「なぜユナイテッド手嶋浩己氏はトランスリミット高場大樹氏へ投資したのか?」【起業家 × VC対談】

今回、Pedia Newsでは、シード期のスタートアップへ投資するスカイランドベンチャーズと共同で、「なぜ、ベンチャーキャピタルはスタートアップへ投資するのか」をテーマに、ベンチャーキャピタルとスタートアップ業界で活躍する人々に迫る企画として、ユナイテッド株式会社の取締役兼常務執行役員である手嶋浩己氏と株式会社トランスリミットの代表取締役社長である高場大樹氏の対談をお伝えしよう。

今回、Pedia Newsでは、シード期のスタートアップへ投資するスカイランドベンチャーズと共同で、「なぜ、ベンチャーキャピタルはスタートアップへ投資するのか」をテーマに、ベンチャーキャピタルとスタートアップ業界で活躍する人々に迫る企画として、ユナイテッド株式会社の取締役兼常務執行役員である手嶋浩己氏と株式会社トランスリミットの代表取締役社長である高場大樹氏の対談をお伝えしよう。

** ユナイテッド株式会社 取締役兼常務執行役員 手嶋浩己氏(写真 右)**

1976年生まれ。一橋大学商学部卒業。1999年、株式会社博報堂入社。マーケティングプランナー及びブランドコンサルタントとして勤務後、2005年退社。2006年、株式会社インタースパイア取締役副社長に就任。2009年には、株式会社エルゴ・ブレインズと株式会社インタースパイアが合併して株式会社スパイア、2012年には、モーションビート株式会社と株式会社スパイアが合併してユナイテッド株式会社へ参画する。2度の経営統合を経て、2012年より、ユナイテッド株式会社取締役兼執行役員(スマートフォンアプリ事業管掌)に就任、2016年より取締役兼常務執行役員アドプラットフォーム事業管掌(現任)。連結子会社のフォッグ株式会社、投資先の株式会社メルカリの社外取締役(現任)なども兼務。

ユナイテッドグループでは、子会社ベンチャーユナイテッド株式会社を通じてシードステージに特化したベンチャー企業、ユナイテッド株式会社を通じてアーリーステージを中心としたベンチャー企業、他のベンチャーキャピタルファンドへの出資を行う。ユナイテッド本体の投資先は、株式会社メルカリ、ワンダープラネット株式会社、株式会社トランスリミット、株式会社Orb、ナイル株式会社、クリエイティブフロンティア株式会社など。

** 株式会社トランスリミット 代表取締役社長 高場大樹氏(写真 左) **

1986年生まれ。福岡工業大学卒業。2009年、株式会社サイバーエージェント入社。サイバーエージェントでは、サーバサイドエンジニアとして、海外版アメーバピグである『Ameba Pico World』やスマホ向けソーシャルゲーム『ガールフレンド(仮)』などのプロジェクトに参画。その後、2014年1月、株式会社トランスリミットを創業。

同社が2014年5月にリリースしたスマートフォン向けアプリ『Brain Wars』は1,500万ダウンロードを突破、さらに1年後にリリースしたスマートフォン向けアプリ『Brain Dots』は累計2,500万ダウンロードを突破した。2タイトルで累計4,000万ダウンロードを超え、米国や日本を含むアジア圏、ヨーロッパ圏を中心に海外ユーザ比率が95%を超えるグローバルヒットタイトルを生み出している。またトランスリミットは、開発者中心のチームビルディングを心がけており、現在社員数は約20名、90%がエンジニアとデザイナーで構成されている。

### トランスリミット高場さんは小銭稼ぎじゃない、ホームランを打ちに行っていた

**手嶋浩己氏(以下、手嶋氏)**:高場さんとは出会って丸2年くらいですよね。2014年10月にユナイテッドからトランスリミットに出資をしているのですが、2014年7月頃にSkyland Ventures木下さんの紹介で高場さんと初めてお会いしましたよね。当時はそろそろ資金調達で動こうというタイミングでしたか。

**高場大樹氏(以下、高場氏)**:そろそろ資金調達で動こうと思いつつも、『BrainWars』がアプリストアでおすすめされる直前のタイミングでもあって開発に集中している時期でした。そんな中、Skyland Ventures木下さんから「この人だけには会ってほしい」と半ば無理やりミーティングを設定されて(笑)、お会いした方が手嶋さんでした。

**手嶋氏**:そうだったのですね。高場さんと初めてお会いした時の印象は、演出で笑っているわけではなく**「肩の力が抜けている状態でニコニコしている」「自然体で幸せそうで運良さそうな感じ」**がしましたね。1回のミーティングだけではプロダクトへのこだわりなどはわかりきれないので、人間的な部分の印象が強かったです。

初回のミーティングは、木下さんと高場さんの作戦だったのかなと思うのですが、はじめから投資の話をするミーティングではなかったですよね。ユナイテッドからトランスリミットへの出資は、極めて大きなターニングポイントがあったというよりは自然な流れで着地しました。

