれのファンドに合わせてベンチャーキャピタリストと共に業務を進めている。

あとは、新規で色々な方からのご相談も増えている。こうして見ると、一つ一つの業務は淡々とこなしていけばいいはずなのだが、なぜかエキサイティングな毎日(笑)である。ファンドの活動に活気があるのは、忙しいけれど嬉しい。

ーありがとうございました。