「アジアから日本への留学」ST Booking、シードで約2,000万円を資金調達…CEO森川氏が語る、シリコンバレースタートアップ立ち上げとST Bookingの創業秘話

今回、Pedia Newsでは、株式会社ST BookingのCEOである森川照太氏にST Bookingの創業経緯、そして今後の展望についてインタビューを実施した。今回のインタビューで、森川氏は、シンガポールに拠点を置くベンチャーキャピタル BEENEXT及び他の投資家を引受先として第三者割当増資を実施し、シードで20万ドル(約2,000万円)の資金調達を実施したことを明かした。

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スタートアップの聖地、米国・シリコンバレー。起業を志す者ならば誰もが一度は夢見るであろう、米国・シリコンバレーでのスタートアップ人生。彼もその一人だった。

2014年に起業を目指して米国・シリコンバレーへ単身で渡米した森川照太氏。渡米後、米国・シリコンバレーに拠点を持つアーリーステージのベンチャーキャピタルScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)を手伝いながら、音楽ストリーミングアグリゲーション事業を立ち上げるべく奮闘。しかし、米国・シリコンバレーには世界各国から優秀な起業家たちが集結する。悪戦苦闘する中で、森川氏は2015年に事業立ち上げから退き、心機一転、新たなスタートアップ株式会社ST Bookingを立ち上げるため、日本へ帰国した。

株式会社ST Bookingは、日本向け留学支援B2B2Cプラットフォーム『ST Booking』を運営。ST Bookingでは、日本の教育機関へアクセスできずにいた留学エージェントに対してワンストップソリューションを提供する。

今回、Pedia Newsでは、株式会社ST BookingのCEOである森川照太氏にST Bookingの創業経緯、そして今後の展望についてインタビューを実施した。

### シリコンバレーで初めての起業

スタートアップの聖地、米国・シリコンバレー。世界各国からスタートアップに挑む起業家が集結する中、華々しい活躍を得ることは数少ない選ばれた者に与えられる花道だ。森川氏は、シリコンバレーでの事業立ち上げ当時について、2013年にYコンビネーターのサマーバッジ「YC S13」に出場していた『Bop.fm』のような音楽ストリーミングのアグリゲーション事業を立ち上げるべく奮闘していたと振り返った。

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### シリコンバレーが教えてくれたこと

シリコンバレーで事業立ち上げ経験を通じて、森川氏は、

「スタートアップは、自分が好きなことで自分がやる意味があることを立ち上げるべきだ」そのことを痛感した。日本で50個の事業アイデアを考えて米国に渡った。実際に米国のマーケットを見て、音楽ストリーミングのアグリゲーション事業へ参入を決めた。しかし、米国・シリコンバレーには世界中から優秀な起業家が集まっている。その中で、うまく事業を立ち上げられなかった。C向けサービスの立ち上げの難しさ、そして、単純に好きというだけではバリューを出せずに勝負できないことを身をもって知った。

と悔しさを噛み締めながら語った。

### 「自分が好きなことで自分がやる意味がある」

その一方、森川氏は、米国・シリコンバレーで、改めて「自分が好きなことで自分がやる意味があること」を探していた。

### 「アジアの留学業界をテクノロジーの力で変えたい」

森川氏は、「自分が好きなことで自分がやる意味があること」を考えていく中で、

米国に渡る前に検討していた50個の事業アイデアを思い返した。その中の一つに「留学」があった。「自分が好きなことで自分がやる意味があること」を考えると、「留学」はベストなテーマに思えた。大学時代に米国に留学して多種多様な人々と触れ合うことで価値観が変わり、妹も中学時代に米国に留学して考え方や価値観が変わった。「若い世代にそのような出会いをもっと広げたい」強いパッションがあった。

世界の留学業界を見ると、ヨーロッパが先進的だった。学校のデータベースや統一アプリケーションなど、テクノロジーが留学業界を変えていた。その一方で、アジアの留学業界を見ると、アジアから留学する人が多いにも関わらず、学校のデータベースやアプリケーションなどがなかった。アジアの留学業界は約50年前に誕生したが、50年間伝統的な方法を引き継いでいた。「アジアの留学業界をテクノロジーの力で変えたい」そう強い信念を持った。