ユナイテッドとしては、グローバルヒットした『Brain Wars』に投資したというより、高場さんはじめトランスリミットが**「運もセンス良さそう」「腰据えて会社も事業にも取り組みそう」**と思って投資しました。

『Brain Wars』はある種のカジュアルゲーム、だからグローバルでヒットを飛ばしましたが、当然それ一発でIPOにまで行けると、僕は当時から思っていなかった。ただ、何か小銭稼ぎ狙いじゃないなということは、その時何となくわかっていました。

ユナイテッドの投資事業のスタンスでは、ある種早い段階で投資してホームランを狙うので、トランスリミットはそれに適合したということです。

**高場氏**:僕としては、手嶋さんは、信頼する木下さんからの紹介だったことの他に、『CocoPPa』の事業を通じて貯められた海外スマートフォンアプリ事業に関する知見に魅力を感じました。

当時のトランスリミット投資家陣は、Skyland Ventures、East Ventures、Genuine Startupsといった独立系ベンチャーキャピタル3社から支援していただいていましたが、関連する事業のことを実務ベースで経験のある方はいませんでした。

調達のタイミングは、より事業のことを理解して支援してくださる方に応援していただきたいフェーズに移り変わるタイミングでもありました。そう考えると、当時は、『CocoPPa』をグローバルヒットさせているユナイテッドとLINEしかいませんでした。結果的にその両社から支援していただけることになりました。

### ユナイテッド手嶋氏の投資先への関わり方は経営経験を活かしたフィードバック

**手嶋氏**:ユナイテッドからトランスリミットへの投資後の2年間で、あっという間だったと思うけれども、印象に残っている重要な判断はありましたか?

**高場氏**:手嶋さんには、要所要所で特に重要だと思うタイミングで相談させていただくことが多いです。例えばこのオフィスへ移転する時、どういう基準で、どういう考え方でオフィスの広さや立地等、条件を考えるべきか、といったことを相談させていただきました。

また、4月に執行役員制度を初めてつくったのですが、それも相談させていただきました。執行役員をそもそも置くべきか、執行役員のミッションや役割の位置付けと、どのように本人に期待を伝えるべきか、どのようなコミュニケーションをしたら成果が出るかといった内容です。このように、サービスのことというよりは、会社運営についての相談事が多いです。

**手嶋氏**:実際に執行役員の導入をしてみてどうでしたか?

**高場氏**:非常に良かったと思っています。自身が明確に組織のリーダーにならなければいけないというスタンスに変わりました。それによって任される対する責任感が大きく変わりました。

また、本人以外のメンバーもそこを目指すようなメンバーが現れたりして、仕組みを作ったことで組織として成長した感覚があります。

今後、会社として大きく成長する時に、組織を引っ張れるような人材を育成していくことが大切で、そのために有効な制度だと思います。

**高場氏**:ところで、手嶋さんは、投資先に対して、投資家としてまたは経営者としてどのような相談相手になろうと意識されていますか?

**手嶋氏**:まずは気軽に相談してね、というスタンスですよね。基本は僕の経営論・事業論は、ユナイテッドで実体験として学んだことであり、どこかのメソッドを導入したものではありません。実体験でこういうことにぶつかった、こうして良かった、ということを伝達している。地に足は着いて話をしているつもりですが、経営論・事業論などの話は、投資先ごとに判断が異なるので、例えばトランスリミットなら最終的には社長である高場さんが判断すれば良いという想いを持っています。あまり自分の考えを押し付けたり、考え方自体を一緒にしようとは思っていないということです。

**高場氏**:手嶋さんからは、任せてもらっている感が強く、良い距離感でプレッシャーをもらっています。

手嶋さんとの中で最も印象に残っていることは『Brain Wars』がApp Storeでフューチャーされて大きなトラフィックを得た際に、恥ずかしながらサーバが落ちてしまったのですが、一番最初に気づいたのが手嶋さんでした。それも朝の4時とか5時だったと思います。

**手嶋氏**:その頃は、投資するか否かの判断をする前のタイミングで、毎朝起きると『Brain Wars』を頻繁に見ていた時期でした。

ユナイテッドの新しいサービスがリリースされると、早朝に起きてサービスを見るような習慣があって、『Brain Wars』も自分事のように思って見ていました。そういう意味ではコミット感がその時から出ていたのかもしれませんね。

**高場氏**:出資後はより具体的にアドバイスやフィードバックをいただくことが多く、とても感謝しています。

### トランスリミットは、技術とインターネットをつかって世界にチャレンジすることを目指す

**手嶋氏**:投資させて頂いてからは2年ほどになりますが、世界に向けてサービス展開をしようとするトランスリミットがユナイテッドとLINEから資金調達を実施できたことは、資本構成も含めて無双状態で非常に良かったと思います。

高場さんを見ていると、資金調達活動に関して言えばやりながら覚えている感じがありますね。「自分の頭の中で考えていて、わからないことも出てくるが、その都度つぶしている感じ」。もちろん、トランスリミットが会社として変化がある中で、高場さん自身も当時の高場さんと今の高場さんとでは良い意味で別人に成長していると思います。

**高場氏**:変わらずただ必死ですけどね(笑)。ただただ目の前のことに必死な状態ですが、社員数が15人を超えたくらいのタイミングで、自分の領域を人に任せるようになりました。

一人のエンジニアというよりは経営者として必要なポジションに対して適切に人材を配置することを考えるようになりました。**「会社の課題に対して、まず自分が誰よりも先に手をつけて、それをどんどん人に任せる」**ということをやっています。そのため、最近は設計には携わるもののコード自体はほどんど書かなくなってしまいました(涙)代わりに、採用とか広報、マネジメントといった経営面の仕事が多くなってきました。

また、開発面でも課題となる部分や層の薄い部分は自ら取り組むようにしていて、デザインやアニメーション、演出といったクオリティに関わる部分やバランス調整といったゲーム的な構成部分にも踏み込んでいくようになりました。総じて何でもやります。

**手嶋氏**:高場さん自身が経営者として安定感と責任感が出てきている中で、根本はあまり変わっていなくてそこが良いところでもあるが、これからより事業が成長していく過程に入ると、やはり変えないといけないところが出てくると思いますね。まだ今はその手前のフェーズなので、あまり変わらないほうが良いタイミングでもあると思います。

また、高場さんを見ていると、経営者としてのアイデンティティーがより磨かれているように感じています。以前までは、「エンジニアであり、経営者で社長であり、サービス開発者である」という全てがイコールの関係だったと思うのですが、今は「**究極のところ、経営者で社長だ**」というアイデンティティーが強くなっているように思いますね。

**手嶋氏**:ところで、今は企業規模やカルチャーとして目指している会社はありますか?

**高場氏**:フィンランドにあるSupercellという世界1位のスマホゲーム会社があるんですが、直近はそれに追いつくことを目指しています。Supercellは、たった200人足らずで2,500億円規模の売上をつくっています。

トランスリミットでは、Supercellのように、ひとりひとりの生産性がとても高く、限られた人数で大きな成果が出るビジネスを目指しています。

ただ、根本にあるのは技術とインターネットを使ってどんなことができるかっていうのを突き詰めたい、ということ。そういう意味では、Googleのような存在でもありたいと思っています。

現在は、スマートフォン市場のゲームに非常に大きなチャンスがあるので、そこに賭けて集中しています。

### 技術者集団トランスリミットがさらなる大きな結果を出すために

**高場氏**:手嶋さんから見た時に、トランスリミットはどのような会社としてうつっていますか。

**手嶋氏**:トランスリミットは、たくさん良いエンジニアやデザイナーを採用できている会社だと思いますね。それは社長の高場さんの力なのではないかと思います。

またトランスリミットは、やっぱりセンスがありますよね。サービスもそうですけど、オフィスを見ても、様々なところにセンスが表れていると思いますね。僕の最初の感覚は間違いでなかったということですね(笑)。

**「トランスリミットは、良い人が集まっていてセンスが良い」**それは、高場さんに初めてお会いした時と今もずっと変わらないことですね。

もちろん、人数が増えれば一人ひとりのパワーを引き出す難易度が上がるので、最近高場さんとは組織の話をしています。トランスリミットの採用で特に気をつけていることはありますか。

**高場氏**:「相当なポテンシャルを感じるか」「相当な実力があるか」という2点です。最近は特に、後者のような即戦力しか採用しなくなりました。

トランスリミットで働く人は大きく3つのタイプがいます。1つ目は、大手のITベンチャー企業で数年働き実力を着けたメンバー。2つ目は、新卒入社や新卒2年目~3年目で入社する若くポテンシャルの感じるメンバー。3つ目は、30歳後半~40代の世代で3~4社の企業を経験したベテラン層のメンバー。

最近は3つ目のベテラン層の採用が多くなってきていますね。実力があって即戦力になる人しか採用しないようにすると、必然的に年齢も上がっていきますね。

### トランスリミット、次なるステージへ

**手嶋氏**:今トランスリミットでは、これまでにない大型プロダクトを開発しているので、そのプロダクトを磨き上げてリリースすることが一番大切です。そのプロダクトが本当にユーザーに刺さって世の中に届いたときには、きっとトランスリミットは違うステージに進化すると思います。そうなれば、これまで以上にまた支援できることも増えてくるように思います。

**高場氏**:今はとにかく、死ぬほどすごいプロダクトをつくるしかないと思っています。トランスリミットが会社として、もっと大きくなり、次のステージに上がった際には、これまで以上に悩みが増えると思うので、引き続き、投資家として、経営者の大先輩として、手嶋さんからを支援していただきたいと思っています。

[写真協力:カメラマン 延原優樹氏]

ユナイテッド株式会社

株式会社トランスリミット

Skyland Ventures