「自分が好きなことで自分がやる意味がある」「日本人であることを最大限に活かせる」それは「留学」しかないと思った。

と語った。

### 共同創業者との出会い

しかし、留学業界は教育機関とのコミュニケーションなどB2Bの側面が強く、教育機関とのネットワークがなければ立ち上げが難しい分野でもある。それでもなお、森川氏が「新たなスタートアップ人生をアジアの留学業界で勝負したい」と決めた裏には共同創業者Mark Hsu氏との出会いがあった。

Mark氏はシリアルアントレプレナーでエンジェル投資家。スクラムベンチャーズのグローバルメンターでもある。スタンフォード大学在学中にSinanetを共同創業して中国最大のSNS「Weibo」を運営するSinaにイグジット。1999年にはKKBoxのSkysoftを共同創業して2010年12月にKDDIにイグジット。また、Mark氏はスタンフォード大学在学中から約20年間、アジアの学生を米国に紹介する留学事業をサイドビジネスとして運営していた。

### 日本へ帰国、アジアで再始動

森川氏は、共同創業者Mark氏との出会いについて、

2014年に台湾へ行った時に初めて出会った。1日台北を案内していただき、たった1日で台湾スタートアップの約80%を紹介していただいた。1日一緒に過ごしてみてお互い気が合い、その後も頻繁に連絡を取り合う仲になった。その中で、Mark氏が「教育」「留学」「日本に関するビジネスでグローバルにスタートアップを立ち上げたい」と考えていることに気づいた。そこで、「アジアの留学業界」を新たな起業テーマに決めた直後、Mark氏に話した。「一緒にスタートアップを立ち上げよう」そこで、お互いに意気投合して盛り上がり、ST Bookingの創業を決意した。

と述べ、Mark氏の参画が決まると同時に、2015年9月、「アジアの留学業界をテクノロジーで変える」ために日本へ帰国し、ST Bookingを立ち上げたことを明かした。

### 東南アジアから日本への留学が急増中

日本への留学市場について、文部科学省は、2016年3月、独立行政法人日本学生支援機構の統計をもとに2015年の「外国人留学生在籍状況調査」結果を発表している。その調査結果によれば、2015年5月時点で留学生数は前年の18万4,155人から13.2%増加の20万8,379人となった。

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日本の留学生出身国の内訳をみると、中国が9万4,111人で最大であるが、前年比から0.3%減少している。その一方で、ベトナムは前年比47.1%増加の3万8,882人、ネパールは前年比55.5%増加の1万6,250人、台湾は前年比17.4%増加の7,314人、インドネシアは前年比12.9%増加の3,600人、タイは前年比8.5%増加の3,526人、ミャンマーは前年比42.4%増加の2,755人であり、東南アジアから日本への留学が急増している。

### 2020年までに「留学生30万人計画」

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また、文部科学省や外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省は、2008年、「留学生30万人計画」を発表。「留学生30万人計画」は、日本を世界により開かれた国とし、アジア、世界の間のヒト・モノ・カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、2020年を目途に30万人の留学生受入れを目指すもの。

森川氏によれば、日本政府が日本への留学生受入れの拡大を表明する一方で、日本国内の留学生環境は決して万全な受け入れ態勢があるとは言い難いという。

### ST Booking創業

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そこで、株式会社ST Bookingは、2015年9月25日、CEOの森川照太氏、CFOのTiffany Wu氏、シリアルアントレプレナー兼エンジェル投資家であるMark Hsu氏らによって設立された。本拠地はシンガポールで、日本と台湾にも拠点を持つ。従業員数はインターンを含めて10名。

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ST Bookingは、アジアの留学の中でも特に東南アジアからの日本への留学に焦点をあてる。海外の留学エージェントが日本の教育機関をはじめ、賃貸不動産業者、職業斡旋業者、旅行会社などあらゆるサービス提供者と自由なコミュニケーションがとれるプラットフォームの提供を目指す。

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また、ST Bookingでは、語学学校、英語で提供される大学の学位取得プログラム、専門学校、住宅情報や留学生向けの職業等の様々な分野の情報を一つのプラットフォームにデータとして集める。これにより、教育コンサルタントや旅行業者は、これまで分散していた情報にワンストップでアクセスできるようになる。

### 留学ネットワークは約1,100社

ST Bookingがこれまでに築いた留学エージェントネットワーク数は、台湾400社、タイ400社、ベトナム300社の合計約1,100社に及ぶ。また、ST Bokingは、日本国内で約60校の教育機関とネットワークを築いている。

森川氏は、

留学エージェントの多くが日本の教育機関とのコネクションを持っていない。日本の留学プロセスは非常にユニークで複雑な部分が多い。日本の教育機関では、一部の学校で定員割れをしているところも多く、留学生の受け入れは急務とされている。そのため、留学エージェントと日本国内の教育機関の間でST Bookingがサポートすることで、お互いに良好なパートナーシップを組める。

と述べ、ST Bookingを通じて留学支援側と留学受け入れ側が共にWin-Winの関係を築けることを強調した。

### シードで約2,000万円を資金調達

さらに今回のインタビューで、森川氏は、シンガポールに拠点を置くベンチャーキャピタル BEENEXT及び他の投資家を引受先として第三者割当増資を実施し、シードで20万ドル(約2,000万円)の資金調達を実施したことを明かした。

森川氏は、今回の資金調達について、新サービスの立ち上げ、ブランド名の認知及び東南アジアにおけるエージェンシー・ネットワークの拡充に用いる予定と述べた。

### 「アジアから日本への留学」= ST Booking

そして森川氏は、今後のST Bookingの展望について、短期的には、

2016年末までに「アジアから日本への留学」と言えば”ST Booking”というポジションを築き上げたい。そのために、今回の資金調達で得た資金で、ST Bookingのブランディングを強化し、留学支援の実績を出していきたい。現在、台湾拠点では既に事業を黒字化している。ST Bookingでは、台湾で得たノウハウをもとに、ベトナムをはじめ他の東南アジアへ展開していきたい。これにより、先行投資をすればするほど、事業が拡大するというエコシステムを作っていきたい。

さらに、ST Bookingでは、今後1〜2年で、分散している留学関連情報を一つのプラットフォームに統合してワンストップでアクセスできるようにしたい。そのために、①留学生を受け入れ可能な学校の情報をデータベースとして集めてワンストップでアクセスできるようにする、②オンラインマーケティングを強化し、アウトバウンドで「日本の留学情報といえばST Booking」という認知を広げたい、さらに、③多言語対応していきたい、と考えている。

留学は、海外の人が日本で活躍するための入り口の一つだと思う。今後、日本で少子高齢化社会が進行していくことも踏まえ、ST Bookingを通じて、海外の人が日本で活躍できるためのプラットフォームを作りたい。

と述べ、長期的には

ST Bookingが日本へのインバウンドで培ったノウハウを活かし、東南アジアの国々にITと日本語を教える教育機関を自社で展開していくなど、現在グローバルに従業員40,000人・拠点500カ所を持つEducation Firstが50年かけてつくってきた事業モデルを今の時代に合わせたやり方で展開していきたい。

と語った。

### 「若手グローバルスタートアップのロールモデル」

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最後に、森川氏は、森川氏自身の今後について、

日本のスタートアップの多くが、グローバルではなく、日本国内に目を向けて事業を展開していると思う。もちろん、グローバルで勝負するためには、スタートアップの創業時からチームをグローバル化するなど様々な工夫が必要だ。ST Bookingの場合は、運良く、創業メンバーが日本・台湾・アメリカ出身で、グローバルチームで勝負できる。だからこそ、ST Bookingを立ち上げていくことで、若手の中で「グローバルスタートアップのロールモデル」として成功事例を作りたい。

と語り、ST Bookingを通じて、将来の「若手グローバルスタートアップのロールモデル」とし活躍したいと意気込みを明かした。

ST Booking ウェブサイト